ドイツ学術情報(過去の分)

2016年

ドイツ研究振興協会(DFG)会長がエクセレンス・イニシアティブに関する専門委員会報告書を評価(1月29日)

エクセレンス・イニシアティブの評価報告が専門家委員会によって発表され、ドイツ研究振興協会(DFG)会長は以下のように述べた。 「報告書において、エクセレンス・イニシアティブのグラデュエート・コレーク(大学院)及びエクセレンス・クラスターに関して評価されたことは喜ばしい。 特に、エクセレンス・クラスターに関しては、科学的に優れているかどうかという観点のみで審査していることを評価された。今後も将来性のある研究分野に助 成できるようにしていきたい。 また、次期エクセレンス・イニシアティブも具体化され、それによってドイツの国際的な研究力が強化されるものと確信している。」  

DFG: http://www.dfg.de/en/service/press/press_releases/2016/press_release_no_03/index.html
 

ヒトと動物の感染症に関する研究を強化(1月29日)

ドイツ連邦政府は、動物とヒトの間で感染する疾病に関する研究を強化すると発表した。鳥インフルエンザ、エボラ、ジカウイルス感染症、MERSコロ ナウイルス等の人獣共通感染症(ズーノーシス)は、世界のヒトの全感染症の約3分の2を占めており、同時に家畜やペットを危険にさらしている。連邦教育研 究省(BMBF) 、連邦食糧・農業省(BMEL) 及び連邦保健省 (BMG) は、新たに連邦国防省 (BMVg) をメンバーに加え、協同で既存のズーノーシス共同研究協定を刷新した。

ズーノーシスは、医学、獣医学、生物学、環境学、農業科学、食品工学等の広範囲な研究領域にまたがっているため、BMBFは学際的な「ズーノーシス 感染症の国内研究ネットワーク」によって、大学、研究機関、公的保健機関及び企業に対し、5年間に渡って4,000万ユーロを提供する予定である。

BMBF: https://www.bmbf.de/de/forschung-fuer-gesundheit-von-mensch-und-tier-staerken-2406.html
 

若手研究者雇用改善のための学問有期労働契約法を改正(1月29日)

ドイツの若手研究者の雇用条件を改善するための「学問有期労働契約法第1回改正法」が12月17日に可決され、間もなく施行される。研究者等の不適切な短期労働契約を阻止することを目指すもので、主な改正点は以下のとおり。

・雇用期限の設定は、目指す資格取得に合致したものでなければならず、外部資金のため期限付きになる場合は、認可されたプロジェクトの期間にマッチしなければならない。

・被雇用者が資格取得(博士号取得等)を目指す場合のみ、正当事由なしの有期雇用を認め、資格取得を目指さない被雇用者に対して契約期間を定めることはできない。

・学業の傍らに行う学術の場における補助的な仕事の期間は、学士・修士課程であっても正当事由なしの資格取得期限には算入されず、6年の期限が定められている。

・18歳以下の子供を養育している場合には子供一人当たり2年の期間延長が可能となる。さらに障がいや重度の慢性の病気を持つ若手研究者に関しても、今後は雇用期間が最長2年延長される。

BMBF:https://www.bmbf.de/de/mehr-planbarkeit-fuer-den-wissenschaftlichen-nachwuchs-2409.html
 

連邦教育研究省(BMBF)が中小企業のイノベーションのための助成を発表(1月13日)

連邦教育研究省(BMBF)はドイツの中小企業のイノベーションを促進するため、助成政策「中小企業のための優先ルール(Vorfahrt für den Mittelstand)」を新たに打ち出した。これにより、新しいアイデア、応用の可能性及びビジネスモデルを助成し、中小企業の研究結果の幅広い普及 や解決策を促進することとした。

欧州経済研究センター(ZEW)等の調査によると、ドイツの企業における研究、開発、マーケティング、拠点構築などのイノベーションにかかった支出総額は、2014年は1,450億ユーロで高い水準にある一方で、中小企業による支出の割合は減少している。

また、この助成プログラムは、中小企業と地域の大学や研究機関との結びつきを強化させることも目的としている。

BMBFは、2017年末までに助成金額を30%引き上げ、年間3億2,000万ユーロに増額する意向である。

BMBF: https://www.bmbf.de/de/zehn-punkte-fuer-mehr-innovationen-im-mittelstand-2333.html
 

フンボルト財団会長がドイツの若手研究者を取り巻く環境に警告(1月14日)

フンボルト財団(AvH)の新年会においてシュヴァルツ会長は、若手研究者のよりよいキャリア形成に向けて、研究者を取り巻く環境に対して警告した。

調 査によると、ドイツの若手研究者の80%が研究者としてのキャリアに不安を持っており、転職を考えていることが明らかになった。また会長は、研究者がピア レビュー審査に費やす時間や労力が増加しているために、研究活動に影響を及ぼしていることも指摘し、若手研究者がこのような負担にさらされていることを強 調した。

その上で、学問有期労働契約法(WissZeitVG)の改正やドイツ学術審議会によるピアレビュー制度の負担に関する調査結果を今後の対応策に生かしていくよう述べた。

また、最近の難民に関する議論にも言及し、難民の研究者を支援するための協力を呼びかけた。

AvH:www.humboldt-foundation.de/web/press-release-2016-02.html
 

連邦教育研究省(BMBF)の学術年2016-2017年のテーマは「海洋研究」(1月14日)

連邦教育研究省(BMBF)は、学術年2016-2017年において、「海洋の発見、利用、保護」に関する研究に重点を置くことを発表した。

海 洋研究は、食糧供給や経済に及ぶ生活圏としての側面、天候・気候に及ぼす影響に関する側面、また、旅行先等としての文化的・社会的な側面といったものまで 含んでいる。「学術年」は、BMBF及びNPO法人「対話する科学(WiD)」による共同イニシアティブで、2016-2017年にかけて関連する行事が 多数開催される予定である。

BMBF: www.bmbf.de/de/meere-und-ozeane-entdecken-nutzen-schuetzen-2338.html
 

ドイツ研究振興協会(DFG)会長が新たなエクセレンス・イニシアティブに対する期待を表明(1月11日)

ドイツ研究振興協会(DFG)会長は、例年開催する新年記者会見において、次期エクセレンス・イニシアティブに向けて、連邦政府による具体的な政策 内容の提示を学術界が待ち望んでいることを強調した。今後のエクセレンス・イニシアティブでは、大学でのトップレベル研究を更に強化し、それによって全体 の研究力を底上げできるようなシステムを構築すべきだと指摘した。また、若手研究者への経済的な支援も盛り込むことも求めている。

次期エクセレンス・イニシアティブは改善を加えながら、既存と新規両方のプログラムを含めた全研究領域に開かれ、長期的な支援を可能とすることが望まれている。

DFG: www.dfg.de/en/service/press/press_releases/2016/press_release_no_01/index.html