ドイツ学術情報(過去の分)
2016年
中東・トルコ地域のシリア難民のための高等教育支援(10月24日)
ドイツ学術交流会(DAAD)と国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、北アフリカ・中東諸国(MENA)およびトルコにおける高等教育を通して、シリアの難民のための新しいビジョンをかたちづくる覚書にサインした。DAADおよびUNHCR等は、DAADのHOPESプロジェクトとUNHCRのDAFIプログラムがより高い影響力を発揮できるよう、協調して働くだろう。
HOPESプロジェクトは、EUによって支援され、レバノン、ヨルダン、北イラク、エジプトおよびトルコにおいて大学入学資格のあるシリア難民を対象とし、彼らに高等教育を受けさせまたは修了させるためのものである。2019年末のプロジェクト期間中に、400から600人の奨学生が採択される予定である。
DAFIプログラム(アルバート・アインシュタイン・ドイツ学術難民イニシアティブ)は1992年に始まり、UNHCRはこれまで8,000人以上の学生を支援してきた。DAFIプログラムの主たる資金提供元であるドイツ外務省は、シリアにおける内戦をふまえて、シリア難民に対するDAFI奨学金を追加で支援することを発表した。 ドイツ外務省のフランク=ヴァルター大臣は「2016年、ドイツは2,500人分の新しいDAFI奨学金を、主にシリア、またアフガニスタンとアフリカの難民に対して支援している、難民のための高等教育に対する責任とともに、ドイツは、彼ら自身の手に彼らの未来をつかみ取らせ、また彼らのコミュニティの福祉に貢献するような、若い難民のためのビジョンを創造する」と述べた。
UNHCRが既存の枠組みを使用できるようになり、またDAADが秋学期ですぐに勉学を開始または継続できるようにするなど、HOPESとDAFIの間の調整は、6月に合意した覚書のおかげでかなり効果のあるものとなった。
DAADとUNHCRは、この奨学プログラムに関する共同キャンペーンを開始した。対象者はかなりの数が見込まれ、最多の申請者があったのはトルコである。あわせて13,500人がDAFIおよびHOPES、地域の機関による1,500人分の奨学金に応募した。ヨルダン、レバノン、エジプトならびに北イラクにおいては審査過程及び採択手続きが進んでおり、HOPESとDAFIの共同採択委員会において採択結果が決定される予定である。
大学等における難民の受け入れに関する指針が発表(10月24日)
大学や学生支援機関である学生互助会で働く人々を対象とした指針「大学へのアクセスと難民の学術研究」が、連邦移民難民庁(BAMF)と各州文部大臣会議(KMK)、ドイツ学術交流会(DAAD)、ドイツ大学生支援協会(DSW)、ドイツ大学長会議(HRK)から共同発表された。
ドイツで学びたいと考える難民の数は増えており、これは大学と学生互助会にとって新たなチャレンジとなるだろう。たとえば、どのような法律が大学へ入学したい難民に適用できるのか、難民が入学するに際してどのような側面が考慮されなければならないか、研究に際してどのファンドが利用可能か、トラウマを抱えた難民に対する支援はあるのか、といった問題が想定される。これらに対する回答が、今回発表された当該指針に集約されている。
指針は、初期のガイダンスコースから高度な学術研究にいたるまで、高等教育におけるすべてのステージを考慮するもので、高等教育や労働と社会の法に関してあらゆる有意義な規定について説明し、関連情報も提供されている。したがって、当該指針は高等教育機関で勉学を開始したい、あるいは続けたいと考える難民をカウンセリングする学生事務にとって重要なものになるだろう。難民の統合はたしかに学生支援に関わる機関にとってチャレンジであるが、高等教育は難民にとって求人市場参入への足がかりとなり、一方でドイツは高度に教育された卒業生から常に利益を得ることができるのである。
ドイツ大学長会議(HRK)は専門大学のための若手研究者獲得・育成に関する連邦-州プログラムを要求(10月18日)
先週ベルリンで開催されたドイツ大学長会議(HRK)の評議会にて、「専門大学で教授を採用する際の連邦・州政府の長期プログラムの基本原則」が採択された。当該原則では、長期的展望に基づいてプログラムを設計することや、各大学がそれぞれのキャリア開発を具体化するための支援策へ応募できる機会を設けること、ビジネス界とのコラボレーションや新たなキャリアパスの開発、特別な教授制度といった形式で支援されうること、キャリア初期にある博士課程学生に対し専門大学への就職も視野に入れることを促すため全国的な情報キャンペーンの可能性などが述べられている。
現在、専門大学においては教授の採用要件を満たす若手研究者が不足している。これらのポジションは博士号の資格だけでなく、最低3年間学術界以外において関連した業務の経験を有することが求められている。
ドイツ大学長会議(HRK)がアクレディテーション(質保証)の早期合意についてKMKへ要求(10月13日)
ドイツ大学長会議(HRK)のヒップラー会長は、各州文部大臣会議(KMK)に対し、本日、大学の質保証の枠組みに関する法案を早期に合意するよう呼びかけた。
また、「KMKが結論を12月まで先延ばしにしたことについて、大学は非常に懸念している。HRKの要求のとおり、州間の協定を結ぶことによって問題の解決方法がそれぞれ分離してしまうことを避け、アクレディテーションの過程において学術が大きな役割を果たすべきであるという連邦憲法裁判所の要請を考慮しようとしたように、KMKは正しい方向に向かっていた。これらの措置は必要なものであり、できる限り早く立ち戻らなければならない」とHRKのヒップラー会長は述べている。
HRKは年末までに質保証システムを再構築するためのさらなる具体的な提案を提示することを計画している。HRKのヒップラー会長は、KMKは法的枠組みを確立する必要があり、一方大学側は自らの経験に基づいて設計過程を補助する必要がある。そうすることで、学術に基づいた未来志向の制度設計となるだろう」と加えた。
連邦教育研究相が本日ドイツ学術財団連盟により公表された「高等教育バロメーター」についてコメント(10月13日)
ヴァンカ連邦教育研究相のコメント: 「高等教育バロメーター」の結果は、我々の戦略的な取組み全体が正しいことを証明している。我々は大学の最先端研究を支援し、若手研究者に対して確実なキャリアの展望を用意し、また、経済界や産業界へのアイデアや知識、技術の研究に基づいた移転を強化している。同様に、大学もこれらのテーマを支援の重点としてみなしている。 「高等教育バロメーター」中では「先端研究への助成と同時に地域のイノベーション拠点の中心としての大学の役割を強化すること」という期待が述べられた。しかし、エクセレンス戦略や若手研究者のためのテニュアトラックプログラム、イノベーション大学の三つの取り決めは、まさに様々な大学の多様な要求に答えたものである。このことは、政治はこれらのことを以前から重要視してきたということを示している。 喜ばしいのは、エクセレンス・イニシアティブが高等教育システム全体にとって効果的であると評価されていることである。大学教員のうち3/4は当該プログラムがこれまで高等教育システム全体へいい刺激を与えていることを認めている。また、助成を受けていない大学においても、その82%から賛同を得ている。
連邦教育研究省(BMBF)はデジタル教育を推進(10月12日)
ドイツの学校全域がデジタル教育を成立させるために、連邦教育研究省(BMBF)は各州とともに「デジタル協定#D」を提案した。BMBFの戦略は、幼児教育から学校、職業教育や大学を経て継続教育までといったすべての教育範囲に対してデジタル化する機会と活動領域を明示したものである。当該プログラムにおいて、BMBFは5年間に50億ユーロで約4万校のドイツの小学校や中学、高校、職業学校にブロードバンド接続や無線LAN等のデジタル設備を提供することが掲げられている。これに対して州側は、適した教育計画、教員の育成と研修ならびに一定の技術的水準を実現させるよう実行する義務を負う。
BMBF: https://www.bmbf.de/de/sprung-nach-vorn-in-der-digitalen-bildung-3430.html
欧州研究領域の未来と課題(10月10日)
10月10日、総決算会議がベルリンで行われた。この会議ではヴァンカ連邦教育研究相およびモエダス欧州委員(研究・科学・イノベーション担当)が開会を宣し、連邦教育研究省(BMBF)はヨーロッパの学術的協力の未来に関する議論を開始した。
欧州研究領域は、学術交流や協調、共同研究を楽に進めることを目的として2009年にリスボン条約で最重要目標として定められ、そして広範囲にわたって実現したとみなされている。しかし、近年、学術におけるデジタル化や移民、政治的変革、激化するグローバル世界での競争といった新たな挑戦の前に立っている。
当該会議には600人以上の国際的な専門家が出席し、議論を交わした。また、欧州研究領域の未来および研究とイノベーションのための世界最大規模の支援プログラムであるHorizon2020の後継プログラムの方向付けに向けたドイツの地位の基盤となることが求められるだろう。
BMBF: https://www.bmbf.de/de/in-der-forschung-waechst-europa-weiter-zusammen-3416.html
監査プロジェクト「大学の国際化」が7年間の助成期間を終える(10月6日)
連邦教育研究省(BMBF)の支援を受けたドイツ大学長会議(HRK)による監査「大学の国際化」プロジェクトは7年以上にわたり、80の大学がこの監査を完了した。ヴァンカ連邦教育研究相は、「研究の場としてのドイツのグローバルな競争性を確保するために、大学の国際化は、根本的に重要なものである。監査を通して、大学がよりよく国際化する方法に関する重要な見識を収集することができ、また、監査もドイツの高等教育全体に対して前向きな影響力を発揮できた」と述べた。
当該監査プロジェクトは、参加した研究機関の国際化戦略を発展させ、国際的な知名度向上のための支援を行った。その際、大学全体としての国際化を促進させるため、機関の側での内省とともに、機関と外部コンサルタントを結びつけることも行った。また、数多くのネットワークイベントや情報交換の場、良い事例の体系的な普及を通じて、大学間での相互交流を推進した。
BMBFからの助成終了後も、大学の持続的な需要を鑑み、HRKが監査またはコンパクト監査を提供する予定である。再監査「大学の国際化」は、国際化対策の実施プロセスに付随するプログラムとして、次回公募申請を控え、年末に向けて再度プロモーションされる見込みである。