ドイツ学術情報(過去の分)

2016年

女性教授プログラムによる500人目の女性教授が就任(2月26日)

今年の国際女性デー(3月8日)を目前に控え、女性教授プログラムにより支援を受けた500人目の教授として、ミリアム・タリバ・リヒター氏が就任した。3月1日よりハンブルク応用科学大学看護学科(重点テーマ:ジェンダーと移住)において、教授を務める。

依然として女性のためのアカデミックキャリアが男性より少ないことに対する改善策として、連邦と州は女性教授プログラムを決議し、これまでに計3億ユーロ が助成された。このプログラムは、ドイツの大学における女性教授数の増加および特定措置を通じた大学内の男女同権推進の実現に寄与している。大学はこのプ ログラムの参加のために、男女同権推進構想を作成し、外部評価を受ける必要がある。一方で、このプログラムによる新しい女性教授らは、規定にしたがって競 争的方式により成果を収めなければならない。女性の教授職就任支援を男女同権推進に関する大学の全戦略へ結びつけるこの女性教授プログラムの原理は、機会 均等な学術への成功要因なのである。

女性教授プログラムの助成を受けるのは、通常の教授職の空きポストあるいは先取り教授職(Vorgriffsprofessur)と呼ばれる職の二つであ る。先取り教授職とは、将来空くポストあるいは今後新設予定の教授職を先に埋めるものである。この先取り教授職の設置により、教授職における女性の割合の 増加と、新しい活動領域の設置等の他の目標の達成をあわせて目指す大学が多い。前述のミリアム・タリバ・リヒター氏もこのハンブルク応用科学大学の先取り 教授職に就いた。これまで支援された500人のうち、約3分の1が先取り教授職に就任している。

女性教授プログラムに参加した198大学には、80の専門大学が含まれている。専門大学における2013年の女性教授の割合は20%弱であり、連邦 平均の21%を下回っていたが、当該プログラムへの参加専門大学数は前期である第1期よりも上回っており、今後の女性参加の発展に寄与することが見込まれ る。

BMBF: https://www.bmbf.de/de/500-frau-im-professorinnenprogramm-berufen-2506.html
 

マイスター訓練支援法(Meister-BAföG)を改正、生活費等を大幅に増額(2月26日)

この度、連邦議会は向上訓練支援法(AFBG)、いわゆるマイスター訓練支援法(Meister-BAföG)の改正案を成立させた。この改正法に より、AFBGによる助成は学士修了者にも適用されることとなり、第一職業訓練の修了資格なしで職業継続訓練資格の取得を目指す者へ対象が拡大された。

改正法により、マイスター、専門経営士、技術者、保育士を養成する全日制職業訓練受講者に対するAFBG助成額のうち生活費分は、8月1日より238ユー ロから333ユーロに増額され、最高月額は768ユーロとなる。2子を持つ既婚の受講者の場合、最高助成額は448ユーロから711ユーロに引き上げら れ、全額1,473ユーロという59%増の大幅な増額となる見通しである。今後4年間で2億4,500万ユーロがこの増額分について措置され、AFBG全 体にかかる年間資金は2005年と比較して2倍以上となる。

職業訓練受講者は、AFBGにより、年齢、収入を問わず経済的支援を受けることが可能とされている。とりわけ全日制の受講者には、収入に応じて一定の生活 費が助成される。助成は一部が補助金として、一部がドイツ復興金融公庫による低利子貸付の形式で行われる。2014年には17万2,000人がAFBGの 助成を受けている。また1996年のマイスター訓練支援法の施行以来、指導的立場、中小企業、将来の専門職人のための訓練教育者の養成を目的として、約 170万人に対し、計約69億ユーロが助成された。

BMBF: https://www.bmbf.de/de/aus-meister-bafoeg-wird-familienfreundliches-aufstiegs-bafoeg-2507.html
 

ドイツがマイクロエレクトロニクスを強化(2月17日)

ドイツ連邦政府は、マイクロエレクトロニクスをドイツの新しいキーテクノロジーとして強化することを目的として、「ドイツのマイクロエレクトロニクス―デジタル化のイノベーション促進者―」という新しいフレームワークプログラムを議決した。

このプログラムは、電気自動車や自動運転技術、持続可能で効率的なエネルギー供給およびスマート医療技術におけるインダストリー4.0の発展を支援 するばかりでなく、研究成果の迅速な実用化および若手研究者の助成を通し、産学連携をさらに強化するものである。一方で、マイクロエレクトロニクス分野で は、センサー技術やドライブ技術、パッケージング、システムインテグレーションにおいて中小企業が市場を先導しており、当該プログラムもこうした中小企業 の重要性を考慮するものであるが、産業の自動化技術や医療分野において先導的な地位を拡大するためにはこれらの中小企業の専門性の強化が必要となってく る。

このプログラムはデジタル・アジェンダおよび新しいハイテク戦略の一環であり、連邦教育研究省(BMBF)は、2020年まで約4億ユーロを助成する予定である。

BMBF: https://www.bmbf.de/de/deutschland-baut-mikroelektronik-aus-2469.html
 

研究及びイノベーションに関する専門家委員会(EFI)がデジタル化や中小企業のイノベーション等の強化を提言(2月17日)

研究及びイノベーションに関する専門家委員会(EFI)は、研究・イノベーション・技術力に関する9回目の答申をメルケル首相とヴァンカ連邦教育研 究相に提出した。とりわけ答申には、デジタル化を通した付加価値創造と雇用創出という方針が提言されており、連邦政府は、中小企業のためのデジタル化、イ ノベーション、研究支援を重点的に推進することが今後見込まれる。

今日、デジタル化はますます進歩しており、我々の全生活領域にわたっている。デジタル化に関するこの方針は、ドイツのイノベーション・経済界にとって大き な挑戦を意味している。EFIは、連邦政府が政権初期において、IT安全性の研究枠組みプログラム「プラットフォーム・インダストリー4.0」、「インダ ストリー・データースペース」イニシアティブ、医学情報奨励、ドイツインターネット研究所の設立等の重要な政策を実施してきたことを評価している。

中小企業のイノベーションに対する姿勢分析の結果として、EFIは、国際的に比較してイノベーションにかかる支出が少なく、また集約できていないことを挙 げている。これをうけて、連邦教育研究省は1月、「中小企業のための優先ルール(Vorfahrt für den Mittelstand)」という10項目プログラムを発表し、中小企業のさらなるイノベーションのための政策を新たに提示した。この10項目プログラム は、地域の大学やその他の研究機関とのネットワーク形成、中小企業の助成支援、専門的人材の雇用確保、そしてデジタル化やヘルスケア、持続可能性に関する 重点的分野において中小企業の強化を目的としている。

このように、ドイツは研究とイノベーション推進の姿勢を強めており、2014年には政府と民間あわせて840億ユーロを研究開発に投資している。国 内総生産に占める研究開発費用の割合は2.9%であり、欧州委員会のイノベーション・ユニオン・スコアボードでのイノベーション実績にかかる国際ランキン グでドイツは上位に位置し、すでに長期にわたってイノベーションを先導していることから、成果を発揮しているといえる。ヨーロッパにおける研究開発に最も 強い10企業のうち6社がドイツの企業であり、労働市場においてもこのことが反映され、研究部門において2005年から20014年の間に12万6000 人分の新たな雇用が創出されている。

EFIは、2007年より、科学技術・イノベーション政策に関する学術基盤的政治諮問機関であり、毎年進捗状況の評価や方針について提言を示している。 ヴァンカ連邦教育研究相は、連邦政府は慎重に答申を吟味し、2016年5月に科学技術とイノベーションに関する連邦報告において所信表明すると述べた。  

BMBF: https://www.bmbf.de/de/entscheidende-zukunftsthemen-gesetzt-2471.html
 

重力波検出に貢献したレーザー技術をドイツの研究所が開発(2月11日)

1916年にアインシュタインによって予言された重力波が、アメリカの重力波望遠鏡LIGO(ライゴ)を用いて検出されたと発表された。 LIGO計画に利用されたレーザー技術は、ドイツのハノーファー・レーザーセンターがマックス・プランク協会のアルバート・アインシュタイン研究所ととも に開発したもので、原子の直径よりもはるかに小さな空間のひずみを検証することに成功し、今回の重力波検出に貢献した。  

BMBF:https://www.bmbf.de/de/einstein-hatte-recht-2457.html
 

ドイツとフランスが市民の安全に関する研究協力を強化(2月8日)

ドイツ連邦教育研究省 (BMBF) とフランス国立研究機構 (ANR) は、市民の安全性を改善することを目的として、「都市空間の将来的安全性」プログラムを開始することを発表した。

このプログラムは、ショッピングセンター、公園、学校、文化的・歴史的・宗教的な場などの誰もが自由に出入りできる空間にいる人々の保護、流動性の 維持等を目的とし、学術界、経済界、現場の専門家が共同で、都市空間の安全性を強化するための革新的な戦術とコンセプト開発に取り組む。研究成果は、市町 村、官庁、警察、消防や民間の安全サービス業者等に広く活用される予定である。 市民の安全研究に関し、ドイツとフランスは2009年から連携を実施しており、すでに13の連合プロジェクトがスタートしている。ドイツ側パートナーであ るBMBFは2,400万ユーロ以上の助成を行っている。  

BMBF:https://www.bmbf.de/de/mehr-sicherheit-in-deutschen-und-franzoesischen-staedten-2441.html