ドイツ学術情報(過去の分)
2016年
ドイツ研究者国際ネットワーク(GAIN)総会が開催(8月31日)
第16回ドイツ研究者国際ネットワーク(GAIN)総会が、9月9日から11日にかけてアメリカのワシントンD.C.で開催される。当該総会には、ドイツの学術関係者および企業の代表者らと北米で研究活動を行っているドイツ人研究者約300人が出席する予定である。議論の中心となるのは、ドイツにおける研究生活の魅力とその実現可能性を高めることを目的とした、若手研究者協定、学問有期労働契約法およびエクセレンス戦略という三つの学術政策であることが見込まれる。今回の総会に先立ち、ドイツ学術交流会(DAAD)、ドイツ研究振興協会(DFG)およびフンボルト財団(AvH)は、前向きな発展の背景として、エクセレンス戦略、研究・イノベーション協定、高等教育協定 2020ならびに連邦・州レベルの共同戦略の四つを挙げた。
DFGのシュトローシュナイダー会長は、「現在の国の枠組みは幅広い機会を提供しており、最終的には大学自身でどのような形式をとるか決定する必要がある」とし、エクセレンス戦略について「競争を促進させるが、学術システムにとって有益なものである」と述べた。また、若手研究者のキャリア展望に関して、DFG事務総長であるツヴォネク氏は、「エミー・ネータープログラムとハイゼンベルクプログラムに対する統計的評価によれば、かなり多くの受給者が無期雇用ポストを獲得している」と、ドイツにおける若手研究者の展望は全体的に良好であるとした。
DAADのヴィンターマンテル会長は、「ドイツが他の学術的地域と異なっている点は、柔軟で多様な科学的展望であり、新しい研究のアイデアを実現するに適したプラットフォームを提供するような学際的かつ分野間での研究ネットワークを有しているということである。イノベーションの場としてドイツをさらに魅力的な場所にするには、学術界と産業界との透過性と連携が必要である。企業は、若手研究者に対し、大学でのキャリアパスに代わるの選択肢の一つとして、興味深くまた信頼のできるキャリアの機会を提供している」と強調した。実際、DAADは若手研究者を支援し、彼らが世界中で学術的、専門的な経験を積めるよう橋渡しをしており、ドイツの高等教育と研究機関の国際化に貢献している。
AvHのシュヴァルツ会長は、「ドイツは若手研究者のキャリア支援のために何億ユーロという額を投資している。若手研究者協定によるテニュアトラック教授職は、アメリカにいる優秀なドイツ人研究者に、ドイツへ戻ることを考えさせる理由の一つになっている」と説明した。また、「特にアメリカにおいてテニュアトラックポジションは競争が激化している一方、数は減少しているため、ドイツへ戻ることの魅力がより増している。しかし、これはポスドクの将来の展望が、ドイツでは途端に天国のようになったり、また、アメリカがすぐに危機的な状況になったりすることを意味しているわけではない。両国とも、最も優秀な研究者でさえチャンスのために競争することが必要であり、学術界でキャリアを積むか、それ以外の場所でキャリアを積むか決断しなければならない。この点においてどのような条件が重要であるか、若手研究者らはドイツとアメリカのどこに違いを見出しているのか、GAIN総会では議論したい」と述べた。
GAINについて: GAINはAvH、DAAD、DFGによる共同プロジェクトとして2003年に設立された。連邦教育研究省(BMBF)の支援を受け、ドイツのすべての研究機関と協力し、GAINは米国とカナダにいるドイツ人研究者間や、カウンターパートとのネットワークの育成と構築に努めている。
DFG: http://www.dfg.de/en/service/press/press_releases/2016/press_release_no_39/index.html
連邦教育研究省(BMBF)が市民主導型研究プロジェクトへの支援を発表(8月16日)
連邦教育研究省(BMBF)が市民が主導する研究プロジェクトを集中的に支援することを発表した。いわゆるこのシチズンサイエンスは、学術成果の重要性と利用可能性に対する研究上の課題とその答えへ重要な刺激を与えるものである。BMBFはこれを新しい支援によって強化し、体系的に促進したいと考えている。目標は、市民と研究者間の直接的な交流を強化すること、新しい学術的課題提起を可能にすること、そしてシチズンサイエンス全体をさらに発展させることである。
プログラムは、専門外の人たちが直接研究活動に参画するような大学や研究機関の研究プロジェクトを対象としている。このため、研究者とともに短期間でデータを収集、分析することもできれば、時間をかけて課題と手法を開発することもできるのである。BMBFは2017年から2019年にかけて400万ユーロを投資する予定である。
BMBF: https://www.bmbf.de/de/gemeinsam-wissen-schaffen-3240.html
出版社エルゼビアとの全国的なライセンス契約に向けて交渉(8月4日)
ドイツ大学長会議(HRK)のヒップラー会長は、DEALプロジェクトの一環として学術出版社とのライセンス交渉が進んでいることを明らかにした。
DEALプロジェクトは、主要な学術出版社の出版物に対する全国規模のライセンス契約を目指すもので、HRKのイニシアティブによってドイツ学術機関連盟が立ち上げた。HRKの会長の主導によりエルゼビア社と交渉を開始しており、2017年1月1日からの契約に合意することが目標とされている。また、シュプリンガー・ネイチャー社とワイリー社との契約に向けた予備会談も行われる予定である。
ドイツの多くの研究機関では長年にわたって、いかに研究・教育に関する最新の出版物の適切な供給を保証するかが問題となっている。主要な国際的な学術出版社間の合併により、出版社の市場での力が強まり、結果的に価格が劇的に跳ね上がっている。一方で、研究機関の図書館では図書の購入予算を何年も上げることができていない。研究者と学生に必要な出版物すべてを提供することができていたのは、かなり過去の話である。
DEALプロジェクトの目標は、主要な学術出版社が提供する多種の電子ジャーナルについてライセンス契約を結ぶことであると同時に、オープンアクセスを実施することでもある。これによって、研究機関が発表するオープンアクセスの出版物に関する費用はこのライセンス契約の範囲内に考慮されるだろう。