ドイツ学術情報(過去の分)

フンボルト財団(AvH)に新たな会長が就任(10月25日)

神経生理学者であるハンス・クリスチャン・パーペ氏が、フンボルト財団(AvH)の新たな会長として、2018年1月から就任する。彼は、二期目の会長職を終えた後に同財団を去る予定である化学者のヘルムート・シュバルツ氏の後任である。

パーペ氏はミュンスター大学で教鞭をとり、研究を行ってきた。彼は、情動行動の神経生理学的構造分野における優れた研究者の一人であり、特に、不安と不安障害、恐怖と恐怖記憶、睡眠と覚醒のプロセスに関する研究で知られている。この研究により、ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ賞やマックス・プランク研究賞(AvHとマックス・プランク協会により授与される)などの名誉ある賞を数多く受賞している。研究者としてだけではなく、諮問委員会や助言委員会のメンバーとして、ドイツの国内外で活躍しており、その活躍には、2011年から2017年までのドイツ学術審議会(WR)への参加も含まれる。WRは、ドイツの大学や学術、研究の発展に関して連邦政府や州政府に助言を行う機関であり、彼は、在任期間中に、役員会のメンバーとして学術会議の議長を務めた。また、2017年以降、ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ賞のドイツ研究振興協会(DFG)による選考委員会のメンバーでもある。

パーペ氏はガブリエル連邦外務大臣により任命され、2018年1月から5年間の任期が始まる。彼の任用については、国際選考委員会による推薦を受け、AvHの評議員委員会により満場一致で決定された。2018年1月18日に開かれるAvHの新年のレセプションにおいて公式に就任する予定である。

BMBF: https://www.humboldt-foundation.de/web/pressemitteilung-2017-29.html
 

ビューデンベンダー氏、ドイツ国家戦略「固定観念からの解放」の後援者となる(10月20日)

ドイツ連邦共和国のシュタインマイアー大統領の妻であるビューデンベンダー氏が、連邦政府の国家戦略「職業と学業選択への国家協力」の後援者となった。教育界、政界、経済界、学術界が互いに協力しあい、性別による固定観念なしに職業選択を行うことを可能にする。

ドイツの職業訓練市場と、労働市場は未だに、性別により左右されており、職業の適正に関するイメージは、性別による固定観念と強く結びついている。結果として、若者は、特定の職業選択に至ることを余儀なくされ、構造的、経済的及び個人的な不利益を生み出している。連邦政府の国家戦略「職業と学業選択への国家協力」(簡潔にいえば、「固定観念からの解放」)は、性別による職業の分断とその影響を取り除くことを目標とする。個々人の才能は、性別によらず伸ばされるべきであり、労働市場は、性別により左右されるべきではない。この国家戦略は、教育界、政界、経済界、学術界において、ジェンダーフリーの職業及び学業選択のために活動している人々を結びつけている。ビューデンベンダー氏は、「私たちは偏見のない職業選択を実施し、若者が、自らの人生とキャリアを自分自身の判断で築くよう支援しなければなりません。その際、外からの視点は、今一度、全く異なる視野を広げてくれるでしょう。」と、職業選択に際してこの国家戦略に賛同するすべての若者に訴えている。

BMBF: https://www.bmbf.de/de/buedenbender-ist-schirmherrin-der-bundesinitiative-klischeefrei-5015.html
 

研究者がエルゼビア社の編集者を辞任(10月12日)

ドイツ学術機関連盟とエルゼビア社による交渉の中で、エルゼビア社の編集者や、同社の編集委員会や諮問委員会の役員を辞任する研究者が現れ始めた。それは、研究者たちの、エルゼビア社に対する抗議という意味が込められている。というのは、電子ジャーナルのアクセスに関するエルゼビア社との全国規模でのライセンス契約が不調に終わっているからである。

ドイツ学術機関連盟の代表として交渉を行っているドイツ大学長会議(HRK)のヒップラー会長は、数週間のうちに、上記の研究者と同様に、エルゼビア社の編集者を辞任する意向である他の研究者の名前が公表されると伝えた。

名前が明らかになる編集者の中には、ユーリッヒ研究センターのマークヴァート会長及び、マックス・プランク情報学研究所のメルホルン所長が含まれている。

背景 一年以上前から、ドイツ学術機関連盟はDEALプロジェクトを立ち上げ、エルゼビア社、ワイリー社及びシュプリンガー・ネイチャー社と、電子ジャーナルの出版物に関する全国規模でのライセンス契約に関して交渉を続けている。将来的には、オープンアクセスでの論文出版を予定しており、誰もが自由に無料で寄稿論文を読むことが可能となる。ただし、出版の際には、一回きりだが、費用が生じる。エルゼビア社はこれまでの交渉において、DEALプロジェクトの内容に沿う提案をしてこなかったため、交渉は当分の間中断されることになった。今までに、200の大学や専門大学、研究機関がエルゼビア社の雑誌購読契約を解約した。

HRK: https://www.hrk.de/presse/pressemitteilungen/pressemitteilung/meldung/wissenschaftler-legen-herausgeberschaft-von-elsevier-zeitschriften-nieder-4232/
 

将来の基盤としての学術と研究のさらなる強化(10月10日)

フンボルト財団(AvH)は、学術界及び産業界の21の機関や協会との連名にて、連邦政府による将来の研究政策に対して声明文を発表した。内容は以下のとおり。

ドイツの経済的成功は、本質的に学術システムとイノベーションシステムの強さに基づいており、現在の社会の豊かさや発展、雇用状態、社会的な統合、そして国際的な競争力の土台となっている。大学や大学以外の学術機関における基礎研究ならびに応用研究は、企業の研究開発事業と同様に、不可欠である。

近年、連邦政府と州政府、経済界、学界は、学術システムとイノベーションシステムを強化するために、数多くの取り組みを行ってきた。中でも、研究開発費が国内総生産の3%にまで増加したことは、極めて画期的である。こうした取り組みのおかげで、ドイツは現在では、学術とイノベーションの両分野において、世界を先導する立場にある。

社会が大きく変動する現代において重要なことは、このような取り組みを保持するだけではなく、それを強化することである。そうすることによってのみ、気候変動やエネルギー転換、人口増減や専門職の人材不足といった社会的な課題を克服し、デジタル化への移行から生まれるチャンスを活かすことができる。

署名機関は、連邦政府並びに州政府に、学術とイノベーションを将来的にも高い優先順位に置くように訴え、一貫して信頼性の高い学術とイノベーション政策の象徴として、研究開発費を2025年度までに国内総生産の3.5%の割合にまで増加させるという目標を支持する。

この目標を達成するにあたり、次のような措置が有用であると考える。 ・プロジェクトの助成を補足し、研究に従事している企業に対する優遇税制の導入 ・学術協定の継続 ・中小企業に開かれたテクノロジー助成プログラムの強化 ・先端研究の強化、イノベーションの促進 ・技術と学術的知見の移転のための新たな手段の活用 ・高等専門教育と質の高い職業訓練の強化

上記の点に加えて、研究とイノベーションの場であるドイツに、新たに立案された法律がどのような影響を与えるかを考えなければならない。将来的に法制化する際に、その法律がもたらす好影響と悪影響について、検討しなければならない。

連邦政府の成長戦略の枠組みの中で、助成の重点は、将来的には、部門横断的にかつ体系的に一貫した方法で、これまで以上に確実に定められるべきである。助成プログラムの透明性や、明快なプロセス、助成活動の徹底的な実施、追跡可能な助成報告によって、関係機関による高度な受諾が達成される。

署名機関は、連邦政府および州政府に、上記の措置を次の議会の会期中に実行するよう訴える。学術の進歩は、次の世代に対して社会的な結束、安定性、豊かさや繁栄を保障する本質的な基盤である。

AvH: https://www.humboldt-foundation.de/web/pressemitteilung-2017-25.html