ドイツ学術情報(過去の分)

学生の移動と研究に対する欧州連合(EU)予算の増加:ドイツ大学長会議(HRK)会長がその必要性について訴える(11月30日)

11月30日、欧州議会はブリュッセルにおいて、2018年の欧州連合(EU)の予算について承認した。7月に開かれた欧州連合理事会の中で、研究費に対する5億ユーロの削減が要求されたが、議会と各国の財務省は最終的に、2018年の研究費に対しての増額を決定した。2018年の拠出額は、1億1千万ユーロ増えて112億ユーロとなった。エラスムスプラスへの助成額も増加し23億ユーロとなった。

ドイツ大学長会議(HRK)のヒップラー会長はこの決定に対し、ベルリンにおいて以下のように述べた。 「これは歓迎すべき変化である。予算削減が何年も続いたが、ようやくヨーロッパの競争力強化や社会的な結びつきにとって、どれほど教育や研究、イノベーションが重要であるかが理解されてきたようだ。

しかし、現状に満足することはできない。英国のEU離脱や新たな経済的な枠組への変化が差し迫っている。EUの代表的な留学プログラムであるエラスムスプラスや、研究プログラムであるホライズン2020は、EU全体の予算の中のほんの一部しか割り当てられていない。ヨーロッパの将来にとって、これらのプログラムは必要不可欠であり、EUの予算がたとえ厳しいものであろうとも、更に強化されなければならない

欧州委員会は、エラスムスプラスの予算の倍額増など、これらの分野の予算の増加を求めることで、解決を図ろうとしている。欧州理事会や欧州議会におけるドイツ政府は、将来的な成功を推し測らなければならない。」

HRK: https://www.hrk.de/presse/pressemitteilungen/pressemitteilung/meldung/zuwaechse-im-eu-haushalt-fuer-studierendenmobilitaet-und-forschung-hrk-praesident-staerkung-muss-fortg/
 

ドイツ研究振興協会(DFG)が新たに15の特別研究領域プログラム(SFB)を助成(11月27日)

ボンでこの秋に開催された総会の中で、承認委員会の決定を受けて、ドイツ研究振興協会(DFG)は、新たに15の特別研究領域プログラム(SFB)への助成を行う。新たなSFBには、合計1億3300万ユーロが拠出され、総額の22%が個々のプロジェクトの間接経費として充てられる予定である。新たに助成される15のプロジェクトのうちの7つは、複数の地区にまたがる「トランスレギオ」(TRR)である。新しいSFBはすべて、2018年1月1日から4年間の助成を受ける。

15のプロジェクトに加えて、承認委員会は、21のSFBに対し、さらなる助成期間の延長を決定した。これによって、2018年 1月の時点で、DFGは計269のSFBを助成する予定である。

新たに採択されたSFBの詳細は以下の通り。(代表大学はアルファベット順。その他参加機関も併記。)

1、代表機関:ベルリン自由大学、代表者:Prof. Dr. Martin Weinelt、その他参加機関:マルティン・ルター大学ハレ・ヴィッテンベルク 研究テーマ:「超高速スピンダイナミクス」„Ultraschnelle Spindynamik“

2、代表機関:ベルリン工科大学、代表者:Prof. Dr. Martina Löw 研究テーマ:「諸空間の再形成」„Re-Figuration von Räumen“

3、代表機関:ビーレフェルト大学、代表者:Prof. Dr. Oliver Krüger、その他参加機関:ヴェストファーレン・ヴィルヘルム大学ミュンスター 研究テーマ:「動物行動学、生態学、進化生物学による個別化についての新たなジンテーゼ—生態的地位選択、同調及びその構造(NC3)」„Eine neue Synthese zur Individualisation für die Verhaltensforschung, Ökologie und Evolution: Nischenwahl, Nischenkonformität, Nischenkonstruktion (NC3)“

4、代表機関:ルール大学ボーフム、代表者:Prof. Dr. Achim von Keudell 研究テーマ:「 一時的に変動する大気圧プラズマ—プラズマから液体、固体への変化」„Transiente Atmosphärendruckplasmen – vom Plasma zu Flüssigkeiten zu Festkörpern“

5、代表機関:ライン・フリードリヒ・ヴィルヘルム大学ボン、代表者:Prof. Dr. Achim von Keudell、その他参加機関:ケルン大学 研究テーマ:「 アフリカの農村の未来—未来の創造と社会生態学的変容」„Zukunft im ländlichen Afrika: Zukunft-Machen und sozial-ökologische Transformation“

6、代表機関:ライン・フリードリヒ・ヴィルヘルム大学ボン、代表者:Prof. Dr. Sven Rady、その他参加機関:マンハイム大学 研究テーマ:「社会的な挑戦への経済学的視座—機会均等、市場規制、金融市場の安定性」„Ökonomische Perspektiven auf gesellschaftliche Herausforderungen: Chancengleichheit, Marktregulierung und Finanzmarktstabilität“

7、代表機関:ブレーメン大学、代表者:Prof. Dr. Herbert Obinger 研究テーマ:「社会政策のグローバル展開のダイナミクス」„Globale(n) Entwicklungsdynamiken von Sozialpolitik“

8、代表機関:カッセル大学、代表者:Prof. Dr. Thomas Baumert 研究テーマ:「分子キラリティーの分析ならびに光の極限制御 (ELCH)」„Extremes Licht zur Analyse und Kontrolle molekularer Chiralität (ELCH)“

9、代表機関:ケルン大学、代表者:Prof. Dr. Michael Lässig 研究テーマ:「進化の予測可能性」„Vorhersagbarkeit in der Evolution“

10、代表機関:ヨハネス・グーテンベルク大学マインツ、代表者:Prof. Dr. Hansjörg Schild 研究テーマ:「腫瘍疾患および慢性感染症における非効率な免疫の収束メカニズムの影響の標的化」„Gezielte Beeinflussung von konvergierenden Mechanismen ineffizienter Immunität bei Tumorerkrankungen und chronischen Infektionen“

11、代表機関:ヴェストファーレン・ヴィルヘルム大学ミュンスター、代表者:Prof. Dr. Christian Klämbt 研究テーマ:「動的細胞のインターフェース—形成と機能」„Dynamische zelluläre Grenzflächen: Bildung und Funktion“

12、代表機関:レーゲンスブルク大学、代表者:Prof. Dr. Wolfgang Herr、その他参加機関:フリードリヒ・アレクサンダー大学エアランゲン=ニュルンベルク、ユリウス・マクシミリアン大学ヴュルツブルク 研究テーマ:「同種幹細胞移植後の移植片対宿主病および移植片対白血病免疫応答能の制御」„Steuerung der Transplantat-gegen-Wirt- und Transplantat-gegen-Leukämie-Immunreaktionen nach allogener Stammzelltransplantation“

13、代表機関:ザールランド大学、代表者:Prof. Dr. Danilo Fliser、その他参加機関:アーヘン工科大学 研究テーマ:「慢性腎不全による心臓血管合併症のメカニズム」„Mechanismen kardiovaskulärer Komplikationen der chronischen Niereninsuffizienz“

14、代表機関:シュツットガルト大学、代表者:Prof. Dr.-Ing. Rainer Helmig 研究テーマ:「多孔質媒質における界面影響を受けたマルチフィールドプロセス—流動、輸送、変形」„Grenzflächenbeeinflusste Mehrfeldprozesse in porösen Medien – Strömung, Transport und Deformation“

15、代表機関:ユリウス・マクシミリアン大学ヴュルツブルク、代表者:Prof. Dr. Jürgen Groll、その他参加機関:バイロイト大学、フリードリヒ・アレクサンダー大学エアランゲン=ニュルンベルク 研究テーマ:「バイオファブリケーションの基礎から機能的組織モデルに至るまで」„Von den Grundlagen der Biofabrikation zu funktionalen Gewebemodellen“

DFG: http://www.dfg.de/service/presse/pressemitteilungen/2017/pressemitteilung_nr_48/index.html
 

ドイツ学術交流会(DAAD)とドイツ大学長会議(HRK)が発展途上国の大学運営管理者を対象とした会議を開催(11月27日)

2017年11月27日から28日にかけ、ベルリンにおいて、工業先進国と発展途上国出身の約130名の大学運営に携わる関係者が、大学運営に共通する課題や個別の課題、運営戦略、運営管理者としての適性についての議論を行った。その会議のタイトルは、「発展途上国における大学の地位向上―リーダーシップを発揮する人材開発戦略の貢献」であり、ドイツ学術交流会(DAAD)とドイツ大学長会議(HRK)によるDIESプログラム(高等教育革新戦略に向けての対話)の一環として開催された。DIESは、発展途上国と新興工業国における大学運営の専門性を強化する研修プログラムを提供している。

グローバル・サウスにおける好意的な変化への寄与として、DIESは、すでに10年にわたって、アフリカや東南アジアにおける大学の学部長を対象とした研修プログラムを実施している。それらのプログラムは、HRKとDAADが、オスナブリュック大学や、高等教育開発センター、フンボルト財団(AvH)など、ドイツならびに対象地域における提携高等教育機関と共同で行っている。

会議の中で、DIESの委託を受けて行われたボストン・カレッジ国際高等教育センターによる研究が発表された。その研究は、発展途上国における、約50の大学運営管理者のための研修内容を調査したもので、中央アジアと中東を除く世界中のすべての地域が、大学運営に関する研修プログラムの提供者もしくは研修対象国として実践的に行動していることを示している。プログラムの大部分は、2000年以降に成立したが、参加者数は、依然として比較的少数であり、研修プログラムの内容は、対象となる参加者によって大きく異なっている。2001年以降、DAADとHRKによる共同運営が行われているDIESは、連邦経済協力・開発省の資金提供を受け、発展途上国における高等教育機関を支援し、大学運営管理、研究プログラムの質改善といった改革戦略を推進している。

DAAD: https://www.daad.de/presse/pressemitteilungen/de/59650-daad-und-hrk-veranstalten-konferenz-mit-hochschulmanagern-aus-entwicklungslaendern/?page=1&
 

ドイツ大学長会議(HRK)の総会:大学の役割としての連携と共有(11月15日)

11月14日に大学、経済界及び社会間での連携をテーマとして、ドイツ大学長会議 (HRK) の総会がポツダムで開かれた。HRKのヒップラー会長は、「我々は意識して、頻繁に使われる『第三の使命』という言葉を使わない。というのも、大学にとって、経済界や社会との知識共有と連携は、大学の根幹である研究と教育から切り離されているものではなく、研究及び教育活動の一環と捉えているからである。このように考えてきたからこそ、これまで大学は社会と経済界をつなぎ、技術的もしくは社会的革新に貢献でき、今後もこれらの役割を果たすことができるのである。」と述べる。

HRKの決議は、経済界や社会との知識共有と連携を一体のものとして扱っている。HRKは、大学が技術移転から社会福祉サービスに至る、多くの経済及び社会領域で活動していると述べるが、このような活動を、絶え間なく続く経済界や社会との交流の一環と理解している。即ち、大学は、経済的もしくは社会的問題に取り組む中で、教育と研究を絶え間なく発展させているのである。

しかしながら、それと同時に、大学は、短期的な社会的又は経済的利益を追求する研究に集中しすぎることの危険性を警告する。そのため、高等教育における市民社会への積極的な参加を促すようなコースは、広範な専門的、方法論的な教育を補足する形で設置するべきである。

HRK: https://www.hrk.de/presse/pressemitteilungen/pressemitteilung/meldung/hrk-mitgliederversammlung-kooperation-und-transfer-als-hochschulaufgaben-4250/
 

ドイツ大学長会議(HRK)の副会長であるバイジーゲル氏とブルクハルト氏の再任が決定(11月14日)

11月14日にポツダムで開催された、ドイツ大学長会議(HRK)の総会において、現副会長であるバイジーゲル氏とブルクハルト氏の2018年11月30日までの再任が決定された。

ゲッティンゲン大学長のバイジーゲル氏は、2012年以降副会長としてHRKの管理及びガバナンスを担当している。

ジーゲン大学の学長であるブルクハルト氏は、同じく2012年以降副会長として教育(教員への教育含む)や学習(生涯学習含む)を担当している。

HRK: https://www.hrk.de/presse/pressemitteilungen/pressemitteilung/meldung/hrk-vizepraesidenten-ulrike-beisiegel-und-holger-burckhart-wiedergewaehlt-4248/