ドイツ学術情報(過去の分)

ドイツ研究振興協会(DFG)が新たに11のリサーチ・トレーニング・グループを採択(12月20日)

ボンで行われた冬期の助成委員会の決定を受け、ドイツ研究振興協会(DFG)は、新たにドイツ国内の若手研究者を支援するためのリサーチ・トレーニング・グループ(RTG)を採択した。この中には中国の大学との研究を支援するインターナショナル・リサーチ・トレーニング・グループ(IRTG)も含まれている。採択されたプロジェクトは、4年半の支援期間に約4,800万ユーロの助成を受け、そのうち22%が間接経費である。今回採択されたグループは、2018年4月からプロジェクトを開始する。

新たに開始される11のプロジェクトに加えて、助成委員会は18のプロジェクトに対して4年半の支援期間の延長を承認した。対象のグループは約8,600万ユーロの追加助成を受け、合計で1億3,400万ユーロの支援を受けることとなる。RTGは、博士課程の研究者たちに、整った研究設備と質の高いプログラムでもって、高い学術レベルで博士論文を完成させる機会を提供する。DFGは現在223のRTGを支援しており、その中には42のIRTGも含まれている。 新たにRTGに採択された研究プロジェクトは以下の通り。(代表機関のアルファベット順)

1、代表機関:ベルリン自由大学、代表者:Prof. Dr. Günter Rote、その他の参加機関:ベルリン・フンボルト大学、ベルリン工科大学 研究テーマ:複雑度のファセット”Facets of Complexity”

2、代表機関:ルール大学ボーフム、代表者:Prof. Dr. Karina Morgenstern 研究テーマ:拘束制御化学” Confinement-Controlled Chemistry”

3、代表機関:ルール大学ボーフム、代表者:Prof. Dr. Franz Narberhaus 研究テーマ:微生物の基質変換”Microbial Substrate Conversion”

4、代表機関:ドレスデン工科大学、代表者:Prof. Dr.-Ing. Leon Urbas 研究テーマ:サイバー物理生産システムの有益なデザイン” Conducive Design of Cyber-Physical Production Systems”

5、代表機関:ハインリッヒ・ハイネ大学デュッセルドルフ、代表者Prof. Dr. Stefan Schröer、その他の参加機関:ベルク大学ヴッパータール 研究テーマ:代数、数学、トポロジーにおける代数幾何学的方法” Algebro-Geometric Methods in Algebra, Arithmetic and Topology”

6、代表機関:ユストゥス・リービッヒ大学ギーセン、代表者:Prof. Dr. Albrecht Bindereif 研究テーマ:コーディングRNAからノンコーディングRNAに至るmRNAライフサイクルにおける調節ネットワーク” Regulatory Networks in the mRNA Life Cycle: From Coding to Non-coding RNAs”

7、代表機関:マルティン・ルター大学ハレ・ヴィッテンベルク、代表者:Prof. Dr. Helge Bruelheide、その他の参加機関:フリードリヒ・シラー大学イェーナ、ライプチヒ大学、共同研究機関:中国科学院大学 研究テーマ:樹木多様性の相互作用:中国亜熱帯雨林における木と木の相互作用が近隣の森に与える影響” TreeDì – Tree Diversity Interactions: The Role of Tree-Tree Interactions in Local Neighbourhoods in Chinese Subtropical Forests”

8、代表機関:ハイデルベルク大学、代表者:Prof. Dr. Christian Schmahl 研究テーマ:幼少期の過酷な体験が生涯に渡る精神的・身体的障害に及ぼす影響” Impact of Adverse Childhood Experience on Psychiatric and Somatic Disorders across the Lifespan”

9、代表機関:ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン、代表者:Prof. Dr. Thomas Gudermann 研究テーマ:毒性学におけるターゲット:肺中毒に対する治療のための構造解読” Targets in Toxicology – Deciphering Therapeutic Targets in Lung Toxicology”

10、代表機関:レーゲンスブルク大学、代表者:Prof. Dr. Harald Garcke、その他の参加機関:フリードリヒ・アレクサンダー大学エアランゲン=ニュルンベルク 研究テーマ:IntComSin:インターフェース、複雑な構造、コンティニュアムメカニクスにおける単数制限” IntComSin Interfaces, Complex Structures, and Singular Limits in Continuum Mechanics – Analysis and Numerics”

11、代表機関:テュービンゲン大学、代表者:Prof. Dr. Doron Rapaport 研究テーマ:MOMbrane:ミトコンドリア外膜(MOM)の多面的機能とダイナミクス” MOMbrane: The Multifaceted Functions and Dynamics of the Mitochondrial Outer Membrane (MOM)”

DFG: http://www.dfg.de/service/presse/pressemitteilungen/2017/pressemitteilung_nr_56/index.html
 

研究不正:文書による戒告と二年間の応募資格の停止(12月15日)

ドイツ最大の研究助成機関であり、学術に関する中心的な自治機関であるドイツ研究振興協会(DFG)は、ボンにおいて、老年学者でありゴットフリード・ヴィルヘルム・ライプニッツ賞受賞者であるカール・レーンハルト・ルドルフ教授に対し、研究不正に関するDFGの取扱手続規定に則って、「文書による戒告」を発し、「DFGの助成金への二年間の応募資格の停止」を課した。この際、DFGの協議会は、研究不正調査委員会の提言に従った。

ある論文におけるデータ改ざんの告発を受けて、DFGは2016年に、最終著者であった当該研究者への調査を開始した。DFGの調査が一時中断されたのと同時に、ライプニッツ学術連合も監査を実施した。ライプニッツ学術連合の理事会は、当該研究者に対する研究不正の確定と複数の措置をもって、2017年6月にこの手続きを完了させた。2017年6月の時点ですでに、当該研究者へのDFGの調査手続きは完了していた。この際、研究不正調査委員会は、ライプニッツ学術連合による調査の最終報告書と、研究者個人への聴問会での内容に基づき、DFGの助成を受けた計三点の出版物の中に誤った図像が掲載されていたとの結論に達した。当該研究者は、これらの出版物の最終著者もしくは責任著者であり、調査において本人が認めているように、図像の誤りを認識することが可能であったし、認識すべきであった。

それゆえ、調査委員会はDFGに、研究不正に関するDFGの取扱手続規定に則って適切かつ妥当な措置として「文書による戒告」と「二年間の応募資格の停止」を提言し、DFGの協議会によって決定された。「これにより、当該研究者の怠慢は、適切に対処されることになるだろう」と、調査委員会長であるDFGのツヴォニック事務総長は、協議会の決議後に述べた。ツヴォニック事務総長が強調したように、問題となった出版物は、不正なデータに基づいたものではなく、また、2009年に当該研究者の基礎研究を称えて贈られた、DFGのゴットフリード・ヴィルヘルム・ライプニッツ賞授与との関連はない。当該の三点の出版物は、受賞後に出版された。

DFG: http://www.dfg.de/service/presse/pressemitteilungen/2017/pressemitteilung_nr_54/index.html
 

ドイツ、フランス両国による気候、エネルギー、地球システム分野の研究助成プログラムに各国から多数の応募(12月12日)

ドイツ、フランス両国による気候、エネルギー、地球システム研究分野を対象とした「地球を再び偉大なものに」という、パリ協定目標達成に向けた新たな研究助成プログラムの一次選考がドイツで行われ、全5大陸の約70ヶ国の研究者からの応募があった。ドイツ側では、ドイツ学術交流会(DAAD)が、今回の連邦教育研究省(BMBF)による助成プログラムの担当機関である。

一次選考では、23ヶ国から62人の研究者が選ばれた。これらの研究者は、数日中に連絡を受け、二次選考のために、ドイツの受け入れ研究機関と共同で今回の技術革新的なプログラムに対する最終申請書類を提出することになる。 パリ協定の中で、緊急の対応が必要なテーマの幅は広く、エネルギー貯蔵の新たな手法の開発から、人間の社会的行動による気候への影響についての研究、地球温暖化の農業への影響、自然の中での相互作用に対するよりよい理解、地震予知改善の為の新測定方法にまで至る。

現在特に米国や英国で活動しているドイツ人研究者の他、多くのアメリカ人研究者も応募し、オーストラリア、カナダ、フランス、ブラジル、インドネシア、中国からの研究者がこれに続く。今回のプログラムの中で、ジュニアおよびシニア研究グループは、(受け入れ研究機関の負担分も含めて)100万から150万ユーロ規模の予算で計画を立てることが可能となる。提出期限は2018年2月15日である。

ドイツ、フランス両国による気候、エネルギー、地球システム分野の研究助成プログラム「地球を再び偉大なものに」

このプログラムは、フランス大統領による発案であり、BMBFとフランスの高等教育・研究・イノベーション省(MESRI)が担当する。このプログラムにより、外国で活動する研究者は、自分が選択するドイツあるいはフランスの研究機関に、気候関連の研究グループを設置することが可能となる。このプログラムは、米国のパリ協定離脱表明を受けて、気候保護目標達成に向けた努力を継続することを表明するものである。ドイツではDAADが、2022年まで総計で1,500万ユーロの予算を受けプログラム実行の責任を負う。フランスにおいても、ドイツと同等のプログラム内容であり、まず18のプロジェクト申請が認定されたところである。

DAAD: https://www.daad.de/presse/pressemitteilungen/de/60172-deutsch-franzoesisches-foerderprogramm-fuer-klima-energie-und-erdsystemforschung-findet-grosse-internationale-resonanz/?
 

学術文献への自由なアクセス(12月12日)

研究者たちは、素早く簡単に学術論文をインターネット上で無料で閲覧できるオープンアクセスを通じて、自分の分野内外の大勢の利用者と繋がることができる。インターネット上の学術論文への自由なアクセスを可能とするために、論文の作成や出版、利用に関する新しい構想が必要となる。連邦教育研究省(BMBF)はドイツの学術におけるオープンアクセスの使用を支援し、そのために選ばれた20のプロジェクトが、オープンアクセスによる出版物のより良い作成方法や普及方法について取り組む。BMBFは、これと同時にオープンアクセス戦略のための新たな措置をとり、最長24ヶ月までの学際的プロジェクトを、計約550万ユーロで支援する。

多くの研究者たちは、文献を自由に閲覧できるこのアイデアに対して肯定的であるが、自分の寄稿論文がインターネットを介して、自由にアクセスされることには消極的である。

大学や出版社、学術機関によって多くのプロジェクトが支援される。これには著者たちが、オープンアクセスによって創造性のある論文を発表しやすくすると共に、自分たちの論文を見つけられやすくするといったプロジェクトが含まれる。その中には、オープンアクセスを利用して治療学のまだ新しい専門領域に取り組むプロジェクトや、ブロックチェーン技術とオープンアクセスを組み合わせるプロジェクトといったプロジェクトもある。

インターネット経由で学術論文に対して自由にアクセスできるオープンアクセスというアイデアは、学術界から生まれた考えである。研究者たちは、自分たちの論文を無料で読み、共有することを可能とする契約のもとで発表する。連邦政府は、デジタル・アジェンダ2014 – 2017において、学術のより良い情報の拡散のためのツールとして、オープンアクセスを挙げた。BMBFは、2016年9月から、オープンアクセス戦略を開始した。

BMBF: https://www.bmbf.de/de/freier-zugang-zu-wissenschaftlicher-literatur-5270.html
 

ドイツ大学長会議(HRK)と各州文部大臣会議(KMK)による学術研究の維持と発展に関する対談(12月7日)

各州文部大臣会議(KMK)とドイツ大学長会議(HRK)の会長は、今年の対談の中で、学術と高等教育に関連する様々な時事問題について議論した。そこでは、とりわけ小規模学科の意義と今後の展望に関わる集中的な意見交換がなされた。両会長は、12月7日に公表された共同声明の中で、これらの小規模学科を、今後の発展のためにより強固に支援していくことを発表した。

小規模学科は、専門的で特殊な能力の習得には不可欠であり、文化的遺産の維持にも貢献し、さらに、ドイツの大学を国際的にも特徴づけ、ネットワーク構築を促進するものである。こうした背景から、連邦教育研究省(BMBF)と、ラインラント・プファルツ州の教育・学術・継続教育・文化省の助成を受け、ヨハネス・グーテンベルク大学マンイツに、これらの学科の発展を観察し、分析するための研究部門が設置された。州政府とHRKに加盟する大学は、この研究部門を維持するとともに、これらの学科に関わる決定の際には、他の州における専門家の助言を活かす努力をしている。

KMKとHRKはまた、ヨーロッパにおいてもこのテーマについて活動している。HRKはすでに長期に渡って会談を行い、そこでフランスやポーランドといった国々もこのテーマに取り組もうとしていると指摘する。この会談によって、国家の枠組みを超えた考察が可能となり、相乗的な効果が期待される。

HRK: https://www.hrk.de/presse/pressemitteilungen/pressemitteilung/meldung/kleine-faecher-hrk-und-kmk-wollen-erhalt-und-entwicklung-foerdern-4273/