ドイツ学術情報(過去の分)

専門大学で教授志望者不足(5月30日)

専門大学において、多くの学部や専攻分野での教授不足が深刻な問題となっている。特に深刻な教授不足に悩まされているのは工学部である。工学部では、教授職の第1次募集に対して、選考プロセスの半分が人材不足やその他の理由で要件を満たすことができないまま終了した。このデータは、連邦教育研究省(BMBF)の助成によるドイツ高等教育科学研究センター(DZHW)が5月30日に発表した研究「専門大学教授の志望者状況」によって明らかになった。工学部以外でも法学や経済学、社会科学そして医療技術・マネージメント分野で第1次募集後、40%もしくはそれ以上で教授を採用するための選考プロセスにおいて要件を満たせていないことが明らかとなった。

この研究によると、教授採用方法は州ごとに異なっている。特にバーデン・ヴュッテンベルク州において状況は深刻である。そこでは、第1次募集に対する手続きにおいて48%が不十分であった。ドイツ全体では、都市部よりも地方がより深刻な問題を抱えている。

志望者不足であることは研究の中で指摘されているが、教授を採用するための選考プロセスの49%において、通常であれば作成される3名の候補者リストが提出できないという点からも明らかである。全志望者の29%は州大学法に従い公的手続き上の理由から、そのうちの47%は大学外の実務経験不足で除外される。 

DZHWは、今回の研究のために行政専門大学を除くすべての専門大学に協力を依頼した。そのうち41大学が、2013年7月から2015年6月までに公募されていた773の教授職に対する採用手続きに関するデータを提供した。

BMBF: https://www.bmbf.de/de/wissenschaftliche-karrieren-werden-immer-attraktiver-3883.html
 

新たなフンボルト教授を選定(5月30日)

法学者、量子光学者、ウイルス学者、コンピューター科学者、そして細胞生物学者がドイツで最も権威のある国際的な研究に対する賞に輝いた。フンボルト教授職は最大500万ユーロまで支援がされ、現在まで外国の機関で働いている著名な研究者の中から、すべての学問分野を対象として選ばれる。受賞者には、ドイツ国内で長期間を基本として最先端の研究を行うことが期待されている。今回新たに選ばれたフンボルト教授候補者たちはそれぞれスイス、オーストリア、オランダ、そしてフランスで現在研究している。賞金はドイツでの最初の5年間の研究資金として使用される。この賞はフンボルト財団(AvH)によって運営され、連邦教育研究省(BMBF)によって助成されている。

今回のフンボルト教授候補者たちはデンマーク、フランス、英国、イスラエル、オランダ、オーストリア、スイス、トルコ、そして米国から推薦されていた15人の研究者の中から選ばれた。今回選ばれた研究者たちは、これから彼らを推薦したドイツの大学と交渉を開始する予定である。もしも彼らが今回のAvHの賞を受賞すれば、賞金は2018年の5月に贈られる予定である。

・Anne van Aaken (48):スイス・ガレン大学(法学)所属。ハンブルク大学が推薦。

・Wil van der Aalst (51):オランダ・アイントフォーヘン工科大学(コンピューターサイエンス)所属。アーヘン大学が推薦。

・Arno Rauschenbeutel (46):オーストリア・ウィーン工科大学(量子光学)所属。ベルリン・フンボルト大学が推薦。

・Guus F. Rimmelzwaan (57):エラスムス・ロッテルダム大学(ウィルス学)所属。ハノーファー獣医大学が推薦。

・Michael H. Sieweke (54):フランス国立科学研究センター(細胞生物学)所属。ドレスデン工科大学が推薦。

フンボルト教授職は、ドイツの大学が国際的にトップクラスの研究者たちに、研究のための優位性のある条件を提示でき、それと同時に世界の研究市場の中で、国際的な知名度を際立たせることができる。この賞はフンボルト教授としてドイツにて長期間の研究を行うことが受賞の前提条件となっている。現在までに、10人の女性研究者を含む59人の研究者が、フンボルト教授職を得てドイツに異動してきた。

AvH: https://www.bmbf.de/de/wissenschaftliche-karrieren-werden-immer-attraktiver-3883.html
 

ドイツと日本がバッテリー研究における共同プロジェクトの礎石を置く(5月26日)

連邦教育研究省(BMBF)ミュラー政務次官と国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の宮本副理事長はバッテリー研究分野での日独共同研究に関する共同声明に調印した。

バッテリーは日常生活のさまざまな場で活用され、特にE-モビリティなどの未来のテクノロジーにとってとりわけ重要である。性能の良いバッテリーなくしては、娯楽のための電化製品、電気工具、フォークリフト、医療技術、E-モビリティは成り立たないのである。それゆえ、ドイツにおけるバッテリー研究はとりわけ重要な意義を持つ。

特に日本はバッテリー研究においては重要なパートナーである。というのは、日本におけるバッテリー研究は、娯楽のための電化製品への活用に促され、90年代にはすでに築かれ、この領域では世界を先導しているからである。それゆえ、日独共同研究は日独双方の研究機関にとって利益になる。

ミュラー政務次官はこの日本滞在中に、共同プロジェクトのパートナーである京都大学を訪問した。両国のプロジェクトを紹介する以外にも、バッテリー技術の将来性に関して活発な議論が行われた。両国の共同プロジェクトでは、パートナーであるドイツ側からのギーセン大学、フラウンホーファー化学技術研究所(ICT)と日本側からの京都大学は、イオン交換膜を備えた亜鉛と酸素で発電する充電式バッテリーというテーマで討論した。この充電式バッテリーは、「ポストリチウムバッテリー技術」、及び、「低価格でエネルギー貯蔵ができるもの」として期待されている。

9月には大阪で開かれる学術ワークショップにおいて、新たに二つのプロジェクトがスタートする。BMBFは、ドイツのバッテリー研究を2008年以降、4億ユーロの助成を行い、新たに整備してきた。そのおかげで今日ではドイツは再び、特に、バッテリー材料及びバッテリーセルシステム、また、バッテリーマネジメントシステム及び製造プロセスのためのパワーエレクトロニクスに関しての基礎研究では、世界のトップレベルに立っている。

BMBF: https://www.bmbf.de/de/wissenschaftliche-karrieren-werden-immer-attraktiver-3883.html
 

大学の国際化のさらなる拡大:HRK‐EXPERTISE国際化会議(5月22日)

ドイツの大学の国際化に関する責任者とはいったい誰なのか。大学のプログラム、研究、大学生活という観点でどのようにして国際化の認識をドイツの大学に広めていけばよいのか。HRK専門国際化プログラムはまさにこの問題に取り組んでいる。本日開始された会議で、全ての大学職員が国際化への責任を積極的に担うことを保証する道を探った。120もの大学の代表者たちがベルリンに集い、このトピックに関して意見交換や情報交換を行った。

会議の冒頭、HRK会長はこの国際化のゴールを「現在の政治や社会的な要望を満たし、それでいて国家主義的な傾向には強く反発できること」であると位置づけた。HRKは大学がこれからもすべての局面において国際化を制度的に推し進めていくことを引き続き奨励していくとHRK会長は述べる。「我々には国際化や多文化主義に対して敏感に反応し、意欲をもって国際化と多文化主義を推し進めていくのに十分な能力を持つ大学職員が必要である。」とHRK会長は言う。

各大学のそれぞれの、そして全ての職員が国際化に対して意欲を持つことは、大学の国際化を進めていく上での重要な鍵となる。欧州学術協力協会(ACA)会長でありオランダ大学協会の前会長でもあるノーダ博士はこの点について基調講演の中で強調して述べている。職員が個々に国際化への意識を持つことで、結果的に多くの人々が国際化に関わり、大学の国際化のゴールを明確にし、その結果として戦略的に大学の国際化を推し進めることになるとACA会長は述べる。

本日のHRK会議の一部として、午後から4つのフォーラムが開かれる。そのフォーラムでは参加者たちがこれからの大学の組織的な国際化について新たな視点から討論をし、国際化の新たな可能性について討論する予定である。

HRK: https://www.bmbf.de/de/wissenschaftliche-karrieren-werden-immer-attraktiver-3883.html
 

DFGが新たに15の大学院を支援(5月15日)

ドイツ研究振興協会(DFG)はドイツにおける若手研究者のさらなる支援拡大のため15のリサーチトレーニンググループ(RTG)の支援を開始する。このうちの2つはそれぞれオーストラリアと中国を相手国とするインターナショナルリサーチトレーニンググループ(IRTG)である。これは春にボンで開かれた助成委員会において決定された。支援期間は4年半であり、その期間に約6600万ユーロもの資金が提供され、そのうちの22%はプロジェクトにかかる間接経費として認められている。新しく採択されたグループに加え、助成委員会により選ばれた5つのグループについてはさらに4年半の支援期間延長が認められている。

RTGは博士課程の研究者たちに、整った研究設備と質の高いプログラムでもって、高い学術レベルで博士論文を完成させる機会を提供する。DFGは現在のところ、213のRTGを支援しており、そのうち40はIRTGである。また今回採択された15のグループに対しても2017年9月に新たに支援を開始する予定である。

この新たな支援決定に加えて、助成委員会は、RTGプログラムの基本的な問題に取り組んだ。基本的な問題というのは、特にそれぞれのRTGの研究テーマの範囲を越える、分野横断的、総合的な能力を身につけるための手段についてである。事務局長のツヴォネク氏はエクセレンス・イニシアティブの一環として、例えば大学院に作られた、こうした研究テーマの範囲を超えた分野横断的・総合的な能力を身に着けるための組織について助成委員会に報告した。RTGプログラムでは、こうしたタイプの組織に経費はこれまで一律で配分されてきたわけではないとし、「DFGは経済的な支援を一定の方法で行うことがとても重要だと考えている。博士課程の研究者たちが与えられたテーマを越えて専門知識を身に着けていくための手段になる経費は、それぞれの環境に関係なしに、引き続き利用できることが必要である」と述べる。

DFG総長のシュトロシュナイダー博士は、最初の報告の中で、与えられた研究テーマを越えた専門知識を身に着けることを、現在の世界の政治情勢、研究とその自由を脅かしている状況を考慮して、研究と若手研究者のサポートの役割についてのコメントに結び付けている。「特にRTGは、この点において特別な役割を持つ。RTGは、人を、包括的な知識を持った、自分の専門分野以外からの貴重な意見にも重きを置き、既存の論理に疑問を持ち、科学が複数の研究領域によって成り立っているということに気付ける研究者に育てなければならない。」とDFG総長は述べる。

DFG: https://www.bmbf.de/de/wissenschaftliche-karrieren-werden-immer-attraktiver-3883.html
 

これからの大学支援に関するHRKモデル:二つの柱(5月11日)

ドイツ大学長会議(HRK)は入学定員増の要望を考慮し、同時に大学における研究と教育のための国際的競争力のある基本的条件を保障する大学支援を要求した。これに関してビーレフェルトでのHRK総会で「2つの柱+(プラス)」が提案された。これは信頼できる基本的資金支援の割合が再び上昇することを保証する提案である。

近年、とりわけ高等教育協定を通して、期限付きで使途が決められてはいたものの、大学に支援される資金は大幅に増加していた。この資金額は現在では平均して大学予算のほぼ4分の1に相当するが、重大な構造的問題をもたらした。

したがってHRKは、教育と研究のための資金を中心とした、とりわけ追加での恒久的なポストの新設を可能にする、大学支援の「第1の柱」を要求する。この「柱」はいかなる場合にも、定員数増加と国際的競争力のある大学による研究の必要性に対して、永続的に保障されるように支援をしていかなければならない。

「第2の柱」から大学はプログラム単位で、質の保証と将来性に寄与する追加資金を受け取ることになる。HRKは、支援プログラムは、第1の柱と比べて明らかに小さい範囲ではあるが、小規模大学そして異なった特性の競争力も支援すべきであると強調する。

HRK: https://www.bmbf.de/de/wissenschaftliche-karrieren-werden-immer-attraktiver-3883.html
 

専門大学卒業生に対する博士号授与数の増加(5月10日)

専門大学卒業生への博士号授与数と総合大学との共同博士トレーニングによるものについての新たなデータが昨日、ビーレフェルトにおいて開催されていたドイツ大学長会議(HRK)の定例会議にて発表された。ドイツ学長会議は2012年から2014年のアカデミックイヤーにかけてドイツの全大学を対象に調査を行った。

専門大学卒業生による博士号取得について見てみると、1990年代以降その数は徐々に増加していることは間違いなく、少なくとも2012年から2014年のアカデミックイヤーにかけては1245人まで増えていることは明らかである。2009年から2011年のアカデミックイヤーと比較すると、30%以上博士号取得者の数を伸ばしている。HRKは博士課程進学に関して差別的な対応をなくすルールについても調査を行った。すると約90%の大学がそれぞれの大学規定の中で差別を禁止する規則を明記しているとの回答結果が出た。 2012年から2014年にかけて共同博士トレーニングによる博士号取得者の数は376人であった。このトレーニングには専門大学で指導教授、査読者、もしくは試験官として働く教授たちも関わっている。HRKは今回初めてこれらの数値を詳細に記録した。「今回の調査は2015年に行われた博士課程の運営に関するHRKによる勧告の一環である。」とHRK会長は述べる。

今回の調査は博士号授与の権限を持つ、38の芸術大学と音楽大学を含んだ146大学を対象に行われた。アンケートは大学の執行部や学部/学科に対してそれぞれ送られた。回答はほとんどすべての大学から提出され、872ある学部/学科のうちの710から回答が提出された。

HRK: https://www.bmbf.de/de/wissenschaftliche-karrieren-werden-immer-attraktiver-3883.html
 

持続的な未来のために学識の声を強化(5月9日)

持続可能な目標を達成するためにドイツは何をしなければならないのか。学術はそのためにどのような貢献ができるのか。

ドイツは、国際連合による2030アジェンダを実行に移すことを自らに義務づけた。2030アジェンダは全部で17の目標からなる持続可能な開発目標を掲げている。アジェンダで掲げられている目標は人類、環境、経済といった幅広いエリアからなる。それらは男女平等、教育、健康、平和、正義、貧困との戦い、気候及び絶滅寸前の種の保護、持続的な消費、環境にやさしいエネルギー供給から強い経済まであり、多岐にわたる。世界の国々は今、等しく上記の目標を実行に移す義務がある。首相主導のもと、ドイツの新たな持続性戦略は、国際連合の2030アジェンダに沿って作られ、今年度初頭に連邦内閣により閣議決定された。

連邦教育研究大臣は、今後さらに学術を持続性戦略の実現に組み込んでいく意向である。そのために、本日新たに2030持続可能目標に対する学術プラットフォームが発表された。そのプラットフォームは研究連盟、シンクタンク、そして意見交換のフォーラムとして詳細なアドバイスをすることになっている。上記のプラットフォームは学術分野と一般社会から選ばれた26人の代表者から成り立っており、首相のイニシアティブにより設立された。土地利用、栄養、持続的生産と消費、デジタル化における労働の未来、都市化といった一般社会が関心を持ち参加しやすい分野がまず初めに選ばれた。

BMBF: https://www.bmbf.de/de/wissenschaftliche-karrieren-werden-immer-attraktiver-3883.html
 

全世界における経済、法律、そして社会(5月3日)

世界98か国からの、ドイツ学術交流会(DAAD)から奨学金助成を受けている450人以上の学生たちが、4月28日から30日にかけてバイロイト大学で経済と政治における世界的な繋がりについて討論する予定である。この会合は、DAADの副会長であるジョイブラト・ムケジェエ教授とバイロイト大学の副学長で、国際事情及び男女雇用機会均等担当のトーマス・シャイベル教授が主催する。多くの講演会、討論会が予定されているほか、個人レベルで話し合いをする時間も設けられている。講演会は、例えば、「国はどのように罰を与えればよいのか。政治に焦点を当てた新しい処罰方法について」などの、現行の政治討論にインパクトを与える。その際、講演者だけではなく、奨学生も自分たちの学術の観点から発表することもできる。

会合の間、奨学生たちは、DAADにて彼らの国を担当する職員に直接会い、その場で重要事項に関する質問をすることができる。DAADは年に5回、各地で奨学生たちを会合に招待するが、その趣旨はドイツに新しく来た奨学生を歓迎し、また、彼らが互いに知り合う機会を与えることである。奨学生は学士課程か博士課程に属しており、少なくとも一年間、ドイツの大学、もしくは研究機関に滞在することが決められている。DAADの職員は、奨学生がドイツに滞在している間、彼らの相談役として、日常生活に関する問題解決をサポートする。

バイロイト大学での会合は2017年4月28日の金曜日に始まり、4月30日の日曜日に終了する予定である。ジャーナリストたちは金曜日に開かれる公式の開会式に招待されており、会合場所はバイロイト大学のキャンパスの講堂である。講演会は全て4月29日土曜日に終了し、その後、奨学生のための合同研修が開始される予定である。

DAAD: https://www.bmbf.de/de/wissenschaftliche-karrieren-werden-immer-attraktiver-3883.html