ドイツ学術情報(過去の分)

一般教育および職業教育のための外国滞在を促進(11月26日)
カリチェック(Anja Karliczek)大臣:「国際的な経験は生活や職業を豊かにする」

もっと多くの学生、職業訓練生、児童生徒や教員が、外国滞在を通じて学ぶ貴重な経験を得るべきである。この目標は、欧州連合(EU) の教育担当大臣によって共有されており、EU における「エラスムス(Eurpean Regio Action Scheme for the Mobility of University Students)・プラス (Erasmus+)」の資金は倍以上に増額される。ドイツは、国家イニシアティブ「Training Worldwide」プログラムで、欧州の取り組みを補完している。この新たなプログラムは、より多くの職業訓練生が欧州域外での経験をも得られるようにすることを目的としている。

ブリュッセルで行われたEU教育担当大臣会議において、連邦教育研究省(Bundesministeriums für Bildung und Forschung: BMBF)のカリチェック大臣は次のように述べた。
「エラスムス・プラスは、他のどのEUのプログラムとも異なり、『欧州体験』を支持している。欧州が掲げる『多様性の調和』のもと、過去30年に渡り1千万人以上の人々がエラスムスに参加した。私たちはこの成功モデルを継続していく。今後、エラスムス・プラスの資金を2倍以上にしたいと考えている。分断の時代には、互いへの理解をもっと深めるとともに、多くの人との出会いが必要である。エラスムスはこれに何十年も寄与してきた。エラスムス・プラスは欧州のより一層の結束を保証している。」

本会議では、EU教育担当大臣が、次世代のエラスムス・プログラムを立ち上げた。助成期間が2021年から2027年までとなる後継のエラスムス・プラスの資金は、300億ユーロに倍増される。また、職業訓練費は50億ユーロに増加する。この新たなエラスムス・プラスでは、参加者数をこれまでの3倍に到達させるという野心的な目標を掲げている。

BMBFのカリチェック大臣は、次のように強調した。
「外国滞在は、個人的にも職業的にも、人を豊かにするものである。これにより、新たな視野が広げられ、生活や職業の世界でますます必要となっているスキルを身に付けることが促進される。意欲、責任感、外国語、他の文化やものの見方に対する寛容さを学ぶだけでなく、外国で共に過ごした新しい友人たちの存在は、将来を豊かなものにするだろう。」
BMBFにより実施された調査によると、38%の学生がすでに外国での経験を積んでいる。職業訓練生では、5.3%であった。

BMBFのカリチェック大臣は、次のように述べた。
「私たちは、より多くの職業訓練生が外国で貴重な経験を得ることを願っている。そのために国家によるTraining Worldwideを立ち上げた。これを通じて、より多くの職業訓練生が世界中で経験を積むこと、またドイツの職業教育制度の魅力をさらに強化することを望んでいる。ドイツの職業教育制度は、国際的にも非常に認められている。ドイツの若者の失業率が欧州のどこよりも低いのは職業教育システムのおかげであり、不思議ではない。」

Training Worldwideにより外国に派遣される職業訓練生やトレーナーは、ドイツの職業教育制度成功のための大使であるとともに、国境の先を見据えている。

背景
エラスムス・プラスは、一般教育および職業教育、スポーツのためのEUのプログラムである。次世代のプログラムは2021年に開始予定。欧州委員会は、2018年5月末にこの提案を行った。2018年11月26日に開催されたEU教育担当大臣会議では、新たなエラスムス・プラスについて、部分的な方向性を決定した。 Training Worldwideは、職業訓練生およびトレーナーの外国滞在を促進する国家プログラムである。 名前の通り、この支援プログラムは、職業訓練生が世界中でインターンシップを行うことを可能にする(現在エラスムス・プラスの対象となっている欧州33カ国、および連邦外務省が渡航警告を出している国々は対象外)。 職業訓練生の支援期間は3週間から3か月である。

BMBF: https://www.bmbf.de/de/auslandsaufenthalte-in-studium-und-ausbildung-erhoehen-7405.html
 

DFGのDorothee Dzwonnek事務総長退任(11月12日)

ドイツ研究振興協会(Deutschen Forschungsgemeinschaft: DFG)Peter Strohschneider理事長の発表は次の通り。

「DFG協議会の要請により、Dzwonnek教授は事務総長の職を辞することを公表し、秩序ある後継への道を開いた。
Dzwonnek教授は、DFG事務総長として11年以上にわたり、成功を収めた。DFGの協議会は、多くの功績と成果に感謝している。
Dzwonnek教授は、DFGの機関本体や委員会と常に建設的に協力し、多くの重要なプロジェクトを成功裏に立ち上げ、実施してきた。在任中、オフィスの再編成や、人事とコンプライアンス管理のための専門的な新しい手続きと手段の全国的な導入が行われた。特に、ドイツ学術機関連盟における学術自由法に関する交渉、研究活動における不正行為防止の順守、および学術システム全体における研究指向の平等基準の遂行には、特別にコミットメントした。
DFGはDzwonnek教授に心からの感謝の意を表する。Dzwonnek教授が、今後もドイツの学術システムにおいて重要な役割を果たし続けることができると、DFGは確信している。」

Dzwonnek教授の事務総長退任は、11月12日から有効となる。

DFG: http://www.dfg.de/service/presse/pressemitteilungen/2018/pressemitteilung_nr_52/index.html
 

科学における情報セキュリティ:HRK勧告とガイダンス(11月7日)

ドイツ大学長会議(Hochschulrektorenkonferenz: HRK)のPeter-André Alt会長は、11月7日にベルリンで行われた記者会見で次のように述べた。
「大学は、多くの機密性の高いデータを扱っている。そのため、情報セキュリティは大学に深く関係するトピックである。企業との連携においてだけでなく、特に研究においてや、学生データの管理においては、機密性の高いデータが蓄積される。一方で、それらのデータは、自由な研究・教育や重要な学術交流が妨げられないような方法で、常に保護されなければならない。」

11月6日にリューネブルク(Lüneburg)で開催されたHRK総会では、以上のような目的のために、中間管理職レベル向けのガイダンスに加えて、トップクラスの学生向けの推奨事項を含めた文書が採択された。この文書の準備に携わった、HRKのMonika Grossデジタル・インフラ担当副会長は次のように述べた。「この文書の採択は、私たちがこのトピックに取り組むことの重要性を示している。大学は、国際的な協力関係を持つとともに、多数のプロジェクトが幅広く実施し、またスタッフの入れ替わりも激しいため、とりわけ脆弱である。そのため、大学の経営管理者は、情報セキュリティを永続的な課題として考えなければならない。また、中間管理職レベルでは、個々のケースにおける適切な対応策を永久的に確立する必要がある。さらに、必要な資金は、国の資金の一部として、そしてプロジェクト資金を通じて提供されなければならない。」

HRKの採択文書は、情報セキュリティをITセキュリティに縮小することはできないことを強調している。情報の保護目標とリスクアセスメントの定義は、法的に定められた枠組みの中における大学自身の責務であり、ITサービスのプロバイダーに任せることはできない。採択文書に含まれるガイドラインは、普遍的な有効モデルではなく、意識を高めるための措置や、データ分類、およびデータ管理計画の策定のための提案について記述されている。

HRK: https://www.hrk.de/presse/pressemitteilungen/pressemitteilung/meldung/informationssicherheit-in-der-wissenschaft-hrk-empfehlung-und-handreichung-4451/