ドイツ学術情報(過去の分)

世界レベルで魅力のある欧州高等教育圏の前提として、ボローニャ・プロセスは学術的自由を強調:ドイツの高等教育システムは、非常に上手くヨーロッパを結びつけており、魅力的で接続性に優れている(3月28日)

ソルボンヌ宣言への署名後20年となる2018年5月24日、25日、ボローニャ・プロセス参加48カ国の高等教育担当大臣が、欧州高等教育圏の将来的展望を議論するための会議をパリで開催する。連邦内閣によって今日、また、文化大臣会議によって2018年2月15日にすでに採択された、「ボローニャ・プロセス(2015年〜2018年)」の目標達成に関する報告書は、高等教育分野における内外での進展を取り上げている。ボローニャ・プロセスは、ヨーロッパ全土わたり、各国の高等教育システムに多大なる変革をもたらした。学士課程と修士課程という段階的な学術システムの画期的な導入は、学術課程の透明性、比較可能性、教育の質の保証を伴うものである。これは、近年上昇し続けている学生のモビリティと、それに伴う相互理解に本質的に貢献している。

次回のパリにおける高等教育担当大臣会議では、次の3つのテーマが決議される。第一のテーマは、最重要課題であるボローニャ改革の実施の際に、援助を必要とする国々がどのように支援されるべきか。第二は、デジタル化の問題、そして第三は、欧州高等教育圏の基本原則(例えば、学術的な自由や、高等教育機関の民主的な構築など)への違反である。

この他に、フランスのマクロン大統領を筆頭にEU加盟国首脳によって提唱されている欧州高等教育機関のネットワーク化をさらに進めるにはどうすべきかについても議論される。

ドイツもこの議題に積極的に加わる予定である。

BMBF: https://www.bmbf.de/de/bologna-prozess-betont-akademische-freiheit-als-voraussetzung-eines-global-attraktiven-5924.html
 

10人の研究者が若手研究者のためのドイツの最も重要な賞を受賞―ドイツ研究振興協会(DFG: Deutsche Forschungsgemeinschaft)とドイツ連邦教育研究省(BMBF: Bundesministeriums für Bildung und Forschung)がハインツ・マイヤー=ライプニッツ賞を2018年5月29日ベルリンの授賞式で授与予定(3月27日)

2018年は、10名の研究者(女性5名、男性5名)が、ドイツの若手研究者にとって最も重要な賞であるハインツ・マイヤー=ライプニッツ賞を受賞することとなった。DFG、BMBFによって任命された選考委員からなる選考委員会がボンで行われ、そこで選出されたものである。5月29日に行われるベルリンでの授賞式で、受賞者にはそれぞれ20,000€の賞金が贈呈される。

ハインツ・マイヤー=ライプニッツ賞は、学術の卓越性への道を追求し続けるための評価や動機付けとして、1977年以来、極めて優れた若手研究者に毎年授与されている。1980年からは、原子物理学者でありDFG元会長であるハインツ・マイヤー=ライプニッツ氏(在任期間1973年~1979年)の名を冠している。ハインツ・マイヤー=ライプニッツ賞は、ドイツの若手研究者にとって最も重要な賞とされている。

今年の賞には、あらゆる研究分野を代表する合計140名の研究者が推薦された。選考委員会の議長を務め、数学者でもあるDFGのホッホブリュック副会長は「全候補者の業績やこれまでの経歴は大変優れており、委員会が受賞者を選考するのは非常に楽しい仕事でした。」と述べた。

2018年ハインツ・マイヤー=ライプニッツ賞受賞者は下記の通り。

• Jennifer Nina Andexer、生物化学、フライブルク大学

• Alexey Chernikov、凝縮物理学、レーゲンスブルク大学

• Sascha Fahl、コンピューターサイエンス、ライプニッツ・ハノファー大学

• Benedikt Göcke、カトリック神学、ルール大学ボーフム

• Valeska Huber、現代史、ベルリン自由大学

• Lucas Jae、機能ゲノム科学, ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン

• Benjamin Kohlmann,、英文学、フライブルク大学

• Eva C. M. Nowack、進化生物学、ハインリッヒ・ハイネ大学

• Antonia Wachter-Zeh、通信工学、ミュンヘン工科大学

• Xiaoying Zhuang、数値力学、ライプニッツ・ハノファー大学

DFG: http://www.dfg.de/en/service/press/press_releases/2018/press_release_no_11/index.html
 

大学と企業間での博士号授与に関する協定:ドイツ大学長会議(HRK: Hochschulrektorenkonferenz)が原則を決定(3月21日)

大学と経済界は、博士号授与にあたって企業と大学が協力する際に順守すべきガイドラインを策定した。ドイツ経営者団体連合会、ドイツ産業連合、ドイツ大学長会議、ドイツ学術財団連合は共同見解として、博士号授与の権限が博士号授与権限を有する大学のみにあることを強調している。全ての博士号授与について、大学のアカデミック・スタンダードが無条件に適用される。

ドイツ経営者団体連合会のブラウン副会長は、次のように述べている。「大学と企業の協力による博士号授与は、研究の場を豊かにする。企業的研究関心と学術的課題が生産的に結合するからである。博士号授与権限を持つ大学と企業間の異なる役割をはっきりと理解することは、良い協力関係の基礎となる。企業が従業員に博士号を授与することはない。博士号授与は大学のみが有する権限である。これは、以前も今も、そして将来にわたっても続く経営者側のスタンスである。」

HRKのヒップラー会長は、次のように述べている。「この役割分担を全企業とその人事部門が意識していることが重要である。これが求人広告および企業情報にしっかりと定式化されなければならないことを、共同原則として再度明示している。博士号に関することが大学の手続きであるということが、全ての関係者にとって明らかでなければならない。」

ドイツ学術財団連合のマイヤー副事務総長は、次のように述べている。「企業と協力して博士号を授与することで、博士課程学生が現場の重要研究課題に取り組むことができ、企業内の研究インフラも活用することができる。テーマと候補者を受け入れるのは大学側であり、博士号授与に適した研究テーマを定め、適した候補者を推薦するのは企業側であることが、我々の協定には明示されている。」

HRK: https://www.hrk.de/presse/pressemitteilungen/pressemitteilung/meldung/promotion-in-kooperation-zwischen-universitaeten-und-unternehmen-hrk-und-wirtschaft-formulieren-grun/
 

学術研究のための情報インフラ(3月21日)

ドイツ研究振興協会(DFG: Deutsche Forschungsgemeinschaft)は、デジタル化、オープン・アクセスへの変換、研究データ管理といった観点から、学術情報インフラのさらなる将来的発展に向けて、新たな指針書を採択した。

このドイツ最大の研究助成機関であるDFGの評議会は、2018年3月15日の会議において、指針書「学術情報基盤の推進」に同意した。

この文書は、DFGの「学術文献の保存と学術情報システム(LIS: Literaturversorgungs- und Informationssysteme)」の領域における助成活動に対する今後数年間の指針を示している。この指針では、様々な学術分野における包括的なデジタル化と、絶え間なく続くダイナミックな変化を考慮しつつ、その起点を分析するとともに、課題や優先的な活動分野を定義している。

図書館学術情報システム委員会(AWBI: Ausschuss für Wissenschaftliche Bibliotheken und Informationssysteme)によって策定された戦略文書では、データ集約化・ネットワーク化された学術分野における現在の要請、そして、様々なレベル(学術的コミュニティ間、様々な学術情報基盤間、学術情報基盤と学術的コミュニティの間など)における調整や協力に対する要請の高まりが記述されている。

こうした背景の下、DFGは、学術における自己組織化のプロセスを非常に重要視している。それと同時に、各学術分野および情報基盤設備においてだけでなく、情報基盤提供者側と専用サービス利用者側においても自己組織化のプロセスが重要であるという課題を見出している。

DFGは学術情報基盤の資金調達に関して、地域を超えた関連インフラの持続的かつ長期的な展望を開くためには、科学政策の努力が不可欠であるとしている。

専門的なレベルでは、この文書は主に、3つの振興分野を扱っている。その3つとは、情報ソースの開発とデジタル化、オープン・アクセスへの変換、研究データ領域である。

開発とデジタル化の振興分野では、印刷資料と手書き資料に対するこれまでの制限が撤廃され、学術的に興味深いとされうるすべての対象物に支援が拡大される。

オープン・アクセスへの変換の振興分野では、資金調達の問題に加え、研究者がオープン・アクセス上で公開するにあたり求められるオープン・アクセス・ポリシーの更新や、モニタリング・メカニズムの確立にも焦点を当てる。

研究データ領域では、専門分野に特化したポリシーや規則の開発が支援されている。

全体的な目標は、研究データ管理の能力を強化し、既存の研究データ情報基盤のネットワーク化を一層促進させることである。

DFG: http://www.dfg.de/service/presse/pressemitteilungen/2018/pressemitteilung_nr_10/index.html
 

DFGが新たに2つのリサーチ・グループとコレーグ・リサーチ・グループを支援(3月16日)

春にボンで開かれた評議会の決定を受けて、ドイツ研究振興協会(Deutsche Forschungsgemeinschaft: DFG)は、新たに2つのリサーチ・グループ(旧:リサーチ・ユニット)と、1つのコレーグ・リサーチ・グループ(旧:コレーグ・リサーチ・ユニット)を設置した。リサーチ・グループにより、研究者がそれぞれの研究分野における最新の差し迫った課題に対処し、革新的な研究開発することが可能になる。コレーグ・リサーチ・グループは、特に人文社会学を専門とするプロジェクトを対象としている。採択されたリサーチ・グループは最大2~3年間、コレーグ・リサーチ・グループは最大2~4年間の支援を受ける。

採択された3つのグループは、最初の支援期間に合計約1,000万ユーロの支援を受ける予定である。このうち、22%を間接経費が占める。全体として、現在DFGは182のリサーチ・グループを支援している。

新たに採択されたリサーチ・グループは以下の通り。(代表機関のアルファベット順)

1. 代表機関:ライン・フリードリヒ・ヴィルヘルム大学ボン、代表者:Prof. Dr. Jörg Höhfeld、研究テーマ:機械的ストレスに対する細胞防御メカニズム” Zelluläre Schutzmechanismen gegen mechanischen Stress”

2. 代表機関:ハンブルク大学、代表者:Prof. Dr. Frank Fehrenbach、研究テーマ:力のイマジネーション„Imaginarien der Kraft“

3. 代表機関:トリアー大学、代表者:Prof. Dr. Ralf Münnich、研究テーマ:学際的小規模マイクロシミュレーションモデル(MicroSim)„Sektorenübergreifendes kleinräumiges Mikrosimulationsmodell (MikroSim)“

DFG: http://www.dfg.de/service/presse/pressemitteilungen/2018/pressemitteilung_nr_05/index.html
 

DFGが新たに14の優先プログラムを採択(3月16日)

ドイツ研究振興協会(DFG: Deutsche Forschungsgemeinschaft)は、2019年の新たな優先プログラム(SPP: Schwerpunktprogramme)を14件採択した。SPPでは、最新の研究分野や新興研究領域の科学的な基盤研究を目指している。ドイツ最大の研究助成機関であり、学術に関する中心的な自治機関であるDFGの評議会は、提出された53件のイニシアティブの中から新たなSPPを選考した。

今回採択されたプログラムは、人文科学、社会科学、生命科学、自然科学、工学の全専門分野をカバーしている。それらのテーマは、デジタル画像、発育と疾病における3次元ゲノム構造、神経系の進化的最適化、ペロブスカイト半導体、特性統制された形成プロセスなど多岐にわたる。

全てのプログラムは非常に学際的で、革新的な方法を使用していることが特徴である。若手研究者の育成は中心的な要素であり、新たなSPPの確立のための不可欠な前提条件の一つである。さらに、全ての新SPPには男女平等の概念がある。

今回採択されたプログラムは、それぞれの研究課題を設定している。今後数か月内に、DFGはそれぞれのSPPについて公表するとともに、後続の申請に関して、科学的な質の高さや各研究課題への貢献度により審査を行う。14の新SPPについては、最初の資金配分期間である3年間に総額約8,000万ユーロが配分される。これに加えて、間接経費として、プログラム経費の22%が配分される。優先プログラムは通常6年間の助成を受ける。現在、98のプログラムがSPPとして支援されている。

研究分野別の新たな優先プログラム:

人文社会科学

  • • 計量的文学研究
  • • デジタル画像
  • • イラン高原:前近代社会におけるレジリエンスと統合

生命科学

  • • 発育と疾病における3次元ゲノム構造
  • • 神経系の進化的最適化
  • • 機能的相分離の分子メカニズム
  • • ラジオミクス:次世代医療画像処理

自然科学

  • • 適応性のある切り替え可能な表層の動的湿潤
  • • スケール横断的分析、細胞間及び細胞・バイオリアクター相互作用(細胞間)のモデリングによる新規生産プロセス
  • • ペロブスカイト半導体:基本特性から応用まで

工学

  • • フロー生産方式による適合型モジュール構造:迅速、低廃棄物、コンバーチブル
  • • 特性統制された形成プロセス
  • • 協調的多段階多重安定的マイクロアクチュエータシステム
  • • ユビキタスコンピューティング環境におけるスケーラブルな相互作用パラダイム

DFG: http://www.dfg.de/service/presse/pressemitteilungen/2018/pressemitteilung_nr_07/index.html
 

研究不正:文書による戒告と2年間の応募資格の停止(3月16日)

ドイツ研究振興協会(DFG: Deutsche Forschungsgemeinschaft)は、申請者の学術的不正行為に対して新たな結論を導き出した。ドイツ最大の研究助成機関であり、学術に関する中心的な自治組織であるDFGの協議会により、16日にこの決定が行われた。2018年3月ボンで開催されたDFGの研究不正調査委員会は、研究者1名に対して、「文書による戒告」ならびに「2年間の応募資格停止」を決定した。

当該研究者は、DFGに研究助成申請書を提出したが、その申請書には、主要な箇所がほとんど一字一句そのまま、他の申請書から、適切な注釈なしで転用されていることが明らかとなった。転用元の申請書は、選考委員会のメンバー自身によって他の助成機関に提出され、すでに承認されていた。この転用は、DGFによって行われた調査により確認された。 DFG事務総長、ドロテー・ツヴォニック(Prof. Dorothee Dzwonnek)議長の下、研究不正調査委員会は、これを剽窃であるとし、かつ学術的不正行為に関するDFG手続規則に則って、学術的不正行為だと判断した。当該研究者は、自らの申請書について、他者の発案であるという注釈を記載したうえで正確に作成すべきであった。これは、科学研究における基本原則である。また、特に当該研究者はDFGにおいてすでに申請経験があり、学術的に倫理的な行為原則に従って行動すべきであった。申請書作成にあたって、当該研究者は学術的に倫理的な行為原則に従うと誓約していた。

研究不正調査委員会は、「文書による戒告」ならびに「2年間の応募資格停止」を、研究不正に関するDFGの取扱手続規定に則って適正かつ妥当な措置であるとした。これに、DFGの協議会は同意した。これらの措置は、当該研究者がもはや大学の研究に従事しておらず、その間にすでに申請を撤回したという事実と矛盾しない。「この事実は、剽窃そのものを変えるものではない」と、ツヴォニック事務総長は協議会の決議後に強調した。「一般的に、学術的不正行為は、研究に従事し続けるか研究を中止するかということとは全く関係なく、これとは独立して調査され、必要に応じて、処罰されなくてはならない」

DFG: http://www.dfg.de/service/presse/pressemitteilungen/2018/pressemitteilung_nr_08/index.html
 

難民のための大学プログラムが延長:ドイツ連邦政府とドイツ学術交流会の働きかけにより、準備クラスへの参加者1万人以上、大学の学生イニシアティブは600以上に(3月14日)

2015年末、連邦教育研究省(BMBF: Bundesministeriums für Bildung und Forschung)は、ドイツの大学入学資格を有する難民をドイツの社会に融合させるための包括的施策を発表し、ドイツ学術交流会(DAAD: Deutsche Akademische Austauschdienst)は、その施策を講じてきた。これにより、ドイツの大学は才能ある若者に学問的な将来の展望を与えることができる。

支援1年目は、6800人以上が「インテグラ・プログラム」を通じて支援された約700の言語や専門的な準備クラスに参加した。すでに2017年にはその数が1万人を超えている。

それに加えて、約600の学生イニシアティブが、大学進学時のウェルカム・プログラムの一環として大学入学を希望する難民を支援している。

準備クラスへの参加者数が継続的に増加していることから、難民の間で高等教育への関心が高いことがうかがえる。今後ますます多くの学生が、大学で学び始める。

BMBF支援の下に代表的な長期調査を行うドイツ社会経済パネル(SOEP: Sozioökonomische Panel)によって、出身地に関係なく成人難民の35%が中等教育を修了していること、16%が以前に大学で学んだことがあり、そのうち11%は少なくとも1つの大学卒業資格を保有していることが明らかになった。成人難民の3分の1はドイツの大学卒業資格の獲得に努めている。大学入学許可にあたっては、他のドイツ人学生や外国人学生と同様の専門・言語の前提条件が適用される。

「まだ始まりに過ぎない?難民の大学教育への社会融合における成功と課題」

DAADは3月14日から16日までの専門会議において、ドイツの大学、学生、難民、提携企業とともに、これまでの経験や懸案事項、発展に向けたアイデアを議論する予定である。会議後は、参加者が重要テーマについてより深く議論し、意見交換できるよう、多数のワークショップや専門的なトレーニングの機会が提供される。

BMBF: https://www.bmbf.de/de/hochschulprogramme-fuer-fluechtlinge-werden-verlaengert-5816.html