ドイツ学術情報(過去の分)
留学生がハイテク先進国であるドイツを豊かにする(6月26日)
ますます多くの留学生がSTEM(Science, Technology, Engineering and Mathematics)分野を学ぶ
ドイツの大学で学ぶ留学生は増えており、STEM分野を学ぶ留学生もますます増加している。大多数(89%)の留学生が、ドイツの大学での学位取得を目指している。6月26日に公表された「ドイツの留学生2016」は、この公式データを裏付けるとともに、その他にも、学術研究のためにドイツに来る留学生についての興味深い調査結果を示している。 ドイツ連邦教育研究省(BMBF: Bundesministeriums für Bildung und Forschung)のカリチェック(Anja Karliczek)大臣は次のように述べた。
「留学生は、経済的、外交的、社会的な面からも、ドイツの大学と国を豊かにする。ドイツは魅力的な学問の地としての地位をさらに拡大している。ドイツの州と大学は、高等教育協定、大学教育の質改善に関する協定、連邦政府による国際化戦略に貢献してきた。連邦政府は引き続き大学の国際化を支援していく。本日発表された報告書は、ドイツの知識基盤社会がドイツに恩恵をもたらしうることを示している。」
現在、ドイツの学生の約10人に1人は留学生である。特にSTEM分野では、2012年から2016年にかけてその数が2倍に増えている。留学生252,000人のうち、約2人に1人はSTEM分野を学んでいる。また、半数以上(56%)の留学生は卒業後にドイツで就業する機会を得るためにドイツの大学に留学している。留学生はハイテク先進国であるドイツを豊かにする。ドイツのイノベーションにとって非常に重要なSTEM分野を多くの留学生が学ぶことで、ドイツ人学生にとっても学生生活がより国際的なものとなっている。
留学生の経済状況は、配偶者の有無や取得希望学位など様々な要因の影響を受ける。留学生の4分の3(73%)が未婚であり、かつ学士(Bachelor)、修士(Master)、またはドイツ従来の学位(ディプロム(Diplom)、マスター(Magister)、国家試験(Staatsexamen))の取得を希望している。これらの学生の平均収入は、2016年の夏学期では月額776ユーロだった。留学生の収入は、ドイツ人学生の収入よりも平均140ユーロ少ない。留学生のおよそ半数は働きながら学んでいる。
本報告書は、BMBFから資金提供を受け、ドイツ高等教育科学研究センター(DZHW: Deutsche Zentrum für Hochschul- und Wissenschaftsforschung)とドイツ大学生支援協会(DSW: Deutsches Studentenwerk)により発行された。
BMBF: https://www.bmbf.de/de/auslaendische-studierende-bereichern-hightech-land-deutschland-6451.html
ドイツとフランスの欧州のためのイノベーション・インパルス(6月19日)
カリチェック(Anja Karliczek)大臣とヴィダル(Frédérique Vidal)大臣が共同イニシアチブを開始
ドイツとフランスは共に、新たな推進力により国際競争のイノベーションの場として欧州を進化させたいと考えている。この目的のために、ドイツ連邦教育研究省(BMBF: Bundesministeriums für Bildung und Forschung)のカリチェック大臣とフランスの高等教育・研究・イノベーション省のヴィダル大臣は、ベルリンで開催された独仏研究協力フォーラムで、共同イニシアチブを開始した。
独仏両国は、人工知能(AI)のための共同研究ネットワークを計画している。BMBFのカリチェック大臣は「欧州は未来のテクノロジーのための優れた場であると確信している。ドイツはフランスとともにAIの分野で先駆的な役割を果たそうとしている。」と強調した。さらに、欧州圏内での国境を越えた研究者のモビリティは今後さらに発展すべきである。
独仏研究協力フォーラムの冒頭に両大臣が署名した宣言では、エネルギー研究、抗菌薬耐性に関する研究、民間ITセキュリティに関する研究、人文科学、社会科学の研究における新しい資金調達イニシアチブに焦点を当てている。さらに、独仏両国は、欧州の研究力およびイノベーション力を強化するために、卓越した新たな欧州の研究枠組みプログラムに向けて協力したいと考えている。その中で、両大臣は、マイクロエレクトロニクスや強力な技術革新などの共同イニシアチブを通じて、欧州のテクノロジー分野での主権を強化するための独仏共同目標を強調した。カリチェック大臣は「国内での努力に加えて、欧州レベルでの革新的なイノベーションを高めることが重要である。」述べた。
このフォーラムの後、メセベルグでの二国間政府会談で、両大臣は引き続き、欧州規模での独仏協力について意見交換を行った。この結果は、欧州理事会に提出される。
背景
独仏研究協力フォーラムは、2002年以降3~4年ごとに、フランスあるいはドイツで交互に開催されている。同フォーラムでは、独仏両国の研究機関や資金提供機関における高官の交流を促進している。独仏の研究とイノベーションにおける政策戦略と優先事項は、同フォーラムの最高レベルで調整される。このようにして、同フォーラムは両国の研究とイノベーションの関係者を調整するための中心的プラットフォームとなっている。第6回独仏研究協力フォーラムでは、研究機関や仲介機関の会長を含むおよそ150名の両国の専門家と高官のもと、戦略的優先事項について議論が交わされ、それぞれの分野で新たな方策が提示された。独仏の研究とイノベーションの協力の主要トピックについて、議題のプロセスにおけるポジション・ペーパーを専門家グループがあらかじめ作成している。
教育と研究における二国間協力のための政治的枠組みは、独仏閣僚会議によって形成されている。教育、研究、イノベーションの分野では、ほぼ毎年定期協議が行われており、その優先順位は共同声明によって定められている。直近の独仏閣僚会議は、2017年7月13日にパリで開催された。
BMBF: https://www.bmbf.de/de/deutsch-franzoesischer-innovationsimpuls-fuer-europa-6403.html
シュタインマイヤー(Frank-Walter Steinmeier)連邦大統領がべレビュー城にフンボルティアーナたちを招待(6月18日)
フンボルト財団(AvH)年次総会の一環として、600人近くの研究者たちが6月28日にドイツ連邦大統領の招待を受ける。
ブラジル、中国、米国、英国、ナイジェリア、ヨルダン、ネパールなどおよそ80か国出身の、現在AvHの支援を受けてドイツ国内で研究を行っている600人近くの外国人研究者たちは、6月27日から28日にかけてベルリンで開催される年次総会に家族同伴で招待される。AvH年次総会はフンボルティアーナ(AvHから支援を受けたことのある研究者たち)の意見交換の場となっている。
今回の総会のハイライトとなるのは、6月28日にベルビュー城広場で行われるシュタインマイヤー連邦大統領との対面である。レセプションの前には、連邦大統領が日本人刑法学者である高山佳奈子氏にフィリップ・フランツ・フォン・ジーボルト賞を授与する。
ベルリン自由大学で開催される年次総会は、AvHのパーペ(Hans-Christian Pape)会長と同大学のミュールハーン(Klaus Mühlhahn)副学長の挨拶によって始まる。2人の挨拶に続いて、国際的に有名な糖尿病専門家でありフンボルト教授でもある、ヘルムホルツ協会傘下の肥満研究センター長かつミュンヘン工科大学教授のチェップ(Matthias Tschöp)氏による基調講演が「甘くはない:私たちは糖尿病の流行を止められるのか?」というテーマで行われる。その後、フンボルティアーナたちは、ドイツでの経験について報告を行う予定である。 ドイツと相手国との学術的、また文化的な交流を促進するためのフンボルト同窓会賞受賞者の発表もオープニングセレモニーで行われる予定である。
研究者たちは年次総会が開催される2日間に、例えば互いの研究プロジェクト、ドイツあるいは互いの国での生活や研究活動について意見交換をすることが可能である。
AvH: https://www.humboldt-foundation.de/web/press-release-2018-16.html
ドイツ研究振興協会(DFG: Deutsche Forschungsgemeinschaft)、ボンで年次総会を開催(2018年7月2日~4日)(6月11日)
ライン・フリードリヒ・ヴィルヘルム大学ボン(ボン大学)の200周年記念を受け、ノルトライン=ヴェストファーレン州のラスチェ(Laschet)首相、連邦教育研究省(BMBF: Bundesministeriums für Bildung und Forschung)のカリチェック(Karliczek)大臣も祝賀行事に参加予定
2018年に創立200周年を迎えるボン大学の招待を受け、2018年7月2日から4日にかけてDFGの年次総会がボンで開催される。会期中は、ドイツ最大の研究助成機関であり、ドイツ中央学術振興自治組織であるDFGの理事会から評議会、主要委員会、そして会員総会に至るすべての中央審議会が開かれる。
7月4日にボン大学の選帝候宮殿の講堂で開催予定の会員総会では、DFGのペーター・シュトロシュナイダー(Peter Strohschneider)理事長と、ドロテー・ツヴォニク(Dorothee Dzwonnek)事務総長は、ハレで開催された昨年度の会員総会以降のDFGの振興活動を振り返る。会員総会ではさらに、DFGの振興活動のために最も重要なデータと、採択された振興プロジェクトを記載した「年次報告書2017」が発表される予定である。その他にも、DFGにおいて最も重要な学術審議体である、評議会の選挙が議題に上がっている。
会員総会ではまた、ドイツの研究資金提供に関する最も包括的な情報源とされている「DFG Funding Atlas」の新版も発表される予定である。「DFG Funding Atlas」は1997年から3年ごとに発行されており、特に欧州研究領域(ERA)と世界における研究資金や、DFG資金提供プログラムである特別研究領域プログラムの50周年記念に焦点を当てている。新版の「DFG Funding Atlas」は一般公開予定であり、7月5日にベルリンで行われるDFGの記者会見で、ドイツ大学長会議(HRK: Hochschulrektorenkonferenz)、ドイツ学術財団連盟とともに発表予定である。
DFG: http://www.dfg.de/service/presse/pressemitteilungen/2018/pressemitteilung_nr_19/index.html
ニュートリノが秤の上へ(6月11日)
KATRIN実験のスタート-世界で最も正確なニュートリノ測定器
連邦教育研究省(BMBF: Bundesministeriums für Bildung und Forschung)のアンヤ・カリチェック(Anja Karliczek)大臣:「KATRIN実験によって宇宙への理解は大きく深まるだろう」
6月11日、KATRIN実験(the Karlsruhe Tritium Neutrino Experiment)がカールスルーエ工科大学(KIT)で運用を開始する。これは世界で最も正確なニュートリノの測定器である。物理学者たちはニュートリノの最大の秘密である、その質量を解明したいと考えている。ニュートリノの質量を解明できれば、物理学者たちは宇宙のもととなる物質を知るための手がかりをつかむことができる。
BMBFのカリチェック大臣は、次のように述べている。
「KATRIN実験は究極の実験であり、私たちの宇宙に関する知見を、パズルの極めて重要なピースで補ってくれるだろう。この挑戦的な実験を成功裏に構築したことに対し、カールスルーエ工科大学とその共同研究に祝意を表したい。皆さんと一緒に、今後の測定段階の開始と最初の研究成果を楽しみにしている。ドイツでこのような重要な実験が実施されることは、ドイツの研究場所としての魅力を強化している。」
このKATRIN実験には、6か国から総勢150人以上の科学者たちが参加している。BMBFは、KATRIN実験のおよそ75%を供出する最大の資金提供主体であり、その建設に約500万ユーロを投じている。加えて、BMBFは共同研究の枠組みの中で、ドイツの大学からKATRIN実験へ資金提供に寄与している。実験に必要となる、特に正確な冷却ガス流量計と測定技術を含む、世界最大の超真空タンクもこの方法で建設された。この高度なテクノロジーは経済と社会にも利益をもたらすだろう。例えば、この流量計装置の技術は、将来の燃料電池自動車用の水素補給ステーションに活用できる。
BMBF: https://www.bmbf.de/de/neutrinos-kommen-auf-die-waage-6337.html
ドイツの研究、世界のトップへ(6月6日)
連邦政府が「研究とイノベーション報告書2018(Bundesbericht Forschung und Innovation 2018)」を議決
連邦教育研究省(BMBF: Bundesministeriums für Bildung und Forschung)のアンヤ・カリチェック(Anja Karliczek)大臣:「応用の迅速化が必要」
国際競争力について、ドイツは研究とイノベーション(R&I)のおかげで上位を維持している。これは、とりわけドイツが海外で販売している研究集約型商品の国際的割合が高く維持されていることに反映されている。イノベーションにかかる国際ランキングで、ドイツは長年にわたりトップクラスに位置する国の1つである。これらのことは、6月6日に連邦政府により議決された「研究とイノベーション報告書2018」から明らかである。
BMBFのカリチェック大臣は、次のように述べた。「ドイツは、連邦政府と民間セクターの共同コミットメントを通じて、国際競争力において高い地位を確立してきた。ドイツは世界のイノベーション・リーダーである一方、国際競争の圧力は高まっている。そのため、ドイツは特に応用の点でさらなる迅速化が必要であり、また中国と米国に遅れを取らないよう欧州域内で協力していく必要がある。ドイツは新たな研究・イノベーション(R&I)戦略でこれらに対応している。」ここでの重要なポイントは、教育とイノベーションの方針を結びつけることである。「教育と高度なトレーニングは、特にデジタル化を通じて、あらゆる人々の仕事や社会の世界を変革している新たな技術やビジネスモデルを理解し、適用し、また生涯にわたって活用していく鍵となる。」
これまで、今日のようにドイツが研究開発(R&D)に多額の投資をしたことはなかった。政府や経済界、科学界は、R&Dへの支出を近年着実に増やしてきた。2016年には、922億ユーロという記録的な水準に達した。このうちおよそ3分の2が経済界によって投資されており、2016年はおよそ630億ユーロという新たな高水準を記録した。2016年の連邦政府からの支出は156億ユーロに上った。この金額と比較すると、2005年は連邦政府からの支出は90億ユーロであり、2005年から2016年にかけて70%以上増加している。
世界市場における100万人あたりの重要特許数について、2015年にドイツは371件の特許を有し、米国(200件)と中国(27件)を大きく上回っている。しかし、上位になったことで満足すべきではない。デジタル化の分野では、FacebookやGoogleの例が示すように、米国はより成功した新規事業を生み出している。中国は集中管理された産業政策に基づき、特定の技術に大幅な助成を行っている。カリチェック大臣は、「ドイツにとって、適切な研究・イノベーション(R&I)政策に基づいて競争力を確保し、将来の成功への道を開くことは戦略的に重要だ。」と強調している。
その目的は、ドイツ経済のポジティブなダイナミクスを維持し、あらゆる市民が研究に強いイノベーティブなドイツという国の利点を活用できるようにすることである。そのためには、R&Iが人々に役立ち、彼らを中心に置くことが、常に明確でなければならない。より早く病気を治すこと、より簡単で持続可能な移動を可能にすること、あるいは、コミュニケーションを安価で安全に提供できるようにすることにおいても、これがあてはまる。同時に、誰もが技術と社会の急速な変化についていくためには、対応する能力を高める必要がある。これは、学校や教育でのデジタルメディアの使用から始まり、プログラミングスキルとITへの理解がますます要求される職業人生へと続いていく。オープンなイノベーションとサイエンスシステムは、アイデアの開発、容易なやりとり、迅速な応用を促進する。
連邦政府は国内総生産(GDP)の3.5%を研究開発(R&D)の割当額として投資することを目標に合意した。この目標は、2025年までに経済界とともに達成されるべきである。それに加え、研究開発税制の導入もこの目標に寄与すべきである。
BMBF: https://www.bmbf.de/de/deutschland-forscht-sich-an-die-weltspitze-6309.html