ドイツ学術情報(過去の分)

ドイツのエクセレンス戦略、最終決定(9月27日)
エクセレンス委員会、57のエクセレンス・クラスターを採択
ドイツ研究振興協会(DFG: Deutsche Forschungsgemeinschaft)とドイツ学術審議会(WR: Wissenschaftsrat)による共同プレスリリース
助成期間は2019年1月から7年間/年間3億8,500万ユーロを助成/19大学がエリート大学への申請可能に/ボンでの結果発表

ドイツの大学におけるトップレベルの研究を強化するためのプログラムである、エクセレンス戦略において、最終決定がなされた。2018年9月27日、国際的な専門委員と連邦政府及び州政府の研究担当大臣により構成されるエクセレンス委員会は、提出のあった88件のプロジェクトの中から57件のエクセレンス・クラスターへの助成を決定した。

この最終決定は、ボンで開催されたエクセレンス委員会の会合後に行われたライブストリーミングによる記者会見で、共同学術会議の議長を務めるドイツ連邦教育研究省(BMBF: Bundesministeriums für Bildung und Forschung)のAnja Karliczek大臣と、共同学術会議の副議長を務めるブレーメン州のEva Quante-Brandt科学上院議員により発表された。DFGのPeter Strohschneider理事長とWRのMartina Brockmeier議長は、最終決定がなされるまでの選考プロセス及び選考方法について説明した。

2016年9月、連邦政府と州政府間での合意に沿って、エクセレンス・クラスターを実施する責任を持つDFGは公募を開始した。2017年4月には、63の大学からDFGへ合計195件のプロジェクトの申請があった。その後、これらの申請は国際的な21の専門パネルにより、学術的な質的評価基準に基づいて審査された。

この審査結果を受けて、2017年9月29日、共同学術会議により任命された39名の研究者により構成されている専門委員会は、88のプロジェクトを最終選考の対象として選抜した。2018年2月に、88件のプロジェクトの最終申請が13州41大学から提出された。そのうち、62件は1大学単独、23件は2大学共同、3件は3大学共同によるプロジェクトであった。

その後、88件の最終申請は、2018年の春から夏にかけて、約400名の研究者(うち90%の研究者がドイツ国外に拠点を置く)からなる32のパネルにより審査された。これらの学術的な質的評価基準に基づいて、専門委員会は9月25日、26日に比較評価を実施し、エクセレンス委員会によって最終決定が行われた。

今回採択された57のエクセレンス・クラスターは、34の大学で実施される。40件は1大学単独、14件は2大学共同、3件は3大学共同により実施予定である。これらのプロジェクトのうち約49%は、2012年に開始したエクセレンス・イニシアティブによる資金援助を受けている、エクセレンス・クラスターあるいは大学院コースを土台として構成されている。

採択されたクラスターには、大学外のパートナーが高いレベルで関与している、大部分のプロジェクトにおいて主要な学術分野をはるかに超えた学際的なものである、という特徴がある。

新たなエクセレンス・クラスターへの助成は2019年1月に開始される。助成期間は7年であるが、再申請が認められたクラスターについては助成期間がさらに7年間延長される。行政合意に従って、年間約3億8,500万ユーロの支援が予定されており、75%が連邦政府、25%が当該州政府により拠出される。

エクセレンス・クラスターの決定は、WRが実施するエクセレンス大学に申請するための条件にもなっている。今回の決定を受け、2つ以上のエクセレンス・クラスターの拠点である17の大学と、3つ以上のエクセレンス・クラスターの拠点である2つの大学コンソーシアムは、エクセレンス大学への申請が可能となる。申請締め切りは2018年12月10日で、その後審査が行われ、エクセレンス委員会により2019年7月19日に最終決定が行われる予定である。

DFG: http://www.dfg.de/en/service/press/press_releases/2018/press_release_no_43/index.html
 

調査報告: ドイツの大学において、過去に在籍していた研究者がますます重要に(9月20日)
ドイツの大学88校へのアンケート調査結果 – 外国からの招へい研究者とのネットワークを構築することの戦略的重要性が高まる

ドイツの大学は、他の大学に移籍した外国人研究者との繋がりを、どのように維持することができるか。また、大学のブランド価値やネットワークの維持のために、過去に在籍していた研究者とのコネクションをどのように活用できるか。これらの問いは、多くの大学にとって国際化戦略として無視できないものとなっている。これらの事実は、フンボルト財団(AvH: Alexander von Humboldt)により、研究に力を入れているドイツ の88の大学に対し実施された、最新のアンケート調査によって示された。

調査対象大学のうち約3分の1が、大学の戦略的課題の下で過去に在籍していた研究者を活用することは、大学の国際化にとって極めて重要であると述べている。調査対象大学の60%は、過去5年間で大学における過去に在籍していた研究者に係る業務の重要性が増したと回答している。これらの大学は、2万5千人以上の学生を抱える大規模校を含む。これら大規模校のうち84%の大学が、その業務がより重要になったと捉えている(先の2015年の調査では73%であった)。 研究者の側も、過去に在籍していた大学との繋がりを維持することがいかにプラスになるかを、一層強く認識するようになってきている。過去に在籍していた研究者に係る活動を大学本部で行っている大学のうち67%において、研究者の側は大学の戦略的課題に関わることを「非常に喜んでいる」あるいは「ある程度喜んでいる」と回答している。

AvHは、ドイツ大学新聞(duz: Deutsche Universitätszeitung)と共同で、本調査報告および当該分野におけるこの研究の総括を発表した。「duz SPECIAL」の最新号「研究者同窓生の未来-外国からの招へい研究者のポテンシャルを戦略的に活用」では、AvHによる10年間の支援と広報活動の中心的な成果と考察がまとめられ、過去に在籍していた研究者に係る活動の専門的な構築と発展の方向性を提示している。

そのような活動の活性化は、AvH、ドイツ学術交流会(DAAD: Deutsche Akademische Austauschdienst)、ドイツ研究振興協会(DFG: Deutsche Forschungsgemeinschaft)、フラウンホーファー協会が共同で実施している国際研究マーケティング・プロジェクトを通じて可能となった。このプロジェクトはドイツ連邦教育研究省(BMBF: Bundesministeriums für Bildung und Forschung)の資金提供を受けており、国家戦略「Research in Germany」の一部である。

10年以上かけて設立された研究者同窓生に係る活動の専門家ネットワークは、今後、ドイツ語圏の研究者同窓会による協会「alumni-clubs.net」に参加する予定である。

AvH: https://www.humboldt-foundation.de/web/pressemitteilung-2018-25.html
 

チャンスを広げるドイツの教育制度(9月11日)
OECD調査の結果、柔軟な教育制度と将来に結びつく資格取得制度によりドイツが躍進

ドイツの職業訓練と学術教育という複線的な教育制度は、機会均等や他国からの若い移住者の社会融合を可能にしている点で、国際的にも優れている。男女ともに等しく意欲的な教育参画と、平均を遥かに上回るMINT分野(Mathematik(数学)、Informatik(情報科学)、Naturwissenschaften(自然科学)、Technik(工学))への関心が、未来のデジタル化に向けた好条件を生み出している。2018年9月11日、各州文部大臣会議(KMK: Kultusministerkonferenz)と連邦教育研究省(BMBF: Bundesministeriums für Bildung und Forschung)はOECDベルリンセンターと共同で、OECD報告書「図表でみる教育 2018年版」を発表した。当該報告において、ドイツの教育制度が安定した効率的なものであることが示されている。

報告書の発表にあたり、BMBFのカリチェック(Anja Karliczek)大臣は次のように述べた。「ドイツには、チャンスを広げる教育制度がある。これにより、誰もが自分の能力を強化し、自分にあったキャリアパスを歩み、良い人生の基盤を築くことができる。ドイツの職業訓練と学術教育は、平等で持続可能な進路の選択肢である。これは、国際競争上の強みであり、この優位性はさらに高まっていくだろう。OECD報告書がこのようなドイツの強みを認めていることを喜ばしく思う。一方で、ドイツにおける新たな課題も認識している。ドイツのすべての人々が教育、職業訓練、職業において平等な機会を得ることができるよう、力を合わせていきたい。」

2007年~2017年の10年間で、中等教育課程を修了した25歳~34歳の若年成人の就業率は、77%から 83%へ6ポイント上昇した。この就業率は、OECD平均値である77%を遥かに上回っている。また、他国からの若い移住者にとっても、教育から就業への移行は順調である。ドイツ出身者、および幼少期(15歳以前)にドイツへ移住した者の就業率にはほとんど違いが見られなかった。中等教育課程修了者の就業率はともに82%と同等であり、高等教育課程修了者の就業率の差はわずか1%(ドイツ出身者91% 、幼少期の移住者90%)であった 。

教員の需要の観点から、各州は教員を誘致するための州別アプローチついて意見交換をすることで合意している。KMK議長、かつテューリンゲン州教育・青少年・スポーツ担当大臣であるホルター(Helmut Holter)氏は次のように述べた。 「外国からの新たな移住者の影響もあり、教員の需要が高まっているこの時代、重要なのは教員という職業が高く評価されているということである。転職者の教員であっても、授業計画を立てる際に重要かつ貴重な役割を果たしている。加えて、スクールソーシャルワーカーやアシスタント、特別支援学級介助者とともに、私たちは教員をサポートしている。」

OECD加盟国で、ドイツほどMINT分野が好まれている国は他にない。2016年には、高等教育課程の卒業者のうち、3分の1以上 (36%) がMINT分野を修了している(OECD平均は24%)。女性のMINT分野に対する関心は、博士課程においても高まっている。ドイツにおける博士課程入学者の2人に1人が女性 (46%)であり、女性入学者の約37%がMINT分野の博士課程を選んでいる(OECD平均は31%)。

ホルター氏はこれについて次のように述べている。
「高等教育課程の卒業生のうち、MINT分野を修了した学生の割合が非常に高いことは、喜ばしいことである。私たちは、MINT分野でより多くの留学生を獲得するとともに、女性のMINT分野に対する関心を高め、女子学生の割合がさらに高まるよう、高等教育機関へ働きかけていきたい。」

BMBF: https://www.bmbf.de/de/deutsches-bildungssystem-eroeffnet-chancen-6908.html
 

第18回ドイツ研究者国際ネットワーク(GAIN)総会、ボストン(米国)で開催(9月7日)
フンボルト財団(AvH: Alexander von Humboldt)、ドイツ学術交流会(DAAD: Deutsche Akademische Austauschdienst)、ドイツ研究振興協会(DFG: Deutsche Forschungsgemeinschaft)共同でのプレスリリース

第18回GAIN総会では、460名以上のポスドクおよび若手研究者が、ドイツの大学の学長、研究機関の所長、政治家と交流する。GAIN総会は、学術拠点としてのドイツにおけるイノベーションや雇用をめぐって、9月7日から9日にかけてボストンで開催される。

GAIN総会では3日間、各国の研究者及びドイツ人研究者が、大学でのキャリア形成や、ビジネスへの転換、高等教育機関での教育活動、ビジネスマネジメントやスタートアップ企業設立の手ほどきなど、ドイツでの継続的なキャリアの展望に関して議論を交わす。テーマは、デュアルキャリアプランニングから、若手の研究グループにおけるリーダーシップやテニュアトラック制度まで、幅広い分野に及ぶ。タレントフェアでは、各研究機関が、キャリアパスや具体的な仕事を紹介する。 各資金提供機関は、ドイツへの帰還プログラムや奨学金についての情報を提供する。

ミュンヘン工科大学のロボティクス・メカトロニクス・ミュンヘンスクール( スタートアップ企業)の創始者で学校長でもある、ハダティン教授(Sami Haddadin、工学博士、2017年ドイツ未来賞受賞者) が、基調講演を行う。スタートアップ・ピッチでは、6つの研究チームが2018年GAIN賞をかけて競う。今回初めて授与されるこの賞には、学術のスピンオフに関するドイツの大学における1週間のコーチングやメンタリングが含まれている。

9月7日午前、DAADのヴィンターマンテル(Margret Wintermantel)会長、DFGのシュトロシュナイダー(Peter Strohschneider)理事長、AvHのパーペ(Hans-Christian Pape)会長、北米の研究者は、共同で挨拶を行った。

ヴィンターマンテル会長は、学術における国際的なネットワークの意義を強調し、次のように述べている。
「ドイツの大学や、応用科学系の専門大学、その他の研究機関は、近年大幅に業績を伸ばしている。この成果に欠かせないのは、国際的なネットワークである。重要なのは、若手研究者が世界中のトップ大学で経験を積み、能力を伸ばすことである。起業や技術革新のマーケティングなどといった学術分野以外でのキャリアに関しても、ドイツのトップ研究者は北米から多くを学ぶことができるだろう。」

DFGのシュトロシュナイダー理事長は次のように述べている。
「現在多くの研究者がドイツに帰還している。このことは、ドイツにおいて学術が社会的にも政治的にも極めて高い支持を得ているということと無関係ではないだろう。学術への懐疑論が芽生えていた時代は、このような動向は当たり前のことではなかった。信頼なしには、いかなる学術の自由もない。好奇心に従って長期間活動することのできるこうしたGAINのような枠組みこそ、極めて優れた研究にとって不可欠である。」

GAINについて
ドイツ学術国際ネットワーク(GAIN)は、北米で活動するドイツ人研究者のためのネットワークである。2003年以来、GAINは複合的なプログラムによって北米で活動するドイツ人研究者とドイツ学術機関との連携をサポートしており、彼らがドイツの研究拠点へ帰還する準備を行うことや、政治的な意思決定機関に対してそれぞれの関心を表明することができるよう支援してきた。GAINはAvH、DAAD、DFGによる共同プロジェクトであり、連邦教育研究省(BMBF: Bundesministeriums für Bildung und Forschung)から資金提供を受けている。フラウンホーファー協会、ヘルムホルツ協会、ライプニッツ協会、マックス・プランク協会、ドイツ大学長会議(HRK: Hochschulrektorenkonferenz)、ドイツ全国奨学金財団(Studienstiftung des deutschen Volkes)、ドイツ癌支援協会(Deutsche Krebshilfe)は、準会員である。さらに、学術、産業、政治分野からの協賛者が、定期的にGAINの活動を支援している。第18回GAIN総会は、2018年9月7日から9日まで、ボストンのマリオット・コープリー・プレイスで開催される。

DFG: http://www.dfg.de/service/presse/pressemitteilungen/2018/pressemitteilung_nr_38/index.html