ドイツ学術情報(過去の分)

国際的な学習カリキュラムにはカリスマ性がある(10月22日)

全国案内ツアーが新しいファンディング機会について通知

ジョイント・ディグリーかダブル・ディグリーか:提携大学とのダブル・ディグリーが可能な学位コースを備えている大学は、ただ国際的であるだけではない。コース履修者は研究と教育の集中的な交流の恩恵を受けるとともに、修了生はすばらしい雇用機会の見通しを得ている。ミュンスター応用科学大学、ブランデンブルク工科大学コットブス・センクテンベルク、フィリップス大学マールブルクの成功事例を見てみよう。

高等教育機関の使命は、国境を越えて知識を得る基盤を提供し、知識を深め、伝達することである。教師と生徒は国際的なコミュニケーションに参画できなくてはいけない。これにはダブル・ディグリーが組み込まれた国際的な学位コースが必須である。それらは、ドイツの大学の国際化と学生の流動性に的を絞っている。それらの学位コースのうち108のプロジェクトは、目下ドイツ学術交流会(Deutscher Akademischer Austauschdienst:DAAD)のファンディング・リストに載っている。20年以上にわたり、DAADは「ダブル・ディグリーを有する統合国際学位コース」というプログラムで、そのような学位コースの設立を支援してきた。連携の形式に応じて、修了生は複数の大学が単一の学位を承認するジョイント・ディグリーか、二つの提携大学でそれぞれ学位が認定されるダブル・ディグリーを取得する。

ラテン・アメリカの11の提携大学

大学がパートナーを自由に選べることは、ミュンスター応用科学大学のドイツ-ラテン・アメリカ経営学学位コース“CALA“に例示されている。これはCarrera Alemana-Latinoamericana de Administraciónの略称である。ミュンスター応用科学大学は、ひとつの提携先だけでなく、大陸全体と協力関係にある。この、いわゆるマルチ・パートナーシップにおいて、学生はアルゼンチン、ブラジル、チリ、コスタリカ、コロンビア、メキシコ、ペルーの大学で1年半を過ごす。学業を無事修了すると、彼らはミュンスター応用科学大学とラテン・アメリカの提携大学のそれぞれの学位を取得する。

CALAがCALIを導き出す

このパートナーシップは、2003年に退職した経営経済学者のKlaus Rotherのラテン・アメリカ人の知人との付き合いから始まった。彼と共に、2001年に設立されたミュンスター応用科学大学経済学部国際研究室長のMartina Ratermann氏は、統合国際研究プログラムの組織の設立を支援した。同時に、彼女は卒業生ネットワークを構築した。このネットワークには、CALAの卒業生だけではなく、コースをサポートし、実践的なセミナーの仲介者ともなり得る企業も含まれている。「このプログラムは拡がっています。」と、ミュンスター応用科学大学の教育・国際問題担当副学長のFrank Dellmann教授は述べている。数か月前、ミュンスター応用科学大学は、CALAの経験を工学科学分野に移行するために、「CALI」という名称で2番目のプログラムを申請したところだ。

大学は国際的なプロファイルを明確に

ある発展をTabea Kaiser氏が確認している。彼女はDAADで教育部門の国際化部門責任者を務めている。「ダブル・ディグリープロジェクトは、大学が国際的な地位を確立するための重要な構成要素である。それに、各種学位プログラムはそれぞれの大学の国際的な要素を更に発展させるため、大学が行う努力は非常に価値がある。」

優れたコミットメントが成功事例を保証

いわゆるダブル・ディグリー、すなわちそれぞれの提携大学から授与される学位は、「一貫した国際的流動性の理想的な方法である」と、Kaiser氏は言う。なぜなら、それは留学課程を簡素化し、学位プログラムを際立たせる有用性の例示となる。海外滞在は概念的に大学での勉学に組み込まれ、独立して運営されておらず、学業に関連付けられる必要がある。例えば、異文化間で発揮される能力に加えて、学生がさらなる専門的知識を獲得し、様々な労働市場にアクセスできるようになるため、国際性は強みを持つ。また、教師は人脈を広げ、共同学習プログラムを活用して教育と研究の更なる協力を図る。Kaiser氏は、参加大学とその代表者に称賛の言葉を送る。「大学の体制の調整が難しい場合など、どれだけの個人のコミットメントが背景にあり、いかに解決策が見いだされるか、といったことは称賛に値する。」さらに、個別指導と語学コースにより、学生は海外で過ごすのが簡単になる。これはすべて、「ダブル・ディグリープログラムが成功事例であるということを保証している。

コットブスからメルボルンへ

ブランデンブルク工科大学コットブス-ゼンフテンベルク(BTUコットブス-ゼンフテンベルク)は、メルボルンのオーストラリア・ディーキン大学と協力して、ユネスコ世界遺産条約に関するダブル・ディグリー修士プログラムを設立した。学生は4学期で、文化、建築、都市計画、環境、ビジネス、観光の観点から、世界遺産のコンセプトの定着と実装に関する知識を習得する。このプログラムには、客員講師の講義、学習旅行、ドイツ国内及び海外の提携大学とのプログラムが含まれている。コットブスでの勉学は人類の遺産を扱っており、世界遺産とグローバリゼーションの変容プロセスとの関係性を調査している。学位論文は、プログラムの主要分野のひとつに焦点をあてる必要がある。コットブスは学位プログラムのドイツでの拠点として好まれている。ベルリンとその主変の城郭、オーバーラウジッツのバートムスカウにあるプリンスプッケラー公園は南東に40キロメートル、ドイツとポーランドの国境の両側に広がる。または、ユネスコ生物圏保護区であるコットブス、ドレスデン、ゲルリッツにまたがるオーバーラウジッツの池の風景も素晴らしい。

学位コースラッシュ

ダブル・ディグリープログラムは、既存の世界遺産研究の修士プログラムの優れた別のバージョンとして設計され、2013年以来DAADによって継続的に資金措置されている。Marie-Theres Albert名誉教授とともに「世界遺産研究」プログラムを開始したMichael Schmidt教授は、1999年に、パリのユネスコ世界遺産事務局でプログラムの優位性を高めるための戦略的パートナーシップを見出した。「世界遺産条約をカリキュラム向けに翻訳した。」とSchmidt教授は言う。ブランデンブルク工科大学コットブス-ゼンフテンベルクは、とても人気の高い学位プログラムにより際立っている。毎年、世界中から100人以上の学生が、通常の学位コース「世界遺産学習」の40人の枠に応募している。ダブル・ディグリープログラムには最も優秀な5名の学生が選ばれる。「修士課程の国籍の多様さは、ドイツ国内でもトップである。」とSchmidt教授は言い、さらに次のように付け加える。「時折、何がより魅力的なのかわからない時がある。学位コースに参加している国々の教育や多様性、そしてその可能性が世界遺産の言説を拡大する。ここでの利点の一つは、DAADの資金措置プログラムである。これは、成功したダブル・ディグリー及びジョイント・ディグリーを流動的な資金措置で長期的に財政的に支援できる。プログラムの卒業生は、二つの学位を取得する。ブランデンブルク工科大学コットブス-ゼンフテンベルクの世界遺産研究の修士号と、ディーキン大学の文化遺産修士号である。世界遺産の専門家として、彼らは学歴に加えて、ユネスコ、各国の省庁、世界遺産の管理、博物館または民間の文化機関で働いている。

同窓生が更なる専門家の議論を開始

さらに、ブランデンブルク工科大学コットブス-ゼンフテンベルクは卒業生との協力関係を培っている。DAADの支援により、卒業生はコットブスに招待され、そのコミットメントと経験について報告する。「そうすることで、学科は絶えず新しい局面を得ている。」とSchmidt教授は述べる。例えば、同窓生が文化財の破壊、強盗行為、または返還に関して報告し、それによりさらなる議論が行われる場合など。

マールブルクからケントへ

フィリップス大学マールブルクでは、ジョイント・ディグリー、つまり両方の提携大学が承認する単一の学位を取得できるヨーロッパ圏の修士課程を提供している。エラスムスのパートナーシップに基づいたカンタベリーのケント大学との良好な付き合いのおかげで、両大学は2011年に開始するジョイント・コース「平和と紛争研究」を開発した。モジュールは、対立理論、調停、暴力の社会的再検討などのトピックをカバーしている。このプログラムには少なくとも10週間のインターンシップが含まれている。

異なる大学システム、補完的な視点

「かなり当初から、ジョイント・ディグリーの構造の点から考えていた。」と、学位プログラムの責任者であるマールブルク紛争研究センターの副マネージングディレクターであるThorsten Bonacker教授は言う。「学生がある場所で勉学を開始し、別の場所で勉学を修了できるようにする必要がある。」マールブルク側では、補完的な教育及び研究プロジェクトの機会もある。ケント側で国際政治と安全保障に焦点をあてている一方で、マールブルク側ではでは平和心理学と紛争の変容の側面に焦点をあてている。「このように、学生は技術的に補完的な視点で、異なる二つの大学システムに精通するようになる。」と、Bonacker教授は言う。

プログラムが意欲の高い学生を惹きつける

両方のシステムをカバーするジョイント・スタディ・プログラムを設立するのは簡単なことではなかった。「特に、行政規制が相互に矛盾していたから」と、Bonacker教授は述べる。とりわけ、入学規則と試験規則の構造が互いに大きく異なっている。例のひとつとして、カンタベリーでは、学生は年間4,600ユーロに相当する料金を支払っているが、ドイツではそうではない。幸いなことに、英国の修士課程のプログラムは1年続くため、合計4学期の学位コースを容易に設計できた。様々な提携先の管理体制を互換性のあるものにするのは当初困難だったが、プログラムは今や非常に意欲的な学生を惹きつけている。それらの約半分はドイツ出身であり、他のほとんどはヨーロッパから来ているが、アメリカ、インド、香港からも学生が来ている。彼らはマールブルク大学で歓迎されており、プログラムからも利益を得ている。学位コースは、ドイツ大学長会議による「高等教育の国際化」監査で重要な役割を果たした。Bonacker氏は次のように付け加えている。「これは国際機関、財団、省庁、連邦議会、亡命者との協力などで、最高のキャリアの見通しを提供する」。

https://www2.daad.de/der-daad/daad-aktuell/de/74586-internationale-studiengaenge-haben-strahlkraft
 

もっと多くの学生のためにもっとBAföGを(10月14日)

全国案内ツアーが新しいファンディング機会について通知

BAföGは約50年にわたって成功しているが、さらに良くなるだろう。BAföGは2019年8月1日に改革された。新しい最大の月額助成額レートは現在853ユーロ(以前は735ユーロ)である。2020年には861ユーロに再値上げの予定。同時に、収入手当が増額され、より多くの学生のための財政支援が可能となる。連邦教育研究省(Bundesministerium für Bildung und Forschung:BMBF)が運営している全国案内ツアーが、キールとロストックからドレスデン、ドルトムントを経由してミュンヘンまでの28の大学及び専門大学で、11月初旬までBAföG改革に関する情報提供を行い、ファンディングの機会について説明する。

連邦教育研究省のAnja Karliczek大臣は次のように説明する。「ドイツはチャンスの国である。教育へのアクセスは、私たちの社会の最優先事項である。私たちは、両親の財政状況に関係なく、誰もが可能な限り最高の道を追求できるようになってほしいと考えている。BAföGは、ほぼ50年に亘って平等な機会を提供してきた。できるだけ多くの若者にこの機会を活用してほしい。BAföG案内ツアー2019で、私たちはこれに貢献したいと思っている。『あなたの将来を提案してください!』のモットーの下、BAföGの機会を若者に知ってもらいたいと思っている。」

https://www.bmbf.de/de/mehr-bafoeg-fuer-mehr-studierende-9891.html
 

人工知能:DFGが戦略的ファンディング事業を決定(10月7日)

事業全体で約9,000万ユーロ/最大8つの研究グループと30の若手研究グループへの公募とファンディング

ドイツ研究財団(die Deutsche Forschungsgemeinschaft :DFG)は、人工知能(AI)の分野での戦略的ファンディング事業を承認した。今後数年間で、AI研究に関するすべての分野からのプロジェクトは、さまざまなファンディング・プログラムによって資金提供される。この目的のために、合計約9,000万ユーロの資金が割り当てられている。

今この事業実施を決定することで、ドイツ最大の研究資金提供機関、及び科学の中央自治組織は、AI技術が研究及び科学の多くの部門で知識プロセスにとって不可欠なものになりつつあるという事実に注意を払っている。この事業は様々な活動分野に対応している。一方で、AIの分野の方法論的研究と、AI技術がますます活用されている分野の基礎研究とを密接に結び付けつつ、この分野のトップクラスの学術研究の必要性を強調している。影響を受け合うそれぞれの研究分野の密接な相互作用において、AI研究の文脈での重要かつ基本的な、哲学的、法的及び社会的科学研究の疑問点の調査も非常に重要である。最終的に、この分野のトップクラスの研究者間での競争に勝つことは、国際競争における研究システムの位置付けに重要な役割を持つ。

この事業の焦点の一つは、DFGのエミー・ネータープログラムにおける若手研究グループの公募とファンディングである。これにより、AI技術研究を主題とする次世代の優秀な科学者たちが、高度な自律性を備えたキャリア選択を早期に開始することによって育成されていくだろう。この事業の一環として、連続した3年間の公募により、最大30の若手研究グループを設立することができる。

AI技術の分野の研究者と他の研究分野の研究者との協力を促進するため、最大8つの研究グループの公募とファンディングが計画されている。各研究グループの目的は、トピックと人材の観点から、それぞれの機関の研究の焦点とAI方法論分野の研究を組み合わせることである。ここでの焦点は、科学的知識を獲得する目的でAI技術を活用する研究分野と、AIの使用に関連する包括的、実践科学的且つ理論科学的、認識論的、法学的あるいは社会学的な問題を調査する研究分野である。AI技術開発と、それぞれの研究分野との間のインターフェイスにおける教授職の設置と統合に特に注意が払われている。戦略的ファンディング事業の公募は、2019年中に公開される予定であり、最初のファンディングの決定は2020年に行われる。

https://www.dfg.de/service/presse/pressemitteilungen/2019/pressemitteilung_nr_50/
 

コミュニケーション賞2020:傑出したサイエンス・コミュニケーションの評価における新たな重点(10月2日)

新しい賞のスタート/さらに考慮されるべき科学と社会の間の対話に対する要望の変化/50,000ユーロの賞金

コミュニケーション賞20周年記念のため、ドイツ学術振興協会(die Deutsche Forschungsgemeinschaft:DFG)とドイツ学術財団連盟は傑出したサイエンス・コミュニケーションの評価において、新しい重点を置きたいと考えている。このふたつの組織によって授与されるこの賞は、将来的に、基本的枠組みと科学と社会との対話に対する要求事項を取り上げ、それらを反映することを目的としている。DFGは、正式名称『コミュニケーター賞-ドイツ学術財団連盟の科学賞』を再び公募していて、公募期間は2020年1月までである。

1999年に開始され、その翌年初めて授与されたコミュニケーター賞は、ドイツのサイエンス・コミュニケーションの分野で最も重要な栄誉と見なされている。これは、特に革新的で多様かつ効果的な方法で、科学研究とその主分野を広く一般の人々が利用できるようにし、そうすることによって科学と社会の間の対話へコミットするように取り組んだことに対し、すべての専門分野の研究者に授与される。賞金は50,000ユーロだ。

この賞の初期段階では、科学的な話題や調査結果を広く一般に伝えることが、受賞者を選定する際の主な焦点だった。しかし一方で、科学者たちは次第に、彼らの働き方について見識を示すことや、彼らのターゲットグループとの対話を模索することを求められるようになっている。彼らはまた、彼らの研究の社会的な側面を認識すること、彼らの知識を公開討論の場や、意思決定プロセス及びその決定そのものにも貢献させることも求められている。将来的に、このコミットメントは受賞者の評価と選定においてより重要なものとなるだろう。また、この賞は特に創造的で挑戦的なサイエンス・コミュニケーションのアプローチにも与えられるだろう。賞金は受賞者のコミットメントを支援するとともに、新しいプロジェクトの実施を促進することを目的としている。

この賞は個人の研究者、もしくは小さな研究グループに与えられる。自己申請と推薦の両方が可能だ。賞への応募はドイツの大学や研究機関で働いている科学者たちに対して開かれている。申請手続きと賞に関する詳しい情報は、DFGのWebサイトで確認できる(詳しくは下記より)。

申請書、推薦書は遅くとも2020年1月3日(金)までに要提出。DFG実行委員会のメンバーを議長として、サイエンス・コミュニケーションの専門家及び科学ジャーナリストの審査委員が、賞の授与を決定する。受賞者の選定と通知は2020年の春に行われる。授賞式は2020年6月30日(火)に、ベルリンでのDFG年次総会の一環として開催される。

コミュニケーター賞、応募および選考プロセス、以前の受賞者に関する情報:
https://www.dfg.de/gefoerderte_projekte/wissenschaftliche_preise/communicator-preis/index.jsp

https://www.dfg.de/service/presse/pressemitteilungen/2019/pressemitteilung_nr_49/index.html