ドイツ学術情報(過去の分)

研究及びイノベーションに関する専門家委員会(EFI)が第12回答申書を政府へ提出(2月27日)
Anja Karliczek大臣:「イノベーションはさらなる持続可能性において重要となる」

連邦政府は、引き続き研究・イノベーション政策を優先事項としており、数多くの新たなイニシアティブによって過去のコミットメントを強化している。このことは、研究・イノベーション・技術能力に関する第12回答申書の中で、研究及びイノベーションに関する専門家委員会(Expertenkommission Forschung und Innovation:EFI)によって述べられた。2019年2月27日、EFIは第12回答申書をAngela Merkel首相およびAnja Karliczek教育研究担当大臣へ提出した。 この答申書は、数あるトピックの中でも、特に持続可能性とデジタル化に焦点を当てている。

連邦政府は、研究・イノベーション政策の核心にデジタル化を据えている。デジタル化は、ハイテク戦略2025において、医学や持続可能性、モビリティまで、あらゆる分野で重要な要素である。人工知能(AI)戦略で、連邦政府はドイツおよびヨーロッパをAI技術の開発と応用のための先導的な場所にすることを目指している。EFIは、連邦政府がデジタル化とAIに高い優先順位を与えていることを歓迎している。EFIは、AI戦略のさらなる発展のための勧告を行うとともに、ブロックチェーン技術をドイツが有望な立場を持つもう1つの将来のトピックであると見なしている。

EFIは、2007年から連邦政府の政治諮問機関である。研究・イノベーション政策について科学的に妥当な政策提言を示すとともに、毎年進捗状況と活動を明らかにしている。

BMBF: https://www.bmbf.de/de/forschung-konsequent-zu-den-menschen-bringen-8007.html
 

10人の研究者が若手研究者のためのドイツの最も重要な賞を受賞(2月27日)
DFGとBMBFがハインツ・マイヤー=ライプニッツ賞を2019年5月28日ベルリンの授賞式で授与予定

2019年は、10名の研究者(女性3名、男性7名)が、ドイツの若手研究者にとって最も重要な賞であるハインツ・マイヤー=ライプニッツ賞を受賞することとなった。ドイツ研究振興協会(Deutsche Forschungsgemeinschaft:DFG)、ドイツ連邦教育研究省(Bundesministeriums für Bildung und Forschung:BMBF)によって任命された選考委員からなる選考委員会がボンで開かれ、そこで選出されたものである。5月28日にベルリンで行われる授賞式で、受賞者にはそれぞれ20,000ユーロの賞金が贈呈される。

2019年ハインツ・マイヤー=ライプニッツ賞受賞者は下記の通り。

  • Stefan Cihan Aykut、社会学、ハンブルク大学(Universität Hamburg)
  • Karl Bringmann、理論計算機科学、マックス・プランク研究所(Max Planck Institute for Informatics, Saarbrücken)
  • Fabian Dielmann、無機分子化学、ヴェストファーレン・ヴィルヘルム大学(University of Münster)
  • Jonathan F. Donges、統計力学・気候研究、ポツダム気候影響研究所(Potsdam Institute for Climate Impact Research:PIK)
  • Knut Drescher, 微生物学・生物物理学、マックス・プランク研究所(Max Planck Institute for Terrestrial Microbiology, Marburg)
  • Stefanie Gänger、近現代史、ケルン大学(University of Cologne)
  • Nicolas Perkowski、確率論、マックス・プランク研究所(Max Planck Institute for Mathematics in the Sciences, Leipzig)、フンボルト大学ベルリン(Humboldt University of Berlin)
  • Uta Reinöhl、一般言語学、ヨハネス・グーテンベルク大学マインツ(Johannes Gutenberg University Mainz)
  • Thimoteus Speer、腎臓学、ザールラント大学(Saarland University)
  • Nina Henriette Uhlenhaut、実験内分泌学、ミュンヘン・ヘルムホルツセンター(Helmholtz Zentrum München - German Research Center for Environmental Health)

ハインツ・マイヤー=ライプニッツ賞は、研究キャリアの初期段階でテニュアの教授職を持たない、極めて優れた若手研究者を対象として、1977年以来、毎年授与されている。本賞は、学術の卓越性への道を追求し続けるための評価や動機付けとなっている。また、1980年からは、原子物理学者でありDFG元会長であるハインツ・マイヤー=ライプニッツ氏(在任期間1973年~1979年)の名を冠している。ハインツ・マイヤー=ライプニッツ賞は、ドイツの若手研究者にとって最も重要な賞とされている。

今年の賞には、あらゆる研究分野から合計129名の研究者が推薦された。候補者は、数学者でもあるMarlis Hochbruck DFG副会長が議長を務める選考委員会によって決定された。

DFG: http://www.dfg.de/en/service/press/press_releases/2019/press_release_no_04/index.html
 

英国の合意なきEU離脱に備え、教育・研究に必要な準備を(2月15日)

2019年2月14日、英国議会下院における今後のEU離脱手続きに関する決定は、今後のいっそう不透明な状況をもたらした。合意なき離脱、いわゆる「Hard Brexit」は未だ回避されていない。中心的な目標は、依然として、移行期間を含む離脱協定に基づいた、英国の秩序ある離脱である。 3月29日の離脱日は近づいており、残された時間はますます少なくなっている。

Anja Karliczek大臣は、「誰も英国の合意なき離脱を望んでいない。それでも、私たちは緊急事態にも備えている。特に教育、科学、研究は、国境を越えた協力に負うところが多い。」と述べた。英国とは多様な面での協力があり、特に成功を収めている。

ドイツ連邦政府は、英国の秩序ある離脱を求めている。しかし同時に、他のEU加盟国および欧州委員会と共に、合意なき離脱の可能性に向けた慎重な準備を進めている。これは、そのような状況によりもたらされる可能性のある、深刻な混乱を和らげるのに役立つような対策である。

よく知られた「エラスムス(Eurpean Regio Action Scheme for the Mobility of University Students)・プラス(Erasmus+)」プログラムについて、Anja Karliczek大臣は次のように述べた。
「英国は、ドイツからの学生および職業研修生にとって、とりわけ人気のあるErasmus +の留学先である。だからこそ、欧州委員会がこのプログラムの特定の分野に対する一時的な資金援助を提案したのは、正しいことであり重要である。財政の緊急事態のために、学業が中断されてはならない。
EU枠組プログラムであるHorizon 2020とErasmus +について、たとえ合意なき離脱となった場合でも、英国のパートナー機関と始めたプロジェクトが、限られた期間、確実に継続されることを保証するために、移行解決策に関する欧州委員会の提案が役立つことを願っている。」

ドイツ国家レベルでは、連邦奨学金法(Bundesausbildungsförderungsgesetz:BaföG)が教育分野における移行規制を規定している。英国のEU離脱の影響を受けた職業研修生を移行期間中保護することを目的としており、離脱前に研修期間を開始した者は、研修期間の終了までBAföGの下で給付を受けることができる。

BMBF: https://www.bmbf.de/de/harter-brexit-erfordert-vorsorge-fuer-bildung-und-forschung-7902.html
 

ドイツ連邦教育研究省(BMBF)、DAADのプログラムを通じて教員養成課程の国際化を推進(2月8日)

ドイツの経済ネットワークは世界規模、通貨は欧州規模、しかし、教員養成は国内規模である。ドイツ連邦教育研究省(Bundesministerium für Bildung und Forschung: BMBF)は、教員養成課程の国際化を推進している。教員候補の学生はもっと国際的かつ異文化間の経験を積むべきである。このために、大学は、例えば外国の提携大学との協力を深めることによって、教員養成課程をより国際化することができるはずである。これらは、ドイツ学術交流会(Deutscher Akademischer Austauschdienst: DAAD)の新しい国際教員養成プログラム「Programm Lehramt.International」の目標である。BMBFはこのプログラムに4年間資金提供を行う。今後、学生および大学はこのプログラムへ個々に申請することが可能となる。

これまでのところ、教員養成課程の学生は他の分野の学生と比較して、外国での経験が少ない。留学がカリキュラムの一部に組み込まれていないことも多い。留学中の学業成績は、多くの場合単位認定されない。DAADのデータによると、英語・フランス語・スペイン語の若手教員のうち、3人に1人は留学経験がなかった。

今日、ドイツの学校は国際的・文化的な多様性を有する場所である。教員候補の学生の中核的任務は、若者が批判的に考え、行動できるように教育していくことであるが、同時に国際人として、また責任ある態度を持たせるようにしなければならない。国際的かつ異文化間の知識と経験は、現在ますます多様化する生徒たちのクラスを担当する教員にとって、非常に重要である。しかし、これまでのところ、教員養成課程で国際化が進んでいるケースは非常に限られており、学生の中でも、特に小学校教員養成課程の学生における流動性は比較的低い。

実務、科学、政治からのビジネス・パートナーとともに、BMBFとDAADは、教員候補の学生がドイツの学校で国際的・文化的多様性に柔軟に対処できるようにしたいと考えている。今回のプログラムは、ドイツの教員養成課程の国際的な位置付けと認知度を向上させること、大学単独の法的枠組みの中での体系的な教員養成課程の国際化に寄与することを目的としている。

BMBF: https://www.bmbf.de/de/lehrer-weltlaeufig-7848.html