ドイツ学術情報(過去の分)

世界52か国・210名の研究者たちがライプチヒへ   フンボルト財団ネットワークミーティングが4月3日~5日、ライプチヒ大学で開催(3月26日)

ライプチヒ大学で2019年4月3日から5日にかけて開催されるフンボルト財団(Alexander von Humboldt –Stiftung: AvH)のネットワークミーティングに、世界52か国から210名の研究者が招聘される予定。彼らは現在フンボルト財団のフェローとして、ドイツ各地の研究機関でドイツ人研究者たちと共に活動している。このイベントの目的は、フェローたちの相互交流を深めるほか、ライプチヒというドイツにおける著名な研究活動の場にも親しんでもらうというもの。フェローたちは財団スタッフとの議論から、ドイツで研究し、生活するための助言も得られる。

4月3日(水)3時から、ライプチヒ大学のBeate Schücking学長と、フンボルト財団のEnno Aufderheide事務総長が歓迎の辞を述べる予定。続いて生物物理学者のJosef Alfons Käs氏が『がん転移に係る体組織の役割と細胞メカニズム』というテーマで講演を行う予定。Käs氏は腫瘍細胞物理学分野の草分け的存在として知られ、2001年のフンボルト財団ヴォルフガング・パウル賞の受賞者でもある。

4月4日(木)には、参加者たちはライプチヒ大学内の研究施設を訪問する予定で、若手研究者たちのネットワーキングの場が提供される。午後のポスターセッションでは、フェローたち自身の研究テーマについて発表。その後、フンボルト財団側がその概要と実施事業について紹介する。

参加者の大半は自然科学及び生命科学分野の研究者(120名)で、次いで人文社会科学分野(61名)、工学系分野(29名)である。参加者の大半が中国からの参加者(32名)で、米国から20名、インドから13名である。参加者のうち6名は現在ライプチヒで活動している研究者である。

AvH: https://www.humboldt-foundation.de/web/pressemitteilung-2019-06.html
 

経済的及び社会的人口移動変化(人口動態変化):ドイツは外国人学生を必要としている(3月19日)

学生数は、都市部以外のドイツ西部の複数の地域と同様に、ドイツ東部の大学がある多くの地域でも減少している。これらの調査結果は驚きかもしれない。なぜならドイツの大学で学籍登録された290万人という数は、現在まだ記録上最も多いレベルにあるからだ。しかし学生たちの在籍状況は偏っている。既に今日、ドイツ東部や都市部以外のドイツ西部地域にある大学や専門大学について、とりわけザクセン州、チューリンゲン州、ザクセン・アンハルト州が顕著であるが、41地域で学生数が減少している。また、都市部以外のドイツ西部でも同様の現象が見られ、国内の専門労働力(熟練労働者)不足が高まるだろう。これらの結論は、統合と移住のためのドイツ専門家協議会(SVR)の研究により提起された。この研究論文の著者たちは、この問題に直面する大学が、連邦政府や州政府と共にどのようにこれらの動向に対応すべきか明確に提言している。

この研究では、2012年の場合に比べて今日6校中1校の割合で在学中のドイツ人学生が平均11%減っていることが示されている。しかしそれに関係する個々の大学は、これらの傾向に抵抗するために、海外からの優秀な大学入学希望者をリクルートするなど効果的な戦略を展開した。

またこの研究では、大学はその所在地域の経済的および社会的発展の重要な動力であると示している。そのため、卒業生たちの地域雇用への効果的な移行を保証するためにも、企業や経済プロモーター、行政との密接な協力が重要である。

「熟練した労働者の不足は、すでに市場において問題となっている。ドイツの企業は専門的な教育を受けた大卒の若者を必要としている。外国人学生を受け入れることは、人口変動の影響を緩和する助けとなる。」と、ドイツ学術交流会(Deutscher Akademischer Austauschdienst:DAAD)のDorothea Rüland事務総長は述べている。「しかし、我々は体制状況を改善しなければならない。その目標とするところは、有望な外国人学生に働きかけることと、例えば先進的なデジタルフォーマットを活用するといった、彼らの国において求められる(入学申込)方法を準備することである。さらに、彼らはドイツの大学への入学直後の期間のさらなる支援も必要としている。」Dorothea Rüland事務総長によると、この方法で未だ多い外国人学部学生の高いドロップアウト率も軽減できるとのことだ。

統合と移住のためのドイツ専門家協議会(SVR)による研究でも似た結論に達している。外国人学生が大学卒業後現地で就職するためには、学生受け入れ時の大学側の柔軟性に加えて、入学初期の学生に対するより体系化されたシステム、大学機関と地域が共同で作り上げた就職支援体制を必要とする、とのことである。

DAAD: https://www.daad.de/presse/pressemitteilungen/de/69942-demografischer-wandel-deutschland-braucht-internationale-studierende/?
 

学問の自由に向けての連携:ドイツ学術機関連盟、70年続く基本法へのキャンペーンを開始(3月14日)

「学問、研究、教育は自由である。」これは、70年前に発効された、基本法第5条に明記されている。ドイツの学術界は記念日に際し、成果の歴史や成功の見込み、学術の自由への脅威に関して議論し、それに対して生ずる責任について問題提起した。

 マックス・プランク協会(Max-Planck-Gesellschaft : MPG) によって推進された「自由こそ我々の体制。学問のための連携」は、ドイツの主要な10の学術機関からなる同盟の取り組みであり、一連のイベントやスピーチ、ディスカッションや寄稿意見、研究と教育の独立性の重要性を強調するとともに、学問の自由に対する潜在的な危険に目を向けるなど、自らの発展を批判的に検討している。

フンボルト財団(Alexander von Humboldt –Stiftung : AvH)が、ドイツ学術機関連盟による学問の自由のためのフォーラムと同時開催した、危機的な状況にある研究者のキャリア開発がテーマのイベントが、2019年3月18日に開幕した。この活動は、ベルリンで2019年9月26日に開催される栄誉ある閉会式イベントに繋がっている。この壇上では学問の未来が議論される。一連のイベントは、この活動についての主要な意見交換を反映させた覚書など、学問の自由のためのドイツ学術機関連盟による声明で開幕し、終幕する予定。秋までに、学問の自由についての様々な見地に関する一連のイベントが開催され、ドイツの個人権、法治国家性と民主主義の要件等、世界における研究への制限等のテーマが主題とされる。

学問の自由は、常に擁護されるべき基本的権利である。それゆえ、最近の国際的なパートナー間における展開は、懸念の源でもある。ポピュリスト化の流れは、科学的知見や研究領域が段々と疑問視されてしまうような温床にもなっている。同時に、とりわけ「実用的」で、経済的に役に立つ成果をもたらす学問の需要が高まっており、多くの重大な研究課題が締め出されてしまっている。自由な研究を継続的かつ常に新たに可能にするためには、そのインセンティブ・システムも変えていかなくてはならない。たとえば、学術的な出版物の量で外部資金や競争的資金、キャリアが主として決まるとしたら、自由な研究があまり認知されず、そうした研究は出版されにくくなってしまう。特に、公共での複雑な学術的なテーマについての細分化された議論は、フェイクニュースや、閉鎖的な意見を持つ一部のグループの中での議論の偏りといった、ソーシャルメディアの問題を孕む発展によって抑制されてしまう。しかし学問は、気候変動、エネルギー転換、デジタル化、人口変動など、目下、社会全体にとって重要な課題がより複雑化するのに対応するため、有意義な科学的知見を適切に社会へと伝えていくための道具、すなわちよく練られた方法論をさらに必要としている。

AvH: https://www.humboldt-foundation.de/web/pressemitteilung-2019-05.html