ドイツ学術情報(過去の分)

「学術の生命線」:Steinmeier大統領とMerkel首相がベルリンでのフンボルト財団の総会に。800人のフンボルティアーナ(フンボルト財団奨学研究員)とその家族が参加(7月27日)

今回集まったフンボルト財団(AvH)の研究者はブラジルや中国、アメリカ、ナイジェリア、イタリア、メキシコ、ネパール等の出身である。現在フンボルト財団の支援を受けドイツの大学で研究している約80カ国からの800人近い研究者が、昨日からベルリンで開催中のフンボルト財団の年次総会に集まった。

昨日Merkel首相が総会の開会を宣し、財団が海外のフンボルティアーナたちの革新的なネットワーク構想に与えるフンボルト同窓会賞を授与した。メルケル首相は学術の自由と多角的協力の意味を強調し、これに加えて国際協力を通じたフンボルト財団の貢献を主張した。首相は「研究者たちのネットワークは、今日学術の生命線として、能動的な、そして形成されたグローバリゼーションの一部である。世界中の3万人の研究者によるフンボルトネットワークは特に際立っている。フンボルト財団は、学術だけでなく社会と文化の架け橋を築いている。」と述べた。

今日フンボルティアーナとその家族は、Steinmeier大統領に連邦大統領官邸であるベルビュー城の庭園に招待された。大統領は外国からの研究者たちに、ドイツとの協力に対し「学術的卓越性は、世界の最も優れた人たちの交流と競争で成り立つ。そしてフンボルトファミリーの一員であるあなた方は、それに重要な寄与をしておられ、それにより、ドイツの学術ネットワーク化にも重要な寄与をして頂いている。」と感謝の言葉を述べた。

フンボルト財団Pape会長は、出席した研究者たちに分野と国の境を越えるよう呼びかけ、どれだけ学術と社会一般の人々との間の対話が重要であるかを強調した。「私たち研究者は、何をするか、何をすることができるか、そしてとりわけ何ができないかを説明しなければならない。」また彼はフンボルティアーナたちに「対話し、信頼を強化する新しい道を探そう。私たちが批判的に研究の背景を問われるなら、真摯に耳を傾けよう。」と学術と社会との隔たりをつなぐ架け橋になるよう呼び掛けた。

この日の朝、Steinmeier大統領は日本の政治学者野口雅弘氏に、ドイツと日本の文化や社会的相互理解に対して学問上特別な功績に贈られる2019年度フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト賞を授与した。午後には、アドラースホーフで講演や研究室・キャンパスツアーが開催される。

フンボルティアーナの大統領訪問は、1955年以来の伝統であるのと同時に年次総会のハイライトでもある。

AvH: https://www.humboldt-foundation.de/web/pressemitteilung-2019-14.html
 

ドイツ、エクセレンス・ストラテジーにおける最終決定:エクセレンス委員会は10大学と1大学コンソーシアムを選定(7月19日)

ドイツ学術審議会とドイツ研究振興協会との共同プレスリリース、2019年7月19日

2019年7月19日、エクセレンス委員会はドイツのエクセレンス・ストラテジーにおける「エクセレンス大学」事業の最初の公募において、待望の決定を下した。19件の申請のうち、10の大学と1つの大学コンソーシアムが選定され、機関への恒久的な資金措置とエクセレンス大学として得難い称号を受けることとなった。

   アーヘン工科大学

   ベルリン大学連合

   ボン大学

   ドレスデン工科大学

   ハンブルグ大学

   ハイデルベルク大学

   カールスルーエ工科大学

   コンスタンツ大学

   ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン

   ミュンヘン工科大学

   テュービンゲン大学

このエクセレンス委員会の待望の決定は、ボンにある学術センターでの最終会議のすぐ後に、プレスカンファレンス及びインターネットのライブストリーミングを通じて発表された。連邦政府と16の州政府の共同カンファレンスの共同議長であるAnja Karliczek連邦教育研究大臣、ハンザ同盟都市ブレーメンの科学・健康保護担当上院議員のEva Quante-Brandt教授は、2019年11月1日から合わせて年間1億4800万ユーロの資金措置を受ける、選ばれた大学と大学コンソーシアムの名前を発表した。ドイツ学術審議会の議長であるMartina Brockmeier教授と、ドイツ研究振興協会のPeter Strohschneider理事長は、今回の決定の経緯を詳しく説明し、ドイツのエクセレンス・ストラテジーの初期評価を提示した。

「私は選定された大学とベルリン大学連合に、祝辞を述べるとともに大いに敬意を表させていただきたい。」と、ドイツ学術審議会議長のBrockmeier教授は述べる。「彼らは、大学が将来どのような姿になれるか、非常に印象的に示していた。国際的にトップレベルの大学・研究機関と競い合うために、大学は卓越した研究における強固な学術的な基盤と、大学組織に関する明確な目的意識、機関の発展のための堅実な構想を必要としている。選ばれた大学はすべての面に関して、優れていることをとても納得のいく形で示した。」

ドイツ研究振興協会のPeter Strohschneider理事長は次のように述べている。「エクセレンス大学に関する今日の決定は、57のエクセレンス・クラスターへの資金措置の決定に基づくものだ。これらのクラスターは2018年9月に選定され、2019年1月から資金措置を受けている。このファースト・ラウンドが完了することで、エクセレンス・ストラテジーはエクセレンス・イニシアティブ(2006年、2007年、2012年)の3つのファンディング・ラウンドをさらに拡大する。この両方の競争は国際的な競争力のあるドイツの大学におけるトップレベルの研究を奨励するため、研究と政治の間のすばらしい協力を反映したものとなっている。」


前提条件

エクセレンス大学の称号を競う資格を得るには、2018年9月にドイツ研究振興協会が所掌するエクセレンス・クラスター事業で少なくとも2つ(大学コンソーシアムの場合は3つ)のエクセレンス・クラスターを確保する必要があった。8つの州からの17の大学と2つの大学コンソーシアムが、「エクセレンス大学」事業に申請するための、この正式な前提条件を満たしていた。

その後、ドイツ研究振興協会は、「エクセレンス大学」事業における学術主導の審査プロセスを担当するドイツ学術審議会に本件を引き継いだ。2019年1月から5月にかけて、申請大学及び大学コンソーシアムでの現地訪問が行われた。合計190名の審査員(うち90%以上が海外の研究者)が、大学を総括的に、とりわけ研究、教育、人材の流動性と研究基盤の過去と現在のパフォーマンスを評価するために特別に構想された評価プロセスに参加した。なお、大学と大学コンソーシアムは機関全体の継続的な発展に関して、説得力のある計画を提示しなければならなかった。


審査手続

2019年7月16日から18日のミーティング、いわゆる専門家委員会(39名の国際的に認められた学者で構成されている)は、19機関の個別評価結果を比較評価した。専門家委員会による資金措置の選奨に基づいて、2019年7月19日のエクセレンス委員会にて最終的な決定がなされた。エクセレンス委員会は専門家委員会と、連邦政府及び16の州の高等教育研究を担当する大臣たちによって構成される。資金措置の決定には、専門家委員会メンバーの過半数の投票と、連邦政府及び州から少なくとも25票を獲得する必要である。


エクセレンス・ストラテジーの将来

「エクセレンス大学」事業を通じて提供される資金は、原則として恒久的なものである。ただし、エクセレンス戦略を支える行政協定には、ふたつの追加条項が含まれている。まず、選ばれた大学は、資金措置必要条件を満たすために次の公募で再度必要最小数のエクセレンス・クラスターを確保する必要がある。次に、選ばれた大学は7年ごとに定期的に評価され、その結果が良好であれば引き続き資金措置を受けることができる。さらには、競争性が高く学術的に推進される応募手続きで勝ち抜いた場合、エクセレンス大学の2回目の公募で、2026年以降追加で4つの大学もしくは大学コンソーシアムが資金措置を受けられるようになる。エクセレンス・クラスターの事業において、57のエクセレンス・クラスター(34大学が関連)は2018年9月に選ばれ、2019年1月から資金措置を受けている。

エクセレンス・ストラテジーは連邦政府と16の州政府によって、ドイツ連邦共和国基本法の第91b条第1節に基づく行政合意にて2016年6月に合意された。これは、ドイツの大学のトップレベル研究を強化するのみならず、明確な大学組織の発展を奨励し、ドイツの研究及び高等教育システム内での協力を強化することを目的とした恒久的な資金措置事業である。連邦政府と16の連邦州は5億3300万ユーロもの年間総予算を用意している。資金の75%は連邦政府から提供され、25%はそれぞれの州政府から提供される。

DFG: https://www.dfg.de/en/service/press/press_releases/2019/press_release_no_34/index.html
 

研究における動物実験:動物福祉と研究の質の狭間で(7月17日)

ドイツ研究振興協会(DFG:Deutsche Forschungsgemeinschaft)の評議委員会がガイドラインを発表

研究での動物実験において、研究の最高の質と高い動物福祉基準の両方を保証することは重要なことであるが、実際にはそれは未だ相互依存と論争を引き起こしている。ドイツ研究振興協会(DFG:Deutsche Forschungsgemeinschaft)の動物保護と動物実験に係る常任評議委員会は、研究者たちに、科学的に妥当なプロジェクト設計になくてはならない存在として動物福祉指針にコミットするよう求めている。この目標を支援するため、評議委員会は動物実験を含む研究プロジェクトの設計・計画・実施ガイドラインを発表した。

「これらのガイドラインによって、評議委員会は研究における動物実験の基本的なふたつの局面―動物福祉と科学的妥当性―の間に密接な関連性を設けたいと思っている。」と、委員長であるBrigitte Vollmar教授は言う。「私たちは研究で動物実験を行うために特定の要件を明確にしており、動物実験研究を計画・説明する際、どのように妥当性を確保するかについての支援の手を差し伸べている。」

発表された『研究における動物実験:3R原則と科学研究の妥当性』は、研究での動物実験と科学研究プロジェクトの妥当性との間の関係を、とりわけ3R原則にのっとって強調している。3R原則は、研究者たちに、動物実験をできるかぎり代替手段に置き換えること(replace)、実験で使用する動物の数を減らすこと(reduce)、動物たちに与える苦痛を最小限にするなど、実験を改良すること(refine)を義務付けている。評議委員会は3R原則を守り、実行することは必須であるが、一方で科学的に妥当なプロジェクト設計との組み合わせにおいてのみ意味をなすものであることに言及している。両局面が十分に発揮された場合にのみ、動物実験における科学的妥当性、実験反復可能性、動物福祉が保証される。

評議委員会によると、実験による研究結果の科学的妥当性は、主として、動物モデルの質、原因と結果の間の仮定関係の質、実験の結果が実験の特定の状況を超えて一般化され得る度合などによるとのことだ。最終的に、ガイドラインは、例えば動物種の選択や(実験に使う)動物の数を決定するときなど、研究実施において生じる衝突が起こる部分を特定し、それらにどのように対処するかについて推奨される方法を提案している。

「これらふたつの局面―動物福祉と科学的妥当性―は、不可分に関連しあっているので、研究プロジェクトを設計・説明する際の初期の段階で、科学界全体で考慮に入れる必要があるのです。」とVollmar教授は述べている。

DFG: https://www.dfg.de/en/service/press/press_releases/2019/press_release_no_33/index.html