ドイツ学術情報(過去の分)
Anja Karliczek大臣:コロナでもBAföG(連邦奨学金法)では不便はない(3月13日)
BAföGは新型コロナウイルスパンデミックにおける条件つき閉鎖や入国制限でも引き続き支給
連邦奨学金(Bundesausbildungsförderungsgesetz:BAföG)の支援を受ける学生は、学校や大学が閉鎖されたり、他国への入国が遮断されたりした場合でも、教育資金を受け取り続けることができる。これは、金曜、BMBFが法律を施行する各州に宛てた政令で規定したものである。Anja Karliczek連邦教育大臣が説明した。
「COVID 19 パンデミックにより学校や大学が閉鎖されたとしても、BAföG 受給者は引き続き教育支援を受けることができる。BAföG 受給者には、現在の異例な事態の中においても、明確で計画的な安全性を確保していただきたい。コロナウイルスのパンデミックのためにBAföGの資金繰りを心配する必要は誰にもない。だからこそ私は、本省に、BAföGの資金提供はこれまでと同じ範囲で継続するということを明確にする政令を出させたのである。パンデミックのために学校や大学が閉鎖され、授業や講義が中止になった場合でも、BAföGは引き続き支給される。BAföGの受給者がコロナウイルスのパンデミックによって不利益を被ることがあってはならない。これは私にとって重要なことである。」
背景:
COVID19パンデミックの影響で、ドイツではすでに学校が閉鎖されている。海外では教育活動が中断されている。パンデミックに関連した入国制限を課している国もある。この国では、コロナウイルスSARS-CoV-2のさらなる蔓延を食い止めるため、一部の州では授業の開始を延期している。
BMBFは、BAföGの受給者がパンデミック関連の予防措置によって不利益を被らないようにするため、BAföGの実施を担当する州とその研修推進局に対して、BAföGの支給を継続しなければならないことを明確にする政令を発出した。パンデミックの影響で学期開始が遅れた新入生であっても、当初予定されていた時期に授業が開始された場合と同様にBAföGを受給することができる。
教育を維持するため、教育機関においてオンラインコースを利用できるようになり次第これらのオンラインコースへ参加することが、奨学金支給要件の観点から必須である。
BAföGにより、連邦政府は、家庭の経済状況にかかわらず、若者が自分の意向に沿った教育を受けることができるよう支援している。1971年にBAföGが導入されて以来、すでに何百万人ものティーンエイジャーや青年層がこの教育支援の恩恵を受けている。これまでは連邦政府と州政府が共同でBAföGの費用を負担していたが、2015年以降は、連邦政府が単独でそれを負担している。
https://www.bmbf.de/de/karliczek-keine-nachteile-beim-bafoeg-wegen-corona-11122.html
Anja Karliczek大臣:新型コロナウイルスのよりよい理解のための研究を促進(3月3日)
BMBFが新薬開発の支援布告を開始
新型コロナウイルスに対する有効物質を世界中が待ち望んでいる。
ドイツ連邦教育研究省(Bundesministerium für Bildung und Forschung : BMBF)は、ウイルスの理解を深め、呼吸器疾患COVID-19の治療法を見つけようと努力する研究者を支援するため、新型コロナウイルスSARS-CoV-2の研究に対する資金提供を加速している。
Anja Karliczek大臣は次のように述べた。
「新型コロナウイルスの世界的な蔓延とドイツにおけるその疾患により、多くの人は当然の不安に満ちている。連邦政府は、感染症の蔓延を食い止め、罹患した人々にとって効果的な治療を確保するために尽力している。一刻も早く医学が新型ウイルスに効果的に対抗できるよう、研究努力を拡大し、加速させている。そのため、我々の省は今週火曜に資金提供のための公募を発表した。目的は、研究者がウイルスの生態とその感染経路についてより良い理解を得ることができるようにし、薬剤や他の治療法の開発を進めることである。これには、既存の薬剤がCOVID-19の治療に活用し得るどうかの試験も含まれる。連邦教育研究省は、この新しい取り組みに最大1,000万ユーロを提供している。この資金提供は、COVID-19に対するワクチン開発のためのBMBFの継続的な支援を補完するものである。」
背景:
今回の公募の目的は、研究者が通常の資金調達手続きよりも迅速にプロジェクト資金を獲得できるようにすることである。必要な申請書の審査と評価に要する期間はほんの数週間である。BMBFは既に、プロジェクト資金と機関資金の両方において、ドイツにおける研究の現行の取り組みを支援している。これには、例えば、ドイツ感染症研究センターなどが含まれている。
世界保健機関(WHO)のリーダーシップのもと、世界の研究コミュニティは、現在のコロナウイルスの発生に対応して共通の研究優先事項を策定した。すでに様々な国際的なファンディング・エージェンシーが、新しい治療法を開発するための早急な対策を打ち出している。BMBFは、他の多くのファンディング・エージェンシーと同様、国際的な研究資金提供機関間の協力のための国際的なプラットフォームであるGloPID-R(Global Research Collaboration for Infectious Disease Preparedness)のメンバーである。このネットワークは、伝染病が発生した場合に、連携した研究対応を迅速かつ容易に開始することを目的として設立された。
ワクチンの開発は既に様々な場所で国際的に進められている。ドイツでは、CureVac社 (CureVac AG)において、新型コロナウイルスに対するワクチンが「感染症流行対策イノベーション連合」(Coalition for Epidemic Preparedness Innovations : CEPI)の枠組みの中で開発されており、CEPIもまたBMBFから総額9,000万ユーロの支援を受けている。WHOとの緊密な協力のもと、CEPIは、数ヶ月以内という通常よりもかなり短期間で最初のワクチンを臨床試験のステップへと進めるという目標を掲げている。
Anja Karliczek大臣:がん治療に人工知能(AI)を利用(3月5日)
連邦研究大臣がキャンサースカウト(がん探知)プロジェクトを紹介
記者会見でのAnja Karliczek大臣
人工知能の利用は、すでに医療の多くの分野で病気の診断や治療を向上させている。本日木曜日、ベルリン(Berlin)において、Anja Karliczek連邦研究大臣はがん治療のための新しいAI研究プロジェクトを発表した。このプロジェクトは、ゲッティンゲン大学病院(Universitätsklinikum Göttingen)とシーメンス・ヘルシニアーズ社(Siemens Healthineers)によって運営されており、ドイツ連邦教育研究省(Bundesministerium für Bildung und Forschung : BMBF)の資金提供を受けている。Anja Karliczek連邦研究大臣は以下のように説明する。
「AIは正しく使えば人に利益をもたらす。特に医療の分野では、そのことがより顕著になってくる。AIはすでに医療における診断の向上に大きく貢献している。しかし、連邦教育研究省では、これらのアプローチの多くがまだ初期段階にあり、研究が必要であることも認識している。現在、我々はすでに医療におけるAIアプローチに特化した60以上のプロジェクトに9,000万ユーロを投じている。今後数年間でこれらの将来的な投資を拡大していきたいと考えている。腫瘍性疾患は、医学におけるAIの応用分野であり、多くの研究プロジェクトの中で突出している。「がんとの闘いの10年」プロジェクト(Nationalen Dekade gegen Krebs : NDK project)において、我々は改めてこれらの病気との特別な戦いを宣言した。がんの種類や形態が多様化していることに鑑み、がん患者の診断法や治療法を向上させるため、AIが提供する機会を利用し、研究者を支援したいと考えている。特別なプロジェクトの一つに「キャンサースカウト(がん探知)」がある。AIを使ったデジタル生体組織診断が目標である。このプロジェクトの中核をなすのは、腫瘍細胞の事前スクリーニングのようなものである。AIの助けを借りて、コンピュータが腫瘍細胞を特定の区画、いわゆる分子サブタイプに区分けする。これにより、がん患者をより適した方法で治療することが可能になる。これらのアプローチは、個別化がん治療の一種である。我々の省はこのプロジェクトに1,000万ユーロの資金を提供している。これは、科学と産業が人類の利益のためにどのように協力しているかを示す良い例である。」
ゲッティンゲン大学病院病理学部長であるPhilipp Ströbel教授は次のように強調する。「我々のアイデアをBMBFに納得していただけたことを大変嬉しく思う。資金提供のおかげで、我々の強力な産業パートナーであるシーメンス・ヘルシニアーズ社と共に、我々のプロセスの可能性と限界を広く試すまたとない機会を得ることができた。これにより、臨床ルーチンのための一連の全く新しい方法を開発することができるようになる。」
シーメンス・ヘルシニアーズ社の「新規事業開発・企画」部門の責任者であるChristian Wolfrum氏は、次のように付け加える。「この研究プロジェクトは、異なるデータソースを使用およびリンクし、がん診断をより正確なものにし改善させることで、臨床上の意思決定を支援することができる。このプロジェクトの課題の一つは、人工知能を用いて腫瘍内の治療に関わる分子の変化を予測するために、病理学的データ、ゲノムデータ、プロテオーム解析データを用いて人工ニューラルネットワークを鍛えることである。」
背景:
毎年、ドイツでは約50万人が悪性腫瘍に侵されている。近年、非常に効果的な新薬の開発により、すでに多くの腫瘍の治療法が大きく変化し、がんとの闘いに全く新しい機会が開かれている。現在、BMBFは「キャンサースカウト(がん探知)」により、がんとの闘いにおける新たなツールを医学に提供することを目的とした大規模な共同研究プロジェクトに資金を提供している。
およそ1,000万ユーロの資金が投入されているこのプロジェクトの主な目的は、「デジタル生体組織診断」を使って腫瘍の分子改変を特定することができる人工知能の研究である。これにより、現在よりもはるかに短い時間でこれら変異を治療することが可能になる。
https://www.bmbf.de/de/karliczek-kuenstliche-intelligenz-fuer-krebsbehandlung-nutzen-11047.html
Anja Karliczek大臣:新型コロナウイルスの研究資金を大幅に拡充(3月11日)
新型コロナウイルス研究に1億4,500万ユーロを追加
本日水曜日、ドイツ連邦議会の予算委員会は、コロナウイルスの研究のための追加資金を発表した。Anja Karliczek連邦研究大臣は次のように説明した。
「本日ドイツ連邦議会の予算委員会がコロナウイルス研究のための追加資金として1億4,500万ユーロを承認したことを嬉しく思う。これにより、我々はひとつのシグナルを送っている。すなわち、我々はウイルスと戦うために可能な限りのことをしているということだ。科学者たちは、彼らの仕事に必要な財源を持っていなければならない。効果的なワクチンは、中期的にウイルスを食い止めるための最良の方法である。しかし、このタスクには非常に時間とコストがかかる。
我々は、国際的なワクチンイニシアティブである「感染症流行対策イノベーション連合」 (Coalition for Epidemic Preparedness Innovations : CEPI)に1億4,000万ユーロの追加支援を行う。CEPIはすでに、ドイツのバイオテクノロジー企業CureVac社を含む世界の6つの研究機関にワクチンの開発を委託している。この資金により、私たちは研究が継続されるよう支援している。予算委員会には大変感謝している。
しかし、私たちは次のことを認識しなければならない。新しいワクチンが開発されたとしても、臨床試験が行われ、その有効性が検証されなければならない。それには時間を要する。したがって、私たちは忍耐強くなければならない。たとえ研究でも奇跡を起こすことはできない。
ワクチンの研究を推進することだけに留まるべきではない。先週火曜、本省では、1,000万ユーロの資金提供にかかる公募を行った。本日発表した資金により、これを合計1,500万ユーロに増額可能となった。これにより、研究者達はウイルスの生態を研究するための追加援助に申請することができる。しかし、この資金は医薬品の開発にも重要な意味を持つ。これには、他のウイルスのために開発された薬剤がCOVID-19に対して有効かどうかの検証も含まれる。
ドイツには、我々が長年にわたり支援してきた優れた研究がある。これには大学の医学が特別な役割を果たしている。我々は、その力をより有効に活用できるかどうかをよく考えなければならない。つまり、大学医学全体がこのような危機に備えるための構造やプロセスを開発するということを意味する。また、ここでも連邦政府が中心的な役割を果たしていると考えている。
コロナウイルスは今、私たちに大きな試練を与えている。昨今、コロナウイルスと闘っているすべての人々に感謝を述べたい。医師、看護師、研究者は素晴らしい仕事をしている。
ウイルスの拡散を少しでも遅らせるために誰もが自分の責任で貢献することができる。そうすることで、研究者がワクチンや治療法の選択肢を探すための貴重な時間を得られる。心からの感謝を申し上げる。あなた方を全面的にサポートする。」
背景:
国際的なワクチンイニシアティブCEPI(Coalition for Epidemic Preparedness Innovations : CEPI)は、パンデミックの可能性を持つ病原体に対するワクチンを開発するために2017年に設立された。CEPIは、政府のファンディング・エージェンシーだけでなく、財団や研究機関、製薬会社などが連携して行う官民連携の取り組みである。ドイツは設立メンバーの一員であり、これまでに総額9,000万ユーロの支援を行ってきた。
2020年1月末、ドイツは他のスポンサーとともに、CEPIが既存の資金を使って新型コロナウイルスに対するワクチン開発に注力することを決定した。ドイツからの追加資金に加え、ノルウェー、英国、ビル&メリンダ・ゲイツ財団など、CEPIの他のメンバーも資金を拡大することに合意している。
3月3日には、連邦教育研究省が総額1,000万ユーロの資金提供にかかる公募を発表した。目的は、研究者がウイルスの生態とその感染経路についてより良い理解を得ることができるようにし、薬剤や他の治療法の開発を進めることである。これには、既存の薬剤がCOVID-19の治療に活用し得るどうかの試験も含まれる。現在行われている公募の資金は1,500万ユーロまで増額することができる。
Anja Karliczek大臣:Covid-19との闘いにおいて、大学付属病院の国内ネットワークを支援(3月26日)
連邦研究省がドイツの大学病院/大学付属病院研究ネットワークに1億5,000万ユーロを用意
連邦教育研究省(BMBF)は、現在のパンデミック危機の克服について、ドイツの大学病院の研究行動をまとめ、強化するための研究ネットワークの構築に1億5,000万ユーロを援助する。イニシアティブはシャリテ学長Heyo K. Kroemer教授とシャリテウイルス研究所長Christian Drosten教授によって発案された。
それに関し連邦研究省大臣Anja Karliczekが説明する。
「Kroemer教授とDrosten教授のイニシアティブは、パンデミック克服と多くの重症患者の治療においてとても重要な役割を与える。このイニシアティブは、私たちの社会のこの例外的状況において比類がない。私たちは患者を最善に看護し、同時に医療従事者を守るために効果的なアイデアやコンセプトを必要とする。
ドイツの大学病院は、これらのアイデアとコンセプトの開発において卓越した立場にある。 私たちはこれらの専門知識をより強力に活用したい。シャリテがこれらのネットワークを調整する。
以下のことが計画されている。
イニシアティブを通して、できるだけ全てのドイツの大学病院の措置計画、診断戦略と治療戦略が結びつけられ、有効に活用される。目標は、お互いに一緒に学ぶことである。すなわち、新型コロナ流行は私たちが今までに経験したことがない挑戦である。 つまり、新型コロナウイルス感染者の可能な限り最善の処置を保障する病院の構造とプロセスを作らなければいけない。そうすれば、大学病院と他の病院はすばやく、質が保証され納得できる行動をすることができる。
さらに治療された新型コロナウイルス感染症患者のデータが、将来的に全大学病院で体系的に記録され、データバンクにまとめられる。こうして病歴あるいは患者の体質のデータも結びつけることができる。
これらのデータ収集に、医学研究に従事していない臨時の科学者たちを追加で迎えることができる。彼らはその研究で医者の仕事の側面を支えるだろう。幅広いデータレコードのおかげで、確実に信頼の置けるとても有益な知識が得られる。これらは個々の患者の治療やパンデミック管理において役立つが、ワクチンや治療開発においても同様に役立つ。
その第一歩として国内のタスクフォースも立ち上げられる。連邦政府は、これに積極的に関与する。このタスクフォースは、大学付属病院と政治の間のコントロールと調整に役立つ。様々な他の科学的ネットワークも取り入れられなければならない。私たちは科学と政治の良い関係をさらに密にしたいと思う。
これらの比類なき科学的なプロジェクトである力の結集は、COVID-19の治療と研究において大きな前進となるだろうと確信している。Kroemer教授とDrosten教授のイニシアティブに感謝し、成功を祈る。そして私は、この感謝と祈りが国内の非常に多くの人々の代弁であると確信している。」
背景:
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対し、ドイツは第2次世界大戦後最大の挑戦に臨んでいる。ウイルス蔓延抑止だけでなく、患者のための最善の医学的処置の保証にもドイツ全土の調整が必要である。調整によるより迅速な知識獲得は優先度が高い。それにはとても有能なサポート構造が必要である。
そこに、将来的に全てのドイツの大学病院の提携である研究ネットワークを配置する。すなわち危機に際しては、初めて大学病院や保健衛生施設の関係者のドイツ全土すべての措置計画や診断戦略、治療戦略が体系的に結びつけられることになっている。
そうして、大学病院や他の病院は迅速に、質が保証され、納得できる行動をすることができる。例えばCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)患者の遠隔医療の治療のような、特に革新的な方法は、成果が出たテスト後すばやく広範囲に使用できる。
さらに研究者は、COVID-19患者の治療を規格化し、追跡、分析する。これらの基盤の上に、例えば基礎疾患のある患者グループのために治療オプションを開発することができる。現存する認識と新しい認識は、すばやく包括的に伝達される。そうしてそれらの知識がすばやく実務に活かされ、最善の治療の質を保障することができる。幅広いデータレコードは、さらにワクチンや治療法開発のためだけでなく、非常に有益であるパンデミック管理のためにも新しい科学的知識を提供する。
研究ネットワークは、シャリテ-ベルリン医科大学によって調整される。