ドイツ学術情報(過去の分)

カリチェック大臣:新型コロナウイルスのより良い理解へ財政資金を3倍に(7月20日)

BMBF(連邦教育研究省)がペースを速めた方法でSARS-CoV-2(新型コロナウイルス)研究プロジェクトに4,500万ユーロを投入

連邦教育研究省(BMBF)は 新型コロナウイルスSARS-CoV-2とそれによって引き起こされる新型コロナウイルス感染症(Covid-19)に対する有効な戦略と治療法の研究をさらに強化する。このウィルスをより深く理解する為の最初の研究プロジェクトは既に始まっている。これに関し連邦教育省大臣アンヤ・カリチェックが説明する。

「新型コロナウイルスの生物学とこのウイルスの蔓延経路をより良く理解することは、効果的な治療法とウイルスを封じ込める対策のカギである。同時に、政治的決定と社会的推奨がパンデミックと関連して、ひとりひとりそして私たちの社会にどのように影響をもたらすかを調べるつもりである。その際、私たちは学術研究を頼りにする。研究者たちは、徐々に日常へ戻るために知識と責務をもって最善を尽くしている。そのため連邦研究省は、彼らに仕事で必要とする大綱的条件を提供するつもりである。

そのため私たちは新型コロナウイルスの研究に関する資金調達に本来予定されていた資金を今3倍にし、4,500万ユーロを90近くの卓越したプロジェクトに投資するつもりである。支援される計画は、基礎研究から臨床研究、パンデミックと関連する倫理的そして法的、社会的問題提起の分析にまでにわたり、すでに学術的多様性を満たしている。これで私たちはパンデミックの封じ込めを持続して効果的に成し遂げるために全力で多くの未解決の問題に立ち向かえる。

この異常事態においてプロジェクトができるだけ早く始められるよう、3月3日の資金提供のために特別な条件を適用した。特に迅速な方法で、500以上のプロジェクトのアイデアが独立した専門家によって審査された。」

背景

3月3日に公布された資金調達は、連邦官報で2016年2月15日に発表されたBMBFの「「人獣共通感染症国内研究ネットワーク」の助成方針」の無期限の「迅速対応モジュール(Rapid Response Modul)」 に基づく。

このモジュールは、緊急発生したエピデミック(流行)あるいはパンデミック(世界的な大流行)におけるペースを速めた支援方法で、個別の助成措置を予定している。そうして研究者は、通常のプロジェクト資金より早く受け取れる。この助成は、ワクチン開発と大学病院の強化に関して既に現在行われている支援に補足される。

以下、資金調達から模範的な4つのプロジェクトを紹介

・CoronaCare(ELSA研究)
このプロジェクトは、共同体や家族などの社会的交流が、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)パンデミック対策によってどのような影響を受けているかを調べ、そこから、不確実さと不安の扱いへの戦略と推奨を導き出す。CoronaCareは民族誌的研究として実施される。
プロジェクト管理:Christine Holmberg教授、社会医学・疫学研究所、ブランデンブルク医科大学、ノイルッピン

・OrganSars(基礎研究)
可能な限り自然な条件下で新型コロナウイルスSars-Cov-2の感染の詳細を研究できるように、ボーフム大学の研究チームは、肺組織を3次元的に複製する臓器に似たミクロ構造である人間の肺オルガノイドを幹細胞から成長させる。これらは、肺組織の様々な細胞タイプ間の包括的な相互作用を研究できる、信頼性の高い3Dモデルを提供する。これらの技術は、ハイスループット方式において様々な抗ウイルスの作用物質を使ったテストを実施することも可能にする。
プロジェクト管理:私講師Thorsten Müller、ジュニア・プロフェッサーStephanie Pfänder、ボーフム大学

・RECOVER(臨床研究)
この臨床研究の目的は、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)から回復し、SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)に対する抗体を持つ人々の血漿でのCOVID-19患者の治療の有効性を研究することである。この研究には、重度な経過であるが人工呼吸器を必要としないCOVID-19に罹患した患者が含まれる。血漿による治療の効果は、標準治療と比較される。回復者の血漿がSARSやエボラ出血熱、あるいはインフルエンザ感染患者の死亡率を低下させるというヒントは既に存在する。このアプローチは、少数のCOVID-19の重症者にも既にテストされたが、今日まで臨床研究からの体系的な結果はない。もし説明されたアプローチが成功であれば、これは未来のウイルスによるパンデミックにおける、新しいウイルスの発生と効果的なワクチン接種との隙間を埋める青写真として役立つ。
プロジェクト管理:Carsten Müller-Tidow教授、Dr. Claudia Denkinger、ハイデルベルク大学

・COVID19 HOSTaGE(遡及的、疫学的研究)
COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の推移は、無症状から重度の肺疾患までに及ぶ。どの要因がこの病気の重症度を決定するのか、これまで不明である。目下の計画は、例えば血液型が感染経過あるいは病気の深刻さに関連しているかといった、病気の経過に及ぼす遺伝的シグネチャーの影響を調べる。さらに特定の遺伝的シグネチャーが生物学的メカニズムの予測を可能にするかどうか、そしてそれによって効果的な治療アプローチを可能にするかどうかも研究される。計画されている分析の基盤は、最も深刻な感染状況だったいくつかのヨーロッパ地域の5,000の血液検査である。計画されている研究は遡及的に実施されるので、最初の結果は早くも2020年8月末に期待されている。
プロジェクト管理:André Franke教授、キール大学

https://www.bmbf.de/de/karliczek-finanzielle-mittel-zum-besseren-verstaendnis-des-coronavirus-verdreifacht-12151.html