ドイツ学術情報(過去の分)
国際的な博士課程学生についてのデータを初めて掲載。NACAPS研究の成果(11月19日)
ドイツの博士課程研究はどれほど国際的か?ドイツ高等教育科学研究センター(DZHW)は、初めてこの質問に対して科学的分析を行い調査した。分析は全独学術パネル調査(National Academics Panel Study:Nacaps)の第一波としてDZHWによって2019年に収集された調査結果に基づいており、その調査には合計で28,000名以上のドイツの博士課程学生が参加した。ドイツ学術交流会(DAAD)は、連邦教育研究省の資金助成とともに特別評価に対して資金助成した。DZHW研究員であり、この研究の著者でもあるヤンカ・ヴィリゲ氏は結果を要約している。
ヴィリゲさん、あなたはドイツにおける博士課程研究の国際性の特別な評価を行いました。あなたにとってこの研究の何が特別なのでしょうか。
このNacapsの特別評価により、ドイツにおける博士課程研究の国際性について包括的な印象を初めて得ることができた。この第一波の調査データ、すなわち2019年の初めからの初期段階調査は2つの見方から分析された。その見方とは、今のところすでに博士課程研究で一時的な海外滞在を完了した博士課程学生の視点と、ドイツの大学で博士論文を書くことを決めた博士課程の留学生の視点である。特別評価は、国際的移動に対する姿勢、管理と雇用の状況、将来のキャリアプランなどの厳選したトピックに焦点を当てている。この研究の特筆すべき特徴の一つは、国際的な博士課程学生に係る包括的なデータが初めて評価されたことである。それは、さらに詳細な研究の基礎としての役割を果たすこともできる。
あなたの調査結果によると、27%の国内博士課程学生はすでに海外に行っているようですが、あなたから見てその値は多いでしょうか少ないでしょうか。また、ドイツでの博士課程の間に博士課程学生が海外へ行く、もしくは行かないことについて、何が主な理由でしょうか。
今のところ海外で過ごしたことがあると回答しているドイツの博士課程学生が27%というのは、2019年の初めの調査時点における状況を記録した最初の数値である。したがって、それが公式統計で報告された、学位に関係する移動か区別できる初めての調査結果である。この数値を分類するため、それを一時的な海外滞在に乗り出す博士課程学生(比較的規模は小さいが)と比較することができる。両方のグループにとって、海外への(更なる)移動の段階は、彼らの研究や博士課程において排除されていない。学生の海外滞在は、研究段階の後半でますます行われており、博士号取得後にさらに海外滞在はどんどん実行されている。一時的な海外移動の更なる発展についての分析、そして最近究明された割合の確認は、将来のNacaps調査を基にして、可能になるだろう。
今のところ博士課程の中で既に海外滞在を終えた学生は、たいてい海外滞在と研究スキルの獲得を結び付けている。また、ドイツ国外の科学者とのコラボレーションする願望と、外国語スキルの改善も重要な視点である。回答者の半分はキャリア関係の動機に言及しており、またそれと同じくらいの数の回答者は海外滞在は課題の通常の資格要件の一部と言及している。
一時的な海外滞在を経験していない(まだしていない)博士課程学生は、特にその後に続く障害を考えている。半分をわずかに超える者はパートナーや子ども、友人と離れ離れになることを見込んでいるが、多くの場合、移動についての経済的な問題やドイツ国外で適切な専門家の職を見つける難しさがある。
あなたの調査の回答者のうち17%は、外国籍で海外大学の入学資格をもつ博士課程の留学生でした。この数値はどのように解釈されるでしょうか。また、このような博士課程学生は、どの程度ドイツでの生活や仕事の状況に満足しているでしょうか。そして、博士課程を修了した後の彼らの計画はどのようなものでしょうか。
17%という数値を大局的に見るためには、ドイツにおける留学生の割合を見ることが有用である。ドイツ連邦統計局によると、2019/2020年冬学期の11%というこの数値は、調査に回答した博士課程学生における数値より明らかに低い。Nacaps調査の潜在的な可能性は、特に博士課程学生や博士課程の状況というトピックの内容に関連した調査結果の収集、キャリアパスの展望を描くことにある。それゆえ、この調査は大学を選ぶ動機、指導状況、大学の環境の統合、資金調達とキャリア統合に焦点を当てた。言い換えると、生活と仕事の状況における様々な側面についてである。結果の要約は、博士課程の留学生の多くの割合は、博士課程生活、家庭生活の両方の状況に満足しているか、非常に満足しているということを示している。彼らのうち半分以上は指導状況に関してはそう述べており、また3分の2は博士課程の間の生活資金の資金助成を経験している。博士課程を修了した後の将来の職業について、博士課程の留学生の大多数は、アカデミックキャリア(大学教員としての資格)だけでなく学術界の外での研究や開発に関連した活動も魅力的だと思っている。このように、調査された博士課程の留学生は研究と科学に親和的であることがわかった。
シュタルク=ヴァッツィンガー新大臣は、迅速にプロジェクトを開始するつもりである(12月9日)
連邦教育研究省で新旧大臣の引継ぎ
12月8日(水)、ベッティーナ・シュタルク=ヴァッツィンガー(Bettina Stark-Watzinger)は、新しい連邦教育研究大臣として任命され、宣誓した。翌日、アンヤ・カリチェック前大臣は、ベルリンの省本部にて彼女に公務を引き継いだ。
前大臣であるアンヤ・カリチェックは次のようにコメントした。
「素晴らしい教育と研究は、ドイツが今後数十年にわたってイノベーションの国であり続けるための基盤である。連邦教育研究省の職員と共に、ここ数年間、国の近代化を大きく貢献できたことを私は非常に嬉しく思う。私たちは学校や大学への資金助成を拡大し、また職業訓練も改良した。研究においては、グリーン水素、量子テクノロジー、電池技術など、将来へのテクノロジーに対する資金助成を大きく拡大した。またコロナウイルスのパンデミックにより、健康研究は議会の焦点となった。私たちがバイオンテックのワクチン開発のサポートをできたことは、もちろん特筆すべきことであったと考えている。科学が人類にどう役立っているかは、ここでかつてないほど明らかにされた。私にとって、大臣として職務を全うできたことは光栄で嬉しいことだった。私は後任のベッティーナ・シュタルク=ヴァッツィンガー大臣のあらゆる成功を心から願っている。」
新大臣、ベッティーナ・シュタルク=ヴァッツィンガー連邦研究教育大臣は言う。
「本日、私は新しい連邦教育研究大臣として就任することに対して、非常に嬉しく、また身が引き締まる思いである。連立政権として私たちは高い目標を掲げている。私たちは共に、更なる発展を成し遂げるべく果敢に挑みたいと思う。教育と研究はこの点で重要な役割を持っており、我が国における進歩を加速させる最も重要な要素である。すでに成し遂げたものを基に、私の担当領域で連立政権合意のプロジェクトを迅速に始めることを、私は熱望している。コロナウイルスのパンデミックは、教育における近代化を進めることの必要性を顕在化させた。これが加速することとデジタル協定(DigitalPakt)を脱官僚化することが、私は特に重要であると考えている。これにより、教育の仕方がもっとデジタル、現代的、安全になるだろう。私たちは多様性のある研究環境のためにもっと尽力したいと思う。科学は、(国の)発展に対して重要な貢献をする。そのため、私たちが、全体の政府支出からの研究と開発への配分を3.5%に増やしたいと思っている。アンヤ・カリチェック前大臣の温かい歓迎と、我が国における教育と研究に対しての彼女の偉大な貢献に感謝している。」
背景:
コロナウイルスのパンデミックのため対面のイベントは開催されず、内部のライブストリーミングで、ボンとベルリンにある連邦教育研究省の職員は大臣交代の式典の様子を見ることができた。
https://www.bmbf.de/bmbf/shareddocs/pressemitteilungen/de/2021/12/091221-Amtsuebergabe.html
シュタルク=ヴァッツィンガー大臣:連邦奨学金法(BAFÖG)を推進し、再び魅力的に(12月22日)
BAföG報告書が明白な改革の必要性を明らかに/ドイツ復興金融公庫(KfW)の学生ローンは無利子期間を延長
連邦内閣は12月22日、第22次連邦奨学金法(BAföG)報告書を議決した。この報告書は、前政権の連邦政府によって仕上げられた。2017年から2020年までの報告期間において、受給者の数は78万2000人から63万9000人に減少した。
これに関して、ベッティーナ・シュタルク=ヴァッツィンガー連邦教育研究大臣が説明する。
「継続的な奨学生数の減少を私たちは受け入れてはいけない。望むなら誰もが大学で勉強をし、または職業訓練をすることができるべきである。それゆえ、私はできるだけ早くBAföGを推進する。BAföGによって再び教育の公平性を生み出し、さらに多くの若者へ機会を与えたい。そのためBAföGは迅速に、より魅力的、現代的そして柔軟なものにならなければいけない。連立協定書において、私たちは多くのことを計画した。とりわけ非課税額の引き上げによってBAföGをさらに開かれたものしたい。加えて両親に依存せず、より簡単にそしてデジタル化されたものしたいと思う。社会的に恵まれない家庭の学生をより強く支援するために、私たちはスタート支援法案(Starthilfepakete)を導入する。迅速にこれらすべてに着手し、最初の重要な措置を2022/23冬学期には実施する。私たちは、特に現在のパンデミックの時期において、若者たちのために、教育と職業教育へのアクセスの強化を果たす義務がある。さらに暫定規定として、ドイツ復興金融公庫(KfW)学生ローンの利子免除を2022年9月30日まで延長する。これにより、新型コロナ危機に伴い学業のための追加のローンに手を出さなければいけなかったり、長引く在学期間のせいでローンをより長く利用したりする人たちに、安堵と計画の安全性を与える。」
背景:
連邦奨学金法(BAföG)35条による第22次連邦政府報告書は、2017年から2020年までがまとめられている。これは、要件や控除額および最大額の見直しに用いられる。BAföGによれば、「所得状況と財産形成の発展、生活費の変化及び金融の発展」を考慮に入れなければならない。
最後の報告年である2020年は、学校や大学は新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって大きな影響を受けた。報告書は、システム関連活動による追加収入の算入、延長された在学期間の適用法令による調整、教育機関が閉鎖された場合の支払いの継続や海外での助成、そして学生のつなぎ資金等、連邦奨学金法(BAföG)の法律上の例外規則を特別な補説を通じて書き表すことによってこうした状況を考慮している。
この報告書は、2019年の第26次BAföG改正法による手当や要件の引き上げが、受給者数の動向の変化を起こすためには十分ではなかったということを示している。学生の受給率は、報告期間内において2017年の21.4%から2020年の18.5%へと継続的に減少した。
一方、報告期間内における学生の平均受給金額は、464ユーロから574ユーロに増加し(23.5%上昇)、生徒の平均受給金額は、435ユーロから503ユーロに増加した(16%上昇)。