ドイツ学術情報(過去の分)
2つの大きな研究センターの設立が前進:ザクセンのラウジッツと中部ドイツ鉱山地域の新しい展望(7月23日)
最初の支援フェーズに6つのコンセプトが推薦
2つの新しい大規模研究センターは、今後数年でザクセン州ラウジッツと中部ドイツ鉱山地域に設立される予定である。これは伝統的な褐炭 の採掘地域の構造的な変化について貢献する。大規模研究センターは、その地域の新しい経済見通しを広げる。連邦教育研究省、ザクセン州とザクセン・アンハルト州は、最近、「知識は地域のビジョンを作る!」と題された、2段階のオープンテーマのコンテストを行った。昨日、高いランキングの全体委員会は、提出された6つの最も説得力のある提案を選び、コンセプトを実行可能な状態に発展させる初めの資金助成段階のためBMBFに推薦した。コンセプトは、2つのセンターの実際の設立の前に再度評価されることになっている。
アンヤ・カリチェック連邦教育研究大臣は次のように説明する。
「『知識は地域のビジョンを作る!』の取り組みをもって、私たちは中部ドイツ鉱山地域とザクセン州ラウジッツへ、傑出した研究、高い質の雇用、ダイナミックな経済発展、そして持続可能な構造的変化のための強い推進力を与えている。国内外へのアピールを含めた、2つの大規模研究センターを設立するための取り組みは、急速に前進していることを私は喜ばしく思う。私たちはここまで完全にスケジュール通りである。メインの研究センターは、構造的変化に影響された東部ドイツ地域の私たちの新しい見通しを作る戦略において核となる要素である。気候変動の時代に必要とされている石炭の段階的廃止は、その地域の新しい始まりであることを意味する。私たちは、素晴らしい科学研究と、知識を効果的に応用に移すことが組み合わさる場所を作りたいと思う。それらは企業を魅了し、新しいビジネススタートアップを生むだろう。同時に、新しい大規模研究センターは、研究とイノベーションの国としてのドイツを全体的に強化するだろう。私はどのコンセプトが今選ばれ、究極的に遂行されていくのか見ることにとても興味がある。」
ザクセン州のミヒャエル・クレッチマー首相は説明する。
「私たちは、石炭の地域のための新しい視点を作りたいと考えており、そして実際に作る予定である。ザクセン州ラウジッツと中部ドイツ鉱山地域2つの大規模研究センターの設立は、大きな成功のために非常に重要な構成要素である。展望委員会の推薦で、私たちは順調に前進している。すでに、どのような可能性や機会がその地域にとって重要な未来の課題となるのか、より明確かつ具体的になっている。最終決定はまだ行われていないが、大規模研究センターの周辺で新しい視点と給料の良い仕事が生じるであろうことはすでに明確である。最終的に、2つのザクセン地域だけでなく、ドイツ全体が科学とイノベーションから便益を得るだろう。特に、私たちの全員のために重要な仕事を担っている展望委員会に感謝したい。」
ザクセン・アンハルト州のライナー・ハーゼロフ首相は説明する。
「今日、展望委員会によって集められた、中部ドイツ鉱山地域における将来の大規模研究センターのプロジェクトのアイデアは、研究から産業に移行することや、将来性のある現代的な雇用において多大な可能性を秘めている。石炭から離れる構造的な変化は、その地域や特に地域住民にとって成功となるだろう。」
展望委員会のヴォルフガング・A・ヘルマン議長は説明する。
「広範囲にわたる専門家の知識と経験で、展望委員会は、多くの取り組みを検証し、国内外に通用する大規模研究施設の適合性を調査した。基準のガイドによると、科学主導の選択プロセスは、科学的な構造の独創性だけでなく、新しいバリューチェーンの設立による地域の強化効果(経済のための相互作用の可能性、新しい企業の設立を含む)、ザクセン州ラウジッツ地方や、中部ドイツ鉱山地域の生活環境への波及効果、国境をこえた連携形成、持続可能な基準における長期的な社会困難への解決策が期待されることも考慮された。そのアイデアスケッチは、詳細に作り上げられ、パラダイムシフトのため説得力のあるアプローチであり科学、経済、社会のそれぞれの領域の相乗効果を見込める。」
背景:
2020年8月14日、石炭の段階的廃止に影響された石炭地域のため「石炭地域の構造強化法(Strukturstärkungsgesetz Kohleregionen:StStG)」が施工された。石炭地域の新しい視点を作るため、StStGの第17条第29項は「競争的なプロセスの基準によってヘルムホルツと同条件で、ザクセン州ラウジッツおよび中部ドイツ鉱山地域にそれぞれ一つの大規模研究センター設立する」と定めている。
コンペティションは2020年11月にスタートした。昨日(7月22日)、6つの前途有望な申請の選択とともに初めての資金助成フェーズが開始した。6つの素案の著者は、アイデアを遂行する大規模研究センターのため、コンセプトを実行可能なものに改善することに6か月かけている。それらは最大で50万ユーロが資金助成される予定である。コンセプトは、第三者である科学者によってレビューされる資金助成フェーズに発展した。この基準で、連邦政府とホストである州は、2022年夏にスタートアップフェーズに入る2つの最良なコンセプトへの資金拠出を決める。この3年間のスタートアップフェーズでは、法的基盤とそれに続く制度化された資金助成が準備される。スタートアップフェーズは、必要であれば3年間拡大される可能性がある。構造強化法から、連邦政府は、2038年まで1センターあたり最大12億5,000万ユーロ提供する予定である。
初期フェーズの推薦された概要(アルファベット順)
Chemresilienz(ペーター・ゼーベルガー教授、ポツダム大学):健康、輸送、エネルギー、農業、消費財など重要な産業セクターの供給を確かなものにするため「Chemresilienz(中部ドイツ鉱山地域の研究工場)」は、化学製品の持続可能な循環型経済を設立すること狙う。再生可能な原料、短い輸送経路と地域、費用効率の高く、持続可能な生産プロセスは、ドイツ化学産業の回復力を確かなものにする。一方、同時に、最も高い労働の安全と環境的基準に従う。
CLAI_RE(ゲオルグ・トイチュ教授、ライプツィヒ大学):気候活動とイノベーション研究エンジニアリングセンターは気象データと知識を蓄積することを狙う。この基準では、機能的でデジタルなエコシステムの両輪が作成され、完全に新しい次元のデータ空間も作成される。CLAI_REは、農業、林業、水、郊外の空間、エネルギー供給、健康とモビリティーで、気候保全のためのアクションの選択肢を改善したいと考えている。
CMI(ジェンス・マイラー教授、ライプツィヒ大学):Center for Medicine Innovation(CMI)の創始者たちは、医学のデジタル化と個別化のための新しいテクノロジーに注目している。医学テクノロジーの結合によって、デジタル化と創薬、生物医学研究とオーダーメイド医療の中心部が作られる。供給とバリューチェーンは、供給の枠組みの中への新しい製品の統合を円滑に進め、加速させるエコシステムに統合される。
ERIS(カーステン・ドレベンシュテット教授、フライブルク大学):欧州宇宙資源研究機関(ERIS)は、月と火星における宇宙ステーション建設と運営のために、科学的、技術的原理を研究することを狙う。この基盤で、ERISは、地球における社会的に重要な困難の解決策を発展させたいと考えている。科学者の視点によると、新しい手法とテクノロジーは、宇宙と地球での、より安全で効果的かつ環境に配慮した資源の活用に貢献することができる。
LAB(マンフレッド・キューバック教授、ドレスデン大学):Lausitz Art of Building(LAB)は、建設業におけるパラダイムシフトに取り組んでいる。新しく、資源を効率的に使い、気候変動に影響を及ぼさない素材や、モジュール式に計画され、非常に柔軟性が高い、長持ちする構造によって建設業における非常に大きな資源の消費を削減する。そのコンセプトは、材料研究、生産技術、デジタルテクノロジーにおける最新の方法を結合し、ラウジッツは雇用を創造する欧州モデル地域として、持続可能な計画と建設のため、発展することができる。
日本の政治学者がフィリップ・フランツ・フォン・ジーボルト賞を受賞(7月21日)
日本とドイツの文化・社会の相互理解に貢献したとして、ドイツと日本の近代史の専門家である今野元氏に「2021年度フィリップ・フランツ・フォン・ジーボルト賞」が授与される。
今年のフィリップ・フランツ・フォン・ジーボルト賞は、歴史学、政治学、法学を融合させた研究活動を行っている今野元氏が受賞する。社会学者のマックス・ウェーバーに関心があり、日本語訳も手がけている。また、ドイツのナショナリズムにも興味がある。また、君主制に関する比較研究や、日本におけるドイツ研究の受容に関する研究も行っている。ドイツの専門家と定期的に連絡を取り合い、日本とドイツの政治史学の橋渡し役として高く評価されている。
ドイツでの長期にわたる研究滞在から、伝記研究の方法に関する深い知識を日本に持ち帰り、マックス・ウェーバー研究、ベネディクト16世とカール・テオドール・フォン・ダルベルク(1744-1817、マインツ大司教、ナポレオン時代にライン同盟の首座大司教侯)の伝記などを執筆している。異なった言語で科学的に作業する能力は、アーカイブで資料を調査する際に大きな力となる。
今野元氏は、名古屋近郊の愛知県立大学で2015年からドイツ政治学の教授を務めており、それ以前は講師、2007年からは准教授を務めていた。東京大学法学部で政治学を学び、ドイツ政治を専攻した。ベルリン・フンボルト大学(2002年、歴史学研究所)と東京大学(2005年、政治専攻)で博士号を取得している。日本学術振興会特別研究員、マックス・ウェーバーとポーランド問題に関する博士論文で日本ドイツ学会奨励賞などを受賞し、ミュンヘンの現代史研究所に長期滞在した。
フィリップ・フランツ・フォン・ジーボルト賞は、伝統的にベルリンで開催されるフンボルト財団の年次総会において、現職のドイツ大統領から授与される。今年はコロナパンデミックの影響で年次総会がデジタルで開催されたため、この度、7月27日にイナ・レーペル駐日ドイツ大使から賞が授与された。
フィリップ・フランツ・フォン・ジーボルト賞
この研究賞は、1978年に当時のドイツ大統領ヴァルター・シェール氏が日本を訪問した際に設立された。毎年、日独両国の文化・社会の相互理解に貢献した日本人研究者に贈られており、賞金として50,000ユーロが与えられる。
キャンパス内での学習、予防接種の推進、パンデミックへの注意。HRK学長が次の冬学期を展望する。(7月16日)
ドイツ大学長会議(HRK)会長のペーター・アンドレ・アルト教授は、講義期間の終了を前に、本日、ベルリンで次学期の展望について語った。
「改めて、パンデミックに対処した大学の素晴らしい成果を明確に評価したいと思う。現在の目標は、2021-22年初頭までの冬学期に、枠組み条件が許す限り、キャンパスでの学習を再開することだ。
刻々と変化するパンデミックは、計画の中心となる要素である。健康の保護を保証しなければならない。大学は、過去3学期の経験をもとに、その場所にあるリスクを評価し、対面式授業ができるよう責任を持って計画する。学生の日々の学習を強化・支援するために、あらゆる選択肢を活用することが重要だ。
感染症保護法と学生への予防接種をめぐる議論の中で、HRKは最近、大学が必要とする法的、財政的、組織的な枠組み条件を繰り返し明らかにしてきた。具体的には、距離要件、法的根拠、3Gルールの遵守状況を確認するための責任などだ。私たちは、この件に関して各州と非常に良い対話をしており、各州は様々な方法で学生への予防接種キャンペーンに対するHRKの要求を積極的に支持している。
現状では、主に3Gルールに基づいて、大学はさまざまなシナリオに備えている。想定されるシナリオは以下の通りである。
- 演習やセミナーは、マスクをして、対面授業の距離や換気のルールを守って行うことができるが、大規模な講義はWeb形式で行う。
- 技術的に可能であり、資金的にも問題ない場合は、Webまたは対面での参加を選択できるハイブリッド形式を提供する。ここでの複雑な要件を考慮すると、ハイブリッド形式を原則とすることはできない。
パンデミックがさらに悪化した場合には、全国的にWeb形式の授業に戻すことが必要になる。大学は、さまざまなシナリオを無期限に並行して計画することはできない。したがって、明確な枠組み条件と政策立案者の継続的な支援が必要である。
パンデミックに対する最も重要な武器はワクチン接種だが、連邦政府、州、地方自治体は最近、この点で非常に歓迎すべきさらなる取り組みを開始した。ワクチン接種キャンペーンの進捗状況によって大学がどのような対策をとれるかが決まることは、すべての関係者にとって明らかである。大学を、科学的な議論と社会的な出会いが密接に両立する、学習と議論の場に再びできるよう、私は、大学のすべての学生とスタッフに、自宅や大学所在地でのワクチン接種の申し出を受けていただきたいと思う。」
次世代スーパーコンピュータのためのヨーロッパのパートナーシップ:ドイツが拠点として志願(7月13日)
欧州連合理事会が本日ヨーロッパのパートナーシップEuroHPCを発足
スーパーコンピュータの分野において、欧州連合や加盟国、産業界はEuroHPC(European High Performance Computing(欧州ハイパフォーマンスコンピューティング))イニシアティブに参加する。EuroHPCは、欧州連合条約第187条による「共同事業」の形でのパートナーシップである。最大70億ユーロにより、今後7年間でヨーロッパにおけるハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)は強化される。これについて、ヴォルフ・ディーター・ルーカス連邦研究省次官が説明する。
「ドイツとヨーロッパにおける先端研究には、すぐれた科学とイノベーションを可能にするために高性能コンピュータが必要である。そのため、ドイツはEuroHPCに参加する。EuroHPCによって、ヨーロッパは、ハイパフォーマンスコンピューティング分野の技術的主権を保障するために尽力している。
例えば気候変動やパンデミックの克服に関する多くの緊急の研究課題は、最新技術でのみ計算できる、ますます複雑で正確なモデルを必要とする。人工知能と大量のデータ解析の組み合わせは、ソフトウェアとハードウェア、新世代スーパーコンピュータに高い要求をもたらす。いわゆるエクサスケールクラスと呼ばれる、これら次世代のスーパーコンピュータは、科学と産業における前途有望な新しい応用を可能にする。そのため、ハイパフォーマンスコンピューティングの発展の継続は、ヨーロッパにおける技術的進歩の重要な貢献であり、ドイツとEUの国際競争力を強化する。
最初のエクサスケールスーパーコンピュータへの応募をすることで、私たちは今後もヨーロッパの先駆者でありたいと思う。私たちのプログラム「Hoch- und Höchstleistungsrechnen für das digitale Zeitalter(デジタル時代のためのハイパフォーマンスコンピューティング)」によって、ドイツはEuroHPCのために戦略的に有利な立場にいる。ガウス・スーパーコンピューティング・センター(Gauss Centre for Supercomputing: GCS)がドイツから応募する。私たちの目標は、2024年までにヨーロッパ初のエクサスケールクラスのスーパーコンピュータをドイツにおいて稼働できるようにすることである。」
EuroHPCのための共同事業設立に関する規則の採択に関する欧州連合理事会のプレスリリース
背景:
EuroHPCは、欧州連合の機能に関する条約(TFEU)第187条の「共同事業」の形による、欧州連合、参加国、業界団体間のヨーロッパのパートナーシップである。ヨーロッパは、最大70億ユーロの共同予算でハイパフォーマンスコンピューティング分野における世界的なリーダーシップを担う予定である。それに伴い、EU(欧州連合)は、連合予算から最大30億ユーロを使用可能にし、参加企業が最大9億ユーロを負担する一方、参加国(EU加盟国と関連国)はEUと同額を調達する。この資金で、とりわけエクサスケールクラスと呼ばれるいくつかの次世代のスーパーコンピュータを入手し、必要な技術と応用を開発し、スーパーコンピューティングにおける職業教育や継続教育を促進する。
入手するスーパーコンピュータの拠点は、競争的に決まる。ドイツからは、ガウス・スーパーコンピューティング・センター(GCS)が最初のエクサスケールコンピュータの拠点として申請する。ヨーロッパの応募プロセスは、今年中にスタートする見込みである。コンピュータは、2024年までに稼働開始予定である。GCSは、ドイツで学術的な目的の3台の高性能スーパーコンピュータを運用している。
科学および経済の研究者たちは、おそらく2021年末から競争的公募に基づきEuroHPCからの資金助成に申請できる。
ドイツでは、連邦プログラム「デジタル時代の高性能および最高性能計算-ハイパフォーマンスコンピューティングに関する研究と投資」の一環として、2024年までに3億ユーロ以上の資金と、連邦政府がすでに未来パッケージおよび景気対策パッケージにおいて計画された追加資金が利用可能である。これらの資金は、とりわけエクサスケールクラスと呼ばれる次の性能レベルのスーパーコンピュータの整備に利用される。連邦政府の資金に、さらに欧州パートナーシップEuroHPCの枠組み内で、州政府と欧州連合による多額の協調資金が提供される。
ハイパフォーマンスコンピューティングプログラムは、連邦政府のデータ戦略の一部であり、ドイツにおけるデータインフラを効率良く、持続可能に構成することに寄与する。科学や経済からの多くの問題提起は、桁外れな計算能力によって解決される。気候、人間の臓器、製薬の作用物質、気体と液体の流れ、あるいは遠方の銀河の形成・進化などの複雑なシステムをコンピュータでシミュレートする。人工知能や機械学習、データ解析の利用は、新しい研究分野および活用分野を開拓する。ここでも高い計算能力と知的なソフトウェアが必要である。このプログラムは、計算能力やネットワーク化、新しい技術の拡大を通して、ドイツとヨーロッパにおける経済の科学的卓越性と付加価値の可能性を促進することになっており、ドイツの計算インフラへの投資を含んでいる。
ガウス・スーパーコンピューティングセンター(GCS)は、世界的に競争力のあるレベルのハイ・パフォーマンス・コンピューティングの実現保証する。GCSはユーリッヒ、シュトゥットガルト、ミュンヘンにある3つのトップクラスの計算センターで構成されている。連邦教育研究省(BMBF)は、計算センターのあるノルトライン=ヴェストファーレン州、バーデン=ヴュルテンベルク州、バイエルン州と共に、定期的にこれらの拠点に投資している。現在の課題は、いわゆるエクサスケールコンピュータが技術的に飛躍が必要な点である。
連邦教育研究省(BMBF)が通信システムに関する初めての独自の研究プログラムを発表
本日金曜日(6月25日)、連邦教育研究省(BMBF)は新しい研究プログラム「ソブリン・デジタル・ネットワークト(Souverän. Digital. Vernetzt.)」を開始した。今後5年間で、この初めての通信システムの独立研究プログラムに基づいて、BMBFは通信技術のための研究、開発とイノベーションの多様な種類の資金助成を開始する。アンヤ・カリチェック連邦教育研究大臣は次のように説明する。
「いかにビジネスと社会がデジタルトランスフォーメーションを使いこなすかが、ドイツとヨーロッパの繁栄と競争力を決める。革新的で、高いパフォーマンスの通信技術は、必要不可欠な基盤である。ドイツとヨーロッパは、このデジタル化のキーテクノロジーを使いこなし続けなければならない。それゆえ効果的に研究と研修に投資し続けなければならない。通信システムの新しい研究プログラムで、私たちはこれを力強く促進させている。BMBFは今後数年で、最大7億ユーロをこの目的のために投資する。これもドイツ政府の経済刺激策と将来のパッケージからの資金提供のおかげで可能になるだろう。
私の狙いは、ドイツとヨーロッパの企業が、将来のテクノロジーの発展と生産を推進する点で重要な役割を果たすことを確実にすることである。この研究プログラムにより、BMBFは必要なフレームワークを提供している。私たちは将来の通信システムと革新的なアプリケーションのため、全体的で安全かつ持続可能な解決策の開発を約束する。私たちは、通信ネットワークにおける人工知能の使い道や、ネットワークレジリエンス(内部および外部からの干渉への通信ネットワークの回復力)の重要な問題などの研究トピックを検討している。このようにすることにより、私たちは新しい分野を開拓する必要もある。量子技術のようなアプローチが、将来の通信システムを作ることを、より力強く、より弾力的かつ安定的に助ける。ドイツの6Gイノベーションエコシステムが作られ、6Gテクノロジーが素早く研究から実用に移ることも重要である。この目的のための重要な方法として、私は最近ドイツの6Gに関する研究イニシアティブを取り決めた。この国の企業は、その革新力を高いパフォーマンスのネットワークソリューションに大きく依存しており、恩恵をもたらすこととなるだろう。」
背景:
研究プログラム「ソブリン・デジタル・ネットワークト(Souverän. Digital. Vernetzt.)」により、BMBFは、今後5年間以上かけて、革新的通信技術に対して、ドイツ政府の経済刺激策と将来のパッケージを含めて、最大7億ユーロの資金を投資する。プログラムはドイツ政府のハイテク戦略2025に組み込まれており、BMBFの通信システムに関連した10年以上のイノベーション研究資金提供の経験を基にしている。「ICT2020-イノベーションのための研究」資金プログラムなどがその例である。通信システムのキーテクノロジーの重要性は成長しており、現在提供されている最初の独立研究プログラムにも反映している。ソブリン・デジタル・ネットワークトはこのことを正当に評価している。
プログラムは3つの分野に注目している。
・1つ目は、近い将来のネットワーキングテクノロジーである。ここでの注目は、情報伝達の新しいコンセプトのみならず、6Gや通信ネットワークにおける人工知能、ナノロボットのような小さな機械とのコミュニケーションのような探索的なテクノロジー分野を準備することである。
・2つ目は、将来の全体的で安全かつ持続可能な方法のネットワークシステムの設計についてである。ここでの注目は、通信技術のレジリエンス、資源効率と社会的インパクトである。
・3つ目は、ドイツのキーとなる産業に高い関連がある具体的な応用に注目している。研究の目的は、人々の日常生活に便益をもたらす通信ソリューション(産業、スマートホーム、スマート農業や、スマートシティなど)を見つけることである。
https://www.bmbf.de/bmbf/shareddocs/pressemitteilungen/de/2021/07/130721-EuroHPC.html
DFGが新たに13の研究グループに資金提供(7月6日)
DNAウイルス、ビジュアルコンピューティングでの学習から労働、教育、難民の移動の問題までの範囲のトピック/第一期の資金助成期間は合計で約4,740万ユーロ
ドイツ研究振興協会(Deutsche Forschungsgemeinschaft;DFG)は13の新しい研究グループを設置する。このことは、2021年7月6日のオンラインで行われたDFGの年次総会を通して、議会の推薦を受け、DFGの合同委員会により決定された。新しい研究グループは、プロジェクトからの間接コストのための22%のプログラム手当を含めて、合計で約4,740万ユーロを受け取る予定である。研究グループは、オーストリア科学財団(FWF)や、ルクセンブルク国立研究基金(FNR)とのリードエージェンシー協定 に基づく、3つの資金助成を含んでいる。
共同研究のための資金助成期間は、初めの資金助成の申請の概要が提出された日付を基準としている。2018年10月1日から申請の概要を提出した研究グループは、最大で2回、4年の期間資金が助成される。これは、現在設立されている研究グループのうち9つに適用される。4つの共同研究は、2018年10月1日以前のドラフト提案に基づいている。それらは2回、3年の助成を受ける予定である。
13の機関に加えて、新たに9の研究グループを2回目の助成期間として更新することが決定した。そこにはルクセンブルクのFNRとのリードエージェンシー協定2つも含まれている。
研究グループは、科学者に、彼らの領域での現在の差し迫った問題への対処を可能にし、革新的な分野の設立を可能にする。DFGは現在合計で173の研究グループ、14の臨床研究グループと13の大学の研究グループに資金拠出をしている。大学の研究グループが特に、人文・社会科学の研究形態に合わせている一方、臨床研究グループは、科学と臨床が密接に結びついていることが特徴である。
13の新しい連合の詳細(発言者の所属大学のアルファベット順)
lower back pain(LBP)は、最も一般的な筋骨格系疾患の一つである。根本的なメカニズムの解明は、医学的にも社会経済的にも重要な妥当性がある。学際的な研究グループ「脊椎のダイナミズム:力学、形態学、背中の痛みへの包括的な診断のための動作」は、診断と治療のため言外の意味によって、基礎的な新しい本質を見抜くことを狙っている。最終的には、コンソーシアムは、生体力学、整形外科、外傷外科、運動科学、麻酔学、心理学分野からの研究者を一つにする。(発言者:ヘンドリク・シュミット教授、シャリテ・ベルリン医科大学)
DNAウイルスは、細胞遺伝子の発現を操作する、回避する、利用するため、再感染のときどのような戦略をとるのか。これは研究グループ「中断させる、逃れる、利用する:遺伝子発現とDNAウイルス(Disrupt - Evade - Exploit: Control of Gene Expression and Host Response by DNA Viruses :DEEP-DV)による宿主反応の管理」の主題である。特定の細胞核環境と宿主細胞の状態について特に注目することで、深刻で慢性的なDNAウイルス感染のコントロールメカニズムをよく理解することを目指しており、長期的に新しい治療戦略の発展に貢献する。(発言者:メラニエ・ブリンクマン教授、ブラウンシュヴァイク工科大学)
精神医学の歴史は、「正常」と「狂気」の対立の歴史である。しかしながら、このコンセプトはもろく壊れやすいものになった。例えば、精神科の施設の開設と収容者の社会への統合は、狂気的な人を正常にする一方、中毒、ストレスや注意欠陥のような症状を病的なものとみなすような時だ。そのため、精神医学の歴史学で確立された物語は、解釈的な力を失くす。ここで研究グループ「NORMAL#VERRÜCKT(正常と狂気)。違いを形成する近現代史」がこれらの流れを、近現代史の資料として使用できるようにする。(発言者:ハイナー・ファンゲラウ教授、デュッセルドルフ大学)
社会的変化は、個人の社会的、政治的志向に影響がないわけではない。新しい社会的対立の流れだけでなく、政治的疎外感と両極化が増えることは、既存の資源配分のシステムに疑問を投げかけている。社会構造へのはっきりとした多次元アプローチに基づいて、研究グループ「社会構造の再構成と内面化(RISS)」は、社会構造の分析と政治社会学を結び付け、適切にこの複雑性を調査することを目的としている。この目標は、個人と共同体の社会構造の刷り込みを説明する理論を発展させることである。(発言者:ダニエラ・グルノウ教授、フランクフルト大学)
膨大なデータの統計分析はますます重要になっている。しかしながら、この目的のために用いられる手続きとステップは、必ずしも最適に組織化されていないか、外部要因(分散しており限られた保存容量、限られた計算能力、データ保護など)と相性がよくない。オーストリア科学財団(FWF)と共同で設立された研究グループ「情報化時代の数理統計学-統計的効率性とコンピュータの実現可能性」は、予備的処理をするデータと分析に内在する統計モデルに関連する困難に対処することを目的とする。この目的のために、数学的基盤とアルゴリズムの公式化は、多くのケースでゼロから解決されなければならない。(発言者:アンゲリカ・ローデ教授、フライブルク大学)
農業におけるかんがいのため処理された排水を利用することは、資源を保全する働きをするが、リスクも宿している。例えば、以前の未処理の排水のかんがいにより土壌のなかに蓄積された汚染物質が活性化する可能性がある。しかしながら、未だそれらのリスクの範囲と関連性を評価する基準はない。ここで、研究グループ「変化する排水かんがいシステムにおける汚染物質の相互作用、抗生物質の抵抗と病原体」の出番である。異なる汚染物質の挙動とバクテリアの間の相互作用は、主に未知の抗生物質の移動性と、土壌における遺伝子の水平移動の関係性に特に注目するとともに分析されている。(発言者:ヤン・ジーメンス教授、ギーセン大学)
私たちをとりまく環境が恒常的に変化していくため、最大限柔軟な行動と常に適応するための新しい戦略が必要だが、これを担うのは脳の前頭前野(PFC)である。これらの能力・適正の低下は、多くの病気の核となる。オーストリア科学財団(FWF)と共同で設立された学際的な研究グループ「認知的柔軟性の前頭葉ネットワークを解明」は、種や寿命を越えて柔軟な行動を決定する神経メカニズムを確認すること、結合不良と病気に関連した基準の繋がりを明らかにすることを狙う。(発言者:イレアナ・L・ハンガヌ・オパッツ教授、ハンブルク・エッペンドルフ大学医療センター)
ニューロン(神経単位)は、シナプスを経由して情報をやりとりする高い極性を持つ細胞であるる。その構造と機能はたくさんのタンパク質が寄与する。これは神経伝達の場であるシナプスの高いダイナミクスを導く。タンパク質の交換と更新の特殊なプロセスが求められる。これがどのように局所的にプレシナプス(シナプス前)で統制されているのか、相互接続された過程であるプロテオスタシスがどのように機能しているのかは、細胞生物学の中心的な問題であり、これまでは断片的にしか答えられていなかった。研究グループ「シナプス前のプロテオスタシス 制御のための膜輸送過程」は、答えを探している。(発言者:ミヒャエル・R・クロイツ博士、ライプニッツ神経生物学研究所マグデブルク)
機会学習メソッドの使用は、グラフィカル情報プロセス(ビジュアルコンピューティング)の分野に、事実上大改革をもたらした。全ての進歩にも関わらず、実用的なアプリケーションにおける人工神経ネットワークの使用は、現実のデータとの学習が多くの費用を要し、複雑化してから依然として困難を抱えたままである。ここで、研究グループ「ビジュアルコンピューティングにおける学習とシミュレーション」の出番である。また、新しいシミュレーションと学習技術の発展に熱心である。総合的な目標は、シミュレーションデータと現実の訓練データの間の関係についてよりよい理解を集めることであり、そのためどちらの特徴が、学習過程の有効性に最も大きな影響を持つかを理解することである。(発言者:マティアス・ニースナー教授、ミュンヘン工科大学)
研究グループ「暴力の軍事文化-近世から現在への違法な軍事暴力」は、軍の歴史学と暴力研究の両方の重要な課題を解決することを狙っている。つまり近世から現代史までにかけて、どのような方法で、どの程度の範囲で、多くのヨーロッパの大国の軍において特定の暴力の軍事文化が発展したのか、ということである。研究の興味の注目は、戦争の時も平和な時も、現代で違法と受け取られている物理的な暴力である。そのため、暴力の合法性と違法性の基準の変化という問題をもたらす。(発言者:ゼンケ・ナイツェル教授、ポツダム大学)
社会政治的な議論では、労働、教育、難民移住のような現象が制度的な課題として見られ、また逆に、それらの過程において制度は潜在的な障害物と見られている。研究グループ「国境を越えた可動性と制度的ダイナミクス」は、社会学・民俗学の相互依存の様子と政治科学の視点の両方を調査している。焦点となるのは、いつ制度が動員または固定化されるのか、どのように移住は制度を変化させるのかという問題である。(発言者:カリン・シュッテンハイム教授、ジーゲン大学)
社会において、規範性やアイデンティティ形成の性格を持つテキストは流通している。それらはしばしば宗教的なものだけでなく、政治的、法的、文学的な使用方法も結び付けられる。それらは文脈の中で意味を持つ(神格化されている)。しかし、それらは、歴史的な変化の過程で、この地位を再び失う可能性がある。研究グループ「テキストの神聖化/非神聖化」は、この初めのテーマを追っている。異なる社会、文化、宗教の文脈における神聖化と非神聖化の相反するダイナミクスの分析はグループを形成している。(発言者:ビルギット・ヴェイエル教授、テュービンゲン大学)
活動銀河中心核(AGN)からのいわゆるジェットは、物質が超巨大なブラックホールに蓄積されるとき、解放された潜在的なエネルギーの一部を運ぶことができる。しかし、ジェットは何からできているのだろうか?それらは、非常に巨大なブラックホールの環境で、どのように発生するのだろうか?どのプロセスが、それらの大きなエネルギー放射をつかさどるのか?また母銀河でどのような相互作用が存在しているのか?研究グループ「活動銀河の相対論的ジェット」は理論、モデル、観測、解釈を用いて答えを探している。(発言者:マティアス・カドラー教授、ヴュルツブルク大学)
9つの共同研究は第2期の資金助成期間を延長した。
(発言者の大学のアルファベット順とDFGの直近の資金拠出のインタ―ネットデータベースGEPRISにおけるプロジェクト説明の出典)
- FOR „Zelluläre Schutzmechanismen gegen mechanischen Stress“ (Sprecher: Professor Dr. Jörg Höhfeld, Universität Bonn),
https://gepris.dfg.de/gepris/projekt/388932620
- FOR „Understanding the global freshwater system by combining geodetic and remote sensing information with modelling using a calibration/data assimilation approach (GlobalCDA)“ (Sprecher: Professor Dr.-Ing. Jürgen Kusche, Universität Bonn),
https://gepris.dfg.de/gepris/projekt/324641997
Die Forschungsgruppe wird im Rahmen der Lead-Agency-Vereinbarung mit dem Fonds National de la Recherche Luxembourg (FNR) gefördert.
- FOR „Die Grenzen des Fossilberichtes: Analytische und experimentelle Ansätze zum Verständnis der Fossilisation“ (Sprecher: Professor Dr. Martin Sander, Universität Bonn),
https://gepris.dfg.de/gepris/projekt/348043586
- KFO „Klinische Relevanz von Tumor-Stroma-Interaktionen im Pankreaskarzinom“ (Sprecher: Professor Dr. Thomas Mathias Gress, Universitätsklinikum Gießen und Marburg; Klinische Leitung: Professor Dr. Matthias Lauth, Universität Marburg),
https://gepris.dfg.de/gepris/projekt/329116008
- FOR „Receiving and Translating Signals via the gamma-delta T Cell Receptor“ (Sprecher: Professor Dr. Immo Prinz, Universitätsklinikum Hamburg-Eppendorf),
https://gepris.dfg.de/gepris/projekt/395236335
- KFO „Molekulare Mechanismen von Podozyten-Erkrankungen – die Nephrologie auf dem Weg zur Präzisionsmedizin“ (Sprecher: Professor Dr. Thomas Benzing, Klinische Leitung: Professor Dr. Paul-Thomas Brinkkötter, beide Uniklinik Köln),
https://gepris.dfg.de/gepris/projekt/386793560
- FOR „Umweltveränderungen in Biodiversitäts-Hotspot-Ökosystemen Süd-Ecuadors: Systemantwort und Rückkopplungseffekte (RESPECT)“ (Sprecherin: Professorin Dr. Nina Farwig, Universität Marburg),
https://gepris.dfg.de/gepris/projekt/386807763
- FOR „Populärkultur transnational – Europa in den langen 1960er Jahren“
(Sprecher: Professor Dr. Dietmar Hüser, Universität des Saarlandes),
https://gepris.dfg.de/gepris/projekt/285228642
Die Forschungsgruppe wird im Rahmen der Lead-Agency-Vereinbarung mit dem Fonds National de la Recherche Luxembourg (FNR) gefördert.
- FOR „Sektorenübergreifendes kleinräumiges Mikrosimulationsmodell (MikroSim)“ (Sprecher: Professor Dr. Ralf Münnich, Universität Trier),
https://gepris.dfg.de/gepris/projekt/316511172
https://www.dfg.de/service/presse/pressemitteilungen/2021/pressemitteilung_nr_26/index.html