ドイツ学術情報(過去の分)

シュタルク=ヴァッツィンガー大臣:連邦教育研究省(BMBF)が、ドイツ技術移転機構(DEUTSCHE AGENTUR FÜR TRANSFER UND INNOVATION)にゴーサインを出す(4月11日)

連邦教育研究省はDATIの要点を公表し、ステークホルダーとの対話を告知する

本日、新たなドイツ技術移転機構「DATI」の要点を公表した。DATIの設立により、連携協定の中心的な関心事が実行されつつある。特に、応用科学系の大学、中小規模の大学及びそれらに関わる地域のイノベーションネットワークを支援することを目的としている。経済及び社会におけるあらゆる技術・社会的革新を推進する。

連邦教育研究省ベッティーナ・シュタルク=ヴァッツィンガー大臣は以下のように説明している。
「我々は今ドイツ技術移転機構、DATIを立ち上げようとしている。特に中小規模の大学や応用科学系大学で生み出される多くの優れたアイデアや研究成果を経済や社会に移転し、持続可能な方法で地域に定着させる助けになりたい。主に分散化され、必要に応じてアドバイス、ネットワーク、支援、促進を行う、無駄のない機敏なイノベーションエージェンシーを作り上げる。地域の強みを強化し、新たな関係者に意見を求め、相乗効果を高め、地域のイノベーションダイナミクスを助成したい。」

連邦経済・気候保全省のフランチェスカ・ブラントナー大臣政務官は次のように補足する。
「DATIは地域特有の移転とイノベーションのシステムを強化する。我々は、企業が地域のネットワークの中で研究やイノベーションを実施することを可能にする。その際、イノベーションの関係者や市民社会を集中的に取り込んでいく。イノベーションを先導する省庁としてBMBFとBMWKは、イノベーションの拠点としてドイツが成功することに連携して貢献するため、DATIの取組を推進し続ける。」

トーマス・ザッテルベルガー連邦教育研究省大臣政務官は次のとおり公表している。
「DATIは、研究・イノベーション政策における指針となるプロジェクトであり、私の特別な関心事でもある。そのため、関係者とコンセプトを協議するために速やかにステークホルダー同士で対話し、提案を発展させて計画をより拡張する予定である。ドイツには更なるイノベーションが求められる。したがって、地域に焦点を置いた持続可能なイノベーションエージェンシーが必要である。」

https://www.bmbf.de/bmbf/shareddocs/pressemitteilungen/de/2022/04/110422-DATI.html;jsessionid=42E4099C7B573096D684CDF413668BD2.live722

 

時代の変化後の科学外交(4月7日)

オラフ・ショルツ首相が言うように、ロシアのウクライナ侵攻はターニングポイントになる。DAAD会長のJoybrato Mukherjee博士はこのターニングポイントがウクライナとの学術交流にどのような意味を持つのか、そしてなぜ更なる通告があるまでロシアとの全協力関係を凍結するのか説明している。

2月24日の朝、国際法により主権国家である近隣諸国への攻撃は論外とされていた戦争後の秩序は、とうとうドイツをはじめとする欧州全域で終了した。オラフ・ショルツ首相は我々が現在経験していることを「ターニングポイント」という言い方で表現した。これは少し前まで想像すらできなかった、欧米の外交、安全保障、防衛政策にとって深刻な事態である。ウクライナだけではなく、侵略国家であるロシアに関しても、学術交流と科学的な協力関係、例えば科学外交にどうなるかという疑問も伴っている。

ドイツの学術団体は2月24日以降、即座に反応し、ウクライナとの協力とロシアとの科学協力の凍結を発表した。DAADとして、我々はこの困難な状況において、ドイツでの資金提供の機会を含め、ウクライナのパートナー機関との全協力関係を維持している。加盟大学とともに、戦争があったとしても可能な限り長く協力関係を維持するために、我々はデジタル空間への移行もまた進めている。ドイツの大学もまた、即座に独自の支援プログラムを立ち上げた。しかし、ウクライナから我々のところにやって来ると予測される人数に対してこの素晴らしい取組は十分ではない。現時点では、最大で10万人の学生・研究者がやって来ると予測されている。したがってDAADは早い段階でドイツの大学のための大きな支援プログラムを要求した。他の紛争で価値があると証明されたいくつかの柱で構成されるだろう。ウクライナの学生、博士課程学生や研究者への奨学金。既にドイツにいる人への資金助成の手続不要の延長。資金助成期間中及び終了後もウクライナ人を指導・補助する際のドイツの高等教育機関への支援。ドイツの労働市場を視野に入れて、学術的な専門家をさらに専門的かつ言語的に認定する際のドイツの高等教育機関への支援。ウクライナのパートナー機関が事業を維持できる限り、デジタル講座を開発・提供する際のドイツの高等教育機関への支援。後日、この状況が安定した後にウクライナでリーダーの役割を果たすであろう将来のリーダー向けのリーダーシッププログラム。このようなプログラムには1年あたり総額で8,000万ユーロが必要となる。これにより、大学がウクライナからの留学生や研究者に対して包括的かつタイムリーな視点を持つことができる。

ロシアに関しては、このターニングポイント後に対外科学技術政策として、もしドイツの学術団体と大学が未対応であれば方向づけなければならない、2つの行動規範が現れてくる。ロシアに対する全ての措置はドイツ政府と欧州連合の制裁措置に適合しなければならない。同時に、個人のレベルでの対話のチャンネルは開かれ続けなければならない。そのためDAADは更なる通告があるまでロシアとの協力関係を凍結した。ロシアにはもはや資金は流れていかない。したがってロシアへの全ての奨学金はキャンセルされ、現在および未来の選考も取り止めになった。加盟大学はDAADが資金提供するロシアでのプロジェクトを中止することも求められた。一方で、ロシアからドイツへの移動も意図的に維持されている。「最後の架け橋」として、多大な個人的リスクを負って戦争反対を唱えるロシア人学生や研究者に、ドイツの大学への道を提供しているのである。我々はドイツ大学長会議とともに、たとえこうした困難な時代であっても、ドイツの大学における世界への開放や寛容さも求め、ドイツにいるロシア人学生や研究者に対するあらゆる形の差別を非難した。現在は緊急支援に注目が集まっているが、我々はそれを超えて考えるべきである。国土や大学の独立性の完全な喪失から、(パルチザン)戦争の長期化、停戦、早急な復興計画まで、ウクライナのために様々なシナリオが考えられる。現在、我々は皆後者を望んでいる。DAADは科学協力におけるそのようなシナリオと影響に対する科学外交戦略を早急に展開するだろう。

https://www2.daad.de/der-daad/daad-aktuell/de/82130-science-diplomacy-nach-der-zeitenwende-/

 

ヨーロッパの大学:規制の障害を乗り越える(4月5日)

Campus EuropaはDAADの欧州高等教育協定のポッドキャストである。DAAD Aktuellは様々な協定からの声を現在のエピソードに添えている。

欧州高等教育協定は国をまたいで協力している。その際、スムーズなプロセスと協力関係を実現するには、さまざまな規則を遵守しつつ、法律や規制の障害を乗り越えなければならない。AURORA、ENHANCE、UNICの3つの協定の代表者が対応計画を報告する。

2017年、EU首脳は加盟国に対し、EU全域の高等教育機関同士の戦略的パートナーシップを推進するよう呼びかけた。その目的は、ヨーロッパの高等教育機関において、重大な社会の難題に取り組むために様々な言語で国の境界を越えて協同できるヨーロッパの人々を集めることである。一方、欧州委員会による2回の提案要求を経て、合計41の欧州全域の高等教育協定がそのコンセプトを実現しつつある。

欧州の大学を設立するにあたって、様々な国の大学が、それぞれ異なるルールで協力している。この難題は、高等教育部門にとって新規のテーマではないが、欧州高等教育機関により、法律と規制の枠組みに再び焦点が当たってきている。このシリーズの最後の寄稿である今回は、欧州高等教育協定が直面している規制上のハードルを取り上げ、それを克服するための対応策を明らかにする。AURORA、ENHANCE、UNICの各協定のプロジェクトスタッフ2名と学生代表1名が現場から報告する。

「AURORA協定は、加盟大学が社会変化を形成する責任を共有しているという特徴がある。この協定の目的は、新たな形の社会的「イノプレナーシップ(Innopreneurship)」を共同で育成し、大きな環境的・経済的難題への解決策の調査に加盟大学が最善の方法で加わることを可能にすることにある。デュースブルク-エッセン大学がこの大きな目標を加盟大学とともに追求することが可能であるという事実は、プロジェクトの構造のおかげでもある。学部レベルでの大学間の協力は分散化され、しばしばボトムアップで、個人の責務に基づくものの、AURORAの決定は基本的に学長によってなされ、大学の評議会の関与と批判的な議論を経て実行される。数多くのコンテンツ関連のワーキンググループ、特別な提携、幅広い学生の参加などがあり、AURORAは極めて当初から参加型で構築された。」

短期で仮想モビリティーの提供や共同授業の形式を通じて、機関同士の協力という意味で、AUROLAは特別な付加価値を創り出すことができる。しかし、デュースブルク-エッセン大学に関わる、ノルトライン-ヴェストファーレン州の高等教育法令を含む高等教育法は、AUROLAの加盟大学からの入学学生が1学期の一部で仮想モビリティーを行えるようには未だ対応できていない。社会的な法制の枠組みにおける難題もまた存在している。例えば、入学する限り健康保険に加入することが正式に義務づけられる。

デュースブルク-エッセン大学のように、我々は法制上の障害を単独で取り除くことはできない。これには、関係する州の学長会議やDAADの協力を得て、大学横断型の共同イニシアティブが必要である。これらの障害にもかかわらず、我々AUROLA協定として初期の共同過程を既に達成し、学部を超えた交流を容易にする機関間でのモビリティーについて合意している。このなかで、AUROLAは大きな可能性と相互に学びたいという意思を表している。」

AUROLAの詳細
Aurora欧州大学協定、略してAUROLAは、ヨーロッパの9つの大学の協定である。

    ・コペンハーゲンビジネススクール(デンマーク)
    ・アムステルダム自由大学(オランダ)
    ・デュースブルク-エッセン大学(ドイツ)
    ・イーストアングリア大学(英国)
    ・インスブルック大学(オーストリア)
    ・パラツキー大学オロモウツ(チェコ)
    ・ルビーラ・イ・ビルジーリ大学(スペイン)
    ・ナポリ大学(イタリア)
    ・アイスランド大学(アイスランド)

AUROLAの最も重要な目標は、学生、学者やスタッフが学び、教え、研究できるヨーロッパの国境のない仮想キャンパスを作ることである。教育・研究における社会的な責任と学術的な卓越性の連携に重点を置いている。さらに、このネットワークは、国境のないヨーロッパにおいて学生が社会的課題に対応できるよう教育の構造・文化・実践を変化させることを目標としている。AUROLAの指針は「社会のアントレプレナーシップとイノベーション」にある。外部関係者は科学者と専門家の協同に関与する。このようにして、持続可能な開発目標(SDGs)に従ってヨーロッパの大学が持続可能な機関に転換していく。

Julian Irlenkäuser氏はベルリン工科大学での欧州大学協定ENHANCEのモビリティー担当者である。
「ジョイントディグリー、いわゆる共同プログラムの認可は、ENHANCEの大きな障壁である。複数のヨーロッパの法制度において学位プログラムを並行して認可することは多大なる煩雑な手続きを意味する。2015年に適用された「ヨーロッパの接近(European Approach)」はこれを改善すると思われた。しかし残念ながら、ドイツの国内法への適用は不完全であった。さらに、学業成績の認定を取り巻く規制面の障壁はENHANCEにとって大きな要素である。そのため我々は手続きの簡略化や柔軟化に努めている。ヨーロッパで学期が異なることもまた重大な障壁である。例えば、ノルウェーでは夏学期が既に1月に始まる一方、ドイツの大学ではたいてい2月の終わりまで試験期間が続いている。この重複ゆえに冬学期と夏学期の間でのモビリティーを可能にするには、関係者全員が計画的に努力することが求められる。
共同プログラムの認可において前述のような障害があることを背景として、ENHANCEは革新的なアプローチを選択した。「ヨーロッパ教育経路(European Education Pathways)」によって、我々もまた共同教育プログラムを統合する方向に動いている。しかし、ダブルディグリーあるいはジョイントディグリーのような共同学位を目指す代わりに、学生にとって最もスムーズなモビリティー経験になるよう、我々は試行プログラムの技術的かつ組織的な統合に重点を置いている。
技術的なネットワーキングもまた複合的な障壁となっている。大学の管理システムに関して、我々は現在、システム間のインターフェースを可能にするための開発とテストの段階にある。我々は年内に、モジュールカタログあるいは学業成績のような関連データセットの交換をまずは成功させたいと考えている。
我々は近い将来自動認定における大変顕著な成功を期待している。我々のシステムに加盟相手からのモジュールを統合し、学生がそれぞれの所属大学のモジュールと同様のやり方で選択することを可能にする共同手続きを年末までに実行することが我々の野心的な目標である。これによって認定手続きは初めて全く不要なものになり、真の「自動認定」につながっていく。」

ENHANCEの詳細
欧州技術大学協定、略してENHANCEは、科学技術のイノベーションと社会的責任に重点を置く、ヨーロッパの7つの研究に強い技術系大学をまとめている。

    ・ノルウェー科学技術大学(ノルウェー)
    ・チャルマース工科大学(スウェーデン)
    ・ベルリン工科大学(ドイツ)
    ・アーヘン工科大学(ドイツ)
    ・ワルシャワ工科大学(ポーランド)
    ・ミラノ工科大学(イタリア)
    ・バレンシア工科大学(スペイン)

この協定は加盟する全大学の無制限のモビリティーを約束する。この活動によって協定は、あらゆるレベルで科学と社会との間のネットワークを強化するために、社会に大きな影響を与えたいと考えている。相乗効果によってENHANCEは持続可能な形で進展し、デジタルと社会の転換を形成することに努めている。試験的なテーマである「気候変動への対応」「持続可能な都市」「デジタル化」はENHANCEの重点になっている。加盟大学間のシームレスなモビリティーという包括的な目標は、中央管理プロセスの必須な改良とともに「一つのキャンパス」というワークパッケージにまとめ上げられている。ENHANCEが全員にとってのヨーロッパの大学になるために、全ての活動はワークパッケージ「多様性と男女平等」のガイドラインに基づいている。加盟大学間の研究協力もまた長い時間をかけて強化される。ENHANCEは、ホライズン2020プログラム「社会とともにある科学、社会のための科学」と同様、DAADの国内向け助成プログラムからさらに支援を受け、加盟大学はサブプロジェクト「ENHANCIA」を通じてさらに進展する。

Nina Alexandra Harbecke氏はボーフムのルール大学で法律を学んでいる。彼女もまた、UNIC協定の学生代表として関与している。
「「仮想モビリティー」は、UNICで特に顕著であり、オンライン講義の多くの新たな機会を開拓する。例えば「UNIC公開コース」はUNICの学生がオンラインで受講し、学業の履修証明を与えられることを可能にするモビリティーの提供である。少なくとも理論上は。実際には、障害はコースに入る時点から始まっている。つまり履修登録がたいてい複雑である。また例えば法学や医学の分野で、これらのコースの履修証明が問題になることもある。物理的なモビリティーに関しては、短期間でのモビリティーといわゆる「混合モビリティー」、すなわち物理的なモビリティーと仮想のモビリティーの融合を求める学生の分類について現在も問題が発生している。これらの学生はどのような身分を得て、どのように入学するべきなのか。何の資金を活用できるのか。これらタイプのモビリティーはちょうど出現したばかりのため、扱い方に規制がないことが多く、新たな形式が確立される必要がある。
我々は、例えば法学のなどいくつかの学位プログラムでUNICコースの履修証明に対するニッチを見つけることに成功した。外国語の資格証明は初回の国家試験の登録で必要になる。これはUNICのコースでも現在取得可能である。我々にとってこれは大きな成功であり、どの学部の学生もUNICから信頼のおける学業証明を入手できるよう我々は努力している。最初のアプローチは混合モビリティーのコースにも見られた。
将来、学生と教員向けのモビリティーの枠組みを改善するために、我々は、教員と学生が活発に参加できるような教育はもちろんのこと、UNICの提供をより促進する予定である。我々は例えば仮想交流というテーマだけではなく、より一般的に国際化や混合学習フォーマットの設計のようなテーマでも、教員にトレーニングを提供したいと考えている。
ザグレブ大学のリーダーシップのもと、UNICは、UNIC仮想キャンパスの開発を進めており、そこでは加盟大学のキャンパス管理システムの相互伝達などが予定されている。コースの選択のみならず成績の伝達もまた将来的にはUNIC仮想キャンパスを介して実現されるであろう。」

https://www2.daad.de/der-daad/daad-aktuell/de/82117-europaeische-hochschulen-regulatorische-huerden-ueberwinden/