ドイツ学術情報(過去の分)

シュタルク=ヴァッツィンガー大臣:フェイクニュースという諸悪の根源に迫る(2月8日)

連邦教育研究省が、インターネットにおける意図的な偽りの情報の特定、理解そして撲滅に関する10件の新しい研究計画を支援

本日(2月8日)のより安全なインターネットデーにおいて、ベッティーナ・シュタルク=ヴァッツィンガー連邦教育研究大臣は、資金助成の重点措置「デジタルの偽情報(フェイクニュース)の検出と対抗キャンペーン」を発表した。連邦教育研究省(BMBF)は、偽情報を特定、理解、撲滅に関する10の新しいプロジェクトに対し、3年間で合計1500万ユーロを資金拠出する。

ベッティーナ・シュタルク=ヴァッツィンガー連邦教育研究大臣は説明する。

「フェイクニュースを通した標的型偽情報は、特にインターネット上やソーシャルメディアにおいて、私たちの民主主義と社会に対する脅威になりつつある。それらは政治的な状勢に影響を与え、社会的機関における信用に継続的なダメージを引き起こす。なぜなら、ある発言の真意が何か、どのような利害が背後にあるのかを認識することはしばしば簡単ではないからである。世界中で、人々は意図的に流されたフェイクニュースを通して選挙が操作されうる危険性について論じられている。私は、重点的なあ研究資金助成を通して、フェイクニュースの悪の根源に迫り、偽情報との闘いを進めたいと思う。効果的な対抗策を開発させるため、フェイクニュースやその他の偽情報の現象を包括的に研究する10件の新しい学際的なプロジェクトに連邦教育研究省は資金拠出する。プロジェクトは将来フェイクニュースを特定し、理解し、撲滅することに役立つだろう。」

背景:

10件の新しい研究プロジェクトは、ドイツ政府のITセキュリティ研究フレームワークプログラム「デジタル・セキュア・ソブリン(Digital. Sicher. Souverän.)」の一部として資金助成されている。資金助成の対象は、多量の拡散された偽情報をより理解し、それに対抗できる可能性を有する、方法やテクノロジーの研究・開発及び社会的・法的枠組み条件の分析である。

10の資金助成されるプロジェクトの詳細はhttps://www.bmbf.de/bmbf/shareddocs/kurzmeldungen/de/2022/02/fake-news-bekaempfen.htmlを参照のこと。

https://www.bmbf.de/bmbf/shareddocs/pressemitteilungen/de/2022/02/080222-PK-Fake-News.html;jsessionid=3FF5AB69FC7685E887316C39420AE0C4.live381

 

大学間キャンパス:多言語・デジタル・人本位(2月1日)

 ヨーロッパの大学連合は国境を越えて協働し、大学間キャンパスを作っている。そこで、多言語使用とデジタル化はどのような役割を担っているのか。また、どのように市民や地方自治体の交流を行っているのか。NeurotechEU、Circle U、EURECA-PRO、Transfer4Europeの4人の代表者は、実践的な経験を報告している。

 欧州の大学は、EU加盟国の決定を受け、2017年にすでに戦略的パートナーシップ設立や提携の形成が始まっていた。その一方で、欧州に広がる41の連合はそれらのコンセプトを実行している。国境を越えて協力しているにもかかわらず、彼らはそれぞれ地理的に一つの場所に根差していたり、一つの都市で大きくなったり、キャンパスを持っていたりする。そしてこの大学キャンパスは、講義室、ホール、カフェテリア、スポーツイベントなどあらゆる場で人々が出会い、アイデアを交換することで繫栄する。それは、例えば公開講座やイベントなどを通じたキャンパスの外の市民との交流、それぞれの大学がある地域のコミュニティとの交流でもまた成長する。

 しかし、何が欧州にまたがる大学間のキャンパスの構成要素となるのか。連合はそれによって何を理解するのか。多言語化と進歩し続けるデジタル化はどのような役割を果たすのか。大学以外のパートナーとのネットワーク構築はどのようなものか、科学と社会組織のネットワーキングはどのようなものか。NeurotechEU、Circle U、EURECA-PRO、Transorm4Europeの4人の代表者は、様々な角度から大学間キャンパスについて光を当てている。

NeurotechEU:大学間キャンパス-総合ビジョン

 ボン大学のクリスティアン・ヘンネベルガー教授は、NeurotechEU連合の「教育と研究」部門を統括し、かつ理事会のメンバーでもある。

「NeurotechEU連合の私たちにとって、大学間キャンパスは、日々集まり、交流し一体感を感じる場所、また公的な機能を果たす場所である。この目的のため、NeurotechEUの中心にあるプラットフォーム『Campus+』は作られた。仮想空間として、Campus+は私たちの連合に参加している全てのパートナー大学の拡張を表し、学生、教員、研究者、事務職員に、彼らの居住地や、社会的障壁や障害にかかわらず、一緒に活動する機会を提供する。私たちのビジョンでは、NeurotechEU Campus+は知識が創造れ、共有される場であり、そして多様性の受容が促進される場である。

 私たちの連合の狙いは、学生、教員、研究者のニーズを明らかにし、Campus+を通して柔軟なデジタルソリューションを提供することである。それゆえ、Campus+は純粋な学習管理システムとしてだけではなく、ユーザーに様々なコミュニケーションツール、コンテンツ配信、フィードバック、組織化やコラボレーションへの無制限なアクセスを提供するプラットフォームとしてデザインされている。加えて、仮想現実・拡張現実のツールによる視点の拡大が計画されている。Campus+をバリアフリーのプラットフォーム(キーワードE-アクセシビリティ)としてデザインすること、また適用されたプログラムがオープンソースであることは我々にとって特に重要である。

 Campus+では、すべてのパートナー大学のメンバーは、連合内の集合知から便益を得たり、様々な方法で国際的な経験を積めたりすることができるようになっている。科学の交流をこのように促進するのみならず、同時に欧州で共通の学術的アイデンティティの形成を支援することが私たちの目標である。」

NeurotechEU

 NeurotechEUアライアンスは、脳科学の分野における以下8つのパートナー大学をまとめている。

・カロリンスカ研究所(スウェーデン)
・オックスフォード大学(英国)
・ラドバウド大学(オランダ)
・ボン大学(ドイツ)
・デブレツェン大学(ハンガリー)
・クルージュ医科薬科大学(ルーマニア)
・ボアズィチ大学(トルコ)
・エルチェ・ミゲル・エルナンデス大学(スペイン)

欧州における喫緊の社会的・経済的課題について、脳を中心とする/脳から着想を得る解決策を見つけることを共通のビジョンとしている。学士、修士、博士課程の学生は包括的で学際的な教育を受け、多文化かつ多言語の環境の中で、欧州人としてのアイデンティティを発達させる。加えて、NeurotechEUは、生涯学習を積極的に推進し、250以上の提携パートナーとともに欧州を脳研究・技術において世界のリーダーにするために貢献している。

 

Circle U.:大学間キャンパス-科学と社会のネットワーキング

 クラウス・ヴィール博士は、フンボルト大学ベルリンにおける欧州大学連合「Circle U」のプロジェクトコーディネーターである。

「Circle Uの大学間キャンパスでは、社会全体の重要なトピックについて欧州の7大学が国境を越え共に活動している。大学の本業の教育と研究に加えて、Circle U.は、科学と社会のネットワーキングという第三の重要な使命にも力を入れている。目標は、主要な課題として挙げられている現代の課題に対して、科学的な解決策を見つけることである。市民やコミュニティとの交流は、この点で重要な役割を担う。

ベルリンにおいて、連合の他の欧州の大学所在地と同様、Circle U.は大学ではないパートナーとの広いネットワークを持っている。これらは会社、アクセラレーター、博物館やNGOを含む。一方、これらのパートナーは、大学の研究プロセスの中に専門知識を提供している一方、現在置かれた社会環境での関与を強めている。そのため、Circle U.での大学間キャンパスは、学生、科学者及び社会との交流のみならず、分野間と大学間の交流を促進することを目的としている。

 例えば、民主主義や気候変動、グローバルヘルスといったトピックにかかる学際的な「知識のハブ(Knowledge Hubs)」の中では、学術的背景がある人とない人どちらのためにも共同提案は展開されている。このように、提案は意図的に都市社会から人々にもオープンになっている。例えば、フンボルト大学では「気候変動の実践者」のため研修プログラムを含んでいる。これは、気候危機の解決策を見つけるため、現場の科学者と共に働く政治家や経済界の代表者、活動家を含む。そのような取組の後ろでは、全国や地域で学生や研究者だけでなく、市民やコミュニティから支援されてこそ欧州の大学が成功するという信念がある。パンデミックは今なお市民との交流を難しくしているが、特にベルリンのような科学が強い都市でこのようなプロジェクトは肥沃な土地の上にあるといえよう。」

Circle U.

 Circle U.は、欧州の以下9つの大学で約48万名の学生と3万8,000名の教職員を繋げている。

・オスロ大学(ノルウェー)
・オーフス大学(デンマーク)
・キングス・カレッジ・ロンドン(英国)
・パリ大学(フランス)
・ルーヴァン・カトリック大学(ベルギー)
・フンボルト大学ベルリン(ドイツ)
・ベオグラード大学(セルビア)
・ピサ大学(イタリア)
・ウィーン大学(オーストリア)

 ネットワークの目的は、ジョイントディグリープログラムや共同博士課程を持ち、包括的で、研究集約的かつ学際的な欧州のキャンパスを形成することである。その際、Circle U.は気候、グローバルヘルス、民主主義という3つの主要なテーマに優先的に取り組んでいる。焦点は非官僚的モビリティーと大学以外のパートナーとの拡張したネットワークの設立である。プロジェクトは上記のトピック3つの知識のハブを設置する予定であり、そこでは市民が大学と交流でき、研究者と学生が研究を通して共に学べるようになる。Circle U.の使命は、現代の主要な課題に取り組むため、及び健康、平和、民主主義を確実に促進するために、学生、研究者、公的セクターをまとめることである。

 

EURECA-PRO:大学間キャンパス-多言語対応

 カルステン・ドレベンシュテット教授は、フライベルク工科大学における欧州大学連合のEURECA-PROのプロジェクトコーディネーターである。

「EURECA-PROは、私たちの連合の欧州パートナー大学との協力、国を超えての大学間キャンパスの会議における戦略的課題として多言語化に特に力を入れている。これは包括的な英語の能力を促進することを含む一方、その国の言語能力も育成することも含む。私たちは卒業生に素晴らしい英語能力を保証し、彼らが第二言語や更なる言語でトレーニングできるような状況を作りたいと思う。フライベルク工科大学とミットヴァイダ応用科学大学は、DAADのナショナルサポートプログラムを活用し、例えばスペイン語、ポーランド語での教育を推し進めることができるだけでなく、「外国語としてのドイツ語」の言語提供を拡張した。

 学士、修士、博士の共同プログラムの開発において、学位に関係したコースの提供をパートナー大学での現地の教育言語で行うことで、多言語化は考慮されている。それゆえ、コースカタログは、英語とドイツ語のコースに加えて少なくとも4言語を含み、学生はそれぞれの言語スキルにより選ぶことができる。オンラインを利用すれば学生は外国語が話される場所に行かずとも外国語で学ぶことができる。第二外国語は、共同プログラムにおいて必修科目である。ネイティブスピーカーの活用を通して教育の高い質は保証することができる。EURECA-PROコンソーシアムで、サマースクールや研究旅行のような短期間のオファーも、受入国の紹介を目的として入学準備語学モジュールに組み合わされている。

 異なる言語での知識の移転という点において、EURECA-PROは、教育や研究に携わる大学職員の言語研修を促進する必要性も感じている。この重要な課題はDAADのナショナルサポートプログラムのおかげで、連合が対処することができる。」

EURECA-PRO

 責任のある消費と生産についての欧州大学連合(The European University Alliance on Responsible Consumption and Production ;EURECA-PRO)は欧州の以下7つの大学によるネットワークである。

・ミットヴァイダ応用科学大学(ドイツ)
・フライベルク工科大学(ドイツ)
・シレジア工科大学(ポーランド)
・モンタン大学レオーベン(オーストリア)
・レオン大学(スペイン)
・ペトロシャニ大学(ルーマニア)
・クレタ工科大学(ギリシャ)

 パートナー大学は、「責任ある生産と消費」の分野において各自で研究・研修推進の目標を設定している。その施策には特に、新しい技術とプロセスの開発、循環型経済や代替原料を通して資源利用の効率化などが想定されている。参加大学は、工学、政治科学、社会科学、環境科学、経済科学などにおいて学際的な研修と研究、社会への移転を可能にする様々な専門領域を持つ。

 

Transform4Europe:大学間キャンパス-デジタル化

 カローラ・ホディアスはザールランド大学の国際関係部における戦略パートナーシップの幹部である。特に、彼女は国境を越えた大学ネットワークである「グレイトリージョン大学(Universität der Großregion)」と欧州大学連合「Transform4Europe」によって行われる構造的変化に携わっている。

「大学連合Transform4Europeは、多言語の欧州大学間キャンパスを作っている。学生と研究者は連合の全ての大学の提案を積極的に使い、共に研究、教育、学習することができる。パートナー大学間のモビリティーは、各学習プラットフォームと学生データの管理システムの間のインターフェースを作ることにより将来促進する予定である。学位とモジュールの相互認識は、欧州に最適化された学習コースを可能するだろう。その際、デジタルコミュニケーションチャネルは、協力の新しい機会を作り、大学ごとの垣根を超えたガバナンス構造の設立を促進し、特に、コロナウイルスのパンデミックによる制限の間、出会いの場を提供する。

 欧州大学キャンパスを象徴するのは、学生や従業員のための、アプリをベースとしたIDカードであり、それは全てのパートナー大学で提供されるデジタルアクセスを可能にする。パートナー大学の繋がる要素として、Transform4Europe週間がある。それは革新的な欧州の教育とモビリティー形式のための自由な空間を作り、個人的な出会いと協力の機会を提供する。デジタルグローバル教室プロジェクトはすでに大学間の教育機会を作っている。

 協力の運営的なハードルは、IT識別子の配分から短期間のモビリティーの登録まで、現実的な個々の解決策で乗り越えられようとしている。「紙なしでのエラスムス(Erasmus without Papers)」のフレームワークの中で、プラットフォームは現在、データの交換と学習到達のため開発されており、それは全ての大学運営で重要な課題であるが、大学間のスムーズな移転も可能にする。それゆえ、デジタルプラットフォームから始めることで、Transform4Europeキャンパスは真の欧州の科学的な空間を作っている。それは、個人のモビリティーと協力プロジェクトを通して個人的に経験することができる。」

Transform4Europe

 大学ネットワークTransform4Europe、知識起業家のための欧州大学は欧州の以下7つのパートナー大学からなる連合である。

・エストニア芸術アカデミー(エストニア)
・ヴィータウタス・マグヌス大学(リトアニア)
・ジレジア大学カトヴィツェ(ポーランド)
・ザールラント大学(ドイツ)
・トリエステ大学(イタリア)
・アリカンテ大学(スペイン)
・ソフィア大学(ブルガリア)

 連合の一つの焦点は「知識起業家(Knowledge Entrepreneurialism)」というコンセプトである。パートナー大学は、高い水準の専門家のみでなく、変革の力強い主体の役割を担う欧州の知識起業家をトレーニングするため、彼らの地域からの重要な関係者とともに協力したいと考えている。プロジェクトの重要な施策は、海外滞在期間の認識と単位認定を簡素化することを目的とした、ネットワークにおける管理プロセスのデジタル化である。

https://www2.daad.de/der-daad/daad-aktuell/de/81767-der-inter-universitaere-campus-mehrsprachig-digital-und-buergernah/