ドイツ学術情報(過去の分)
フランスと肩を並べることがこれまで以上に重要になる(5月5日)
フランスの選挙後:エマニュエル・マクロンの大統領再選は大学に何をもたらすのか。
フランスは現職のエマニュエル・マクロンを新大統領として選出した。DAADの戦略部門のディレクターであり、2012年から2017年までDAADパリ事務所の所長であったChristiane Schmeken氏は、今年の選挙での何が異なっていたのかとマクロンの2期目が近隣諸国との協力体制に何をもたらすのかインタビューにて説明している。
リベラル派の大統領候補者で現職のエマニュエル・マクロン氏と右派でポピュリストのマリーヌ・ル・ペン氏との間の決戦投票の結果は、ドイツにとって多くの希望と不安を感じさせるものでした。当時現場であなたが目撃した前回の決選投票と比較してどのように感じましたか。
フランス滞在中に、私は2回の大統領選挙を現地で目撃するという光栄に浴しました。2012年の第1回目の投票でマリーヌ・ル・ペン氏は、得票率が17.9%で、社会党のフランソワ・オランド氏(29%)とその対立候補の二コラ・サルコジ氏(27.2%)に大差をつけられた3番手の候補者でした。極右派の政治家が3位に入ったことに当時国民がショックを受けたにもかかわらず、ル・ペン氏は2017年の大統領選挙でうまく次点に入りました。最初の投票では、新たに設立された「La République en marche(共和国前進)」の候補者であるエマニュエル・マクロンは得票率24%となり、ル・ペン氏との差はわずか3%でした。しかし2回目の投票では、有権者の約66%がマクロンに投票し、彼らが極右の候補者を大統領に望んでいないことが証明されました。
この決選投票で特別だったのは、社会党や共和党のような、伝統的なフランスの政党がもはや有力候補ではなくなったということでした。2022年は、同じ指導者が再度顔を合わせる2017年の再現であった一方、現職と挑戦者の戦いとなったためまったく異なる様子でした。驚くことに、マリーヌ・ル・ペン氏は2017年の選挙時よりも明らかにエマニュエル・マクロン氏に迫っていたものの、第2回目の投票時はそうはなりませんでした。現職の大統領は58.5%の得票率でかなり明確に対立候補を打ち負かしました。このことは、フランスの国民が右派ポピュリストのリーダーシップをますます想像するようになったことを示す証拠であると多くの人が考えています。しかしエマニュエル・マクロンの弱気ぶりは、長期間にわたる困難な1期目の後に彼のスター性が落ち込んだという事実のせいかもしれません。
国民に未だに根強い左派の候補者が決選投票で立候補しなかったこともまた忘れてはなりません。旧左派のジャン=リュック・メランション氏に投票した有権者の約22%が、投票を棄権しました。このことは棄権者数の記録に反映されました。結局のところル・ペン氏が選挙戦で勝利することはフランスよりもドイツで強く恐れられたと考えられます。たとえ右派が明らかに勢力を強め、ル・ペン氏が巧みにイメージを向上させても、フランス国民の多くは、外国嫌いで反ヨーロッパ主義の政権が力を持つことではなく、政治的なエリートを懲らしめることに未だに関心を持っています。
エマニュエル・マクロンはあと5年大統領の座に就きます。彼は高等教育政策、例えばヨーロッパの大学設立を推進することなどにある程度方向性を掲げています。2期目の継続性はどの程度期待できますか。
大統領選の候補者の中で、マクロンただ一人が公約において高等教育と科学の将来に関する重大な見解を展開していました。たとえ、特にフランスの学校や大学では左派の教員が多く、異なる考え方をするかもしれませんが、この点で選挙の結果は高等教育のセクターの将来とって良い兆候であると思います。教育問題に対するフランスの大統領の取り組みは、常にヨーロッパと国際協力の全般的な取り組みに組み込まれています。マクロンの2017年のソルボンヌにおける有名な演説中に彼が掲げた、ヨーロッパの大学についてのアイディアはグローバル化する世界でのネットワーク、交渉、多国間主義をまさに意図していました。これらのスキルと姿勢を若い世代に伝えることが教育システムの中心的なタスクとなっていると彼は考えています。同時に、包括的な課題は他の手段では克服できないと確信しています。
このことは彼の2つ目の優れた大学の構想「我々の惑星を再び素晴らしくしよう」が象徴しています。これは前アメリカ大統領ドナルド・トランプ氏がパリ気候協定から脱退したことへのマクロンの対応でした。フランス大統領の招聘状は世界中の気候変動研究者に宛てられ、そこでフランスでの研究を続けるよう要請しました。「我々の惑星を再び素晴らしくしよう」は、上位のリーグでプレーしたいというフランスの野望や、またその一方で迅速かつ太字の概念を持って機会に対応したいという願望、そして最終的にはヨーロッパでドイツとフランスが協同するしかないという確信を表す、マクロンの政策の典型でした。後者はDAADのプログラムとしてドイツでも始まっています。
マクロンの次の任期は、以前の「5年の任期(quinquennats)」と比較して、どこに変化する可能性があると思いますか。またDAADの業務に対してどのような意味がありますか。
マクロンは投票日の夜に、政治を正しく刷新することが目標であると発表しました。彼の目標は、投票しなかった人々に今後数週間でプロジェクトについて納得させることだと話していました。今後数年間は簡単には進まないものの、将来世代のために断固としてかつ果敢にプロジェクトを具体化しなければなりません。これらの文章は6月の議会選挙である「Législatives」を見据えていることは間違いありません。これらによって、新たに選出された大統領がいかに快適にプロジェクトを実行できるかが決定されます。
また、ヨーロッパがフランス政治の要であり続けることは確実なようです。特に現在の政治的に緊迫した状況において、フランス、ドイツだけではなく例えばウクライナにとってもこれは幸運なことです。DAADの観点では、ヨーロッパに対するこの明確な取り組みは極めて前向きなものです。特にブレグジット以降、そしてヨーロッパの中部でロシアによって侵略戦争が起こっている不安定な時代において、フランスとの密接な連携はこれまで以上に重要になります。ヨーロッパの大学や「我々の惑星を再び素晴らしくする」といった取り組みは、今後も採用・支援されるべきです。大学の協力関係においても、そのほかの政策的な領域においてもドイツがもう少し主導権を握っても害はありません。科学外交の領域でもまた、フランスのパートナーとして同じ方向に向かうのは良いことです。国際的な舞台での共同プレゼンスがより強力になるよう努力するべきです。ちょうど20年前、高等教育と研究の場としてヨーロッパを共同で推進する取り組みがありました。将来的には価値に基づく対外科学政策がフランスとドイツの連携に代表されるようになるかもしれません。幸運なことに、我々はこのような取り組みをサポートするために必要な学術的な接点とつながりを何十年にもわたって構築してきました。
ヨーロッパの団結の強化(5月9日)
ベッティーナ=シュタルク・ヴァッツィンガー連邦教育研究大臣とジョイブラート・ムカジーDAAD会長はヨーロッパのエラスムス+の重要性、欧州高等教育協定の推進、欧州高等教育圏の発展について対談した。
エラスムス+は今年で35周年を迎えます。シュタルク・ヴァッツィンガー大臣、どう評価しますか。
シュタルク・ヴァッツィンガー:最も良い言い方で言えば、このプログラムはサクセスストーリーに発展し、そして他にはない共同での学びを通じた国際理解を象徴しています。ヨーロッパという概念にとって、ヨーロッパにおける若者の理解と結束にとって、その価値は文字通り計り知れません。まさにヨーロッパが直面している危機において、我々はこの重要性を感じています。我々がヨーロッパの結束を強化すれば、リベラルな生活様式を維持できるでしょう。教育はその鍵です。ヨーロッパの教育プログラムは多くの学生の人生のために重大なコースを準備するだけではなく、大学の国際化も促進しました。他の16のEU諸国に向けても正式に門戸を開いており、実際に加盟する前にヨーロッパの教育の家族に加わることもできます。
ムカジー博士、DAADは高等教育のための国の機関として初期段階からこのプログラムに加わっています。今日のヨーロッパの高等教育機関にとってエラスムス+はどのような重要性がありますか。
ムカジー:エラスムスプログラムはあらゆる教育セクターから1,000万人以上の若者を動かしてきました。しかし大学にとってエラスムス+は今や学生のモビリティープログラム以上の存在です。イノベーションの推進役として、このプログラムは高等教育機関の国際化のための中心的な戦略基盤に発展し続けています。そのポートフォリオは近代的かつ国際的な高等教育機関の核となる分野、つまり勉強と教育、研究と知識の伝達、人的資源の発達と科学と社会における戦略的なネットワークに呼びかけています。さらに、このプログラムによって提供された機会はもはやヨーロッパの国境をなくしてしまい、世界規模での協力プログラムになっています。
ここ数年間でヨーロッパが直面してきた社会的な課題は今やウクライナ戦争以降に限らず莫大なものになっています。この背景に対して、あなた方はヨーロッパの未来のためにエラスムス+の社会的重要性をどのように評価していますか。
シュタルク・ヴァッツィンガー:我々は再び心を豊かにしてヨーロッパに生きる必要があります。若者との活発な交流はその基礎になっています。我々はヨーロッパのアイデンティティーと民主主義的なプロセスへの個人の活発な参画をさらに発展させたいと思います。それらは将来のEUの中心です。エラスムス+プログラムはEU内での人々の関心を強め、EUについての知識を広めることに具体的に貢献します。なぜならこれも重要なことで、つまりどのようにヨーロッパが機能するかを理解している人だけが、ヨーロッパが我々にとってどのような価値を持つのか理解できるということです。
ムカジー:ヨーロッパの結束、アイデンティティー、交流は今日では今まで以上に重要になっています。さらに30年以上にわたって、BMBF(ドイツ連邦教育研究省)からの資金提供によって、自発的なローカルエラスムス+イニシアティブ(LEI)は信念を守り、広めるための助けとなっていました。LEIは我々の社会におけるヨーロッパの価値を具体化し、エラスムス+とヨーロッパのアイディアを市民にとって身近なものにすることに大きく貢献しています。エラスムスプロジェクトは、活発な参加、対話や統合のような市民生活への参加の様々な側面に、選挙、社会的正義や民主主義のような明らかに政治的なテーマも含めて焦点を当てています。
エラスムス+の枠組みにおいてEUのレベルで資金提供される欧州高等教育協定は、連携協定に明確に固定されています。ヨーロッパの高等教育協力の分野におけるこれらの協定の意義はどのようなものでしょうか。
シュタルク・ヴァッツィンガー:「ヨーロッパの大学」は我々が緊急で必要としている新たな協力方法やより強いネットワークを表しています。それらは、研究、教育、イノベーションの分野で持続可能な協力のために共同戦略を展開しています。ここでの協定は、新たな道を見つけ、革新的な方法を発展させるための実験的なフィールドです。
ヨーロッパの高等教育協定は国会に付随するプログラムの枠組みの中にある方法もまた、ヨーロッパの高等教育圏のみならず世界中で開拓者的な役割を果たしています。この成功をどのように評価しますか。
ムカジー:BMBFから資金提供され、DAADが実施する、EUのイニシアティブに付随する国内プログラムでは、協定の活動への見解を提供し、可視性を高め、それによって新たなアプローチや展開、高等教育の状況に対する推進力を伝達することに焦点を当てています。「Campusu Europa」というポッドキャストがこの一例です。他にも、国境を越えた協力やモビリティーにおける規制の障壁や障害を克服するため、DAADが議長を務める連邦政府、国、高等教育協定との間の対話方針にも重点を置いています。ヨーロッパの高等教育機関は任務や野望に対して資金が不足しているため、国の付随プログラム由来の資金源は、参加するドイツの高等教育機関のみならず、パートナーの高等教育機関にとっても非常に重要です。
大臣、欧州高等教育圏(EHEA)の発展をどう評価していますか。また将来どのような役割を果たすでしょうか。
シュタルク・ヴァッツィンガー:欧州高等教育圏、略してEHEAの設立はヨーロッパの高等教育の競争性を保つために計り知れないほど重要でした。一般的な認識では、いわゆるボローニャプロセスは学士と修士の学位プログラムの切り替えやECTSポイントシステムの導入にも関係があるものとなっています。これは当時論争がなされましたが、正しい決断でした。しばしば見落とされますが、これはボローニャの改革の核となる一要素に過ぎません。学業成績の認定と大学の質保証についての共同協定もまた非常に重要です。これらのことは、今日の学生は以前よりもはるかに自由にEHEA域内を動くことができるという事実の根拠になっています。この面で、EHEAの全加盟国におけるこの協定とさらなる実施に関する交流は依然として重要です。さらに、他のEHEA加盟国と交流している別の話題もあります。つまり、どれくらいの学生が海外経験を積むべきかという目標の定義や高等教育機関の国際化、あるいは高等教育において過小評価されてきた集団の参加が拡大するという意味での社会的重要性についてです。我々は近年この領域でも多くの成果を達成してきました。現在は、デジタル化と持続可能性といった時事的なテーマや学問の自由のような基本的な価値観も重要な役割を果たしています。
ムカジー博士、DAADはボローニャプロセスの共通目標に対して具体的にどのような支援を行いますか。
ムカジー:DAADとしては、ヨーロッパレベルではBFUG(Bologna Follow-up Group)の様々なワーキンググループ、国内レベルでは「ボローニャプロセスの継続」のワーキンググループというボローニャのミッションに喜んで貢献します。その一方、これによって我々は国際化経験を提供し、その一方で我々自身は他の国内外なパートナーとの交流による利点があります。我々はエラスムス+の高等教育協力のための国家機関として、ボローニャハブプロジェクトで実施できる更なる措置を、BMBFが支援してくれるのを嬉しく思います。このプロジェクトの目的はドイツの高等教育機関がボローニャ改革の中心的な手段の活用や現在のボローニャのテーマについて議論の促進を支援することにあります。
ボローニャハブはこうして主要なガイドラインについての政策対話と EHEAで議論されたテーマのためのプラットフォームを特に提供しています。大学での支援は具体的にそのようなものでしょうか。
シュタルク・ヴァッツィンガー:ドイツはボローニャ改革、特に中核的な改革の導入に成功しました。そしてパートナーの支援に十分に貢献したいとも考えています。ボローニャ改革がEHEAにおいて幅広くかつ十分に実施されてこそ、高等教育共同体と学生のためになるからです。そこで不可欠な役割を果たすのが高等教育機関です。ヨーロッパの高等教育機関に対する支援については、ドイツでは常にBMBFが共同で資金提供しており、非常に価値があることが証明されました。これはギブアンドテイクの関係です。一方では、我々は自分たちの経験を他の国に共有したいと考え、またその一方で前向きな事例から学びたいとも考えています。
ムカジー:例えばDAADがコーディネートしたボローニャハブ支援プロジェクトで、まさにこのようなことが起こりました。ボローニャの専門家によるヨーロッパチームはドイツを含むEHEAの高等教育機関に対して、ボローニャ改革の実施に関するテーラーメイドのアドバイスを提供します。ヨーロッパ志向に加え、いわゆる「ピアサポート」の方法に焦点が当たっていることもまた我々にとっては重要なことです。専門家は高等教育機関に同じ目線で対面します。特にEHEAに長期間参加してきた国の高等教育機関との連帯にもとづく協力関係は、こうしてしっかりと強化されます。高等教育機関からの強い要望により、フォローアッププロジェクトであるボローニャハブピア支援プロジェクトⅡが2022年9月から実施されます。
https://www2.daad.de/der-daad/daad-aktuell/de/82421-europaeischen-zusammenhalt-staerken/
大学は教育システムにおけるモビリティーと浸透性を増進する(5月11日)
職場や大学あるいは他の場所で習得した能力は、科目や大学を変更するとき、あるいは研究と仕事の間で変更があるとき、できる限り簡単に単位認定され、承認されるべきである。これはライプツィヒで昨日(2022年5月10日)開催されたドイツ学長会議(HRK)総会で採択された勧告の目的である。
「この決議は高等教育機関、州政府、連邦政府ならびに大学以外の教育関係者に向けられています。対象グループに向けて調整された水準や適切な勧告を通じて、生涯学習や柔軟な学びを促進したいと考えています。」とHRK会長のPeter-André Alt博士は話している。認定(高等教育機関で習得できる能力)と単位互換(高等教育機関以外で習得できる能力)への障害が少ないことは教育システムの浸透に貢献し、国内外のモビリティーを促進する。
この決議文書で、大学は、拘束力があり学生に優しいやり方で大学全体での認定や単位互換手続きを規制し、手続きのデジタル化と透明化を目指す「感謝できる」大学文化を約束する。
連邦や州の政府も説明を求められている。こうして、職業教育と高等教育の間の浸透性の向上が、高等教育機関と他のアクターの協力拡大により促進され、高等教育機関の基本金は追加任務によって増加しつつある。
HRKは、高等教育から職業教育・訓練への能力を認定し、また試験における共通の基礎を確認する目的で、職業教育・訓練における能力と学習成果志向を促すことを求めている。
「大学、州政府、連邦政府、大学以外の教育関係者はドイツにおける単位認定と単位互換の慣習を改善するために協同するべきです。このような全体的なアプローチは、我々ドイツの人間が、教育システムの高性能な可能性を十分に活用するために必要です。」とHRK会長のAlt氏は強調した。
この決議文書はHRKのプロジェクト「MODUS-モビリティーと透過性の強化:単位認定と単位互換」の枠組みの中で起草され、刊行物「単位認定と単位互換:課題と見通し」に基づいている。
科学評価の基礎および形成分野としての学術出版に関するDFGの方針書(5月18日)
課題と活動分野の定義/変化はあらゆる研究分野における文化的変化を求める
学術出版は、科学に対する悪影響になり得る多くの課題に直面している。特に、測定基準ベースの研究評価は問題をはらむ刺激を与え、その結果学術出版や研究のシステム全体が、その目的にとって適切な方策で発展するのを妨げる可能性がある。批判的な議論に貢献し、展開を修正するために、ドイツ研究振興協会(DFG)は「科学評価の基礎と形成分野としての科学出版:課題と活動分野」というタイトルの方針書を公表した。
「DFGはオープンな出版システムとコンテンツ重視の評価文化に取り組んでいます」とDFG会長の Katja Becker博士は話している。「この方針書で表しているDFGの目的は、特に研究機関や主だった研究助成団体の管理レベルで文化的変化を起こすことです。同時に、学術出版を行ったり評価したりするときに、科学者が質を第一に考えるのを容易にするため、この変化に自信を持って推進したいと思います。」この方針書は、研究の中心的な自治組織としての機能を持ち、ドイツで最大の資金配分機関であるDFG自身の活動のガイドラインとしても役立つとBecker博士は述べている。
この方針書では、学術研究にとって適切な研究システムの枠組みを強化し、出版と評価システムのさらなる発展についての国内外での議論に貢献しようとしている。学術出版の基本的な機能の定義から始まり、第1章(「出版システムの基本的な特徴」)では学術出版の最も一般的な形態、どのように普及し、質評価がなされるのかについて表している。第2章では、現在の課題として認識され、より深く議論されている次の面についてである。学術出版の発見しやすさ、学術出版の市場構造やビジネスモデル、不正出版、質の調査と包括、研究評価と出版の相互作用。
第3章では、方針書の主要な2つの受け取り手に関して活動分野が特定されている。これによれば、出版物の質評価の新たな方法を確立し、学術出版の受け取り手を広げ、評判の帰属についての追加システムを強化し、学術が自身のデータをコントロールできるようにすることに対して、研究コミュニティーには(管理レベルで)責任がある。一方で、研究資金供給者は、受け入れられる出版形式の範囲を広げ、より内容重視の業績の証明を要求し、受け手側を強化することに責任を持つ。
方針書「基礎および研究評価の影響範囲としての学術出版」はDFGの副会長Julika Griem博士のリーダーシップのもと、DFGの理事会や全部で4つの学問分野からなる評議会のメンバーと本部とで、専門家から情報提供を受けながら一貫した方法で作り上げられた。
https://www.dfg.de/service/presse/pressemitteilungen/2022/pressemitteilung_nr_15/index.html
学問有期契約に関する法律の評価:HRKは結果を歓迎し、法的規制の限界を指摘する(5月20日)
ドイツ学長会議(HRK)会長Peter-André Alt博士は、学問有期契約法(WissZeitVG)の2015年、2016年の改正の影響についての評価結果に対してベルリンでコメントした。
「立法府が要求し、連邦教育研究省が委任した学問有期契約法の評価結果について検討しています。関係者と緊密に協議して、連邦教育研究省が徹底的に評価を実施しなければなりません。基本的には、ドイツの連邦議会がさらなる調整の可能性を決定します。大学、研究機関や大学病院での有期雇用の慣習が、その直近の法改正の結果を受けて変化したことをこの評価が示しています。多くの場合、被雇用者や学術機関のキャリアパスの透明性を向上させたという意味です。同時に、法律での規制の限界が明らかになりました。」
その評価が示すように、資格取得のための有期雇用契約の分野では、平均的な契約期間は近年著しく長くなってきた。大学での有期雇用契約は、2015年にはまだ平均15~17か月だった一方で、2017年には既に平均21~22か月と長くなった。この主な理由は、適切な契約期間を決定するためのガイドラインを大学が実施していることによって3年契約が増加したことにある。いわゆる第三者資金から資金提供された契約分野では、大学は改正を遵守し、個々の契約期間をプロジェクト期間に合わせている。
Alt博士は次のように説明した。「Wissenschaftszeitvertragsgesetz(ドイツ学問有期契約法)は学術分野で必要な有期契約の原則を規定し、大学はそれを実施します。しかし、学者、特にキャリアパスの早い段階にある者に対する誓約と責任は、この労働法の枠組みを超えています。学術界と政界には、包括的な意味で魅力的な雇用条件を確約することが求められています。必要な計画の安全性を確約するため、学術機関への確実かつ適切な資金提供が不可欠です。大学自体には、キャリアパスの明確な体系化と、研究と教育のキャリアのためのみならず、ビジネス、行政、社会での様々な活動のための資格付与も必要とされています。特に、評価に含まれる、学術あるいは芸術面で雇用されたポスドクの視点は、改善のための機会が現在どこにあるのかという貴重な情報を提供してくれます。」
博士課程修了者の74%が、中期的に科学界での雇用を希望しているという事実は、学術界での仕事の魅力が壊れていないこと、特別な創造的自由やそれに伴う発展の機会を表している。このことはまた学術界での終身雇用の職を希望する人が資格取得の過程に対してしばしば批判的であることの説明にもなっている。しかし、ありのままに分析すれば、科学界における雇用機会は制限されており、選考手続きの競争率が必然的に高くなることを理解していなければならない。
HRK加盟大学のスポークスパーソンで、HRKの副会長であるAnja Steinbeck博士は、今後の議論について本日、次のように強調した。「この評価は極めて重要かつ興味深い結果をもたらしています。しかし、学問有期契約法の改正に向けた説得力のある結論が出る可能性はほぼありません。そのため、大学は適切な人員構成や教授職への道のみならず、大学以外での職業分野への準備についての協議を継続します。そしてBMBFが計画した関係者のプロセスに対する提案に貢献します。高等教育システムは被雇用者にも卒業生にも責任があると明確に認識しています。特定の大学の人材開発のコンセプトは長期的に魅力的な就労機会確保の助けになり得ます。大学以外の職業分野のために追加で資格を取得することは、博士号を有する学者にとってキャリアパスの浸透性をさらに高めることができます。」
https://www.dfg.de/service/presse/pressemitteilungen/2022/pressemitteilung_nr_15/index.html