ドイツ学術情報(過去の分)

5,700万ユーロでエラスムス+を再度強化する(6月15日)

BMBFはヨーロッパの学生交流35年の成功ストーリーの新たな章を始める

2021年12月、連邦教育研究省(BMBF)はエラスムス+プログラムでの学生の海外滞在のための助成金額を引き上げた。現在、BMBFはこの目的のために欧州社会基金から追加で5,700万ユーロを確保している。

ベッティーナ・シュタルク=ヴァッツィンガー連邦教育大臣は次のとおり説明する。
「特にこのような時代において、より多くの若者がエラスムスを通じて、ヨーロッパを経験できることは非常に重要なことです。そのため我々は欧州社会基金から提供された5,700万ユーロによってエラスムス+を再度強化しています。これによって13,700人以上の若者をサポートすることができるでしょう。この強化によって、ヨーロッパの学生交流35年の成功ストーリーの新たな章を始めています。エラスムスとは行動面でのヨーロッパです。」

背景
学生向けのドイツからの基本的な助成金は、行き先にもよるが490~600ユーロであり、これは2022/2023年の冬学期から承認される。さらに、障害を持っていたり、子供を連れて留学したり、非学術的な家庭で育った学生や社会人学生が一定の条件下で1ヶ月250ユーロの追加助成金を受け取ることができる。欧州社会基金プラス(ESF+)からの5,700万ユーロによって2027年まで助成金もまた大幅に増額される。この追加助成金によって、最大3,600人のドイツ人学生が初年度により高額な助成金を受け取ることができるようになり、合計で最大13,700人にもなる。1987年の開始以来、エラスムスプログラムは全教育分野で1,200万人以上の若者を移動させてきた。次の7年間で、再度そうなることが期待される。エラスムス+は学士から博士課程まで全てのステージの学生を、研究のための海外滞在や海外でのインターンシップの際に最大12か月間金銭的にサポートする。

https://www.bmbf.de/bmbf/shareddocs/pressemitteilungen/de/2022/06/150622-Erasmus.html

 

デジタル教育の要として教員を強化する必要がある(6月21日)

BMBFはデジタル教育とデジタル支援教育のためのコンピテンスセンターへの資金提供を開始する

2連邦教育研究省(BMBF)は本日、デジタル教育とデジタル支援教育のためのコンピテンスセンターへの資金提供を開始する。このイニシアティブは各州が主導しており、州のトレーニング機関がBMBFによって資金提供された研究プロジェクトと密接に連携する。

シュタルク=ヴァッツィンガー連邦教育大臣は次のように説明している。
「我々は、デジタル教育の要としてこの分野でのさらなるトレーニングを通じて教員を強化する必要があります。そのため、連邦教育研究省は本日デジタル教育とデジタル支援教育のためのコンピテンスセンターへの資金提供を開始します。最初の卓越センターはSTEM科目用であり、さらに3つのセンターが後に続きます。教員の継続的な教育環境を将来に適したものにするために、我々はこの方法で大きく貢献します。コンピテンスセンターの運営方針は、科学と授業訓練の間で密接な協力関係にあります。なぜなら現代の学校は最もデジタル面に適性のある教員を必要としているからです。同時に、我々は教育のデジタル化も推進しています。」

背景
連邦教育研究省(BMBF)はデジタル教育とデジタル支援教育のための卓越センターを合計で4センター立ち上げる予定である。本日発表されたSTEMの分野での卓越センターへの資金提供を要求しつつも、基盤が整いつつある。STEM科目(生物学、化学、コンピューター科学、数学、物理学、科学教育)におけるデジタル化関連の継続教育プログラムの開発・研究、および知識移転への貢献という目的を持つ共同研究プロジェクトのために資金が提供される。このことは、各州での教員のトレーニングや、教育科学、メディア科学や個々の科目の講義との間に密接な協力関係がある。BMBFは言語・社会・経済科学、芸術・創造科目とスポーツ、デジタルスクールの開発という焦点の異なるさらに3つのコンピテンスセンターに資金提供する予定である。全国的なネットワークと移動のためのオフィスが傘のように機能し、分野横断的な研究活動を追求し、デジタルでの教師トレーニングの科学的な基準を開発する。

https://www.bmbf.de/bmbf/shareddocs/pressemitteilungen/de/2022/06/210622-Kompetenzzentren.html

 

難民のための高等教育は贅沢ではない(6月23日)

ドイツを議長国とするG7サミットの準備期間に、G7加盟国の学術交流機関は他に8か国のパートナーとともに、5月に「国際的な危機の時代における学術交流」という宣言を発表した。DAADは首都でのこの会議に彼らを招待した。いわゆる「ベルリン宣言」は世界中で危険にさらされている学生や研究者の保護のために合図を送るものである。DAADブリュッセル事務所のトップであるMichael Hörig氏はその背景を説明する。

交流機関によるこの共同宣言はどのようにして実現したのでしょうか。
DAADブリュッセル事務所で、我々はいくつかのパートナー機関と共同して、「危機に瀕した学生」や「非常事態下の高等教育」のテーマに対して何度もイニシアティブを取ってきました。我々は定期的に会合を開き、既に様々なイベントを開催しました。例えば、フランスとオランダのパートナーであるキャンパスフランス・Nufficと合同で、HOPES-LEBプロジェクトをレバノンで実施しています。G7サミットの準備期間に交流機関とのミーティングのベルリンでの開催が計画されたとき、我々はG7レベルまでこの協力関係を拡大し、この文脈でベルリン宣言を準備したいと考えました。ロシアによるウクライナ侵攻が原因で議題が再び爆発的なものになったからです。我々は「危機に瀕した学生」や「非常事態下の高等教育」という2つのアプローチをこの宣言に含めようとし、全ての交流機関がその宣言の中に自分たちの身を置けるようなやり方で宣言を考案しようとしました。我々は成功したように思います。

「危機に瀕した学生」や「非常事態下の高等教育」とはどういうものでしょうか。
この2つのコンセプトは密接に関連しつつ、異なるアプローチを追求するものです。「危機下の学生」は母国で迫害を受けたり、国から去る必要がある、あるいは去りたいと考えている学生に、安全な第三国で研究を続ける機会を提供するものです。個々のプログラムでは、危機的な状況をそれぞれの事例で個別に検証します。「非常事態下の高等教育」のアプローチは、一般的に難民に他国での高等教育の機会を提供するものです。既に難民の立場にあることから危機的な状況にあると分かるので、ここでは状況はチェックされません。このような意味で、焦点は近隣の国に当てられます。例えばシリアの場合、ドイツは毎日の大学生活に多くのシリア人を調和させていますが、ヨルダンやレバノンのような国々が果たす優れた役割とは比べ物になりません。

学生や研究者の保護のために、DAADのいずれのプログラムに特に焦点を当てていますか。
Hilde Dominプログラムは「危機に瀕した学生」のための青写真の一種として言及されるべきです。このプログラムは、世界中の危機に瀕した学生や、母国で教育を受ける権利を正式にあるいは実際に拒否された博士号取得候補者が、ドイツの大学で学位や博士号を取得するために、ドイツで研究を継続することを支援します。我々にはアフリカのためのリーダーシッププログラムもあります。アフリカからの難民のためにドイツでの教育や研究を継続する機会を提供しますが、難民とその国の現地学生の結びつきも支援します。「非常事態下の高等教育」の一例がレバノンでのHOPES-LEBであり、何百人もの人が学位やその他の資格を取得したり、EUのプログラムEDU-Syriaへ参加する手助けになりました。後者はシリアの難民やドイツのヨルダン大学の保護のもと、ヨルダンの恵まれない境遇にいる人々に奨学金を提供するものです。

共同宣言により、DAADとパートナー機関は脅威にさらされている学生や研究者の保護を前面に出しています。この宣言に対してどのようなアクションが続くでしょうか。
反応は良かったです。パートナー機関とEUのドイツ連邦共和国代表とともに、我々はこの宣言を幅広く広報しました。例えば、5月に開催されたEUの高等教育事務局長会議でこのテーマは議題として取り上げられ、議論されました。EUの研究担当大臣はウクライナについての宣言を6月に発表し、背景文書としてベルリン宣言を提出しました。この宣言によってテーマが認知され、主要先進国の機関が自国での対話を推し進めるようになりました。そのため、我々はG7サミットでのパートナー機関とのミーティングを利用して、そのテーマに勢いを付け、高等教育が難民にとって必須ではなくても贅沢ではないと指摘することができました。例えばシリアは現在紛争11年目に入っている。当時小学生だった子どもは今では大学生相当の年齢になっており、それでも未だに紛争は終わっていません。そのため、教育システムにおける長期的な視点を難民に提供するアプローチが必要であり、高等教育がその一つの側面になっています。全ての構成要素でこれについて考えることは、我々の中心的な関心事になっています。この領域ではほとんど何も起こっておらず、我々はEUでなすべきことが数多くあります。

ベルリン宣言で掲げた目標を達成するためにパートナーの国とはどのように協同していくのでしょうか。
我々はこの議題で交流を広げようと取り組んでいます。例えば、迫害されている学生や研究者がアメリカに行きたいと希望するものの、まずビザが取得できないときなど、我々はお互いに具体的な支援を提供します。そして、ヨーロッパでの研究滞在がどの程度で暫定的な解決策になり得るのか見出します。もちろん我々は、迫害されている学生や「非常事態下での高等教育」の問題解決に焦点を当てた新たなプロジェクトをパートナー機関とともに獲得しようとしています。要するに、我々は意識を高め、アウトリーチ活動をし、互いに学び、新たなプログラムを展開するつもりです。

https://www2.daad.de/der-daad/daad-aktuell/de/82760-hochschulbildung-fuer-gefluechtete-ist-kein-luxus/

 

2022年の連邦予算:HRKは高等教育への資金提供について評価し、安定的な見通しを要求する(6月2日)

本日連邦議会で審議された予算案は、ロシアのウクライナ侵略戦争による追加負担や不確実性にもかかわらず、政府議会グループが高等教育と科学を強化しようとしていることを示している。ドイツ学長会議(Hochschulrektorenkonferenz 、略してHRK)会長のPeter-André Alt博士はこれについてベルリンでコメントした。

「この立法期間のための連邦政府のプログラムは、イノベーションや持続可能性への移行、社会のあらゆる分野におけるレジリエンスの強化に焦点を当てています。そのため、関連するプロセスにおいて、科学に基づく開発のための推進者や実践者としての役割を確実なものにするべく、堅実かつ弾力性のある資金提供によって大学がさらに強化されることは正しくかつ重要なことです。予算委員会は法案でこのことを打ち出しました。」

Coalition Agreement(連携協定) で約束したとおり、「高等教育における研究と教育の強化のための将来的な契約(Zukunftsvertrag Studium und Lehre stärken)」 の枠組みにおいて、利用可能な資金が毎年増加することについて、HRK会長は以下のように説明している。

「将来的な契約を通じて大学が利用できる資金を毎年のダイナミックに調整することは、高等教育への資金提供の面で重要なターニングポイントになります。現在、連邦政府には2023年からこれを現実のものにする機会があります。このようにして、連邦政府と州政府は高等教育機関の重要性を財政的な意味で「科学システムの中心」と初めて認識するようになりました。中心的な役割を満たし、かつさらに発展させるために、大学は透明性・信頼性があり、役割に適した範囲の資金を必要としています。Zukunftsvertragからの資金提供の毎年の受入増額は、2024年に1回限りの調整が入ることも既に合意済みだが、ドイツの高等教育システムにとって非常に重要です。ヨーロッパでの紛争と関連する不確実性という観点からすると、連邦政府と州政府による強化を共同して示す必要があることは明らかです。しかし、課題に取り組むのに適したコンセプトに対して、大学が特に貢献することは明白です。最後に、大学は持続可能な形で、特に財政面で強化される必要があります。」とAlt氏は続けている。

https://www.hrk.de/presse/pressemitteilungen/pressemitteilung/meldung/bundeshaushalt-2022-hrk-wuerdigt-anstrengungen-zur-hochschulfinanzierung-und-mahnt-stabile-perspekti/

 

DAAD 2021年の年次報告:「危機」の時代における科学協力(6月1日)

パンデミック、気候変動や政治的紛争によって、国際的にネットワーク化された学術界が昨年形成された。特にこの危機の時代において国際協力を強化するために、DAADは新たな「科学政策」を推進し、バーチャルでの交流拡大を集中的に支援する。DAADによる助成金受給者数も2021年に再度大きく増加した。

デジタル化の進展と多様性
危機的な状況にあり、かつ将来も定かでないにもかかわらず、DAADの観点では、昨年を振り返ってみると、望ましい発展もある。例えば、2021/2022年の冬学期での留学生数の上昇は、コロナが停滞を引き起こしたものの、マイナスの傾向にはならなかったことを示している。DAADの支援を受けた人数もまた大きく増加している。博士課程の学生、学部生、インターンが約135,000人にもなり、2020年に比べて24,000人以上が支援を受けていた。
一般的に、バーチャル空間はDAADの業務の中心事項となり、パンデミックのために移動が制限されているにもかかわらず学術的な交流が可能になっている。さらに、DAADは多様性と機会均等にも注力している。「我々は人々の多様性を支援し、機会を広げたいと思います。例えば、我々はこのような機会をあまり利用しない学生たちのグループに対して留学を促そうとしています。しかしそれにとどまらず、金銭的なインセンティブも与えたいと考えています。例えば、社会人学生や両親が勉強をしてこなかった学生、子供がいたり、身体的なハンディキャップを持つ学生もそれに含まれます。」とDAADの事務局長Kai Sicks博士は話している。
新しいエラスムス+プログラムは、総額約280億ユーロに倍額した予算(2027年まで)で開始されたが、さらに多くを含むことに重点を置いている。研究訪問のための最短期間を3ヶ月から2ヶ月に短縮することがこの方向性での第一歩になっている。さまざまな理由によりこの滞在期間では長すぎる場合は、必須のバーチャル要素も組み合わせつつ、5~30日という短期間で滞在する可能性も残している。新たなエラスムス+の予算もまた機会の少ない人々への特別な支援として使われた。

新たな資金提供プログラム
最終的に、一連のDAADの魅力的なプログラムと新たなイニシアティブの開始は成功したように思われる。その一つが、南半球の国々への8のグローバルセンターへの資金提供である。それぞれ、気候と環境、健康とパンデミックの防止をテーマにしている。状況が差し迫っているため、気候保全やパンデミックの制御など、国際協力にはこれまで以上に多くのことが求められる。つまり新たなアイディアの迅速な実施が必要である。グローバルセンターへの資金提供において、研究成果の実践への移転を強化するために、大学外とのネットワークを確保することには特に注意が払われる。それぞれのセンターのパートナーは、他のドイツ国内および国際機関と密接に関わるドイツの大学である。
もう一つのプログラムは新たな質の高い戦略的ネットワークを目標としている。つまり、「Konrad Zuse Schools of Excellence in Artificial Intelligence」は人工知能(AI)分野で際立って優れた若い研究者に、大学横断型の教育や学びのフォーマットを提供することを目指している。コンピューター科学の先駆者であるKonrad Zuse (1910-1995)の名を冠するこのプログラムでは、修士課程と博士課程での研究ベースのトレーニングのために昨今3つのセンターが選出された。「Konrad Zuse School of Excellence in Learning and Intelligent Systems (ELIZA)」はダルムシュタット工科大学によって支援され、機械の学習・知能システムに焦点を当てている。ドレスデン工科大学にある「Konrad Zuse School of Excellence in Embedded Composite Artificial Intelligence (SECAI)」は、アルゴリズムと電子回路の融合(埋め込み型AI)の研究やAIの手法(複合型AI)に重点を置いている。ミュンヘン工科大学にある「Konrad Zuse School of Excellence in Reliable AI (relAI)」は、問題があったり未熟すぎると思われるAI技術の「信憑性」を想定した研究を行っている。

政治的に迫害されている人への奨学金やドイツの植民地史の処理
DAADは特別なイニシアティブによって世界中の社会的・政治的な激化に抵抗したいと考えている。DAADのHilde Domin プログラムによって、政治的に迫害されたり、他国で差別される学生やポスドクが、ドイツで、報復の恐れのない保護された学術的な空間に身を置いて研究したり、研究を進展させることが可能になる。2021年の4月に開始したこのイニシアティブは、ユダヤ人作家Hilde Domin (1909-2006)の名を冠している。彼は国粋主義者から逃れなければならなかったが、後にドイツに戻った人物である。2021年、DAADは50人に奨学金を授与したが、総数200名以上への授与を目標としている。
最終的に、ドイツの植民地時代の歴史研究に関する新たなプログラム「German Colonial Rule」は、特筆に値する。ドイツの植民地時代を経験したのは、カメルーン、ナミビア、タンザニア、パプアニューギニアといった数か国程度である。第一次世界大戦に至る出来事は、今日も未だにこれらの国々に深い影響を残しているが、これらの国で意識に浸透するのが遅く、未だにほとんど研究がなされていない。この奨学金プログラムは、過去にドイツの植民地だった地域出身で、歴史、社会科学、文化を研究する9人の博士学生を支援するものである。彼らの研究は、関係国への影響と同様、ドイツ帝国で責任を持つ者の政治活動に焦点を当てている。
新型コロナウィルスや気候変動など、学術的発見についての議論が、例えば数年前より今日の社会での意見交換に対してより強い影響を持つようになったことの背景として、科学コミュニケーションについての話題もまたますます重要になっている。DAADは同窓生や同窓会のための特別なトレーニングコースによってこれに対応している。そして、DAADの資金によって研究者が世界中で何を成し遂げているのか公に示すために、今後は資金提供したプロジェクトの成果をより多く公表したいと考えている。

https://www.hrk.de/presse/pressemitteilungen/pressemitteilung/meldung/bundeshaushalt-2022-hrk-wuerdigt-anstrengungen-zur-hochschulfinanzierung-und-mahnt-stabile-perspekti/