ドイツ学術情報(過去の分)

バーチャルでの交流は国際的な労働市場のための重要な技能を教える(7月21日)

 「DAAD研究要項」によって、DAADは、現在の学術的発見を包括的にし、高等教育機関にとって有益になることを目的としたシリーズ物の刊行物を提供する。第4章では、スペインのレオン大学で外国語としての英語と応用言語学分野で准教授を務めるRobert O'Dowd博士は国際高等教育におけるバーチャル交流のフォーマットの利用可能性と学生と教師の観点からの有効性について報告している。

 O'Dowdさん、まずはバーチャル交流が意味するところとバーチャルモビリティとの違いを説明していただけますか。

 私はバーチャル交流を、多様なオンライン学習イニシアティブと、研究プログラムの一部として、様々な文化的背景を持つパートナーとのオンラインでの共同学習を学生にもたらす手法を参照する傘の期間と定義します。バーチャル交流の重点はきわめて多くの対人コミュニケーションと学生が多様な競争力を発展させ、オンラインで共同して学習する方法を見つけることにあります。他国のパートナーとのプログラムの慎重な設計中にオンラインで一緒に働いたり、指導教員から必要なメンターやサポートを受けることによって、学生は共同するスキルや文化的な競争、デジタル面での競争、もちろん外国語のスキルも発展させることができます。
バーチャルモビリティはきわめて多様な活動です。様々な国でのパートナー機関において組織されたオンラインコースにある大学からの学生がついていく方法について話すためにこの期間は利用されます。例えば、新型コロナウィルスのパンデミック期には、スペインの我が大学では多くの学生がエラスムスモビリティプログラムに参加できませんでした。しかし、その中にはオンラインでパートナー大学に登録し、最終的には試験も受けられた学生もいました。ただ多くの学者はこのアプローチに対して非常に批判的で、オンラインでコースに入り、試験を受けるよりも実体的なモビリティプログラムの方を薦めています。実体的なモビリティプログラムの利点はキャンパスで会う人や授業時間外に会う人からもたらされます。私は彼らに賛成はするものの、多くの学生群が国際的な学習にアクセスできるようになるため、バーチャルモビリティはバーチャルでの交流活動と組み合わせることができると思います。

 大学はどのようにすれば、申請のシナリオが特に適切あるいは有益な有意義な方法で、カリキュラムにおけるバーチャル交流を利用できるのでしょうか。

 この活動は大学では、(モビリティの前段階で)留学の準備をする学生のための活動として、融合型のモビリティプログラムの一部の活動として、通常の大学の課程の融合部分として、3通りの方法で利用できます。大学がバーチャル交流プログラムを可能な限り上手く利用する手助けとして、私は研究プログラムにバーチャル交流の要素を導入する際に考慮すべき4種類の活動を発足しました。
まず第一に、学生の学習におけるバーチャル交流の影響の根拠を得るための調査を実施しましょう。自分たちを向上させるだけでなく、同僚や大学の管理職にバーチャル交流の価値を示すために、実行者は自身のプログラムを評価することを促進されるべきです。第二に、バーチャル交流に参加する時に学生や教員の仕事をしっかりと理解しましょう。このことは、学生は交流にうまく参加するための信用を得るべきであるということやこの活動に結びついている教員の努力も何らかの方法でまた報われるべきであるということを意味します。第三に、構造的なサイロを壊しましょう。バーチャル交流の統合が成功するかは様々な学部のメンバーやサポート組織のキャパシティー次第です。第四は、トップダウン型の国家的かつ国際的な支援を組織することです。大学の管理者層や教育スタッフの両方によってその価値に対する認識がかけ離れると、オンラインでの共同学習イニシアティブの成功もまた国家的または国際的な組織からの支援に依存するでしょう。例えば、DAADがバーチャル交流プログラムに資金を提供する方法は、ここドイツでの更なる発展の鍵になると信じています。

 この話題について長く研究していらっしゃるあなたの考えでは、バーチャル交流の効果は研究によって何を証明し、それによって何がバーチャル交流実施の最善の理由になるのでしょうか。

 私は「DAAD研究要項」の記事で様々な大規模研究について言及しています。これはいかにしてバーチャル交流が文化的な能力開発の側面や、共同作業やチーム作業、問題解決などの「ソフトスキル」としての外国語学習に貢献するのかを明らかにしています。交流が上手く構成されるときや、効果的な課題を開発したり、共同作業を経験する間に学生をサポートすることに対して教師が活発な役割を果たすときに、学習の成果は極めて印象的なものになります。
しかし、この研究では、学生がコミュニケーション的あるいは文化的な課題を克服しなければならないときに、バーチャル交流プロジェクトからの学習について報告していることも明らかになっています。共同作業が困難になるときや学生が違いに気づいた結果コミュニケーションがうまくいかないとき、仕事をやり遂げるために妥協点を見つけなければならないということが明らかになっています。そのため、彼らは文化的な能力やオンラインでの共同作業のための技術や振る舞いを向上させているのです。
バーチャル交流は学生と教員両方にとって不安がらせる可能性もあります。あなたが学生に他国のパートナーとのコンタクトを提供するとき、どうやって関係性を発展させるのか、どうやって会話をするのかを理解することは不可能です。しかし、そういった「人間」という側面は、「現実世界」で働くことがどういうものなのか最初の経験を学生にもたらすという点で、この活動を妥当なものにしています。多くの学生は国際的なチームに属して働くでしょうし、オンライン環境でのコミュニケーションも求められるでしょう。バーチャル交流は彼らに経験をもたらすのです。

https://www2.daad.de/der-daad/daad-aktuell/de/83003-virtual-exchange-kann-wichtige-faehigkeiten-fuer-den-internationalen-arbeitsmarkt-vermitteln/

DFGは機会均等と多様性のための新たなイニシアティブを開始(7月5日)

 研究指向の機会均等の基準を多様性も含める形で拡大/DFGの資金助成活動は機会均等と多様性の新たなコンセプトに従う

DFGは科学界において多くのレベルで更なる機会均等と多様性の促進を目指している。このことは、ドイツ最大の資金提供機関と国家の中心的研究自治組織との委員会によって決定された。結果として、多様性の側面はいわゆる「機会均等に関する研究指向の基準」に組み込まれ、このタイトルはこのことを反映して拡大される。将来的に、それらは「研究指向の機会均等と多様性の基準」と呼ばれることになる。機会均等というテーマを促進することに加えて、DFGは自身の資金助成活動において多様性を受け入れるようより努めていく。この2つの話題は、法的な目標としてDFGの活動に重大な影響をもたらしている。
「研究における多様な見通しを持つことや科学界に携わる全ての人の経験や特性を考慮することが卓越性の重要な要件になります」とDFG会長のKatja Becker博士は言及している。「最良の科学的才能を育成するために、DFGは機会均等に対して長期的に注力し、科学界での多様性の向上を提唱しています。評価の機会均等と学術的成果の認知はこのコンセプトの重要な構成要素になっています。」

研究指向の機会均等と多様性の基準拡大 

 DFGのメンバーは、2008年以来実施している「研究指向の機会均等の基準」においてさらなる多様性の次元を定着させることを自発的に誓約した。性別や性自認に加えて、社会的起源や性的指向のみならず、今では民族的起源、宗教、その他の個人的信条、障害あるいは慢性/長期的疾病のような側面も含んでいる。一人の人間がそのような差異(交差性)の次元を複数個併せ持つ場合、このことは十分に考慮されるべきである。更に、DFGメンバーはセクハラ、差別、いじめからの保護に関して、彼らの組織での被雇用者やその他の人々に対する責任を認識した。
新たな目的に沿って、DFGメンバーは「研究指向の機会均等と多様性の基準」に向けた実施プロセスも変更した。高等教育機関は将来的に、自身の戦略計画、科目の優先順位や学生/研究者の構成に応じた措置実施のために報告の優先順位を定義できるようになる。3年ごとの各報告期間終了時に、DFGは合議での協議プロセスによって意見交換を行うためのプラットフォームを大学に提供する。拡張された任務を正しく行うため、プロセスをサポートするワーキンググループもまた、多様性をテーマとする専門家をメンバーを含める形で拡大される。
最後に、直近の報告サイクル(2020年~2022年)で選出された優先的な話題である、「ポスドク段階における女性の割合の増加」や「多様性問題に向けたHEI(高等教育機関)のアプローチ」と呼ばれる、「総括と提言2022」をメンバーは採択した。ポスドク段階における女性の割合を増やすという観点では、基準となるデータの改良、特定の科目や資格レベルに関係する措置の強化、高等教育機関、研究機関や民間セクター間のネットワークの促進、教授職以外の新たな職種の開拓が重要な成果になった。この報告によれば、多様性に関しては、多様性が貴重な資源として理解される文化的な転換の必要性に焦点が当てられた。機関自体のコンセプトは構造的な変化をもたらすための目標を明記するべきであるともされている。

DFGの助成活動に対する機会均等と多様性の統合コンセプト

DFGの協議会で採択された、新たな機会均等と多様性のコンセプトは、男女平等の更なる促進に加えて、DFGの助成活動において他の次元での研究者同士の差異をより考慮することを目的としている。性別や性自認に加えて、DFGが利用する多様性のコンセプトは、メンバーの自発的な誓約に関して上述と同じ側面を包含している。特に研究者の移動の経歴、経済状況、非学術的な家庭出身であるという事実など社会的起源のに関する側面のために、機会均等の措置が策定される予定である。
この準備として、DFGは2020年以来科学界での多様性に関して、研究者、関係者、その関連団体やDFGの協議会メンバーとの間で、既に複数回議論の場を設けた。この参加プロセスは、措置が策定・実施されるまで継続する。最初の具体的なステップとしては、協議会は、多様な特性を持つ個人への明示的または暗黙的なバイアスに対する意識を高めるための措置を昨今採択した。更に、DFGのデータベースを拡張し、研究における多様性の次元に関する確実な情報を提供するための措置を採択した。

https://www.dfg.de/service/presse/pressemitteilungen/2022/pressemitteilung_nr_27/index.html

 

HRK加盟大学は学問有期契約法の更なる発展に対して議案を発表-更なる措置が必要(7月19日)

 ベルリンでの内部会議時に、ドイツ学長会議(HRK)加盟大学は学問有期契約法(WissZeitVG)の更なる発展に対する提案を採択し、追加措置を要求した。ディスカッションペーパーの目的は、博士課程やポスドクの初期段階を含む資格認定プロセスの枠組みの中で、学術界での無期雇用に対して良い見通しを持てるかどうかという点に関して、被雇用者が現行法よりも早い段階で確実性を獲得できるよう、学術界でのキャリアパスをより計画的かつ予測可能に変えていくことにある。学術界での個人の育成や選考過程には極めて高い競争性が必要であるという特別な条件が認められなければならない。このように、この法律の改正から影響を受ける全関係者とともに、連邦教育研究省が開始した協議プロセスに大学は参加している。

HRK加盟大学のスポークスパーソンかつHRK副会長であるAnja Steinbeck博士は、本日ベルリンで以下のとおりコメントした。「ドイツの大学においてキャリアの初期段階にある研究者の状況は、改善の余地があります。特に、キャリア後期の決定に関わる不確実性や唯一のキャリアのゴールとされる教授職に伝統的に強くフォーカスすることは問題を作り出してしまいます。このペーパーで、HRKはWissZeitVGの計画的な改正の議論に貢献することを目的としています。同時に、法律改正単体では包括的な意味で、魅力的な雇用条件を確約するには不十分であることを学長たちは理解しています。さらに大きな措置が大学自身や政治家、第3の資金提供団体に対して求められています。」

 この議論では、博士学位やポスドクの初期段階のための資格認定期間を10年に統一し、個人の要望や様々な文化に沿って個別に構築されることを提唱している。学術界での長期間の雇用、つまり教授職あるいは研究、教育、高等教育や研究マネジメントなど、他の無期職位が現実的かどうかという判断を前倒しにすることには、ポスドクの資格認定期間経験者や大学に以前よりも確実な計画を提供する意図がある。そして同時に持続可能な世代間の公平性も意図している。学術界以外の他の魅力的なキャリアパスに移行することや、産業界と社会のイノベーション力を強化したりすることをより容易にする。

ドイツ学長会議(HRK)会長のPeter-André Alt博士は以下のとおり説明している。
「この提案は長い議論の結果であり、ドイツの大学が良い雇用者として責任を果たしているという事実を示しています。このペーパーは、時にはキャリアパスへの期待と要望と葛藤しつつ、多様かつ持続可能な大学での人員配置を考慮し、より高い信頼性と透明性を目指しています。」

https://www.hrk.de/presse/pressemitteilungen/pressemitteilung/meldung/universitaeten-in-der-hrk-legen-diskussionsvorschlag-zur-weiterentwicklung-des-wissenschaftszeitvertr/

 

「科学外交」の活発な再構築(7月11日)

DAADはドイツの対外科学政策の更なる発展に関する声明書を発表した。DAAD会長のジョイブラート・ムカジー博士はその背景と2020年代に新たな対外科学政策が満たすべき要件の概要について説明する。

ムカジー博士、現時点でドイツの新たな対外科学政策について考えるきっかけは何だったのでしょうか。

 ロシアによるウクライナ侵略戦争が、オラフ・ショルツ首相がヨーロッパの「ターニングポイント」と分類するように、ヨーロッパ史における中断の前触れとなりました。ドイツの学術界はこれに対してあらゆる決意をもって即座に反応し、ただし戦争がつかの間のエピソードになることも、国際的な学術関係に対する影響が短期的に終わることもありません。このようにして、責任ある世界的な共同体として行動する必要性が生じています。現在の政治的亀裂や世界的な課題に直面し、国境を越えた国際的な学術交流と科学協力がこれまで以上に必要となっています。同時に、交流や協力はより複雑かつ危険になったものの、将来のためにはなくてはならないものです。そのため我々は現実の政治に根差した「科学外交」を必要としています。世界的な危機、混乱、システム間の対立や変化する世界からの要求に意識的に向き合わなければなりません。

 国際社会においてドイツ連邦の対外科学政策を構築するためのアプローチとして「科学外交」は以前から存在していました。現在はどのような点が新しいでしょうか。

 価値に基づく協力にプラスの効果があるという仮定は、あまりにも楽観的過ぎると証明されました。学生、科学者、学者、そして大学と研究機関との間の国際的なコンタクトは、寛大さや相互理解、全参加者にとっての付加価値、自由で民主的な価値の促進に自動的につながるわけではありません。細やかな交渉プロセスやリスク計測は、国際的な交流が国際問題の解決に貢献し、価値観についてのコミュニケーションや自由な場を形成するために必要です。将来的に、我々は「科学外交」を以前より慎重かつ積極的に形成しなければなりません。

 2020年代の対外科学政策はどのような要件を満たす必要があるでしょうか。

 新たな対外科学政策は学術的、科学的、政治的立場や目標について、パートナーあるいは場合によっては競合相手との間で、対等に具体的な国際的な交渉が可能な場が開かれるべきです。しかし権力的・政治的干渉を一方的に志向してはならず、一定の原則に従わなければなりません。これは、価値を意識し、責任に基づき、利益を追求し、地域的に区別され、リスクを反映するように設定される必要があります。

 これら5つの原則の背景には何があるのでしょうか。

 学問の自由や学問の誠実さという価値観は、学術的交流において自動的に伝達されないということが過去に明らかになっています。そのため、ドイツの科学システムの関係者、科学者、学生は個人的なコンタクトあるいは公共の場において、民主的な価値観や信念を表明することが要求されます。ドイツの市民社会の一員として、海外での「科学外交官」として活動することもまた要求されます。しかしこのことは世界の全ての地域で同様に機能するわけではないが、地域ごとに具体化される必要があります。更に、大学とその構成員は自分たちが責任ある世界規模の共同体の一員であることを認識するべきです。新たな対外科学政策は、気候変動、生物多様性の減退、パンデミックのリスクのような世界の重大な課題に対処し、ここで実質的に貢献しなければなりません。

 そのためには、対外科学政策の戦略全般の再考が必要ではないでしょうか。

 はい、対外科学政策を権力政治や地政学のために利用する国と関わるうえで、ドイツ側で学術的、科学的あるいは科学政策の利益が明確に定義されなければなりません。対外科学政策は利益政策でもあります。ただし、価値、責任、利益の志向はお互い排他的なものではなく、同じ方向を目指しています。つまり、国際的な学術交流が引き起こす効果、機会、リスクを地域的に考察することを目指しています。

 DAADはこの新たな対外科学政策を自らの任務においてどのように実施していくのでしょうか。

 DAADは世界中にフィールドオフィスや情報センターといった優れたネットワークを有しています。これは非常に重要な基盤です。なぜなら信頼が作り出され、専門知識が集められ、学術的なものだけではなく市民社会的な対話もそこでは行われます。このような現地での存在は競争関係になりがちな国々との架け橋になっています。最近では、DAADは現在の危機に非常に迅速に対応し、世界規模での大変動から特に影響を受けた学生、博士号候補者、研究者のためのプログラムを立ち上げました。これらのプログラムには例えば「ウクライナのための国際学術コンタクトポイント (Nationale Akademische Kontaktstelle Ukraine)」や母国での脅威や迫害のために勉強や研究を継続できない学生や博士号候補者を支援するヒルデ・ドミーンプログラムなどが含まれます。DAADは、例えば気候変動や健康研究のための国際センターを発表したり、あるいはシリアやアフリカのリーダー育成プログラムを開始したりと、現在と将来の課題に対応するためのプログラムの青写真もまた継続的に適応させています。そのためDAADは既に現代の差し迫った問題に対して立ち向かっており、プログラムの地域およびテーマに関係する設計において、前述の原則を一貫して適用しています。これらのプログラムは技術的に求められるところが多く、専門的なサポートを必要としているものの、同時に信頼に基づく長期的な協力関係のための基盤を築きます。しかし、十分かつ確実な資金提供が将来的に確保されて初めて、実施され得るものです。ここで、我々は信頼できるパートナーとして行動しなければならず、連携協定において対外科学政策に向けたDAADの働きが非常に重要であることを昨今確認した、連邦政府の金銭的支援に依存しています。

https://www2.daad.de/der-daad/daad-aktuell/de/82922-science-diplomacy-aktiv-neu-gestalten/