ドイツ学術情報(過去の分)
2016年
外国人研究者はドイツで快適な研究環境を享受(3月23日)
ドイツ学術交流会(DAAD)とドイツ大学長会議(HRK)が共同で運営している国際高等教育マーケティングのコンソーシアムであるGATE- Germanyは、外国人研究者はドイツの大学が魅力的な研究環境や平等な機会を提供していると感じているという調査結果を先日発表した。この調査はドイ ツ連邦教育研究省(BMBF)の助成のもと、博士号を持つ外国人研究者に対し、ドイツを選んだ理由、自身の職業や社会での融合、キャリアプランについて尋 ねたものである。
連邦教育研究大臣であるヴァンカ氏は「近年ドイツの大学は国際化され、様々な国から研究者が来ている。彼らのうちの3人に1人が5年以上ドイツに滞 在することを望んでいることからも、ドイツでの研究生活を快適だと感じており、またそれが彼らの研究やドイツ人の同僚との関係にも反映されている」と述べ た。また、連邦政府の支援による、フンボルト財団の教授制度やソフィア・コワレフスカヤ賞のような国際化プログラムは、このような研究者に対する魅力を増 大させることに貢献している、とも付け加えた。
回答者の大半は、研究環境と職業面での融合について、大変良いと回答している。さらに、大学のサポートも満足度を高める重要な要因として挙げられている。
DAADのヴィンターマンテル会長は「研究の質の高さに加えて、大学における歓迎する文化も国際的な魅力として欠かすことはできない。外国人研究者たちが我々の大学にうまく融合することを喜ばしく思っている」と述べた。
回答からは、外国人研究者が主に職業環境において社会と接触していることが示されている。彼らは主にドイツ人の同僚と関わりが深く、職場以外でドイツ人と接することはまれであり、大学の外でのホスピタリティーについては批判的であった。
HRKのヒップラー会長は「多くの大学において着実に根付いている歓迎する文化は、研究室やキャンパスを越えて広がっていくべきであり、大学本部や街や市が改善していく必要がある。我々はこのことについてともに働き続けていくべきである」と述べた。
外国人研究者の流動性の妨げの解消にむけて前進(3月23日)
この10年以上、ドイツ学長会議(HRK)は外国人研究者の獲得や留学生のドイツへの入学の妨げの解消に熱心に取り組んできた。連邦教育研究省 (BMBF)の助成を受けた5年間のHRKの「欧州高等教育圏における流動性障害除去プロジェクト(Reducing mobility obstacles in the European Higher Education Area)は、今、終わりを迎えようとしている。
HRKのヒップラー会長によると、粘り強く熱心な取り組みによりプロジェクトは成功を収めているという。そして、流動性の妨げとなっているものを解 消することは、「ドイツのような研究やイノベーションに重点を置く国が、他の国からトップクラスの研究者を惹きつける唯一の方法である」と述べた。
2005年にHRKが欧州委員会の提言による「研究者に関する欧州憲章および研究者の募集に関する行動規範」に署名したことが、この取組みの機動力 となった。以来、HRKは社会保障や滞在に関する法律上の多くの問題点にかかる解決策を考案し、たとえば滞在に関する法律については連邦移民・難民庁、外 国人局、連邦内務省ならびに外務省とともに取り組み、こうした法律にかかる情報は大学へ提供された。
とりわけ老齢年金に関する問題は、ドイツ年金保険等の年金を扱う公立の組織との継続中の会談での主題であったが、BMBFが出資する流動的な外国人研究者のための情報ポータル「findyourpension」の例のように、結果的に改善された。
HRKのヒップラー会長は、「BMBFの支援により、長期間にわたる困難な問題に関するプロジェクトに取り組むことができた。たとえば、EU圏外か らの高レベルな研究者のための滞在に関する状況は、非常に小さなステップを数多く積み重ねることにより改善できたものだ。外国人研究者に対する滞在に関す る法律は、ドイツはおそらく欧州で最もリベラルであるだろう。過去、外国人研究者は老齢年金の一部を無駄にしなければならなかったが、長期間の滞在するの であれば、現在ではよりよい法的環境と助言を享受できる。将来においては、たとえばリサーチ・アシスタントや博士後期課程学生として3年以上ドイツに滞在 するトップクラスの若手研究者は、彼らが受ける資格のあるどの退職給付も失うことはないだろう」と述べた。これは、2015年末にEU流動性指令に関して 開かれた連邦議会で可決された法律によって保障されており、連邦労働社会省のもとで導入されている。ヒップラー議長は、ドイツにおける研究とイノベーショ ンはこれらの輝かしい判断の恩恵を受けるだろう、と加えた。
DFG合同委員会が研究不正を行った研究者に対して3年間の研究費応募資格停止処分を発表(3月18日)
ドイツ研究振興協会(DFG)の評議会は、研究不正を行ったとされる生命科学分野の研究者に対し、文書による厳重注意および三年間の研究費応募資格 停止措置が見込まれる旨発表した。この二つの措置は、DFGの学術における不正行為の取扱手続規定および研究不正調査委員会からの提言に基づいて実施され る。
当該研究者はDFGの助成によりアメリカの機関に研究滞在している期間中に、研究不正を行ったことを認め、当該研究機関からDFGに事例が報告され た。一連の調査において、当該研究者は、論文中故意に図を偽ったこと、意図する研究成果に合致するようデータを操作したことを認め、これらの行為を個人的 な問題と研究成果へ高度なプレッシャーがかかる研究環境によるものだったと述べている。
ツヴォネク事務局長が委員長を務めるDFGの研究不正調査委員会は、当該個人の行為を研究不正であると判断した。当該研究者が主張するところのプ レッシャーは、過去の不正事例と同じく理解されうるものであるが、しかし不正行為の弁明となるわけではない。 委員会は、この行為の深刻さに鑑み、当該研究者は文書による厳重注意および三年間の研究費応募資格停止措置がとられるべきであると検討している。これらの 措置は、評議会の最終判断を通して、正式に決定される。
DFG: http://www.dfg.de/en/service/press/press_releases/2016/press_release_no_09/index.html
ドイツ全国奨学金プログラムにおいて多様な学生が支援されていることを報告(3月9日)
本日閣議決定された全国奨学金プログラムに関する報告で、当該プログラムでは移民背景を持つ学生が割合的にみると多く支援されていることが明らかに された。全学生の平均移民背景率は23%であるが、奨学生においては4分の1以上(28%)である。当該奨学金を受給する学生は22,500人以上 (2014年)いるが、そのうち、両親が大学卒業でない学生の割合、性別、年齢、配偶者の有無については、全学生と同じ割合を示している。
全国奨学金プログラムでは、成績優秀で社会活動に従事している学生に対し、2011年より月々300ユーロを支給している。このうち150ユーロは連邦政府からの助成によるものであり、残り半分は大学が調達した民間からの支援によるものである。
当該報告においては、法律で定められた全国奨学金プログラムの評価結果も報告されている。この評価結果によると、すべての大学において十分な民間資 金を調達できる条件がそろっているとされており、大学の各地域における状況によって全国奨学金プログラムの助成率が影響されるわけではない。
BMBF: https://www.bmbf.de/de/soziale-vielfalt-im-deutschlandstipendium-2545.html
順調な発展をみせるエラスムス・プラス(3月8日)
ドイツ学術交流会(DAAD)は、2014/2015年度にエラスムス・プラスの支援を受けたドイツの大学生および大学関係者数は計4万2000人 となり、この派遣者数は前年度に対し5%近く上昇していることから、当該年度のエラスムス・プラスに対し肯定的な結果である旨総括した。
エラスムス・プラスは、留学と並行して外国でのインターンシップも支援しており、2ヶ月から12ヶ月の間、民間企業や機関、非政府組織(NGO)で 働くことが可能となる枠組みを設けている。2014/2015年度においては、前年度に対し約18%増にあたる7500人近くのドイツ人学生がこのプログ ラムを利用した。
在学期間中に留学するドイツの大学生は増える一方である。3万8000人の学生がエラスムス・プラスで3ヶ月から1年をヨーロッパ圏内で過ごしている。と りわけイギリスが最も人気が高く、それにスペインとフランスが続く。大学教員については、フランスとスペイン、ポーランドが多く、大学職員研修において は、イギリスとスペイン、フィンランドが多く選ばれている。
BMBF: https://www.bmbf.de/de/erasmus-nimmt-fahrt-auf-2543.html