ドイツ学術情報(過去の分)
マックス・プランク・フンボルト研究賞、2019年に第2期に入る(9月20日)
人文科学及び社会科学の2人のトップ研究者が表彰
シカゴ大学のUfuk Akcigit氏は、今年のマックス・プランク・フンボルト研究賞の受賞者である。このトルコ出身の経済学者は、マクロ経済学の分野での顕著な業績が評価され、賞を受賞した。この賞に関連するドイツでの研究滞在で、彼は東ドイツと西ドイツの経済格差の原因を調べている。
人格と発達心理学の分野での業績に対して、テキサス大学(オースティン)のElliot Tucker-Drob氏もマックス・プランク・フンボルト研究賞を受賞した。11月5日にベルリンのサイエンス・ウィークの一環として、連邦教育研究省のAnja Karliczek大臣、マックス・プランク協会(Max-Planck-Gesellschaft)のMartin Stratmann会長、フンボルト財団(Alexander von Humboldt-Stiftung:AvH)のHans-Christian Pape会長が賞の授与を行う。
「最先端の研究をドイツにもたらすことが、この賞の重要な目標である。Ufuk Akcigit氏の実証研究結果から、西ドイツと東ドイツの様々な経済発展経緯の原因をより正確に理解できるようになると考えている。」と、Anja Karliczek大臣は述べている。
「今年、人文科学と社会科学の分野に対し、初めてマックス・プランク・フンボルト研究賞を授賞した。Ufuk Akcigit氏とElliot Tucker-Drob氏に、明日の世界を形成するのに役立つ革新的で先駆的なアイデアを持つこの2人のトップ研究者に栄誉を授けたい。」と、マックス・プランク協会のMartin Stratmann会長は述べる。
「関連する科学者や機関だけがこの賞の恩恵を受けるわけではない。双方の研究トピックは、社会への関連性が非常に高いため、公的及び政治的議論の重要な刺激になることを期待している。」と、フンボルト財団のHans-Christian Pape会長は述べている。/p>
ドイツでの研究滞在中、Ufuk Akcigit氏は統一後30年経ってまだ関連している問題の底にたどり着いた:なぜ東ドイツと西ドイツの間にまだ経済的な格差があるのか?
「賞金150万ユーロで、ライプニッツ研究所ハレ(IWH)のパートナーとのコラボレーションを強化できる。3つの共同プロジェクトで、東部と西部の生産性の伸びと生活条件の違いの原因を探っている。」と、受賞者のUfuk Akcigit氏は説明する。シカゴ大学の経済学教授は、現在の成長理論の分野で国際的に認められた専門家である。例えば、彼の以前の研究では、彼はアメリカにおけるイノベーションと長期経済成長の間と、イノベーションと社会的流動性の間、そしてイノベーションと幸福感の間に強い関連があることを実証することに成功した。
今年、マックス・プランク・フンボルト研究賞は、発達心理学、老年学、行動遺伝学の分野への貢献に対して、テキサス大学オースティンの准教授Elliot Tucker-Drob氏を表彰する。彼は、社会的、及び生物学的プロセスがどのように生涯にわたって人々の心理的発達を形成するか調査している。ゲノムと環境の間の複雑な相互作用に関する彼の研究は、教育と社会政策に重要な衝撃を与え、社会主義と機会均等に関する議論の質を高める。Elliot Tucker-Drob准教授は、マックス・プランク人間発達研究所所長のUlman Lindenberger教授によってこの賞にノミネートされた。
マックス・プランク協会とフンボルト財団は、2018年に再設計された150万ユーロ相当のマックス・プランク・フンボルト研究賞を海外の研究者に授与している。この賞には個人賞金として、8万ユーロが追加される。評価の焦点は傑出した将来の可能性によって特徴づけられる人物にあてられる。例えば、ドイツの大学や研究機関に一時的に滞在することを目指して、(現在は)海外で働いている特に革新的な科学者に授与される。連邦教育研究省が資金を提供するこの賞は、フンボルト財団とマックス・プランク協会が例年2人の研究者に授与してきたマックス・プランク研究賞に代わるものである。この賞は毎年、自然科学と工学、生命科学と人文社会科学の分野で交互に授与されるものである。さらに、追加で最大2名までがノミネートされ、それぞれにマックス・プランク・フンボルトメダルが授与される。これにも6万ユーロの賞金が与えられる。
https://www.humboldt-foundation.de/web/pressemitteilung-2019-20.html
調査「外から見たドイツ」:海外の科学者は研究の場としてのドイツを称賛し、官僚主義を批判する(9月19日)
フンボルト財団が140か国以上の研究者の経験を評価
ドイツ人はどのくらいオープン且つ寛容に海外の研究者に対応しているか?ドイツの人々はどのくらい独創的で、進歩的で、官僚的で、親切か?研究所や図書館はどのくらい設備が整っているか?1800人を超えるフンボルト財団(Alexander von Humboldt-Stiftung:AvH)の研究奨学生は、過去6年間の滞在中に得た経験を評価している。
その結果、ドイツとその科学システムは海外で前向きに認識されている。とりわけ科学への親近感、寛容さ、民主主義、進歩性が称賛されている。労働時間、男女平等、ホスピタリティも国際比較でみると肯定的に評価されている。一方、官僚主義、言語の壁、日常生活における社会的まとまりの欠如に対する批判が見られる。若い研究者の昇進も、特に米国からドイツに来る奨学生の観点から見ると、あまり良いものではない。
「フンボルト財団の奨学金受給者たちから私たちが受けとる肯定的な感想は、少なくとも、省察の動機でもあるが喜ばしいことでもある。」と、フンボルト財団のHans-Christian Pape会長は、調査の結果についてコメントした。
「国際的な場での競争において、ドイツに対する多くの称賛とドイツに大きな強みがあることには満足できる。これは宣伝できることだ!しかし、官僚主義と才能ある若手の将来の見通しに対する批判は、模範生であるドイツが喫緊に改善する必要があることを示唆している。」とPape会長は述べている。
「外から見たドイツ」調査の結果詳細はこちら:
https://www.humboldt-foundation.de/web/Deutschland-von-aussen.html
ドイツでの研究滞在終了時の、1800人のフンボルト財団奨学生からのフィードバックが評価された。平均1年半の滞在の最後に行われたオンラインアンケートで、若手科学者はドイツでの仕事と生活の様々な側面を所定の尺度で評価した。インタビュー対象者にはコメントする機会も与えられ、すべての回答は匿名で扱われた。過去6年間、140か国以上からの奨学金受領者のうち、95%が調査に参加した。したがってこの結果は、フンボルト財団の奨学金受給者がドイツに対して持つ包括的かつ象徴的なイメージを反映している。
https://www.natureasia.com/ja-jp/info/press-releases/detail/8741
見えないものを見えるように-『物理学のハイライト』がボンへ(9月16日)
『物理学のハイライト』開催/Karliczek連邦教育研究大臣:「私たちは発見の自然な精神を喚起し、自然科学への関心を高めたい」
ボン、2019年9月16日、『姿を現せ!見えないものを見えるように』のスローガンのもと、16日から21日にかけてボンは科学フェスティバル『物理学のハイライト』の舞台となる。連邦教育研究大臣のAnja Karliczekは、ドイツ物理学会(Deutsche Physikalische Gesellschaft :DPG)のDieter Meschede会長とボン大学のMichael Hoch学長と共に、今日、ボンのテレコム・ドームで大規模な科学ショーとして、一週間の物理学ショーを開始する。約5万人の訪問者が見込まれている。『物理学のハイライト』の主催者は、連邦教育研究省(Bundesministerium für Bildung und Forschung :BMBF)、ドイツ物理学会、ボン大学である。
連邦教育研究大臣のAnja Karliczek氏は、ボンでの今年のイベントで次のように強調した。
「私たちは、『物理学のハイライト』で若者たちの発見の精神を喚起し、大人たちの科学への関心を深めたい。連邦都市のボンは、連邦研究省の最初の公邸として、また新たにエクセレンス大学の称号を関した大学のある場所としてそれに最適な場所である。ドイツには、数学、コンピューターサイエンス、自然科学、技術に熱心な人材が必要だ。このようにして、私たちは革新的な国家として世界の最前線に居続け、繁栄を保っている。エキサイティングな専門家たちの世界、MINTにより多くの若者たちを惹きつけたい。そのため、数か月前に、新しい方策と共にMINT教育を強化することを目的としたMINTアクションプランを公表した。」
研究者はどのようにして目に見えないものの可視化に成功するのか?物理学では、最小の粒子または遠方のブラックホールを調査するために、最先端の研究施設と測定方法を活用している。ドイツ中の物理学者は、『物理学のハイライト』でこのような最新の発見をわかりやすく紹介し、訪問者たちの質問に答える。
このイベントの中心は、ミュンスター広場での参加型の展示会で、約50の展示がある。子供向けのシアター、ジュニアラボ、実践的なワークショップ、学校の生徒のためのコンペティションが行われ、主催者は子供と青少年をターゲットにしたいと考えている。そのほかのハイライトとしては、カラフルなサイエンスショーのプログラム、ライブ実験、サイエンススラム、著名な研究者による講義などがある。
このフェスティバルでは、約4500人の参加者とともに9月16日の夕方に「ハイライトショー」が開催される。著名なゲストとのプログラムは、ARDサイエンス・モデレーターのRanga Yogeshwar氏が行う。「科学とエンターテインメント、ライブ実験、ロボット・アクロバット、アート、コメディ、ライブ音楽との組み合わせにより、訪問者を物理学と情報科学の魅力に惹きつける。私たちは、モバイルレスキューロボットを研究しているAI研究者と対話し、物理学者が新しくより良い顕微鏡と望遠鏡で宇宙の最も深い部分を探索していることを紹介する。」と、ドイツ物理学会のDieter Meschede会長は言う。
ボンは『物理学のハイライト』の19番目の場所である。
「ボン大学には長年の優れた物理学の伝統があって、これはノーベル賞受賞者のヴォルフガング・ポールの評判とも密接に関連している。したがって、ボンでユニークな科学フェスティバルを開催することは理にかなったことである。そのため、このイベントが私たちの200年の歴史の節目となることを、私はなお一層嬉しく思う。昨年、アーヘン、ケルン及びユリッヒと協力して6つのクラスターのひとつとして「ML4Qクラスター・オブ・エクセレンス-量子情報のための物質と光-」を獲得できた後、ボン大学は2019年7月からエクセレンス大学に採択されているのだ。」と、ボン大学のMichael Hoch学長は述べている。
今年の特別なオファーとして、物理学者のMetin Tolan教授とPhysikanten&Co.(※)のエンターテイナー、Marcus Weber氏のユーモラスなクイズショーがある。有名な作曲家のLudwig van Beethovenがかつてオルガンのレッスンを受けたシュロス教会では、シリーズ講義『見えないものを聞こえるように』が開催される。科学者は様々な楽器を鮮やかに扱い、それらを鳴らし、それらの背後に隠れている物理的性質を説明する。さらに、ボン物理学ショーの3つの講演がヴォルフガング・レクチャーホールで行われる。これら及びすべての『物理学のハイライト』のプログラムへの参加は無料である。(※) Physikanten&Co.とは、科学者、俳優等が科学ショーを行うパフォーマンス、ショーを提供している企業。
今年も多くの機関が「物理学のハイライト」を支援している。これらには、ボン市、ヴィルヘルム&エルゼ・ヘレウス財団、ハンス・リーゲル博士財団、テレコム財団、ベートーヴェンフェスティバル、インターネットプラットフォーム・ワールド・オブ・フィジックスが含まれる。メディアパートナーは新聞社のBonner General-Anzeigerである。
留学生の学問的成功の増加(9月13日)
ドイツが世界で最も重要な非英語圏の留学先に-ドイツ人学生や研究者もより多くが外国へ
カリチェック大臣:留学生や若手研究者は専門職の需要を満たすためにますます重要である。
現在、280,000名以上の留学生(この記事では、厳密にはドイツの大学への入学資格をドイツ以外の国で得て、ドイツの大学に留学しに来ている学生を指す。以下留学生とする)(※)がドイツで学んでいる。しかし彼らのすべてがドイツで首尾よく学業を修了できるわけではない。ドイツ学術交流会(Deutscher Akademischer Austauschdienst:DAAD)の研究教育部、戦略部門長のChristiane Schmeken氏と、教育社会学者のJesús Pineda博士は、インタビューの中で事の背景及び、ドイツの大学がいかにして留学生たちの学問的成功をサポートできるか説明する。
(※)ドイツにはBildungsausländerのほかに、Bildungsinländerという区分もあり、こちらはドイツ国内で大学への入学資格を得ている学生のことを指すが、ドイツ以外の国籍の学生も含まれる。
連邦教育研究省が資金措置を行っているプロジェクト「学部及び修士課程におけるドイツの留学生の学問的成功と退学」("Studienerfolg und Studienabbruch bei Bildungs-ausländern in Deutschland im Bachelor- und Masterstudium " :SeSaBa)において、DAAD、ハーゲンのフェーン大学、バイエルン州立高等教育研究所(das Bayerische Staatsinstitut für Hochschulforschung und Hochschulplanung :IHF)は、ドイツにおける留学生の特定の修学状況を共に分析している。なぜこの取り組みが必要なのか?
Christiane Schmeken氏:「ドイツの高等教育学術研究センターからの統計データは、留学生の退学率が特に高く、学士課程では45%、修士課程では29%であることを示している。これらの結果は満足できるものではなく、特に注意が必要である。私たちのSeSaBaプロジェクトでは、ハーゲンのフェーン大学、及びIHFが、2021年までの退学の原因と学問的成功の決定要因を調査し続けている。
研究プロジェクトを評価するために、特定の基準が使用されていた。これらはどのようなものであり、最初の結果はどのようなものだったのか?
Dr. Jesús Pineda氏:私たちは学問的成功も退学も、複雑で複数の原因を持つ現象であると考えている。したがって、学業を中断する原因のひとつを特定するだけでなく、多くの組み合わせ、またはより適切な言い方をすれば、課題の重複についても考慮に入れる必要がある。これらを特定するために、私たちは大学の代表者たちと留学生を含むフォーカスグループと共に、2017年にエキスパート・ワークショップを実施した。例えば、一連の定性的予備調査で、多くの留学生が誤った期待を持ってドイツに来ていることがわかった。私たちはなぜそうなるのか、彼らがどの情報源を活用しているのか探った。彼らの失望を防ぐためには、高等教育機関がどのように情報提供を改善すればいいのか、海外の機関とより密接に協力できるかを検討する必要があるだろう。そして、留学希望者はドイツ語を習得することがかなりの挑戦であることを事前に知っておかなければならない。この問題には客観的なレベルと主観的なレベルの両方が含まれる。実際の言語能力と自己評価は往々にして異なる。多くの留学生は正式な要件を満たしていればうまく勉強できる、ということに依存している。言語証明書があるにも関わらず、講義中に教授の言うことを理解していないのなら、失望はそれに応じて大きくなる。英語の学位プログラムの学生は、しばしば彼らの学位プログラムが完全に英語で実施されるのではないかと誤解していることが良くある。しかしながら、多くの大学は、ある程度の情報はドイツ語のみで提供している。
何故留学生たちの学問的成功がドイツの大学のマーケティングに密接に関連しているのか?
Christiane Schmeken氏:高等教育方針と研究にとって、留学生の学問的成功の増加は重要な戦略的目標だ。満足した卒業生たちの存在は、ドイツで学ぶことにとって優れた大使となる。また、国内の学生数が減少する時代に、ドイツの大学は非常に優秀な留学生を獲得するために以前にも増して競争し合っているため、個々の大学のマーケティングにおいても彼らは役割を担っている。現在、ドイツの大学のインフォメーションページは大学や研究に関する一般的な情報を提供するだけでなく、その大学での留学生の成功と満足度も明確にしている。
高等教育の国際化をめぐってドイツと競っているホスト国を見ると、留学生は国内の学生よりも成功していることが多いことがわかる。これはどのように説明できるか?
Dr. Jesús Pineda氏:確かに、他のホスト国を見ると、どこの国でも留学生の退学率は国内の学生の退学率よりも高くないことがわかる。例えばこれはアメリカやオーストラリア、オランダに当てはまることだ。これには確かに様々な理由がある。2019年1月のDAADフォーカス「ドイツとその他の重要なホスト国における留学生の学問的成功と退学」で、私の同僚のJan Kercher博士は高等教育システムの資金調達の程度が、学生カウンセリングやサポートにとってある影響力を持つと分析している。上記の国々で成功率が高いのは、ある程度は留学生の授業料が高いことと、費用をかけた教育指導によるものであろう。もちろん、アメリカやオーストラリアでは英語が話されているという事実も関連している―――多くのオランダのコースも、英語で行われている。これにより、留学生たちにとっての大きなハードルが取り除かれている。社会学的な観点から見ると、なおも検証されるべき仮説の一つは、移民社会としての長い伝統を持つアメリカとオーストラリアは、多様性の問題に対処する経験が多いのではないか、ということだ。
DAADは留学生たちの成功のために何をするのか?
Christiane Schmeken氏:私たちの対策は、分析、マーケティング、サポートの3点に焦点を当てている。一方では、学生の成功を評価し、決定的な要因を理解することが重要だ。このため、DAADは留学生たちの動向と、ドイツ内の学業中断の割合を常に分析している。例えば、「ドイツの大学での国際性に関するプロフィールデータ」プロジェクト、出版物「サイエンス・コスモポリタン」や、SeSaBaの研究活動などだ。ここでは、私たちは出身地に応じて差別化されたイメージを描くことにより、大学が最も適したターゲット国を選択するのをサポートする。これは、国際大学マーケティングが入学希望者や大学が彼らの期待感に都合をつけるのにどのように役立つかのほんの一例である。双方が何に期待しているかと正確に知っているほど、成功の可能性は大きくなる。結局DAADは連邦外務省からの資金援助を受けて、STIBETプログラム(Stipendien- und Betreuungsprogramm)を活用して、ドイツの大学と留学生と博士課程入学希望者を支援している。現在でも28の新しいプロジェクトが留学生の学問的成功を増加する目的で開始されている。
STIBETプロジェクトはどのように支援を行うのか、そしてその特徴は何か?
Dr. Jesús Pineda氏:STIBETプログラムは、第一に、留学生を歓迎する考え方を向上させることを意図したものである。主要な目標は、ドイツのポジティブなイメージを発展させ、留学生たちが修学後もドイツとつながりを保ち、さらにはドイツの労働市場の専門的な人材として採用されるように、彼らが大学の場でしっかりとその一員となることである。モデルプロジェクトは、留学生の学問的成功を向上させるために開発されている。私たちは大学を支援・指導するだけでなく、大学と集中的に意見交換を行って最良の方法を開発する。これらのことは他の大学の利益につながる。
ドイツの大学は、留学生の退学に対抗するために独自のイニシアティブをもって何ができるか?
Christiane Schmeken氏:現在、多くの大学は、入学希望者たちがどの学位プログラムに適合するかについて非常に正確な考えを持っている。正確で適切な選択は、(自身の学業に)満足して成功した留学生を惹きつけるための最も重要な前提条件だ。他の重要な要素は、優れた社会性及び専門的なサポートと、留学生をつなげるための方策である。いわば分散的に組織されている傾向にあるドイツの大学特有の課題は、多様なオファーをとりまとめて、学生がそれらを見つけて活用できるようにすることである。アングロ・サクソン諸国の大学が高い授業料のおかげで提供できるオールラウンドで楽しいプログラムと競争できないとしても、私たちはSeSaBaプロジェクトをもって、ドイツの大学が留学生を更に効果的にサポートする方法を見つけることができると確信している。
你好-中国とのネットワーキング(9月9日)
中国は産業や科学において、ますます重要な役割を担っている。ドイツの企業や研究者たちにとって、中国において足場を築くことと関係性を確立することがますます重要になっている-例えばドイツあるいは中国の同窓生や利害関係者に、専門知識を交換し合う機会を提供するドイツ・中国の同窓生ネットワーク(Deutsch-Chinesischen Alumnifachnetzwerke :DCHAN)の助けを借りることなどが挙げられる。スタートアップ企業の創設者であるThomas Wuttke氏はこの機会を利用した。
「私が上海への旅を始めたとき、私の期待はそれほど高くなかった。」と、ライプチヒ出身のThomas Wuttke氏は言う。通常、投資家やビジネスパートナーを見つけることは偶然のことである。投資家を探す際、組織化されたピッチ(意味:プレゼンテーションより短く、アイデアの要点をわかりやすく短く提案すること。不特定多数の、必ずしも専門を同じくしない聞き手を対象に行われることが多い)は限られた範囲でしか役に立たない。しかし、今回彼は良い意味で驚いた。Wuttke氏と彼のスタートアップ企業「diafyt MedTech」は、中国を知り、現地で新しいネットワークを作り、さまざまなピッチに参加するために2018年夏にライプチヒDCハブによって選ばれた6つのチームのうちのひとつだった。ライプチヒDCハブは、ドイツ・中国同窓会ネットワーク(DCHAN)に属する7つの同窓会ネットワークの一つである。
「私は中国がどのような仕組みなのか学ぶためにすべてを見分したかった。」と、Wuttke氏は述べる。彼は、diafytという、AI制御で糖尿病患者がインスリンを適切に投与できるようにするアプリを立ち上げたいと考えている。彼は上海に着くとすぐに、彼と共に働きたいと考えていた中国の新興企業と連絡をとった。この企業はグルコースセンサー用のハードウェアを開発していた。
「ドイツでは適切なサービスプロバイダーが見つからなかった。」
中国人たちは協働することに非常に関心を示し、ビジネスミーティングをセッティングした。
「素晴らしかった。すべてが簡単で速やかだった。」
プロジェクトは現在保留中だが、彼らはまだ連絡を取り合っている。一方で、他の中国企業はライプチヒの新興企業の存在を認識しつつある。例えば、中国の製薬会社Taslyは、ライプチヒに基盤を持つ企業と共同プロジェクトを進めたいと考えている。
中国を理解し、関係を築く
「数十億規模の市場である中国で足場を築きたいのであれば、中国とその国民を理解することを学ばなければならない。」とWuttke氏は言う。彼の訪中は彼の偏見を取り除き、中国がいかに現代的でデジタル化されているか認識するために重要なものだった。その間に、彼は瀋陽大学の客員講師として2度中国を訪問した。そしてライプチヒの自宅で、彼は中国を販売市場、または生産拠点としてよく理解するために、新興企業や企業向けにワークショップ、イベント、中国滞在を運営する専門的基盤であるDCハブとの関係を引き続き深めている。
二国間協力:大きな関心
ライプチヒ大学のDCハブはDCHANファンディング・プログラムの一環であるため、このような事業の実施が可能である。DCHANハブは2017年から連邦教育研究省から資金提供を受けており、中国国内で学び、研究し、働き且つネットワークを構築したドイツ人同窓生、科学者たちを介したドイツと中国との協働を促進することを目指している。「そして、それに対する関心は、ドイツ人だけでなく中国の同窓生の間でも大きい。」と、ドイツ学術交流会(Deutscher Akademischer Austauschdienst:DAAD)のDCHAN付随プロジェクト責任者であるCécile Jeblawei氏は述べている。「最近、アーヘン工科大学で彼らと再生可能エネルギーとeモビリティについて意見交換するために会った際、70人の参加者の半分は中国から来ていた。」この理由は、ドイツと中国の学術界、産業界の同窓生たちが、二国間協力が理にかなっていることを見出したからであると言える。ドイツの基礎研究と中国の応用経験は、理想的に補完し合っている。一方で、他の分野でも協力する価値がある。例えば、フライブルクとハイデルベルクのドイツ人専門家たちは、彼らの中国人の同僚と共に中国の病院で、以前は無視されていた心身医学の部門を設立している。彼らは革新的な医学の教訓的な概念を発展させ、両国の専門的知識と協力の要請を経済的な方法で結びつけた、最初のドイツと中国のコンサルティング・プラットフォーム形成に取り組んでいる。
7拠点の同窓会ネットワーク
DCHANは現在、ドイツの大学や研究所の支援のもと、7つの同窓会ネットワークを提供している。これらには様々な分野とトピックが含まれている。
https://www.daad.de/der-daad/daad-aktuell/de/73799-ni-hao--mit-china-vernetzen/
連邦政府内閣がハイテク戦略2025に肯定的な評価(9月4日)
不安定な世界経済のためには教育、研究、イノベーションが重要
連邦政府内閣は今日、ハイテク戦略2025の進捗報告書を承認した。
連邦教育研究大臣のAnja Karliczek氏がそれについて説明:
「私たちは昨今の課題に対して、ハイテク戦略2025で対応している。始めに12の主要なトピックを定め、それぞれに野心的な目標を設定した。これらは議会が終わった後もさらに進展している。本日閣議で承認された過去12か月の進捗報告は、私たちが正しい軌道に乗っていることを示している。既に重要な段階に達していると言える。
癌研究において、ドイツのすべての患者が医学の進歩の恩恵を受けられるように、私たちは新境地を開拓し、最先端の研究からの成果の移転を促進している。このようにして、私たちは早期発見された治療可能な癌の発見率を上げることができる。私たちはできるだけ多くの癌疾患を予防し、患者たちにとってより良い生活を実現したいと考えている。この目的のために、私たちは、新しい健康研究フレームワークプログラムの傘下で、今年の初めに国家戦略「癌に対する10年」を開始した。また1月には、「癌疾患の予防、診断、治療のための実践的-完全的臨床研究の推進」と題した公募事業を発表した。
2019年6月には、気候保護計画2050の科学プラットフォームを開始した。この新しいプラットフォームは、CO2の無い経済と社会への移行のための科学的基盤と技術的ノウハウを提供してくれるだろう。また、ここ数か月で、科学、経済、社会の主要なプレーヤーとの持続可能な開発のためのフレームワークプログラム研究のアップデートの準備を行った。デジタル化は、持続可能性の推進力としてさらに活用する必要がある。そして2月には、私たちはFONAフレームワークプログラムの4番目の先導的戦略事業として、「生物多様性保護研究戦略」を開始した。2億ユーロの予算措置により、今後5年間、生物多様性研究へ大きく貢献できるだろう。
プラスチックを使わないようにするために、私たちは5つの連邦省庁と協働している。私たちは様々な対策事業を共に取りまとめている。例えば、2021年まで施行される優先的研究の「環境におけるプラスチック-発生源‐削減-解決策へのアプローチ」、2018年11月に提案されたプラスチック製品回避のための5つのプラン、及びBIO経済における生物由来のプラスチック関連研究と開発促進などがそうだ。
そして、私たちは教育の分野でもここ数か月で多くのことを達成した。例えば、デジタル協定を立ち上げ、国内、欧州及び海外の専門的な将来性へアクセスしやすくするための専門家戦略を採用し、2019年6月に全国的なアドバンスト・トレーニング戦略を発表した。
私は、研究とイノベーションを通じて、ドイツの結束を確実に強化することができると確信している。「機会‐地域」の概念では、私たちはドイツ国内の体制的に弱い地域のための様々な資金策をとりまとめており、教育、研究、イノベーションの観点を統合させている。私たちの新しい社会連携研究所(Forschungsinstitut Gesellschaftlicher Zusammenhalt :FGZ)を活用して、私たちは農村部と都市部における参画と連携の構造を調査したいと思っている。また、連邦政府の主要なファンディング・プログラムをとりまとめることで、体制的に弱い地域向けの全国的なファンディングシステムも開発するつもりである。
私たちは人々の考えを真摯に受け止め、私たちの政策を具体化するのに、彼らが積極的に関与することを望んでいる。ハイテク戦略2025は、いかにして政治が人々と共に何かを作り上げられるかの実例だと考えている。例えば、未来カンファレンス2019の機会に、「ヨーロッパの未来に関する市民の対話」、あるいはAIに関連して、現在のトピックに関する市民との対話を定期的に実施している。全体として、市民科学の分野を更に強化、拡大した。そして、ネットワーキングプラットフォーム「市民による知識の創造」の推進も継続される。私たちは、私たちの国のすべての市民と、一緒に未来を形成していきたい!」
背景:連邦政府は、ハイテク戦略により、各議会の開始時に、研究とイノベーション資金調達のための戦略的権限を定義している。2018年9月に開始された連邦政府のハイテク戦略2025は、今後数年間の研究とイノベーションの方針における省庁間の目標、優先順位、マイルストーンを策定する。これは、研究開発への投資を、2025年までに現在の国内総生産の3%から3.5%に戦略的に増やすという目標を強化している。
https://www.bmbf.de/de/bundeskabinett-zieht-positive-bilanz-der-hightech-strategie-2025-9528.html
研究とイノベーションをより明瞭に(9月2日)
2019年9月から、さらに7つの研究プロジェクトが研究とイノベーションの指標改善に取り組む
地球規模の変化とデジタル化の時代において、どのように知識フローをよりよく理解できるか?何が今日明日の革新的企業を際立たせるか?個人世帯の革新的な行動を把握理解することができるか?大学、経済、学術、政治そして市民社会の間で研究に基づく知識交換のどの特徴が、持続的イノベーションの創出に関与しているか?これらの問いは、7つの共同プロジェクト、または個別プロジェクトで研究者たちにより今後3年間追究される。プロジェクトは、連邦教育研究省(Bundesministerium für Bildung und Forschung :BMBF)の要綱「研究とイノベーションのための指標の更なる発展(Weiterentwicklung der Indikatorik für Forschung und Innovation)」の第2期資金措置の一環として支援される。
「研究とイノベーションの動向は絶え間なく発展を続けている。新しい研究分野と現象は、指標システム(インディケーターシステム)もさらに発展し続けなければならないことを意味する。支援を受けるプロジェクトは、これらの発展の継続に大きく貢献するだろう。その結果、研究拠点としてのドイツの能力はより良く把握され、可視化されるだろう。」とBMBF政務次官でもあるMichael Meister連邦議会議員は述べた。BMBFは、プロジェクトに1年当たり100万ユーロの資金を支給する。
2019年9月から10月にかけてスタートするプロジェクト
ミュンヘン工科大学とマンハイムのライプニッツ欧州経済研究センターは、革新的な企業同士および学術機関との相互作用を評定する。その際、インタラクティブネットワークを生み出すために、例えばWebサイトリンクやソーシャルメディア、プラットフォームのようなオンライン情報が利用される。研究者らは引き続き、ネットワークが起業家の成功を説明するために成し遂げる貢献を分析する。
ハノーファーにある国立科学技術図書館は、テキストマイニング技術を通じてドイツの研究報告書を再分析する合同プロジェクトを調整している。それらの文書は、後援者、科学者、一般の人々にとってより簡単にアクセスできるようにする必要がある。(このプロジェクトの)目的は、評価に使用できる新しい指標のデータ基盤を構築することである。
カールスルーエにある、フラウンホーファー システム・イノベーション研究所は、イノベーションシステム内の知識フローの定量化(数量化)のための指標を開発する合同プロジェクトを調整する。その際、研究者は暗黙知と非公式の交換関係の把握に焦点を絞る。これらの知識フローを確認し測定可能にするために、新しいデータソースが開発される。
ケルン工科大学では、伝統的書誌統計学的指標の代替指数であるオルトメトリクスを研究する。目的は、研究の社会的影響を反映するための信頼できる指標を開発することである。
ベルリンのエコロジー経済研究所(IÖW)はベルリン工科大学と協力して、家庭における共同のオンラインに基づくイノベーションプロセスの把握手段を開発する。その際、研究者は持続可能性、エネルギー、交通・都市開発の3つの活動の分野において、分散的に組織されたユーザーコミュニティのイノベーション活動を分析する。
ゲッティンゲン大学とダルムシュタット専門大学は、地方の知識移転と持続可能性関連のイノベーションへの貢献との因果関係を研究する。研究者は、どの知識移転システムのどの構造的特徴が持続可能なイノベーションの要因であるかを分析する。
ギュータスローの高等教育開発センターは、看護学や労働・組織・経済心理学に焦点を絞った大学内の研究開発から社会イノベーションまでの方法を説明する。特に社会イノベーションを生み出すために大学が作り出さなければならない前提条件が分析される。プロジェクトの目的は、大学の社会イノベーションのプロセス、方法、効果を示す一連の指標を開発することである。
プロジェクトは、議長のもと独立した専門家選考委員会により選考された。
議長:
ハンナ・ホッテンロット教授(ミュンヘン工科大学)
その他の選考委員:
Arne Bathke教授(ザルツブルク大学)
Heike Belitz博士(ドイツ経済研究所)
Kerstin Ettl教授(ジーゲン大学)
Oliver Falck教授(イフォ経済研究所)
Lutz M. Hagen教授(ドレスデン工科大学)
Carolin Häussler教授(パッサウ大学)
Katja Mayer博士(ウィーン社会イノベーションセンター)
Jan-Hendrik Passoth博士(ミュンヘン工科大学)
Sebastian Pfotenhauer教授(ミュンヘン工科大学)
Marion Poetz教授(コペンハーゲン・ビジネス・スクール)
Karoline Rogge教授(フラウンホーファーシステム・イノベーション研究所及び・サセックス大学)
Klaus Schuch博士(ウィーン社会イノベーションセンター)、Matthias Weber博士(オーストリア技術研究所)
https://www.bmbf.de/de/forschung-und-innovation-transparenter-machen-9511.html