ドイツ学術情報(過去の分)
2018年ソフィア・コワレフスカヤ賞授与(8月30日)
6名の国際研究者は最大165万ユーロを受け取り、ベルリン、ボーフム、フライブルク、ハイデルベルグ、ザールブリュッケン、ヴュルツブルクにおいて自身の研究グループを組織しそれぞれ研究を進める予定
フンボルト財団(AvH: Alexander von Humboldt)は、ドイツにおける最も重要な研究賞の1つであるソフィア・コワレフスカヤ賞に、31歳から36歳までの6名の国際的な研究者を選定した。受賞者にはそれぞれ最大165万ユーロが贈られる。
ソフィア・コワレフスカヤ賞を受賞した若手研究者には、キャリアの初期段階で革新的なプロジェクトを行うためのリスク資本が与えられる。本賞により、受賞者はドイツの大学または研究機関で最大5年間の研究を行い、受入機関で独自の研究グループをつくることが可能になる。本賞は、連邦教育研究省(BMBF: Bundesministeriums für Bildung und Forschung)の資金提供を受けている。
ソフィア・コワレフスカヤ賞の授与は、2018年11月22日にベルリンで行われる正式な式典で行われる予定である。マスコミの招待も予定されている。
今回の受賞者(母国/最新の居住国、研究分野、受入機関)は下記の通り。
• Aydan Bulut-Karslioglu(トルコ/米国、分子生物学、マックス・プランク分子遺伝学研究所)
• Kenji Fukushima(日本/米国、進化生物学、ユリウス・マクシミリアン大学ヴュルツブルク)
• Milica Gašić(セルビア/英国、人工知能・画像・言語処理、ザールラント大学)
• Hitoshi Omori(日本/日本、理論哲学、ルール大学ボーフム)
• Paola Pinilla(コロンビア/米国、天体物理学、マックス・プランク天文学研究所)
• Fritz Renner(ドイツ/英国、臨床心理学、フライブルク大学)
AvH: https://www.humboldt-foundation.de/web/press-release-2018-20.html
2017年度連邦奨学金(BAföG)の統計:奨学金額は増加、奨学生数は減少(8月2日)
アンヤ・カリチェック(Anja Karliczek)大臣「より多くの世帯が、BAföGによる支援の恩恵を受けるべき」
8月2日に連邦統計局が発表した2017年度のBAföG の統計によると、奨学金の平均月額は大幅に増加している。BAföGの支援を受けている大学生は、1月あたり平均499ユーロを受給した(前年比35ユーロ増、7.5%の増額)。また高校生や専門学校生は、1月あたり平均456ユーロを受給した(前年比21ユーロ増、約5%の増額)。
2016年度に比べ、BAföGを受給する奨学生数は5%減少している。この減少は、景気の安定と良好な経済状況が持続している結果であると説明できるだろう。高い就業率と所得の上昇により、より多くの世帯が自費で子に良い教育を受けさせることができるようになった。2017年は、15年ぶりにBAföGを受給する奨学生数の合計が80万人を下回った。
この新しい統計について、ドイツ連邦教育研究省(BMBF: Bundesministeriums für Bildung und Forschung)のカリチェック大臣は、次のように述べた。
「約290万人の若者が、ドイツ国内で学んでいる。もしBAföGに頼らざるを得ない大学生の数がさらに減少したとしても、ドイツにおける教育の機会均等というBAföGの重要な役割が失われるわけではない。
極端な自己犠牲によって子の教育費を捻出せざるを得ない世帯を、教育支援により救済するべきである。私は、より多くの世帯が国家による教育支援の恩恵を受けることを願っている。可能な限り多くの若者が良い教育を受けることこそが、私たちの社会全体の利益となる。政権の連立協定においては、政策期間中に、BAföGへ10億ユーロを追加提供することが確約されている。私はこの資金をBAföG改革に活用し、さらに多くの世帯がBAföGの恩恵を受けられるようにしていきたい。来年の新学期(2019~2020年度の冬学期)までに発効する法案を提出する予定である。」
BMBF: https://www.bmbf.de/de/bafoeg-statistik-2017-mehr-leistungen-weniger-empfaenger-6684.html
ドイツ研究振興協会(DFG: Deutsche Forschungsgemeinschaft)、ピーター・ショルツ(Peter Scholze)教授のフィールズ賞受賞を祝福(8月1日)
2016年ライプニッツ賞受賞者が世界で最も権威のある数学賞を受賞
DFGは、ボン大学数学研究所の教授、かつマックス・プランク数学研究所の所長であるショルツ教授が2018年フィールズ賞を受賞したことを祝福した。DFGのシュトロシュナイダー(Peter Strohschneider)理事長は、次のように述べた。
「ショルツ教授は、2016年にライプニッツ賞を受賞した優れた研究者であり、かつエクセレンス・イニシアティブを通じ資金提供しているエクセレンス・クラスターに所属している。ショルツ教授に代わって、私たちは受賞を嬉しく思う。今回の受賞は、ドイツの大学における研究環境が、新しいアイデアを追求し、才能を伸ばす優れた機会を提供し続けているという事実の、重要な裏付けとなっている。」
国際数学連合(IMU: The International Mathematical Union)は、8月1日にリオデジャネイロで開催された国際数学者会議で、数論的代数幾何学へ根源的な貢献を行ったとして、ショルツ教授にフィールズ賞を授与した。
ショルツ教授は、2016年にDFGのライプニッツ賞を受賞した。また、DFGが資金提供するボン所在のエクセレンス・クラスター、ハウスドルフ数学研究所の研究者であり、かつマインツ、デュイスブルク=エッセン、ボンにおける特別研究領域プログラム(SFB: Sonderforschungsbereiche)の「周期、モジュライ空間および代数多様性の数理」のプロジェクトリーダーでもある。ショルツ教授は、同じくライプニッツ賞を受賞したゲルト・ファルティングス(Gerd Faltings)に次ぐ、ドイツ人で2人目のフィールズ賞受賞者となる。フィールズ賞は、数学への傑出した貢献を称えて、4年に1度、国際数学者会議において最大4名に授与される。同賞は、さらなるトップレベルの数学的研究への動機付けを目的としている。
ドイツにおける最も重要な研究賞であるライプニッツ賞を、ショルツ教授は27歳で受賞し、同賞の30年以上の歴史の中で最年少の受賞者となった。その時点で、すでにショルツ教授は世界の主要な数学者の1人であり、20年に1度しか現れないような特別な才能の持ち主であると考えられていた。選考委員会は、ショルツ教授が若年にもかかわらず、何十年も未解決のままであった数論的代数幾何学の根本的問題にすでに答えていたという事実を認識した。これは、いわゆるp進局所ラングランズ予想を証明したことが特に当てはまる。2016年には、ショルツ教授のいわゆるパーフェクトイド空間の理論によって、数学的手法の範囲を劇的に拡大したことが知られている。
ショルツ教授はボンで数学を学び、2012年に24歳で博士号を取得した。同年、国際的に権威のあるハウスドルフ数学研究所の職(5名のうち1名)に任命された。ショルツ教授はドイツ最年少でW3教授職に就いた。また、多くの重要な数学賞を受賞し、いくつかのドイツ科学アカデミーのメンバーを務めている。2018年7月には、ボンのマックス・プランク数学研究所の所長に任命された。
ショルツ教授に加えて、ケンブリッジ大学のコーチェル・ビルカー(Caucher Birkar)氏、チューリッヒ工科大学のアレッシオ・フィガリ(Alessio Figalli)氏、スタンフォード大学のアクシェイ・ヴェンカテシュ(Akshay Venkatesh)氏に、フィールズ賞がリオデジャネイロで授与された。
DFG: http://www.dfg.de/en/service/press/press_releases/2018/press_release_no_35/index.html