ドイツ学術情報(過去の分)

HRKとBMBF、ドイツの大学におけるダイバーシティの推進に協力(9月1日)

 2022年9月1日、ドイツ大学長会議(Hochschulrektorenkonferenz :HRK)は、ドイツ連邦教育研究省(Bundesministerium für Bildung und Forschung: BMBF)の助成を受け、「ドイツの高等教育機関における多様性」という取り組みを開始する予定である。このイニシアティブの目的は、高等教育機関が全体的な多様性の概念の発展を支援することである。

 「ドイツの高等教育機関における多様性」イニシアティブは、個々の助成対象機関における具体的なプロジェクトやキャンペーン、また国家レベルでのプロジェクト横断的な対話と交流を通じて、全体的な意味での大学における多様性をさらに推進することを目的としている。まず、高等教育機関がより多様で包括的な活動を行うには、どのような障壁やハードルを乗り越えなければならないのか、どのような発展の可能性があるのか、高等教育の文脈における多様性をより効果的に促進し、価値を高めるにはどうすればよいかを明らかにする必要がある。高等教育機関はあらゆるレベルにおいて取り上げられ、多様な思考、学習、教育、研究の場として理解されている。

 HRK会長のPeter-André Alt教授は、「この構想は、ドイツの高等教育界に大きな機会を提供するものです。」とベルリンで述べた。「高等教育機関は、統合と生産的な多元性の成功例として、社会に模範的な効果をもたらすことができるのです。しかし、これは、大学というコミュニティにおけるあらゆるカテゴリーの多様性に注目し、科学そのものをその中核にある複数の知識生産の形態として理解する場合にのみ達成されるものです。したがって、多様性を推進する大学文化の確立は、表面的な対策にとどまらず、測定可能な組織目標の策定や構造的差別に対する支援策に反映させなければならないのです。目標は、すべての大学構成員が、形式的な平等だけでなく、物理的、実質的な平等という意味で、大学のすべての活動分野に参加することであるべきです。」

「多様性は、ドイツの大学ではすでに現実のものとなっている。今こそ、この多様性をさらに可視化し、強化する時である。なぜなら、複数の大学は教育や研究のためだけではなく、ドイツ全体にとっての資産でもあるからです。」と、連邦教育研究大臣のBettina Stark-Watzinger氏は述べている。「この新しい取り組みは、大学の多様性をあらゆる側面から重視するユニークな機会です。「機会を提供する省庁」である我々にとって、機会均等と多様性の促進は、最優先事項です。学生から教員、管理職まで、高等教育機関の多様性をより可視化し、強化するための多くの創造的なアイデアやプロジェクトに期待しています。」

公募においては、2022年10月初旬からHRK加盟大学に、本イニシアティブの目標に貢献するコンセプトの提出を求める。独立した審査委員会によって選出された大学には、2023/2024年の冬学期に5万ユーロまたは2万5千ユーロの資金が提供され、計画した方策を実施することができる。

プロジェクト期間中、HRKは資金提供を受けた高等教育機関のネットワークづくりを支援する。個々の高等教育プロジェクトの成果は、2024年に開催される大規模な最終会議で、より多くの人々に発表される予定である。これは、このテーマに関わるすべての高等教育機関が、共に状況を把握し、多様性への取り組みをさらに発展させるために必要なその後のステップを定義する機会となる。

https://www.hrk.de/presse/pressemitteilungen/pressemitteilung/meldung/hrk-und-bmbf-engagieren-sich-gemeinsam-fuer-vielfalt-an-den-deutschen-hochschulen-4941/

 

ドイツ研究者国際ネットワーク年次総会及び人材フェア:ヨーロッパで初めて開催され、再び存在感を示す(9月7日)

 ドイツ研究者国際ネットワーク(GAIN)の第22回年次総会及び人材フェアが、9月2日から4日までボン(Bonn)で開催され、北米以外で初めての開催となった。本イベントは現在、アジア、アフリカ、オーストラリア、北米の他、特にドイツ以外のヨーロッパ諸国で研究を行っているドイツの若手研究者を対象としたものである。

 20年間、ボストンとサンフランシスコで交互に開催され、2回のオンラインGAINミーティングを経て、今回、再び対面形式かつヨーロッパで初めて開催されることとなった。ドイツ学術交流会(Deutscher Akademischer Austauschdienst (DAAD))のJoybrato Mukherjee事務総長は以下のように述べた。「過去2年間はパンデミックの影響でバーチャルでの開催にとどまっていましたが、ボンで開催されるGAINでは、再び直接お会いできることを楽しみにしています。それこそが、学術的なキャリアを積むための貴重なコンタクトを確立するという会議の意義を果たすことです。」このことは、GAINカンファレンスと人材フェアの参加者が3日間で400人以上に上ったという反響からも見て取れる。また、このイベントではヨーロッパで資金援助を受けている多くの若手研究者にもその舞台を提供した。大学や応用科学大学(HAW)の教授職から、企業の研究部門への異動またはスタートアップ企業の設立のための科学マネジメントなど、さまざまなキャリアパスについて知ることができた。ワークショップでは、国際機関でのキャリア開発、任用手続きやテニュアトラック教授職などに関するトピックが取り上げられた。人材フェアでは、大学、ファンディング・エージェンシー、研究機関及び科学者が60以上のブースを出展し、自らをアピールした。

 今回のGAINには、ハンブルク高等研究所事務局長のDorothea Rüland博士、アーヘン工科大学(RWTH Aachen)グラフ機械学習担当のChristopher Morris准教授、デュイスブルク-エッセン大学(University of Duisburg-Essen)電気エネルギー機能材料担当のFranziska Muckel准教授も参加された。Rüland氏がセッション「ドイツでの評価を高めるための海外とのネットワーキング」の議長を務め、 Morris准教授がパネル「テーマ別フォーラム:自然科学及び工学」でキャリアパスのヒントについてアドバイスを行った。Muckel准教授はGAINでの体験談としてアメリカでの経験を報告した。

Rüland博士、ドイツでの評判を上げるために、なぜ海外でネットワークを作ることに意味があるのでしょうか?
Rüland博士:今やネットワークは科学や学問における基本的なツールであり、特に若い研究者にとっては避けて通ることはできません。ドイツの大学のポストに応募したいと思っても、帰国してからでは始まりません。そのころには、列車はとっくに駅を離れている。だからこそ、早い時期からドイツ国内はもちろん、世界各地にコンタクトを取り、それを維持する必要があるのです。コンタクトを開始するための前提条件として、一定の認知度が必要であり、それは主に出版物や講演を通じて達成されます。それを持ち、ドイツのサイエンス・コミュニティで認知された人だけが、任用の対象となるのです。

どのようなネットワーキングの場がありますか?
Rüland博士:可能な限り早い時期から学会やサマースクールに参加したり、GAINなどのイベントに参加することは常に重要です。また、博士課程の学生であれば、博士課程の段階で指導教官を持ち、彼らがコンタクトを維持する手助けをしてくれるはずです。もちろん、出版もしなければなりません。論文は、その分野のコミュニティで自分の名前を知らしめることができます。また、若手アカデミー(Junge Akademie)やグローバル・ヤング・アカデミー(Global Young Academy)などのアカデミーに参加するのも一つの方法です。ネットワークの中で自分をどう位置づけるか、どう振る舞うかを学ぶことができる面白い会です。ハンブルク高等研究所のような高等研究機関は、学際的な研究・交流の場を期間限定で提供しています。そこで人脈を開拓することで、ポスト応募の成功率を高めることができます。

ネットワークに分野ごとの違いはあるのでしょうか?
Rüland博士:生命科学や工学の研究者は、チームで仕事をすることが多く、また、より大人数の共著で論文を発表することが増えているので、ネットワークを構築しやすいと言えるかもしれません。社会科学や人文科学の分野では話は別で、いまだに論文や著書を単独で出版しているところも少なくありません。ここでは、できるだけ早くから学会やサマースクールに積極的に参加し、独自のネットワークを構築することをお勧めするしかありません。

Morris准教授は、DAADのプログラム「IFI - International Research Stays for Computer Scientists」の奨学生としての期間を含め、カナダ・モントリオールのMilaケベックAI研究所(Mila - Quebec AI Institute)で2年以上、研究をされたそうですね。なぜ、ドイツに戻ろうと思ったのですか?
Morris准教授:実は、12月になると必ず全国で募集されるカナダの教授職に応募したかったんです。カナダは私の研究分野である機械学習で世界をリードしている国の一つですし、国も好きでしたから。しかし、私はすでにドイツで3つのポストに応募し、アーヘン工科大学からのオファーを含め、2つの準教授職のオファーを受けていました。DFGのエミー・ネーター・プログラムの支援も得ていたので、ドイツで自分の研究グループを立ち上げるのは当然のことだったのです。

準教授職に採用されるまでの苦労はありましたか?
Morris准教授:正直なところ、私にとってはそれほど難しいことではなかったんです。ひとつには、私の研究分野である「機械学習」が非常に人気があり、ドイツでは多くの準教授職や教授職の募集があったことが背景にあります。一方、ドルトムント工科大学(Technische Universität Dortmund)の指導教官であったPetra Mutzel教授がお示しくださったDFGの資金もありました。また、アーヘン工科大学のMartin Grohe教授とすでに協力関係にあり、彼が私をアーヘンに呼びたいと言ってくださったことも有利に働きました。ドルトムント工科大学での博士課程時代から連絡を取り合っていたのです。当時、ドルトムント工科大学の教授だったKristian Kersting氏が私の研究に注目したことが、コンタクトのきっかけとなりました。そして、Martin Grohe教授からアーヘンで講演をしないかと声をかけていただきました。のちによく引用されることになる論文を一緒に書き、その結果、私は認知度を高めることができたのです。

ドイツで教授職に飛躍するための秘訣はありますか?
Morris准教授:最も重要なのは、トップ・ジャーナル、コンピュータサイエンスの場合はトップ・カンファレンスのプロシーディングで発表することだと思います。国内外とのネットワークも有効です。私は学会で他の研究者と出会い、会話が弾み、「一緒に何かやらないか」と声をかけたこともあります。このネットワークは時間とともに大きくなり、私はその恩恵を受けています。

Muckel准教授は、アメリカのワシントン大学(University of Washington)で2年間研究され、そのうち1年間はDAADのPRIMEフェローとして研究をされていますね。そこで特に気に入ったことは何ですか?
Muckel准教授:学科やワーキンググループの中では、私がそれまでドイツで経験してきた以上に、コラボレーションが強力にサポートされていました。皆がとてもオープンで、とても自然に連携ができました。同僚と会う機会も多くありました。ほぼ毎週、セミナーや講演に招待され、週に一度は学科内でコーヒーとケーキを食べる「クッキータイム」がありました。多くの人が喜んで参加してくれましたよ。また、若手の研究グループリーダーである私にとっては、通常では容易ではない最新の大型研究機器に簡単にアクセスできることも魅力でした。アメリカでは、統合機器センターを通じて非常に簡単にアクセスできるようになっているんです。よく訓練された熟練の担当者をつけてもらえ、実験もしてくれました。このサービスは、大学の内部内部予算によるものでした。ドイツでは、もっと面倒ですね。

アメリカでキャリアを積むことは考えなかったのですか?
Muckel准教授:DAADのPRIMEフェローとして1年間活動した後、私はまだドイツに帰りたくなかったし、それでは成功したとは思えませんでした。せっかく落ち着いたのに、またその場所を去らなければならないということですからね。そこで、教授に相談したところ、喜んでくださり、研究所予算から2年目の資金を出してくれたのです。しかし、アメリカには残らないということは、ずっと決まっていたんです。そこでプロとしての経験を積みたい気持ちもあったのですが、ドイツでの生活を捨ててまでアメリカでキャリアを積むことはないと思ったのです。

デュイスブルク・エッセン大学での日々の大学生活で、どのような経験を持ち帰ったのでしょうか。
Muckel准教授:クラウド上での明快なやり方が印象に残りました。学生がデータセットをクラウドにアップロードし、教授がオンラインでコメントするというものです。データをプリントアウトして、アポイントを取ってから議論するというやり方よりも簡単でした。私のワーキンググループでも、その方法を採用しています。私は、チーム内では上下関係がなくオープンなコミュニケーションを望んでいます。この一体感が大事なんです。週に1回ミーティングを行い、博士課程の学生から研究の進捗状況を聞いています。

https://www2.daad.de/der-daad/daad-aktuell/de/83357-gain-jahrestagung-und-talent-fair-wieder-in-praesenz-und-erstmals-in-europa/

 

ダウン・アンダー(地球の反対側)との二国間学術交流(9月15日)

「二国間学術交流事業」の一環として、DAADはオーストラリアのビクトリア州のパートナー団体veskiと新たな協力協定を締結した。最初の助成金採択者であるウイルス学者Jason Mackenzie教授がドイツでの滞在を終えた。

オーストラリアにおけるコロナウイルスによる19カ月間に渡るロックダウンを経て、今回の研究協力が行われたことは特に重要な意味を持つ。科学者の二国間交流と国際研究協力を促進するため、DAADは2021年3月、オーストラリアのビクトリア州の大学を管轄するveskiと相互助成協定を締結した。本プログラムは大学の教員を対象としており、14日~最長3ヶ月の短期間であるため、教務免除期間にも対応可能である。申請者は、支援希望期間を指定することができ、ドイツおよびビクトリア州の大学の教員が参加可能である。

科学にとって素晴らしい場所
最初の助成金採択者であるオーストラリアのウイルス学者、Jason Mackenzie教授が、ドイツでの滞在を終えた。ノロウイルスとフラビウイルスの発生、発達、繁殖の国際的な専門家である彼は現在、メルボルン大学(The University of Melbourne)の微生物学・免疫学教室で教育と研究の職に就いている。また、オーストラリアウイルス学会をはじめとするいくつかの学会の会員でもある。「ドイツが研究活動にとって素晴らしい場所であることを改めて実感した、素晴らしい経験でした。」とMackenzie教授は総括している。

Mackenzie教授とドイツの関係は長い。2002年には、フンボルト財団(Alexander von Humboldt-Stiftung: AvH)の研究助成を受け、ハイデルベルクの欧州分子生物学研究所(European Molecular Biology Laboratory : EMBL)で11ヵ月間研究を行った。以来20年、何度もドイツを訪れ、ネットワークの維持・拡大を図ってきた。「だから、ボン大学のFlorian Schmidt教授とこの共同研究を始めたのです。」とMackenzie教授は言う。Florian Schmidt教授の専門分野は、ウイルス感染症、免疫シグナル、ナノボディである。

「ボン大学の研究者仲間たちは、私がそこに滞在している間、非常に良い仕事の雰囲気を作り出してくれました。」と彼はMackenzie教授は称賛する。彼はDAADとの協力やドイツとの交流を躊躇なく勧め、現在、ボンの研究パートナーたちと、さらなる相互訪問や研究の焦点について活発に議論している。

相互交流
相互交流はDAADとveskiとの協力の基礎を形成している。オーストラリアの科学者はドイツを訪問することによって、自分たちの学部でドイツの研究者を受け入れる意思があることを示すことができる。このプログラムは、大学や研究機関に勤務する博士号を持つ研究者を対象としている。研究プロジェクトは双方で合意され、双方が同時に助成金を申請する必要がある。それぞれの研究者の渡航費用は、各国側でそれぞれ負担する(ドイツ人研究者の場合、DAADが負担)。各訪問研究者が受入国に滞在している間の滞在費は、ビクトリア州の研究者がドイツを訪問する場合は受入機関またはDAADが、ドイツの研究者がビクトリア州を訪問する場合はビクトリア州の受入大学が負担する。Mackenzie教授は、「オンライン申請のプロセスは非常に直感的で、使い勝手のよいシステムです。」と強調する。

Jason Mackenzie教授は、ドイツでの滞在を通じて、ドイツと彼の母国がいかに密接な関係にあるかを改めて実感したという。「概して研究に対するアプローチが似ています。私たちは、同じような関心と目標を持っています」と彼は認識している。しかし、オーストラリアの大学とドイツの高等教育システムには、違いがある。オーストラリアでは、博士課程の学生は、まず複数の研究室を経験してから専門的な研究をするのが通例である。しかし、ドイツでは、学生はもっと早い時期に専門を決めなければならない。Mackenzie教授は、研究資金の面でも違いがあることに気づいた。「ドイツでは、研究資金のキャパシティが格段に大きいのです。」と、ウイルス学者である彼は言う。このような資金提供のおかげで、初期・中期キャリアの研究者はこの国で研究を推し進め、キャリアを積むことができるのだと、Mackenzie教授は考えている。

太平洋地域でのさらなる研究協力の計画
「Mackenzie教授は滞在を終えた最初の助成金採択者であるため、現時点では研究プログラムの詳細を結論を出すには至りません。」と、DAADのアジア・太平洋地域助成プログラム(Asia, Pacific grant program)担当のAnna Katharina Rusche氏は説明します。「しかし、veskiとの協力は非常にうまくいっていると言えるでしょう。秋(オーストラリアからの応募者は春)に一緒に第2ラウンドを開始することを大いに楽しみにしています。」なお、二国間学術交流は、韓国、インド、ベトナム、台湾、モンゴルでも実施されている。

https://www2.daad.de/der-daad/daad-aktuell/de/83407-bilateraler-wissenschaftsaustausch-mit-down-under/

 

垣根を取り払ったデジタル・キャンパス(9月22日)

ドイツは留学生やスキルを持った労働者の移民を必要としている。しかし、そのハードルは時に高い。DAADがパートナーとともに立ち上げた「デジタル・キャンパス」は、この状況を変えることを目的としている。バリアフリーのインターネットプラットフォームは、関連情報を束ね、包括的なサービスとリンクし、世界中の留学希望者がドイツで学ぶために言語の面、専門分野の面、そして文化の面において前提知識を習得することを可能にする。

デジタルキャンパスは、将来的に留学生がドイツの大学への進学を容易にすることを目的としている。ウクライナからの若い難民は、まず試験的にこの恩恵を受けることになる。「ウクライナの若者たちに展望を与える"という緊急の課題に応えています。同時に、デジタル・キャンパスのサービスが実際にどのように実証され、どのように改善できるかを評価しています。」と、DAADの最高デジタル責任者であるAlexander Knoth氏は述べている。その後、このサービスはすべての関係者に公開される予定である。コンソーシアムでは、デジタルキャンパスの持続的な運営と、この国家プロジェクトに多くの高等教育機関が参加できるよう、すでにサポート体制の確立に取り組んでいる。

成功する大学マーケティングに対する補完
 3年前、DAADがこのプロジェクトのイニシアティブをとった。「私たちは、留学希望者がドイツの高等教育環境に入る際に彼らに寄り添い、言語、専門分野、キャンパス文化の面で要件満たすことをサポートするデジタル・サービスを緊急に必要としていました 。」と、Knoth氏は当時の状況を説明する。ターゲット層からのフィードバックは明確で、ドイツは留学先として魅力的な国であるということだった。しかし、デジタル化が進んでいないことが足かせとなり、正式な要件や情報の流れが不明確で、関連書類を苦労して調べなければならず、何より統一された基準や要件がないのが現状である。「デジタル・キャンパス が必要な時期だったのです。ドイツの高等教育システムへのアクセスを容易にすれば、海外からの意欲的な若者にとって敷居が低くなります。」このプロジェクトは、ドイツ連邦教育研究省(Bundesministerium für Bildung und Forschung(BMBF))の助成を受けている。

 DAADは、経験豊富なパートナーを招き、デジタル・キャンパスのための教育・学習シナリオや革新的なコンテンツを研究・開発した。目標志向の戦略であるデジタルキャンパスは、精巧な新しい学習プラットフォームに基づくものではなく、既存の提供物をメタレベルでネットワーク化したものである。このようにして、留学生の識別、情報提供、準備、選考、入学、入学後のサポートに関するプロジェクトパートナーのコア・コンピタンスがひとつに束ねられる。これにより、どのシステムもどのパートナーも単独では実現できなかった質的・量的な効率化が可能になる。一貫したデジタルプロセスとインテリジェントなツールは、ドイツ留学に不可欠なあらゆる側面を切り開く。シングルサインオン、データウォレット、メタデータ管理などの自社開発に成功したデジタル・キャンパスは、国家教育プラットフォーム「BIRD」の青写真としても機能している。

国際的なレベルに到達する
 ユーザーは安全なアクセスのもとで、自己決定的かつ柔軟に行動することができる。個別サポートやフィードバック、包括的なコラボレーションの機会も充実している。「これはパイオニアになるということではありません。逆に、グローバルなレベルで、遅れをとらないようにしなければならないのです。」と、Alexander Knoth氏は言う。ドイツ留学に関心を持つ留学生は、高等教育システムをより豊かにしてくれる。このように、デジタルキャンパスは社会に対して直接的な利益を生み出している。また、最終的に大学進学を目標にしない場合でも、デジタル・キャンパスは、その後の拡張段階で、海外からの意欲的な若者が、対応するリンクを通じて職業訓練に参加する道を開くことができるのです。

 こうしたスムーズな移行を長年可能にしてきたのが、ベルリンで設立された、難民に教育へのアクセスを提供するソーシャルスタートアップ「Kiron」である。しかし、「難民に開かれた高等教育」という目標は、その後、現実に適応されてきたと、CEOのTobias Ernst博士は言う。Kironでは、非常に質の高いオファーに加え、敷居の低いアクセスも意図的に開放している。"これにより、世界中のできるだけ多くの人々がデジタル教育の機会の恩恵を受けることができる。「 現在、2万人近い難民がこの国際NGOのキャンパスで学んでいます。Kironは、参加者全員をデジタル空間における「学生」にします。難民は心に傷を負っていることが多いのです。彼らが自分の人生に対する主導権を取り戻し、価値のある機会が開かれることが重要なのです。私たちはそのための機会を提供しているのです。」

需要のあるサービスと社会的相互作用
 Kironで需要の中心となっているのはデジタル・スキルである。「参加者は、クラウドコンピューティング、人工知能、コンピュータ言語の分野のあらゆるトピックに高い親和性を持っています・」とTobias Ernst博士は述べています。2つ目の大きなテーマは、グローバルな文脈での英語力もしくは、すでにこの国に住んでいる人やこれから来ようとする人のための的を射たドイツ語である。しかし、デジタル空間での学習はに必要なのは技術的なアクセスだけではなく、難民の生活環境下では実現が困難な場合も多い。Ernst博士の経験では、パソコンでの自己学習を成功させることから、少額の奨学金まで、適切なサービスを提供することが重要だという。そしてもちろん、人間的な親近感や感謝の気持ちを持った社会的一体感が、さらなる強いモチベーションを生み出すのである。

入学基準の合意
 デジタル・キャンパスの成功の鍵は、大学が留学生の受け入れ基準について合意することである。ボーフムのGesellschaft für Akademische Studienvorbereitung und Textentwicklung (g.a.s.t.) の代表取締役、Jörn Weingärtner博士は「公認の試験や証明書は、公正で透明性のある決定の鍵となります。」と述べている。「双方にメリットがあるということです。大学側にとっては、それぞれに合った選考を行うことで、リソースを節約することができるのです。一方、入学希望者は、自分が学習条件を満たせるかどうかという確証を必要としています。学業における失敗は往々にして避けられるものですが、個人にとっては悲劇的なものです。客観的な試験方法は、後の研究の成功を予測する上で高い確実性を持ち、早い段階で両者の期待のバランスを取るのに役立ちます。」

 プロジェクトパートナーであるg.a.s.t.は、100カ国以上、約1000か所のテストセンターから得たそのノウハウをデジタルキャンパスに提供している。「私たちの活動によって、留学生が学業を成功させる道を切り開きたいのです。テストは非常に有効な手段です。興味のある学生は、自分がドイツで学ぶのに必要な能力を持っているかどうかを確認することができます。さらに、具体的にどのようなサポートが必要なのかを知ることができます。同時に、大学側は応募者が学習条件を満たしているかどうかを確認することができるのです。」 Jörn Weingärtner博士にとって、信頼できる基準は有意義な試験の基礎として重要である。「留学生や、特に難民の多くは不安定な生活環境に置かれており、安心感を必要としています。認定された証明書は、そのための一助となるものです。デジタル・キャンパスは、まさにこれを実現するのに適した方法なのです。」

ドイツの高等教育の多様性を提示する
 リューベック専門大学学長でDAAD副会長のMuriel Helbig博士は、2つの観点からデジタルキャンパスの価値を強調している。「リューベック専門大学は先進的な大学として、数十年にわたり革新的なオンライン教育形態に力を入れてきました。デジタル化がもたらす機会を最大限に活用し、新しいターゲットグループがドイツの高等教育環境に参入できるようにすることが重要です。このビジョンは現在、デジタルキャンパスを通じて具体化されています。」Muriel Helbig博士は、リューベック専門大学がデジタル教育における長年の経験を活かして、このプロジェクトの実施に貢献できることを喜ばしく思っている。「このデジタル・ショーケースでドイツの高等教育の多様性示すことができれば、留学希望者にとってドイツは高等教育を受けるのにより魅力的な場所となるはずです。」

https://www2.daad.de/der-daad/daad-aktuell/de/83445-digitaler-campus-baut-huerden-ab/

 

DFGが新たに3つの研究グループに資金提供(9月30日)

皮膚疾患から家計内の意思決定が経済に与える影響までの幅広いテーマ/ 最初の助成期間総額は約1040万ユーロ

 ドイツ研究振興財団(Deutsche Forschungsgemeinschaft: DFG)は、新たに3つの研究グループを設立する。これは、評議会の勧告をに基づきDFGの協議会が決定したもの。新しい研究グループには、プロジェクト関連の間接経費として22%のプログラム手当を含め、総額約1040万ユーロの資金が提供される。この新しい提携は、最大で 4 年間×2回の資金提供を受けることができる。新たに加わった3つのグループの他、8つの研究グループと1臨床研究グループについて2回目の助成期間延長が決定された。 研究グループは、研究者がそれぞれの分野における喫緊の課題に取り組み、革新的な研究の方向性を確立することを可能にする。DFGは現在、合計186の研究グループ、13の臨床研究グループ、15先端研究センターに資金を提供している。さらに、臨床研究グループは研究と臨床の密接な関連性を特徴としており、先端研究グループは人文・社会科学の分野に特化した研究を行っている。

 

新しい研究ネットワークの詳細
(代表者の所属機関アルファベット順)

皮膚細胞にも存在するアリール炭化水素受容体(AHR)は、免疫系に重要な働きをしているが、腫瘍などの元凶としても利用されることがある。AHRがどのような場合に健康を増進させ、どのような場合に油外であるかについては、これまで研究が行われてこなかった。そこで、研究グループ「皮膚疾患におけるAHRシグナルの解析」の出番である。健康な皮膚、炎症を起こした皮膚、生体異物ストレスを受けた皮膚におけるAHR活性化の結果は、対応する微小環境の要因に依存するという仮説に基づいている。(代表者:デュッセルドルフ大学(University of Düsseldorf) Jean Krutmann教授)

経済における所得、消費、富の分配は、個々の家計における意思決定に基づいて行われる。研究グループ「家計内意思決定のマクロ経済的意味」の目的は、個々の家計構成員の異なる消費、雇用、投資機会をこれまで以上に考慮することである。その際、家計内の意思決定が主要な生産要素である労働、資本、要素生産性と、その分配とがどのように相互作用しているかを検証する。また、家計内の意思決定を考察することで、経済政策改革のコストと便益の分析を進めようとするものである。(代表者:フランクフルト大学(Johann Wolfgang Goethe-Universität Frankfurt am Main) Alexander Ludwig教授)

Sie, mein, welcher(you, my, which):代名詞は文字通り誰もが口にする言葉である。しかし、日常生活でどのように具体的に使われているのだろうか。研究グループ「人称言及の実践:人称・不定・指示代名詞の用法に基づくアプローチ」では、この問題を文法と一般的な言い回しの組み合わせによって体系的に検証している。方法論としては、語用論的側面と社会文化的側面の関連性を明らかにすることを目的として、共時的・通時的観点から言語学的に調査することに焦点をあてている。(代表者:ハンブルク大学(University of Hamburg)Wolfgang Imo教授)

 

2 回目の助成期間延長が決定した研究ネットワーク
(代表者の所属機関アルファベット順、 DFG インターネットデータベース GEPRIS のプロジェクト説明へのリンク)

・臨床研究グループ「骨髄増殖性新生物(MPN)における骨髄線維化のメカニズムの解明と標的化」
(代表者:アーヘン工科大学(RWTH Aachen)Tim Henrik Brüdel教授、クリニカル・ディレクター:アーヘン大学病院(Universitätsklinikum Aachen)Steffen Koschmieder 教授)
https://gepris.dfg.de/gepris/projekt/417911533

・研究グループ「テラヘルツ通信のための計測技術」
(代表者: ブラウンシュヴァイク工科大学(Technische Universität Braunschweig) Thomas Kürner教授)
https://gepris.dfg.de/gepris/projekt/403579441

・研究グループ「ミトコンドリア内膜のナノスケール構造と不均質性」
(代表者:ゲッティンゲン大学(University of Göttingen)Stefan Jakobs教授)
https://gepris.dfg.de/gepris/projekt/401510699

・研究グループ「海洋多糖類利用のプロテオゲノミクス(POMPU)」
(代表者:グライフスヴァルト大学(Universität Greifswald)Thomas Schweder教授)
https://gepris.dfg.de/gepris/projekt/277249973

・研究グループ「多機能半導体としてのヨウ化銅」
(代表者:ライプツィヒ大学(Universität Leipzig)Marius Grundmann教授)
https://gepris.dfg.de/gepris/projekt/403159832

・研究グループ「ネットワーク構造を制御した適応型高分子ゲル」
(代表者:マインツ大学(Johannes Gutenberg-Universität Mainz)Sebastian Seiffert教授)
https://gepris.dfg.de/gepris/projekt/397384169

・研究グループ「極端な非線形光学特性を有するアモルファス分子材料」
(代表者:マールブルク大学(Universität Marburg)Stefanie Dehnen教授)
https://gepris.dfg.de/gepris/projekt/398143140

・研究グループ「ImmunoStroke: 免疫細胞から脳卒中回復まで」
(代表者:ミュンヘン大学(Ludwig-Maximilians-Universität München)Arthur Liesz教授)
https://gepris.dfg.de/gepris/projekt/405358801

・研究グループ「ハドロン構造に対する次世代摂動QCD:電子イオンコライダーへの準備」
(代表者: レーゲンスブルク大学(Universität Regensburg)Vladimir Braun教授)
https://gepris.dfg.de/gepris/projekt/409651613

https://www.dfg.de/service/presse/pressemitteilungen/2022/pressemitteilung_nr_39/index.html