ドイツ学術情報(過去の分)

シュタルク=ヴァッツィンガー大臣:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者のための治療レパートリーは、さらに拡大(12月23日)

シュタルク=ヴァッツィンガー大臣:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者のための治療レパートリーは、さらに拡大

 連邦教育研究省(BMBF)は、COVID-19に対する追加の治療薬候補の開発に資金拠出している。合計2,430万ユーロが、Proteo Biotech AG、rnatics GmbHとEvotec International GmbHのプロジェクトのため利用可能になる。

 ベッティーナ・シュタルク=ヴァッツィンガー連邦教育大臣はコメントする。

「治療法は、パンデミックとの闘いにおいて重要な構成要素である。それゆえ、私はコロナウイルス創薬研究の更なるプロジェクトへの資金助成を発表できることを喜ばしく思う。緊急に必要とされるコロナ治療法の研究及び開発のための資金助成ガイドラインの下、3つの期待できる治療薬候補が準備されており、治療薬としての承認に向け順調に進んでいる。これまでの研究結果は有望なものであり、臨床試験へのステップアップが可能となる。パンデミックの変遷は、コロナウイルスの治療法の発展を前進させることの重要性を示している。私たちは、すべての重症度の患者を治療するため効果的で安全な治療薬を必要としている。研究担当の省として、私たちは、常に新しいウイルスの変異への有効性を考えながら、高い可能性をもつコロナウイルス治療法の発展を促進させ続ける。」

背景:

「緊急に必要とされるSARS-CoV-2に対しての治療法の研究と開発」の資金助成ガイドラインの目的は、COVID-19に対する有望な治療法のアプローチの臨床開発を強化することである。BMBFは2021年1月に資金助成の最初の募集を発表し、2021年6月14日に発行された新しいガイドラインにより、BMBFはさらに3つの追加的プロジェクトに2,430万ユーロを利用可能にした。

 今回の資金助成は、SARS-CoV-2に対する明確な治療薬候補の臨床試験に対応するものである。また、COVID-19の重症の治療のための新しい治療法アプローチの臨床開発も求められている。資金助成の対象は、早期承認のためベネフィット・リスク比が十分に信頼できる結論を得るためのフェーズ1~2bの臨床試験である。

 さらに、2021年5月には治療薬開発の後期フェーズに対応する「COVID-19治療薬の臨床開発と生産能力の促進」のための資金拠出プログラムが、ドイツ連邦保健省(BMG)と共同で発表された。

選出されたプロジェクトの概要

COMCOVID研究 - COVID-19の治療のための組み換え型タンパク質の有効性と安全性の立証

(資金助成額:9,924,739ユーロ)

 Proteo Biotech AGの研究プロジェクトの目的は、臨床試験でCOVID-19の治療のためのあるタンパク質の有効性と安全性を立証することである。目標は、過剰な免疫反応に起因する重篤なCOVID-19においての臓器の合併症と重篤な症状の進行を防ぐことである。そのタンパク質は様々な炎症誘発メカニズムを阻害し、人体で素晴らしい忍容性を示す。そのタンパク質は人体で見つかった抗炎症作用を有するヒト組み換えタンパク質である。

CoVmiR - COVID-19による炎症性肺疾患に対するAntimiRの吸入投与

(資金助成額:6,848,020ユーロ)

 rnatics GmbHのCoVmiRプロジェクトでは、COVID-19によって生じた炎症性肺疾患の吸入治療薬が臨床試験の段階である。その治療薬は、食細胞(マクロファージ)の中の小さいRNA(マイクロRNA)を抑制する。このマイクロRNAは炎症の過程を促進し、COVID-19罹患者の肺の中に非常に高い濃度で見つかっている。それは、病気が進行する間、肺の組織において病理学的変化をもたらす。目標は有望な治療薬候補のフェーズ1の臨床開発(初めてのCOVID-19への適用を含む)を完了させることであり、それによって次に続くフェーズ2の試験の基礎を作ることである。

COVIFERON - 新たな免疫調節分子でのCOVID-19感染症の治療

(資金助成額:7,526,610ユーロ)

 Evotec International GmbHの研究プロジェクトは、COVID-19患者における、新たな免疫調節分子の安全性と有効性の立証するために、フェーズ1と2aの臨床試験を行おうとしている。臨床前のin vitro実験では、以前行われた研究での類似の分子に比べ、より強く免疫システムの抗ウイルス反応を誘導することが実証された。免疫調整分子の早期投与は、ウイルス量を減少させ、それゆえ重症化への進行リスクも低減させる可能性がある。

https://www.bmbf.de/bmbf/shareddocs/pressemitteilungen/de/2021/12/231221-Therapeutika.html;jsessionid=62D9AA8BBF0985670F761AA1DE710A48.live471

 

シュタルク=ヴァッツィンガー大臣:新しい科学年は一般参加型の年になる(1月14日)

連邦研究省大臣が2022科学年を始める/初めて市民が研究に関する質問をすることができる

 ベッティーナ・シュタルク=ヴァッツィンガー連邦教育研究大臣が、本日(1月14日)デジタルキックオフイベントで2022科学年「問いかけ(Nachgefragt)」を開始した。初めて科学年には独自のテーマが設定されず、市民を招待し科学的なトピックに関する質問を募ることで、今後の研究政策に弾みをつけた。

 それに関して連邦教育研究省大臣が説明する。

「私たちは今日新しい科学年を始める。過去2年間で、私たちはどれだけ科学が私たちや日常生活、社会、経済にとって重要であるかを見てきた。今年、私たちは市民社会を巻き込み、対話を促進することに特に重点を置く。初めて、今日すべての市民のために「アイデア・ラン」を開始します。皆さんが参加し、科学を形成する手助けをすることができる。これは参加の年となる。人々のためになる研究は、耳を傾ける-これがこの科学年の中心的なメッセージである。」

 ドイツ研究振興協会(DFG)会長であり、本年の科学機関連盟スポークスマンであるカーチャ・ベッカー氏が補足する。

「理解しようとしたり、、批判的な質問をしたりする市民が必要である。そして反対に、ただ知見を提供することに満足するのではなく、これらの知見がどのように社会に影響を与えるかに配慮する研究が必要である。そして勇敢に研究を行うのと同様に、研究についての対話を行い、社会との対話を積極的に求めている。科学機関連盟と属する研究者にとって、次の両方が最大の重要性を持つ。1つは、社会の懸案や疑問と研究をより結びつけること、そして同時に、例えば研究テーマの選択といった、そのために必要な非常に基本的な研究の自由を促進すること。」

背景:

 科学年2022は、初めて市民の参加に焦点を当てる。人々は、科学的なテーマに関する質問を直接研究者にすることができる。質問は、科学や社会、政治間の開かれた対話の基盤となる。様々な形式の参加と交流を通して、関心のある市民は研究や科学的な議論、研究・イノベーション政策に積極的に参加する。目標は、ドイツの研究や研究政策のための新しいアイデアと未来への刺激を生み出すことである。

 これらの質問や刺激は、科学年の中心的な参加型活動である「アイデア・ラン(IdeenLaufs)」の一環として収集・まとめられ、年末に科学界と政界に渡される。

 その後、引き続き2023年の春までに連邦教育研究省によってその実現可能性が検証され、結果が一般に公表される。

 科学年は、連邦教育研究省(BMBF)と「科学の対話(Wissenschaft im Dialog: WiD)」が共同で行っているの取組であり、サイエンスコミュニケーションの中心的な手段として、研究を一般に紹介し、研究と社会の間の対話を支援する。

 2022年はドイツ研究振興協会(DFG)がドイツ科学機関連盟の主導機関の役割を担う。この連盟はドイツの科学及び研究機関の連合であり、科学政策や研究資金助成、ドイツの科学システムの構造的発展に係る問題に対して、定期的に立場を表明している。

https://www.bmbf.de/bmbf/shareddocs/pressemitteilungen/de/2022/01/140122-WiJa2022.html;jsessionid=3FBEAB10932115BCEAF70D0CB04FF13F.live721
 

ピルシャー次官:洪水災害地域を気候適応と持続可能性の未来地域に(1月27日)

連邦教育研究省次官が、ラインラント・プファルツ州とノルトライン・ヴェストファーレン州のためのKAHRプロジェクトのキックオフワークショップを開催

 連邦教育研究省(BMBF)は、学際的な専門知識によって、ラインラント・プファルツ州とノルトライン・ヴェストファーレン州で洪水の被害を受けた地域の再建を支援している。「気候適応、洪水とレジリエンス(KAHR)」プロジェクトの目標は、当該地域で利害関係者と一緒に、気候適応性ある気候変動に対応できるように再建し、今後の洪水被害を防ぐことである。プロジェクトは本日(1月27日)キックオフワークショップとともに開始された。

 ユディス・ピルヒャー連邦教育研究省次官は説明する。

「私たちは被災地域を、気候適応と持続可能性のため未来地域に変えたいと思っている。やはり、気候保護とともに気候適応は、現代で最も喫緊の課題のうちの一つだからである。都市や地方自治体は、大雨や猛暑などの異常気象のために備えを強化しなければならない。KAHRの緊急対策により、私たちは連邦教育研究省として、気候変動に強い地域にするための新しい開発に貢献している。研究者らは被災した都市や地方自治体との緊密に対話を行い、再建にあたり具体的にどのようなニーズがあるか明らかにした。本日(1月27日)のワークショップは、これらの最初の知見をまとめ、共有するためのスタート地点である。」

 ラインラント・プファルツ州のKAHRプロジェクトのスポークスマンである、シュトゥットガルト大学ヨーン・ビークマン教授は説明する。

「今後3年間で、私たちは2021年7月の洪水災害、関係する過程、影響の連鎖を徹底的に調査する予定である。私たちは、将来のリスクを減らし、適応能力を高める施策を行いたいと思う。私たちにとって、地元住民にこれらが受け入れられることは重要であり、そのためには徹底した話し合いが必要である。このように、KAHRは被災地域における気候変動への対応力に関するイノベーションの飛躍的な発展を支援するだろう。」

 ノルトライン・ヴェストファーレン州KAHRプロジェクトのスポークスマンであるアーヘン工科大学のホルガ―・シュトルンプフ教授は説明する。

「私たちは、現場と連邦国家における利害関係者と、良好なコミュニケーションを図るよう努力している。プロジェクトが始まってからの最初の数週間ですでに、地域のエネルギー供給者をパートナーとして獲得できている。また、私たちは気候に配慮した電力供給のための基準を策定する予定である。重要なインフラ保護のため、私たちは科学的根拠に基づく目標と原則を策定中のアールヴァイラー地域を支援した。KAHRが科学と実践の分野で大きな関心を集めていることは、私たちのプロジェクトの緊急性をあらためて強調している。」

背景:

 KAHRプロジェクト(ラインラント・プファルツ州とノルトライン・ヴェストファーレン州における洪水災害の再建過程の科学的モニタリング-気候適応、洪水とレジリエンス)は、BMBFより今後3年間超で約520万ユーロの資金拠出を受ける。分野の異なる13のパートナーは、KAHRネットワークで協力して活動している。

 このネットワークは、都市や地域計画、水文学、水力工学・管理、建設技術、自然・環境リスク、イノベーション・システム研究といった分野からの専門知識を結び付けている。全体的な調整はシュトゥットガルト大学のヨーン・ビークマン教授が行っている。アーヘン工科大学のホルガ―・シュトルンプフ教授と共に、彼はこの取組のスポークスマンである。

 KAHRは、気候適応と持続可能な開発の分野における他のBMBF資金拠出と連結されている。(例えば、「都市・地方・プラス(Stadt-Land-Plus)」、「行動を通しての都市と地域の気候変動への対応」、「RegIKlim」、「水の異常現象(WaX)」等である。)KAHRは、2021年7月の洪水災害を例に、特にリスク予想、危機コミュニケーション、災害管理の問題に取り組んでいる市民安全研究の「HoWas2021」プロジェクトとも関係している。

https://www.bmbf.de/bmbf/shareddocs/pressemitteilungen/de/2022/01/270122-Kick-off-KAHR.html