ドイツ学術情報(過去の分)

学校デジタル協定の速度がさらに上がる(9月2日)

デジタル協定の最新の数値を掲載。資金の流出は、過去6か月間でほぼ2倍に

 毎年2月15日と8月15日に、州はどれくらいの金額が学校デジタル協定から引き出されたか連邦政府に報告している。新しい数値によると、2021年の初めから支出された資金の合計額は、前の6か月と比べてほぼ2倍に達した。

アンヤ・カリチェック連邦教育研究大臣は説明する。

「連邦州がデジタル協定からの資金をますます活用するようになったことは喜ばしいことである。これは、私たちが初期の困難を経て、着々とデジタル化を進歩させていること示している。州はそのペースをさらに速めている。

 しかし、デジタル協定が施行されて2年が経っても私たちは全般的に満足できていない。全体的にデジタル化はまだ十分な速度では進んでいない。今のところ、連邦政府によって用意された65億ユーロの3分の1のみが、使われているか、少なくとも予算化されている。パンデミックによって、学校と現場の責任者には非常に特別な要求がされ、今も継続しているにもかかわらず、それは2年たっても満足いくものではない。」

ドイツ連邦各州の教育文化担当大臣会議の議長である、ブランデンブルク州のブリッタ・エルンスト教育大臣は言う。「今年は昨年に比べ、デジタル協定から非常に多くの資金が引き出された。最も顕著なのは、パンデミックにおいて明確に役立った、生徒のための緊急の機器配備プログラムにおける拠出である。

背景:

 2021年半ばまでに、学校のためのデジタル協定から8億5,200万ユーロが引き出された。これは、6か月ごとの2月15日(12月31日締切)と8月15日(6月30日締切)に、州が連邦政府に報告する数値に表れている。執行が確実に見込まれる資金(すでに申請されたが引き出されていない資金)は著しく高く、約14億1,000万ユーロである。すでに支出されたもの、承認されたものは合わせて約22億6,000万ユーロと、6か月前の数値よりも約10億ユーロ増えている。2020年12月31日付では、支出済・承認済の資金は合計で約13億6,000ユーロであった。

 引き出された資金のうち、約4億7,000万ユーロは、2020年7月の初め、パンデミックの初めに連邦と州政府によって始まった生徒のための緊急の機器配備プログラムによるものである。合計5億ユーロがこのプログラムで用意されたため、その資金の94%が使われたことを意味する。このプログラムは、家に電子端末機器がない子どもたちに学校がラップトップを貸し出すことを可能とする。16の州のうち9の州がすでに、緊急の機器配備プログラムからの資金を完全に利用している。

 2021年1月の終わりに開始された、追加プログラム「教員のための機器貸出」で、これまでに約1億9,200万ユーロが引き出された。そして合計で5億ユーロが用意されている。今のところ、学校でのIT管理者に資金助成するために2020年11月に開始された追加プログラムで9,000ユーロが引き出し請求されている。

 連邦州は、2019年に施行された学校の基本デジタル協定の一部として、約1億9,000万ユーロを引き出し請求している。デジタル協定により、連邦政府は50億ユーロを学校のデジタルインフラに投資し、州はさらに5億ユーロを投資している。学校デジタル協定は2024年まで実施される。

 コロナウイルスのパンデミックを受けて、連邦と州政府は、3つの追加的な取り決めにより学校デジタル協定を拡大した。

・学校は電子端末機器を購入し、家で個人の機器を使えない生徒にそれらを貸し出すための緊急の機器配備プログラムのために5億ユーロ(2020年7月4日施行)

・デジタルテクノロジーを担当する管理者を支援するために5億ユーロ(2020年11月4日施行)

・教員のため貸出用機器を購入するために5億ユーロ(2021年1月28日施行、そのため今回初めて半期報告に含まれる)

https://www.bmbf.de/bmbf/shareddocs/pressemitteilungen/de/2021/08/020921-Digitalpakt.html;jsessionid=5AB45387261DC0167293A16DCEE0417E.live382

 

カリチェック大臣:イノベーションで、ドイツ全土の構造改革を成功へ(9月10日)

促進プログラム「WIR!」における促進第2期の23の提携が、イノベーションプロジェクトの実施を開始。これらは、提出された44のコンセプトから審査委員会によって選出された。

 23の成功した提携が、2段階の選考によって選ばれた。2020年2月に本プログラムに対し、130以上の応募者が草案を提出した。その中の44の応募者が、それぞれの地域の戦略的イノベーションコンセプトを立案する機会を得た。審査委員会が全てのコンセプトを評価し、その後23の提携を更なる助成の対象に推薦した。選出基準には、地域の定着と活発化に加えて、イノベーションレベルや期待される構造的効果、提携管理が挙げられた。選出された提携は、コンセプト実施のために3年間それぞれ800万ユーロが助成される。成功という評価を得た場合、その提携はさらに3年間700万ユーロが支援される機会がある。

 審査委員会による決定後、アンヤ・カリチェック連邦教育研究大臣は以下のように説明した。

 「イノベーションは、良い未来への躍進の補助となる。ドイツ全土の構造的に弱い地域において、新しいイノベーションの原動力を与えたいと思う。そうすれば構造改革は持続可能なものとなり成功する。そのために、私たちはイノベーションに基づいた構造改革を促進するため、2024年までに6億ユーロを用意し、強力な後押しをする。これらのイノベーションに基づく資金拠出により、連邦政府はドイツ全土において平等な生活環境と社会的な結びつきの強化に貢献している。そして自分の地域における機会が社会全体のための機会になることがさらに必要である。今まで使われてなかった可能性を活用し、新たな可能性を発見したいと思う。選ばれた23の提携は、今後数年間でそれぞれの地域環境に重要な刺激を与えるだろう。それらの提携は、各々の地域において「私たち」という真の連帯感を形成し、様々な関係者と共に幅広い連携を作り上げ、自分たちの地域のために長期的で持続可能な戦略を共同で構想することに成功したからである。このようにして、選出された提携の申請者らは専門審査委員会とBMBFを納得させた。ドイツ東部地域の試験段階の後、「WIR!-イノベーションを通じた変革(Wandel durch Innovation)」の第2期目で、ドイツ全土での構造的に弱い地域を対象としたのは、とても心強いことである。資金助成される23の取組のうち、9つの拠点がシュレースヴィヒ・ホルシュタイン州、ニーダーザクセン州、ノルトライン・ヴェストファーレン州、ザールラント州、ラインラント・プファルツ州にある。選ばれた提携は、それぞれの責務によって、現地において今後数年間で重要な開発を始め、周辺環境に刺激を与え元気づけるだろう。他の助成プログラムからの私たちの経験は、共同構想段階は、関係者を動員し、動機づけることを示す。それはBMBFからの資金助成を受けられない地域を含めた、すべての地域に影響を及ぼす。」

背景:

 地域支援措置「WIR!-イノベーションを通じた変革(Wandel durch Innovation)」は、BMBFが構造的に弱い地域の変革を促進する「イノベーション&構造改革」プログラムシリーズの一部である。「イノベーション&構造改革」だけで2025年までに約6億ユーロが用意されている。「WIR!」はとりわけ、今もなおイノベーションの軸が判然としていない地域を対象としている。地域の提携は、企業や大学、研究機関、市民社会的組織など広範囲にわたる。第1期資金助成フェーズは、ドイツ東部地域においてパイロットプロジェクトとして始まった。

第2期資金助成フェーズでは、ドイツ全土の構造的に弱い地域からの提携が応募可能であった。WIR!の各提携も、最大6年の実施期間で最大1500万ユーロが使用可能である。実施期間開始から約30か月後、助成の継続が決定される中間評価が行われる。

https://www.bmbf.de/bmbf/shareddocs/pressemitteilungen/de/2021/09/100921-WIR.html;jsessionid=EC969EC153A96C53520DFAA8A1F0CFD1.live092

 

「連邦奨学金法(BAFÖG)デジタル」が現在ドイツ全土で利用可能に(9月21日)

すでに7万以上の申請がデジタル申請アシスタントで申請される

 今般、16の全ての州の生徒・学生はデジタル申請アシスタント「BAföGデジタル」を使うことができるようになった。このツールは当初2020年10月に5つの州でテストされ、その後引き続き他の州でも使えるよう拡大されてきた。これにより、連邦奨学金法(Bundesausbildungsförderungsgesetz:BAföG)の受給申請が促進された。これまでに70,000件以上の申請で使われており、オンラインアクセス法(Onlinezugangsgesetz:OZG)における、全国で利用可能な初めての連邦デジタル行政サービスである。申請アシスタントの更なる発展と運営のための基盤となるのは、連邦政府と州の間の行政協定である。2022年の終わりまで、連邦政府はOZG刺激策からの資金を当該協定に投入する予定である。

 アンヤ・カリチェック連邦教育研究大臣は説明する。

「多くの若い人々に対して、BAföGは学校教育や学習を開始する機会を与えている。それゆえ、BAföGは、教育と社会進出における機会を平等にするため、50年間にわたり必要不可欠な貢献をしている。我々は、BAföGへのアクセスをさらに促進させたい。行政サービスのデジタル化がここで鍵となる。私は『BAföGデジタル』によって、すべての州において簡易化されたアクセスを提供できることを喜ばしく思う。試験段階でさえ、約4分の1の申請がすでに『BAföGデジタル』を通して提出された。それは大きな成功である。」

 ザクセン・アンハルト州は、他をリードする州として申請アシスタントの立ち上げに貢献した。アルミン・ウィリングマン科学大臣は説明する。

 「本日から、BAföGにはドイツのあらゆる場所からオンラインで申請できる。これは、ドイツにおける学生の資金調達のためのデジタル化のマイルストーンである。将来、デジタル申請アシスタントは、より一層才能のある若い人々がこれらの重要な教育給付金から便益を受ける助けになるであろうことに、私は自信を持っている。ドイツは、経済的な面でも、一流の教育の機会を得られる多くの優秀な人材を必要とする。『BAföGデジタル』はその中心的基盤を作る。」

背景:

 オンラインアクセス法(Onlinezugangsgesetzes :OZG)の実施の一環として、連邦と州政府は共同で、統一された、ユーザーフレンドリー(利用者が使いやすい)なオンライン申請アシスタント「BAföGデジタル」を開発してきた。連邦内務省、連邦教育研究省、ザクセン・アンハルト州が開発において先導的な役割を担った。

 運営と、申請アシスタントのさらなる開発は、2022年の終わりまでドイツ政府の経済刺激策によって資金が工面される。各州はターゲットを絞ることで開発が軽減され、「One for All」の原理によってサービスは国内に広く利用可能になる予定である。「One for All」は1つの州が中心的にサービスを開発・運営し、そしてその後、ほかの州や地方自治体にも利用可能にするということを意味する。それゆえ後者はほとんどシームレスに申請を引き継ぐことができる。プロジェクトは、OZGによって想定されるように、2022年の終わりまでに、すべての特に重要な行政手続きをデジタル化するための、連邦、州、地方政府による協力の一部である。ゴールは、市民と企業のそれぞれの要望について、オフラインと比べてオンラインでは平均でたった半分の時間で済むようにすることだ。

 特に事例が多く優先されるサービスのため、大いに単純化され、直感的であるデジタル申請手続きは、オンライン使用率を大いに増やせるよう作られている。「BAföGデジタル」申請アシスタントは、すでに2016年から可能になっているデジタル申請手続きを、著しく改善し、標準化するだろう。

 BAföGのオンライン申請は、連邦内務省に代わって、デジタル化ラボにて開発された。方法論としては、開発の早い段階からユーザーに焦点を当てるユーザー指向のアプローチが選ばれた。デジタル化ラボは、連邦デジタルプログラムにおいて、行政手続きがユーザーフレンドリーにオンラインサービスを開発するための新しく、革新的な枠組みである。デジタル化ラボでは、相互的なチームがターゲットグループを意識したオンライン申請を、機敏な方法で開発している。これらは、それぞれの州でテーマ別のフィールドワークの中で行われる。

 生徒、学生と親は、すべての開発段階でBAföG申請の最初のテストを行い、フィードバックを行う。学生自治会や地方行政の教育基金のための事務所の中で、申請過程を担当する人々もユーザーテストに含まれた。

 デジタルBAföG申請は非常に明確に、データ量が節約できるようデザインされている。コンフィグレーター(設定)では、すべての関係するフォームを一つのアプリケーションで完結できるよう、申請者にとって単純で、理解しやすい質問のみにする。ダイナミックフォームは、申請者が、関連する質問にのみ答えることができる。加えて、市民に優しいヘルプテキストは申請手続きをサポートする。証拠書類は、申請手続きの間またはあとの日付でコンピューターまたはスマートフォン経由でアップロードすることができる。学生と生徒たちは、彼らの申請の状況をオンラインで確認することができる。

 アプリケーションはレスポンシブ(デバイスに応じて最適な表示に調整する)デザインとなっているため、どんなデバイスからも使うことができる。さらに「BAföGデジタル」は、連邦内務省の連邦ユーザーアカウントを使うことによって申請者の安全な本人確認と認証を保証する。IDカードのオンライン機能を使うための認証は、最も高いレベルの安全性を提供する。

 時間と費用を節約するために、ザクセン=アンハルト州は州側のリーダーとして、連邦教育研究省は連邦側のリードエージェンシーとして、申請アシスタントを開発し、他の州に対して「One for All」の原理と合致するよう利用可能にした。「デジタル化ラボ」を使ったオンライン申請の開発は、連邦内務省によって資金が工面された。

 連邦政府は2022年の終わりまで、さらに国内に広く「BAföGデジタル」がいきわたり、発展するようコロナ景気刺激策から追加的な資金拠出をしている。これは、各州の助けとなり、16の全ての連邦州は、サービスの運営と更なる発展のため、2023年から費用を分かち合うだろう。BMBFは、ホットラインのフォームの中の、第一レベルのサポートに資金提供している。オンライン申請は、ザクセン=アンハルト州のITサービスプロバイダーデータポート(AöR)によって、すべての州で運営されるようになるだろう。

 今までで7万件以上の申請が提出されており、継続的な開発の一環として、既存の機能の改善や新しい機能の実装が行われている。

https://www.bmbf.de/bmbf/shareddocs/pressemitteilungen/de/2021/09/210921-BAfoeG-Digital.html

 

カリチェック大臣:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症に関する10の研究提携が、スタートラインに向かう(9月23日)

連邦教育研究省(BMBF)が、新型コロナウイルス感染症の後遺症(Long-COVID)の研究に650万ユーロを用意

 ドイツ連邦教育研究省(BMBF)はCOVID-19の長期的な影響に関しての研究を強化している。9月23日、アンヤ・カリチェック連邦教育研究大臣は、BMBFが総額650万ユーロを提供する10の研究プロジェクトを発表した。既存の活動を補完するその取組は、COVID-19の後遺症に関する、利用可能な科学的知識をできるだけ迅速に選び、束ね、さらに発展させることを目的とする。

 アンヤ・カリチェック連邦教育研究大臣は説明する。

 「パンデミックはまだ終わっていない。ロベルト・コッホ研究所から日々私たちが受け取る数値と統計は、特に若い世代に感染症が広がり続けていることを示している。私は特に、病気の後遺症を心配している。非常に多くのCOVID-19患者は、その重症度に関わらずその後何週間、何か月間も症状に苦しみ続けている。これらの人々への最良な治療方法の提供は、医師やとりわけ科学者にとって依然として課題である。どのように人々を最適な方法で助けることができるか、しっかりした知見を持つことは、私たちにとって急務である。そのため、10の研究プロジェクトが異なる観点から、後遺症(Long-COVID)について調査を開始できることを私は非常に嬉しく思う。これらのプロジェクトのいくつかは、効果的な治療法のスタート地点を見つけるため、実際の症状を引き起こす分子変化を分析している。また、薬物治療や作業療法、個人に適合した運動プログラムのような、期待できる治療のアプローチをすでにテストしているプロジェクトもある。さらに、他のプロジェクトは、将来のサービスをより適したものにするため、子どもや青年期の若者、心理社会学分野またはリハビリテーションなど、特定の患者グループに特有な治療ニーズをより正確に明らかにすることを目指している。一つ確かなことは、Long-COVIDの頻度、期間および治療についての信頼できる知見は現在も不足しているということである。それゆえ、私たちがドイツにおけるこの分野の保健研究に的を絞った支援を提供することが重要である。議会により開始された財政措置も、この関連で重要な構成要素である。そして、一つ約束できることは、もしこれらのプロジェクトの終了後に更なる研究が必要である場合は、BMBFはこれを念頭に置いておくだろうということだ。」

背景:

 COVID-19の後遺症を説明する、明確で広く一般に認められた定義はまだ存在しない。SARS-CoV-2に感染した人の約10%が、数週間や数か月続く後遺症(Long-COVIDやPost -COVID-Syndromeと呼ばれる)の経験を持つ。最も一般的な症状は、極度の疲労、頭痛、集中力低下、息切れ、味覚・嗅覚の感覚喪失である。

 これらの後遺症状の有効な知見を得ることは、5月31日に発行された「COVID-19後遺症(Long-COVID)に関する研究プロジェクト資金助成ガイドライン」の目的である。

 資金助成ガイドラインは、第一に、すでに患者やデータ、サンプルへのアクセスを持つ学際的な共同研究を対象としている。特に重要なのは、外来診療、リハビリテーション及び看護、Long-COVIDの専門外来クリニックと開業医による初期診療との間の協力に関する研究プロジェクトである。

 今回選定されたプロジェクトは、原則2年以内の期間で資金助成を受ける。当初、500万ユーロの資金助成額が計画されていたが、650万ユーロに増額された。

https://www.bmbf.de/bmbf/shareddocs/pressemitteilungen/de/2021/09/230921-long-covid.html